2019年03月27日
RELAY試験のエルロチニブ+ラムシルマブ併用療法、無増悪生存期間を有意に延長
EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん患者を対象としたRELAY試験において、エルロチニブ+ラムシルマブ併用療法がエルロチニブ単剤療法と比較して無増悪生存期間を有意に延長したとのこと。
詳細はイーライリリー社のプレスリリースを参照。
https://news.lilly.co.jp/down2.php?attach_id=588&category=13&page=1&access_id=1912
型のごとく、詳細なデータは今後の主要な学会で発表される。
まだまだ全体像が見通せるようになるのは先の話だと思うが、無増悪生存期間をある程度延長して、全生存期間には差は出ないだろうと予測する。
治療コンセプトが先行するエルロチニブ+ベバシズマブ併用療法と同様で、こちらは以下の記事に示すような流れになっているからだ。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e944390.html
一方、RELAY試験でまだまだ興味深いのは、試験治療群Cとして、ゲフィチニブ+ラムシルマブ併用療法、あるいはオシメルチニブ+ラムシルマブ併用療法が規定されていることだ。
エルロチニブ+抗VEGF抗体併用療法は、少なくとも我が国と欧州では認知されていると言っていいが、ゲフィチニブ+抗VEGF抗体併用療法は我が国で岡山大学の先生方が臨床試験に取り組んだくらいで、あまり一般的ではない。
オシメルチニブ+抗VEGF抗体併用療法は、どのような結果になるのか(ある程度予想はつくものの)まだ誰も知らない。
何はともあれ、どうしても殺細胞性抗腫瘍薬を使いたくない、という患者さんには、EGFR-TKI+抗VEGF抗体は治療選択肢の一つとなり得るのではないだろうか。
ただし、いずれも初回治療時にのみ選択しうるオプションということは、知っておかなければならない。
また、ラムシルマブの点滴は2週間に1回の頻度で受けなければならないため、患者さん・ご家族にとっても、医療従事者にとっても煩雑なことだろう。
2週間に1回の通院がどれだけ負担になるか、それが4週間に1回程度に伸びることが実地臨床上どのように受け入れられるかは、以下の記事に対する反響を見れば自明である。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e953777.html
詳細はイーライリリー社のプレスリリースを参照。
https://news.lilly.co.jp/down2.php?attach_id=588&category=13&page=1&access_id=1912
型のごとく、詳細なデータは今後の主要な学会で発表される。
まだまだ全体像が見通せるようになるのは先の話だと思うが、無増悪生存期間をある程度延長して、全生存期間には差は出ないだろうと予測する。
治療コンセプトが先行するエルロチニブ+ベバシズマブ併用療法と同様で、こちらは以下の記事に示すような流れになっているからだ。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e944390.html
一方、RELAY試験でまだまだ興味深いのは、試験治療群Cとして、ゲフィチニブ+ラムシルマブ併用療法、あるいはオシメルチニブ+ラムシルマブ併用療法が規定されていることだ。
エルロチニブ+抗VEGF抗体併用療法は、少なくとも我が国と欧州では認知されていると言っていいが、ゲフィチニブ+抗VEGF抗体併用療法は我が国で岡山大学の先生方が臨床試験に取り組んだくらいで、あまり一般的ではない。
オシメルチニブ+抗VEGF抗体併用療法は、どのような結果になるのか(ある程度予想はつくものの)まだ誰も知らない。
何はともあれ、どうしても殺細胞性抗腫瘍薬を使いたくない、という患者さんには、EGFR-TKI+抗VEGF抗体は治療選択肢の一つとなり得るのではないだろうか。
ただし、いずれも初回治療時にのみ選択しうるオプションということは、知っておかなければならない。
また、ラムシルマブの点滴は2週間に1回の頻度で受けなければならないため、患者さん・ご家族にとっても、医療従事者にとっても煩雑なことだろう。
2週間に1回の通院がどれだけ負担になるか、それが4週間に1回程度に伸びることが実地臨床上どのように受け入れられるかは、以下の記事に対する反響を見れば自明である。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e953777.html
2019年03月26日
FLAURA試験、AURA3試験における耐性機序
今回簡単に取り上げた以下の2報からわかること。
オシメルチニブの初回治療と二次治療では、どちらも耐性機序の多数派を占めるのはMET増幅とC797X獲得変異のようだが、前者ではT790M変異が全く認められず、後者では約半数にT790M変異が残っている様子。
・オシメルチニブ初回治療後のC797X出現頻度は7%、オシメルチニブ二次治療後のC797X発現頻度は3%程度
・オシメルチニブ二次治療後のC797X発現例では、その半数はT790Mと相乗りし、C797XとT790Mはcisの位置に存在
これらのことと以下の記事を合わせると、オシメルチニブで初回治療を始めた場合には、
初回治療オシメルチニブ→病勢進行後は第1世代のEGFR阻害薬→7%は効果が期待できて、93%は効果が得られずに化学療法へ移行
となりそう。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e884383.html
・第3世代EGFR阻害薬に対する耐性化の問題
T790MとC797Sがtransに存在すれば第1世代と第3世代のEGFR阻害薬の併用で対応:Neiderst et al, Clin Cancer Res 3924-3933, 2015
T790MとC797Sがcisに存在する場合はEAI-045とcetuximabの併用で対応可?:Jia et al, Nature 129-132, 2016
一方、初回治療を第1世代のEGFR-TKIで始めた場合には、T790Mが出ればオシメルチニブを使って二次治療を行い、それでも病勢進行に至ったら化学療法となる。
初回治療でオシメルチニブを開始して、病勢進行後にEGFR阻害薬が効く可能性が7%。
初回治療で第1世代のEGFR阻害薬を使って、病勢進行後にオシメルチニブが使える(≒効く)可能性は今回のLBA 50の報告からは47%。
