2021年09月03日

ビノレルビンにも供給不安

 先だって、ナブパクリタキセルの供給停止について記事を書いた。
・ナブパクリタキセル、まさかの供給停止
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e992309.html

 どうもビノレルビンでも似たようなことが起こっているらしい。
・「ナベルビン注10/注40」製品の出荷調整並びに供給停止に関するお知らせ(日本肺癌学会へのリンク)
https://www.haigan.gr.jp/modules/important/index.php?content_id=233

 ナブパクリタキセル供給停止の名目は、「製造工程に関する定期的な検証にて再評価が必要となる旨の連絡があり、2021 年 10 月以降 当該製品の安定供給に一時的な支障を来す」ということだったが、今回のビノレルビンについては、「製造委託先に対するサイバー攻撃によるシステムトラブルと製造所での製造設備の故障が連続して発生したことによる、製造の遅延、供給停止」ということで、ちょっと穏やかではない。
 「2021 年 8 月 2 日より出荷調整を開始させていただき、2021 年 12 月から供給停止となります。現在のところ 2022 年 2 月以降の出荷再開を見込んでおります」とのこと。
 
 ナブパクリタキセルとビノレルビンが異なるのは、ビノレルビンは既にジェネリック医薬品が出回っていることである。
 先発品であるナベルビンを使用している施設の方が少ないのではないか。
 そうした点では、ナブパクリタキセルの供給停止よりは、ビノレルビンの供給停止の方がまだ受け入れられる。


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この記事へのコメント
おはようございます。
抗菌薬の悪夢が抗癌剤で繰り返されるとすぐに代替薬に変更が難しい場合もあり本当に困ります。
Posted by SAS at 2021年09月03日 06:06
SASさんへ

 コメントありがとうございます。抗菌薬の供給不安のときもそうでしたが、こういう話は突然来るから厄介です。先発品、後発品問わず、複数の供給ルートを確保して逃げ道を作っておくことが、今後の薬剤部在庫管理には問われそうです。
Posted by taktak at 2021年09月04日 02:12
後発品のないTKIや抗体医薬品で起きたらと考えると、先発品メーカーの責任は重大ですね。
Posted by とある放射線治療医 at 2021年09月04日 15:13
とある放射線治療医さんへ

 コメントありがとうございます。
 ご指摘の通り、例えば希少な遺伝子変異を有し、通常の化学療法の適応のない肺癌患者さんが、メーカー都合で分子標的薬を使えなくなって亡くなった、といったケースが出てくると、ちょっとした社会問題になるかもしれません。メディアが喜んで取り上げそうです。
Posted by taktak at 2021年09月05日 17:28
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