果たして、どっちがいいんだろう。
それから、ALK阻害薬としてよく知られているBrigatinibと抗EGFR抗体を併用してT790M / C797X 耐性を克服する、なんて研究成果も報告されているようだ。
https://www.amed.go.jp/news/release_20170313.html
LBA 50: Mechanisms of aquired resistance to first-line osimertinib: preliminary data from the phase III FLAURA study
Ramalingam SS, et al., ESMO 2018
目的:
FLAURA試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる
方法:
オシメルチニブ群、ゲフィチニブ/エルロチニブ群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360、Guardant OMNI)を用いて解析した。
結果:
オシメルチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、
・MET増幅:15%
・EGFR C797S変異:7%
で、T790Mは検出されなかった。
ゲフィチニブ/エルロチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、
・T790M:47%
・MET増幅:4%
・HER2増幅:2%
だった。
LBA 51: Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from AURA3 study
Papadimitrakopoulou et al, ESMO 2018
目的:
AURA3試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる
方法:
オシメルチニブ群、化学療法群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360)を用いて解析した。
結果:
・49%の患者で、T790Mが消失していた
・新たなEGFR耐性変異は21%に認められ、C797S変異が14%を占めていた
・MET増幅:19%
・細胞周期制御に関わる遺伝子異常:12%
・HER2増幅:5%
・PIK3CA増幅/変異:5%
・新規の融合遺伝子異常:4%
・BRAF V600E変異:3%
・T790M変異と同時に発生したC797変異は、全てDNA二本鎖の同一側に共存(シス配置)していた
オシメルチニブの初回治療と二次治療では、どちらも耐性機序の多数派を占めるのはMET増幅とC797X獲得変異のようだが、前者ではT790M変異が全く認められず、後者では約半数にT790M変異が残っている様子。
・オシメルチニブ初回治療後のC797X出現頻度は7%、オシメルチニブ二次治療後のC797X発現頻度は3%程度
・オシメルチニブ二次治療後のC797X発現例では、その半数はT790Mと相乗りし、C797XとT790Mはcisの位置に存在
これらのことと以下の記事を合わせると、オシメルチニブで初回治療を始めた場合には、
初回治療オシメルチニブ→病勢進行後は第1世代のEGFR阻害薬→7%は効果が期待できて、93%は効果が得られずに化学療法へ移行
となりそう。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e884383.html
・第3世代EGFR阻害薬に対する耐性化の問題
T790MとC797Sがtransに存在すれば第1世代と第3世代のEGFR阻害薬の併用で対応:Neiderst et al, Clin Cancer Res 3924-3933, 2015
T790MとC797Sがcisに存在する場合はEAI-045とcetuximabの併用で対応可?:Jia et al, Nature 129-132, 2016
一方、初回治療を第1世代のEGFR-TKIで始めた場合には、T790Mが出ればオシメルチニブを使って二次治療を行い、それでも病勢進行に至ったら化学療法となる。
初回治療でオシメルチニブを開始して、病勢進行後にEGFR阻害薬が効く可能性が7%。
初回治療で第1世代のEGFR阻害薬を使って、病勢進行後にオシメルチニブが使える(≒効く)可能性は今回のLBA 50の報告からは47%。
果たして、どっちがいいんだろう。
それから、ALK阻害薬としてよく知られているBrigatinibと抗EGFR抗体を併用してT790M / C797X 耐性を克服する、なんて研究成果も報告されているようだ。
https://www.amed.go.jp/news/release_20170313.html
LBA 50: Mechanisms of aquired resistance to first-line osimertinib: preliminary data from the phase III FLAURA study
Ramalingam SS, et al., ESMO 2018
目的:
FLAURA試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる
方法:
オシメルチニブ群、ゲフィチニブ/エルロチニブ群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360、Guardant OMNI)を用いて解析した。
結果:
オシメルチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、
・MET増幅:15%
・EGFR C797S変異:7%
で、T790Mは検出されなかった。
ゲフィチニブ/エルロチニブ群で見つかった耐性機序で頻度の高かったのは、
・T790M:47%
・MET増幅:4%
・HER2増幅:2%
だった。
LBA 51: Analysis of resistance mechanisms to osimertinib in patients with EGFR T790M advanced NSCLC from AURA3 study
Papadimitrakopoulou et al, ESMO 2018
目的:
AURA3試験において、病勢進行に至った患者の耐性機序を調べる
方法:
オシメルチニブ群、化学療法群のそれぞれにおいて、各患者の治療開始時点と病勢進行時点の血液サンプルを採取し、次世代シーケンサー(Guardant 360)を用いて解析した。
結果:
・49%の患者で、T790Mが消失していた
・新たなEGFR耐性変異は21%に認められ、C797S変異が14%を占めていた
・MET増幅:19%
・細胞周期制御に関わる遺伝子異常:12%
・HER2増幅:5%
・PIK3CA増幅/変異:5%
・新規の融合遺伝子異常:4%
・BRAF V600E変異:3%
・T790M変異と同時に発生したC797変異は、全てDNA二本鎖の同一側に共存(シス配置)していた
2019年03月26日
NEJ009試験の後治療
先だって、NEJ009試験における後治療について、読者の方から情報を頂いた。
ESMO 2018で発表されていたとのこと。
ちなみに、NEJ009試験の概要は以下を参照のこと。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e935374.html
解析時点で、GCP群で29人、G群で37人が、オシメルチニブによる後治療を受けていた。
初回治療GCP、二次治療オシメルチニブの患者群では、生存期間中央値は未到達。
初回治療G、二次治療オシメルチニブの患者群では、生存期間中央値は75ヶ月。
・・・初回治療G、二次治療オシメルチニブの患者群でも、生存期間中央値は6年を超えている。
もはや、悪性リンパ腫の臨床試験結果を眺めているようだ。
NEJ009試験とFLAURA試験の長期追跡結果が出たとき、比較検討するのが楽しみだ。
ESMO 2018で発表されていたとのこと。
ちなみに、NEJ009試験の概要は以下を参照のこと。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e935374.html
解析時点で、GCP群で29人、G群で37人が、オシメルチニブによる後治療を受けていた。
初回治療GCP、二次治療オシメルチニブの患者群では、生存期間中央値は未到達。
初回治療G、二次治療オシメルチニブの患者群では、生存期間中央値は75ヶ月。
・・・初回治療G、二次治療オシメルチニブの患者群でも、生存期間中央値は6年を超えている。
もはや、悪性リンパ腫の臨床試験結果を眺めているようだ。
NEJ009試験とFLAURA試験の長期追跡結果が出たとき、比較検討するのが楽しみだ。
2019年03月23日
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
記事を書くのをサボっている間に、世間は淡々と動いていたようだ。
ブログにコメントを下さった方が丁寧に教えてくれたので、ESMO 2018の要約を眺める気になった。
今回記載するのは、L858R、Exon 19 deletion以外のいわゆる稀なEGFR遺伝子変異の実態調査をした研究。
予後のいい変異、予後の悪い変異があるのはともかくとして、この患者群には化学療法から開始する方が治療成績がいいらしい。
それも小さな差ではなく、化学療法から開始した群はEGFR-TKIから開始した群に比べて、約11ヶ月は生命予後が改善したらしい。
それから、単一の遺伝子変異をもつ患者よりも、複数の遺伝子変異が相乗りしている患者の方が予後がいいというのも意外な感じ。
遺伝子変異が複数あった方が、かえって予後が悪くなるような気がするけれど。
この患者群にEGFR-TKIを使用するならアファチニブ、ということになるのだろうが、まずは化学療法から始めるのがよさそうだ。
LBA60 - Uncommon EGFR mutations in lung adenocarcinomas: clinical features and response to tyrosine kinase inhibitors
Aurélien Brindel et al., ESMO 2018
背景:
EGFR遺伝子変異のような癌化に関わる遺伝子変異が見出され、チロシンキナーゼ阻害薬のような分子標的薬が開発されるようになった。そんな中でも、発現頻度の低い遺伝子変異は、今後も研究が必要で、臨床的意義について未だによくわかっていない。今回、フランスのリヨンで診断、精査された腺癌の患者を対象に、EGFR遺伝子変異の中でも頻度の低いものについて、その臨床的な特徴と同様に、出現頻度、病理学的特徴についてレトロスペクティブに検討した。
方法:
リヨン大学病院で、総数7,539件の遺伝子変異検索を行った。サンガー法と、2,009年から2,017年までは次世代シーケンサーで検索し、EGFRのエクソン領域18-21までを対象とした。L858R点突然変異、Exon 19欠失変異、T790M変異、Exon 20挿入変異は除外した。遺伝子変異検索の結果は、2人の病理医が確認した。臨床データは患者のカルテから抽出した。
結果:
857件(全体の11.4%)のEGFR体細胞変異を同定した。そのうち95件(11%)を頻度の低いEGFR遺伝子変異と判定した。Exon 18遺伝子変異が47件(50%)あり、E709X(15%)、G719X(35%)を含んでいた。Exon 20変異は26件(27%)で、S768I(9%)、A767_V769 duplication(18%)を含んでいた。Exon 21 L861Q変異は22件(23%)認められた。興味深いことに、27人(28%)は他の遺伝子変異を併せ持っており、そのうちL858R変異を併せ持つものは9人だった。こうした患者のうち、初回治療を化学療法で開始した患者では、EGFR-TKIで開始した患者よりも生存期間が長くなる傾向が見られた。今回の検討対象となった頻度の低いEGFR遺伝子変異を持つ患者全員を対象とすると、全生存期間中央値は化学療法群で27.7ヶ月(95%信頼区間は21.6-35)、EGFR-TKI群で16.9ヶ月(95%信頼区間は13.6-25.9)、p=0.075だった。全生存期間は遺伝子変異のタイプと相関していた。Exon 18変異とExon 20変異は比較的予後良好であり、Exon 21 L861Q変異は予後不良だった。複数の遺伝子変異を有する患者では、有意差を持って予後良好だった(p=0.002)。
結論:
今回の検討で、頻度の低いEGFR遺伝子変異を有する患者では、EGFR-TKIと比べて化学療法の方が生命予後を改善する傾向が見られた。興味深いことに、いくつかの遺伝子変異ではその他の遺伝子変異よりも生命予後良好で、複数の遺伝子変異が共存している場合も同様だった。
ブログにコメントを下さった方が丁寧に教えてくれたので、ESMO 2018の要約を眺める気になった。
今回記載するのは、L858R、Exon 19 deletion以外のいわゆる稀なEGFR遺伝子変異の実態調査をした研究。
予後のいい変異、予後の悪い変異があるのはともかくとして、この患者群には化学療法から開始する方が治療成績がいいらしい。
それも小さな差ではなく、化学療法から開始した群はEGFR-TKIから開始した群に比べて、約11ヶ月は生命予後が改善したらしい。
それから、単一の遺伝子変異をもつ患者よりも、複数の遺伝子変異が相乗りしている患者の方が予後がいいというのも意外な感じ。
遺伝子変異が複数あった方が、かえって予後が悪くなるような気がするけれど。
この患者群にEGFR-TKIを使用するならアファチニブ、ということになるのだろうが、まずは化学療法から始めるのがよさそうだ。
LBA60 - Uncommon EGFR mutations in lung adenocarcinomas: clinical features and response to tyrosine kinase inhibitors
Aurélien Brindel et al., ESMO 2018
背景:
EGFR遺伝子変異のような癌化に関わる遺伝子変異が見出され、チロシンキナーゼ阻害薬のような分子標的薬が開発されるようになった。そんな中でも、発現頻度の低い遺伝子変異は、今後も研究が必要で、臨床的意義について未だによくわかっていない。今回、フランスのリヨンで診断、精査された腺癌の患者を対象に、EGFR遺伝子変異の中でも頻度の低いものについて、その臨床的な特徴と同様に、出現頻度、病理学的特徴についてレトロスペクティブに検討した。
方法:
リヨン大学病院で、総数7,539件の遺伝子変異検索を行った。サンガー法と、2,009年から2,017年までは次世代シーケンサーで検索し、EGFRのエクソン領域18-21までを対象とした。L858R点突然変異、Exon 19欠失変異、T790M変異、Exon 20挿入変異は除外した。遺伝子変異検索の結果は、2人の病理医が確認した。臨床データは患者のカルテから抽出した。
結果:
857件(全体の11.4%)のEGFR体細胞変異を同定した。そのうち95件(11%)を頻度の低いEGFR遺伝子変異と判定した。Exon 18遺伝子変異が47件(50%)あり、E709X(15%)、G719X(35%)を含んでいた。Exon 20変異は26件(27%)で、S768I(9%)、A767_V769 duplication(18%)を含んでいた。Exon 21 L861Q変異は22件(23%)認められた。興味深いことに、27人(28%)は他の遺伝子変異を併せ持っており、そのうちL858R変異を併せ持つものは9人だった。こうした患者のうち、初回治療を化学療法で開始した患者では、EGFR-TKIで開始した患者よりも生存期間が長くなる傾向が見られた。今回の検討対象となった頻度の低いEGFR遺伝子変異を持つ患者全員を対象とすると、全生存期間中央値は化学療法群で27.7ヶ月(95%信頼区間は21.6-35)、EGFR-TKI群で16.9ヶ月(95%信頼区間は13.6-25.9)、p=0.075だった。全生存期間は遺伝子変異のタイプと相関していた。Exon 18変異とExon 20変異は比較的予後良好であり、Exon 21 L861Q変異は予後不良だった。複数の遺伝子変異を有する患者では、有意差を持って予後良好だった(p=0.002)。
結論:
今回の検討で、頻度の低いEGFR遺伝子変異を有する患者では、EGFR-TKIと比べて化学療法の方が生命予後を改善する傾向が見られた。興味深いことに、いくつかの遺伝子変異ではその他の遺伝子変異よりも生命予後良好で、複数の遺伝子変異が共存している場合も同様だった。
2019年03月21日
CheckMate-384試験 ニボルマブは4週間隔での使用でも良さそう
私を含めて、投与間隔が2週間ごとと短いせいで、ニボルマブよりもペンブロリズマブを頻用している医師は少なからずいるのではないか。
今回のお話は、ニボルマブ、4週間ごとでもいいんじゃないの、という内容。
いいらしい。
ただし、対象となった患者はもともとニボルマブ2週間ごと投与を受けていて、病勢安定以上の効果が得られている(もともとニボルマブが一定の効果を示すことがわかっている)人ばかりだったようだ。
最初から4週間ごと投与をするわけではなく、治療効果が得られている人の通院負担を減らすこと(+医療者の業務負担を減らすこと)が目的のようで、投与量は変わらない。
最初から4週間ごと投与でいけるなら、もっといいんだけど、そういう検証は考えなかったんだろうか。
CheckMate 384: Phase IIIb/IV trial of nivolumab (nivo) 480 mg Q4W versus 240 mg Q2W after ≤ 12 months of nivo in previously treated advanced NSCLC.
Edward B. Garon, et al.
2019 ASCO-SITC Clinical Immuno-Oncology Symposium
Presented Thursday, February 28, 2019
背景:
ニボルマブは、欧州および日本では2週間ごと、240mg/回の使用量で進行非小細胞肺がんの治療として承認されている。一方、アメリカ合衆国とカナダでは、2週間ごと、240mg/回もしくは4週間ごと、480mg/回の投与法のどちらも承認されている。さまざまな癌腫における薬物動態モデルでの解析では、効果・安全性は4週ごと投与でも保持されうると予測され、それゆえに4週間ごとの投与法はより利便性の高い治療選択肢になると考えられていた。今回、オープンラベル、無作為化第IIIb / IV相試験デザインで、進行非小細胞肺癌患者における4週間ごと投与法と2週間ごと投与法の効果・安全性を検証した。
方法:
今回対象となったのは、組織学的に確定診断され前治療歴のあるIIIB/IV期もしくは術後再発非小細胞肺癌、ECOG-PS 0-2、3mg/kgもしくは240mg/回、2週間ごと投与による12ヶ月未満のニボルマブ治療歴が既にあり・連続2回以上の効果判定で完全奏効 / 部分奏効 / 病勢安定が確認されている患者329人だった。1対1の比率で480mg/回4週間ごと投与法の群(Q4W群)と240mg/回2週間ごと投与法の群(Q2W群)に無作為に割付けた。主要評価項目は割付後6ヶ月無増悪生存割合、割付後12ヶ月無増悪生存割合とした。副次評価項目には安全性を含めた。臨床試験遂行中に非小細胞肺癌における標準治療が刷新されたため、プロトコール改定を行い、集積予定患者数を縮小した。
結果:
Q4W群に割り付けられた166人のうち164人が、Q2W群に割り付けられた163人のうち161人がプロトコール治療を受けた。経過観察期間の中央値はQ4W群で9.5ヶ月、Q2W群で10.2ヶ月だった。両群間で、患者背景に差異はなかった。無作為割付後無増悪生存割合は、6ヶ月時点、12ヶ月時点のどちらでも両群間で同等だった(表参照)。安全性プロファイルも両群間で同等で、治療関連有害事象発生割合はQ4W群で48%、Q2W群で61%、治療中止につながる治療関連有害事象発生割合はQ4W群で6%、Q2W群で9%だった。治療関連死は認めなかった。
結論:
ニボルマブによる病勢コントロールが得られている患者においては、ニボルマブ480mg/回、4週間ごと投与法は効果・安全性両面で240mg/回、2週間ごと投与法と同等であることが示された。非小細胞肺癌に対する二次治療の選択肢として、4週間ごと投与法はより利便性の高い治療法となりうる。

今回のお話は、ニボルマブ、4週間ごとでもいいんじゃないの、という内容。
いいらしい。
ただし、対象となった患者はもともとニボルマブ2週間ごと投与を受けていて、病勢安定以上の効果が得られている(もともとニボルマブが一定の効果を示すことがわかっている)人ばかりだったようだ。
最初から4週間ごと投与をするわけではなく、治療効果が得られている人の通院負担を減らすこと(+医療者の業務負担を減らすこと)が目的のようで、投与量は変わらない。
最初から4週間ごと投与でいけるなら、もっといいんだけど、そういう検証は考えなかったんだろうか。
CheckMate 384: Phase IIIb/IV trial of nivolumab (nivo) 480 mg Q4W versus 240 mg Q2W after ≤ 12 months of nivo in previously treated advanced NSCLC.
Edward B. Garon, et al.
2019 ASCO-SITC Clinical Immuno-Oncology Symposium
Presented Thursday, February 28, 2019
背景:
ニボルマブは、欧州および日本では2週間ごと、240mg/回の使用量で進行非小細胞肺がんの治療として承認されている。一方、アメリカ合衆国とカナダでは、2週間ごと、240mg/回もしくは4週間ごと、480mg/回の投与法のどちらも承認されている。さまざまな癌腫における薬物動態モデルでの解析では、効果・安全性は4週ごと投与でも保持されうると予測され、それゆえに4週間ごとの投与法はより利便性の高い治療選択肢になると考えられていた。今回、オープンラベル、無作為化第IIIb / IV相試験デザインで、進行非小細胞肺癌患者における4週間ごと投与法と2週間ごと投与法の効果・安全性を検証した。
方法:
今回対象となったのは、組織学的に確定診断され前治療歴のあるIIIB/IV期もしくは術後再発非小細胞肺癌、ECOG-PS 0-2、3mg/kgもしくは240mg/回、2週間ごと投与による12ヶ月未満のニボルマブ治療歴が既にあり・連続2回以上の効果判定で完全奏効 / 部分奏効 / 病勢安定が確認されている患者329人だった。1対1の比率で480mg/回4週間ごと投与法の群(Q4W群)と240mg/回2週間ごと投与法の群(Q2W群)に無作為に割付けた。主要評価項目は割付後6ヶ月無増悪生存割合、割付後12ヶ月無増悪生存割合とした。副次評価項目には安全性を含めた。臨床試験遂行中に非小細胞肺癌における標準治療が刷新されたため、プロトコール改定を行い、集積予定患者数を縮小した。
結果:
Q4W群に割り付けられた166人のうち164人が、Q2W群に割り付けられた163人のうち161人がプロトコール治療を受けた。経過観察期間の中央値はQ4W群で9.5ヶ月、Q2W群で10.2ヶ月だった。両群間で、患者背景に差異はなかった。無作為割付後無増悪生存割合は、6ヶ月時点、12ヶ月時点のどちらでも両群間で同等だった(表参照)。安全性プロファイルも両群間で同等で、治療関連有害事象発生割合はQ4W群で48%、Q2W群で61%、治療中止につながる治療関連有害事象発生割合はQ4W群で6%、Q2W群で9%だった。治療関連死は認めなかった。
結論:
ニボルマブによる病勢コントロールが得られている患者においては、ニボルマブ480mg/回、4週間ごと投与法は効果・安全性両面で240mg/回、2週間ごと投与法と同等であることが示された。非小細胞肺癌に対する二次治療の選択肢として、4週間ごと投与法はより利便性の高い治療法となりうる。

2019年03月20日
米国食品医薬品局、進展型肺小細胞癌に対する初回アテゾリズマブ併用療法を承認
ついに、進展型肺小細胞癌の初回治療に、ほぼ20年ぶりに新たな治療が加わることになった。
免疫チェックポイント阻害薬のbig waveが、ついに小細胞肺がんの実地臨床の領域にも押し寄せてきたのだ。
FDA Approves Atezolizumab for Extensive-Stage Small Cell Lung Cancer
By The ASCO Post
posted: 3/19/2019 1:34:47 PM
Last Updated: 3/19/2019 1:34:47 PM
2019年3月18日、米国食品医薬品局は進展型肺小細胞癌患者に対する初回治療として、カルボプラチン+エトポシド併用療法下でのアテゾリズマブの使用を承認した。
米国では、進展型肺小細胞癌患者で標準治療終了後のニボルマブ使用が承認されているが、今回は初回治療から免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになる。シスプラチンではなく、カルボプラチン+エトポシド併用療法下での承認なので、適用される患者の裾野は広くなりそうだ。外来での治療にもfitするだろう。
もととなったIMpower133試験の概要は、以下を参照。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e943506.html
免疫チェックポイント阻害薬のbig waveが、ついに小細胞肺がんの実地臨床の領域にも押し寄せてきたのだ。
FDA Approves Atezolizumab for Extensive-Stage Small Cell Lung Cancer
By The ASCO Post
posted: 3/19/2019 1:34:47 PM
Last Updated: 3/19/2019 1:34:47 PM
2019年3月18日、米国食品医薬品局は進展型肺小細胞癌患者に対する初回治療として、カルボプラチン+エトポシド併用療法下でのアテゾリズマブの使用を承認した。
米国では、進展型肺小細胞癌患者で標準治療終了後のニボルマブ使用が承認されているが、今回は初回治療から免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになる。シスプラチンではなく、カルボプラチン+エトポシド併用療法下での承認なので、適用される患者の裾野は広くなりそうだ。外来での治療にもfitするだろう。
もととなったIMpower133試験の概要は、以下を参照。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e943506.html
2019年03月19日
オシメルチニブの初回治療が効かなくなったらどうするのか
EGFR遺伝子変異陽性の進行肺腺がんに対して、オシメルチニブが初回治療で使えるようになってしばらく経過した。
そろそろ初回治療後の病勢進行を迎えた患者さんもちらほら見かけるようになった。


無増悪生存期間、全生存期間ともにゲフィチニブ/エルロチニブよりオシメルチニブの方が優れていそうなのはよく分かる。
一方で、病勢進行後の治療はとなると、こんな感じ。


ゲフィチニブ/エルロチニブの初回投与を受けた患者で、病勢進行ののちにT790M耐性変異が確認されてオシメルチニブの二次治療を受けられた患者は129人中55人(43%)、化学療法を受けた人は21%、他のEGFR阻害薬に切り替えた人は33%にも上った。
オシメルチニブの初回投与を受けた患者で、病勢進行ののちに化学療法を受けた人は56%、他のEGFR阻害薬に切り替えた人は35%にも上った。
EGFR阻害薬の初回治療後、有効性が定かでないにもかかわらず他のEGFR阻害薬に固執する人が、両群ともに全体の1/3にも上るということだ。
初回治療を分子標的薬で始めた場合、二次治療以降で化学療法を導入する難しさを示唆しているようで興味深い。
ペメトレキセドを軸としたプラチナ併用化学療法は、従来の化学療法に比べてずいぶん楽になった。
EGFR阻害薬使用後に病勢進行を迎えた患者さんには、勇気をもって、前を向いて、化学療法にも取り組んでほしいと願っている。
オシメルチニブ耐性化機序はC797S変異やMET増幅といった頻度の比較的高いものから少ないものまで非常に多岐にわたるようで、新規の治療開発は端緒についている(MET増幅による病勢進行後のオシメルチニブ+Savolitinib併用療法など)ものの、実地臨床で使えるようになるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e805441.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/d2016-07.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e852243.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e862939.html
Landscape of Acquired Resistance to Osimertinib in EGFR -Mutant NSCLC and Clinical Validation of Combined EGFR and RET Inhibition with Osimertinib and BLU-667 for Acquired RET Fusion
Piotrowska et al. Cancer Discov 1529-1539, 2018
そうした治療の開発を手をこまねいて待つよりは、いま手元にある武器を最大限に活用すべきだ。
そろそろ初回治療後の病勢進行を迎えた患者さんもちらほら見かけるようになった。


無増悪生存期間、全生存期間ともにゲフィチニブ/エルロチニブよりオシメルチニブの方が優れていそうなのはよく分かる。
一方で、病勢進行後の治療はとなると、こんな感じ。


ゲフィチニブ/エルロチニブの初回投与を受けた患者で、病勢進行ののちにT790M耐性変異が確認されてオシメルチニブの二次治療を受けられた患者は129人中55人(43%)、化学療法を受けた人は21%、他のEGFR阻害薬に切り替えた人は33%にも上った。
オシメルチニブの初回投与を受けた患者で、病勢進行ののちに化学療法を受けた人は56%、他のEGFR阻害薬に切り替えた人は35%にも上った。
EGFR阻害薬の初回治療後、有効性が定かでないにもかかわらず他のEGFR阻害薬に固執する人が、両群ともに全体の1/3にも上るということだ。
初回治療を分子標的薬で始めた場合、二次治療以降で化学療法を導入する難しさを示唆しているようで興味深い。
ペメトレキセドを軸としたプラチナ併用化学療法は、従来の化学療法に比べてずいぶん楽になった。
EGFR阻害薬使用後に病勢進行を迎えた患者さんには、勇気をもって、前を向いて、化学療法にも取り組んでほしいと願っている。
オシメルチニブ耐性化機序はC797S変異やMET増幅といった頻度の比較的高いものから少ないものまで非常に多岐にわたるようで、新規の治療開発は端緒についている(MET増幅による病勢進行後のオシメルチニブ+Savolitinib併用療法など)ものの、実地臨床で使えるようになるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e805441.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/d2016-07.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e852243.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e862939.html
Landscape of Acquired Resistance to Osimertinib in EGFR -Mutant NSCLC and Clinical Validation of Combined EGFR and RET Inhibition with Osimertinib and BLU-667 for Acquired RET Fusion
Piotrowska et al. Cancer Discov 1529-1539, 2018
そうした治療の開発を手をこまねいて待つよりは、いま手元にある武器を最大限に活用すべきだ。
2019年03月19日
最近のEGFR遺伝子変異検出状況
淡々と肺がん患者データベースを更新し続けていたが、更新するばっかりでなんの発信作業もしていなかった。
ふと思い立って調べてみたことを書き残す。
ここ5年間、呼吸器内科で診断作業に関わった新規肺がん患者数を調べてみた。
2014年度:95人
2015年度:71人
2016年度:65人
2017年度:79人
2018年度:89人(まだ増える可能性あり)
・・・ここ最近、データベースの更新作業がきついのがよく分かった。
例年より新規の患者数が多いのだ。
年々治療が改善されて、患者の寿命が延びている上に、新規患者数が増えているのだから、そりゃ作業もきつくなる。
当然診療もきつくなるわけで、診療に当たる医師が増えなければ一人当たりの業務も増える。
診療の質が落ちないように、個々人ではなく病院として、医療界として何をすべきなのか、考えなければならない。
EGFR遺伝子変異検出状況について、2018年4月1日以降のデータを紐解いてみた。

今日までの間に、新規に診断された肺がん患者は89人。
そのうち非小細胞肺がん患者は76人。
腺がんの患者は51人だった。
最近では、ドライバー遺伝子変異は腺がんの患者でしか調べていない。
腺がんの患者のうち、EGFR遺伝子変異について検査されたのは34人(67%)、検査されなかったのは17人(33%)。
検査されなかった17人の内訳は、手術された人で13人、手術適応とならなかった進行期の人で1人、肺がんと診断するための検査だけを受けてその後受診していない人が3人だった。
検査された34人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だった人が18人(53%)、結構高率に見つかっている。
手術されて、EGFR遺伝子変異検査も受けた12人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だったのは8人(67%)。
手術適応とならなかった進行期で、EGFR遺伝子変異検査を受けた21人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だったのは9人(43%)。
意外だなと思ったのは、いわゆるminor mutationの患者の多さで、EGFR遺伝子変異陽性だった患者18人のうち、3人(17%)にも上っていた。
また、EGFR遺伝子変異検査陰性で、ALK融合遺伝子陽性だった患者が1人だけいた(腺がん全体の2%)。
手術をした患者で、摘出した病巣を用いて直ちにEGFR遺伝子変異の検索をするかどうかは、意見の分かれるところだろう。
EGFR遺伝子変異が分かっていたら、万が一再発したときの治療指針が速やかに立てられる。
一方で、終生再発しなかったとしたら、単なる医療費(EGFR遺伝子変異の検査費)の無駄遣いに終わってしまう。
手術適応のない患者ではほぼもれなくEGFR遺伝子変異が調べられていたのに安心した。
一方、手術適応のない患者の中で、たった一人だけEGFR遺伝子変異検査を受けていなかった人は、初回治療からいきなりペンブロリズマブが使用されていた。
データベースで確認する限りではTPSの状況は分からなかったが、まずはドライバー遺伝子変異から検索して治療指針を組み立てるべきだろう。
もしこの患者がEGFR遺伝子変異陽性だったときに、ペンブロリズマブが先行投与されていたら、病勢進行後にEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を使うと間質性肺炎のリスクが高くなるからだ。
ふと思い立って調べてみたことを書き残す。
ここ5年間、呼吸器内科で診断作業に関わった新規肺がん患者数を調べてみた。
2014年度:95人
2015年度:71人
2016年度:65人
2017年度:79人
2018年度:89人(まだ増える可能性あり)
・・・ここ最近、データベースの更新作業がきついのがよく分かった。
例年より新規の患者数が多いのだ。
年々治療が改善されて、患者の寿命が延びている上に、新規患者数が増えているのだから、そりゃ作業もきつくなる。
当然診療もきつくなるわけで、診療に当たる医師が増えなければ一人当たりの業務も増える。
診療の質が落ちないように、個々人ではなく病院として、医療界として何をすべきなのか、考えなければならない。
EGFR遺伝子変異検出状況について、2018年4月1日以降のデータを紐解いてみた。

今日までの間に、新規に診断された肺がん患者は89人。
そのうち非小細胞肺がん患者は76人。
腺がんの患者は51人だった。
最近では、ドライバー遺伝子変異は腺がんの患者でしか調べていない。
腺がんの患者のうち、EGFR遺伝子変異について検査されたのは34人(67%)、検査されなかったのは17人(33%)。
検査されなかった17人の内訳は、手術された人で13人、手術適応とならなかった進行期の人で1人、肺がんと診断するための検査だけを受けてその後受診していない人が3人だった。
検査された34人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だった人が18人(53%)、結構高率に見つかっている。
手術されて、EGFR遺伝子変異検査も受けた12人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だったのは8人(67%)。
手術適応とならなかった進行期で、EGFR遺伝子変異検査を受けた21人のうち、EGFR遺伝子変異陽性だったのは9人(43%)。
意外だなと思ったのは、いわゆるminor mutationの患者の多さで、EGFR遺伝子変異陽性だった患者18人のうち、3人(17%)にも上っていた。
また、EGFR遺伝子変異検査陰性で、ALK融合遺伝子陽性だった患者が1人だけいた(腺がん全体の2%)。
手術をした患者で、摘出した病巣を用いて直ちにEGFR遺伝子変異の検索をするかどうかは、意見の分かれるところだろう。
EGFR遺伝子変異が分かっていたら、万が一再発したときの治療指針が速やかに立てられる。
一方で、終生再発しなかったとしたら、単なる医療費(EGFR遺伝子変異の検査費)の無駄遣いに終わってしまう。
手術適応のない患者ではほぼもれなくEGFR遺伝子変異が調べられていたのに安心した。
一方、手術適応のない患者の中で、たった一人だけEGFR遺伝子変異検査を受けていなかった人は、初回治療からいきなりペンブロリズマブが使用されていた。
データベースで確認する限りではTPSの状況は分からなかったが、まずはドライバー遺伝子変異から検索して治療指針を組み立てるべきだろう。
もしこの患者がEGFR遺伝子変異陽性だったときに、ペンブロリズマブが先行投与されていたら、病勢進行後にEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を使うと間質性肺炎のリスクが高くなるからだ。
2019年03月05日
小細胞肺癌に形質転換したEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌の予後
実地臨床では滅多にお目にかからないけれど、しばしば相談を受けるのは、EGFR肺がんの治療中に小細胞がんに変わってしまったという患者さん。
困ったことに、相談を受けた方々はみなさんタバコを吸わない人ばかり。
小細胞がんはタバコを吸う人の病気であって、自業自得でしょ、という論理は通用しない。
実際、今回の論文で対象となった患者さんのうち73%は非喫煙者であり、初回診断から小細胞癌だった方に至っては全例が非喫煙者である。
裏を返せば、非喫煙者に発生した小細胞癌は、何らかの個別のドライバー遺伝子変異に依存しているという仮説も成り立つのではないか。
非喫煙者の小細胞癌を見つけたら、網羅的遺伝子解析を加えたら何らかのドライバー遺伝子変異が見つかって、治療につながるのではないだろうか。
今回の論文では、小細胞癌形質転換後にパクリタキセルやナブパクリタキセルが有用であるとか、免疫チェックポイント阻害薬が全く効かないとか、実臨床で役に立ちそうなtipsが散見される。
また、形質転換後もEGFR-TKIを使用された患者が半数に上るというのも、患者・医療者の心情をうかがわせる。
稀な病態で臨床試験を組みにくい患者群だけに、こうしたレトロスペクティブな論文でもしっかりと輝きを放っている。
治療が複雑化し、治療経過を含めた患者背景の多様性が今後増していく一方であることを考えると、今後はこうしたレトロスペクティブな報告の重要性が増すかもしれない。
EGFR-Mutant Adenocarcinomas That Transform to Small-Cell Lung Cancer and Other Neuroendocrine Carcinomas: Clinical Outcomes.
Marcoux N, et al. J Clin Oncol. 2019 Feb 1;37(4):278-285
背景:
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者のうち、おおむね3-10%は、治療経過中に小細胞肺癌に形質転換すると言われている。しかし、こうした患者の臨床経過については、あまりよく知られていない。
方法:
EGFR遺伝子変異陽性の小細胞肺癌、あるいは高悪性度神経内分泌癌の患者を8施設から集積し、その臨床的特徴を調べた。
結果:
67人の患者が抽出された。38人は女性、29人は男性だった。Exon 19欠失変異が46人(69%)、Exon 21 L858R点突然変異が17人(25%)、その他が2人(6%)だった。初回診断時点で、58人は非小細胞肺癌、9人は小細胞癌もしくは混合型小細胞肺癌と診断されていた。小細胞肺癌もしくは混合型小細胞肺癌と診断されたこれら9人を除き、残り58人は全て、小細胞肺癌への形質転換を来す前に、1種類もしくは多種類のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療を受けていた。初回診断から、小細胞肺癌形質転換を来すまでの期間中央値は17.8ヶ月(95%信頼区間は14.3ヶ月-26.2ヶ月)だった。形質転換を来してからは、プラチナ製剤+エトポシド併用療法もしくはタキサン単剤療法を行うと高い奏効割合を示したが、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた17人では全く効果が見られなかった。初回診断からの生存期間中央値は31.5ヶ月(95%信頼区間は24.8-41.3ヶ月)、一方で小細胞肺癌形質転換を来してからの生存期間中央値は10.9ヶ月(95%信頼区間は8.0-13.7ヶ月)だった。59人の患者では、小細胞肺癌と最初に診断された時点で、組織を用いた遺伝子変異解析が行われた。これらすべての患者において、当初からあったEGFR遺伝子変異は引き続き認められ、T790M変異が確認されていた19人のうち15人では、小細胞肺癌形質転換が確認された時点ではT790M変異が消失していた。その他、TP53やRb1、PIK3CAの変異も認められた。小細胞肺癌に対する治療後、数人の患者では非小細胞肺癌クローンの再活性化も認められた。小細胞肺癌形質転換後は、中枢神経系への転移が高頻度に認められた。
以下、本文より気になったところを箇条書き
・今回の報告では、小細胞肺癌、高悪性度神経内分泌癌を一括して小細胞肺癌と表記する
・2006年から2018年までに、遺伝子変異陽性小細胞肺癌と診断された67人を抽出した
・女性38人、男性29人
・年齢中央値は56歳
・白人が49%、アジア人が42%だった
・非喫煙者は73%だった
・初回診断時に非小細胞肺癌と診断されたのは58人(87%)で、うち57人(83%)は腺癌だった
・9人(13%)は初回診断時から小細胞肺癌、もしくは混合型小細胞肺癌と診断されていた
・67人すべてが初回診断時にEGFR遺伝子変異を有しており、Exon 19欠失変異が46人(69%)、Exon 21 L858R点突然変異が17人(25%)だった
・初回診断時点で非小細胞肺癌と診断された58人は、全例が小細胞癌形質転換までに薬物療法を受けており、治療レジメンの中央値は2レジメン(1-6)で、そのうち少なくとも1レジメンはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKIと略)を使用していた
・初回治療でオシメルチニブを使用した患者は1人のみだった
・17人(29%)の患者は治療開始後にT790M耐性変異を獲得していた
・23人(40%)の患者は形質転換までに2レジメン以上のEGFR-TKIを使用していた
・EGFR-TKI使用開始から形質転換までの期間中央値は15.8ヶ月(1.3-53.4)だった
・初回診断から形質転換までの期間中央値は17.8ヶ月(14.3-26.2)だった
・ほとんどの患者(53/58=93%)は形質転換時点でEGFR-TKIを使用中だった
・形質転換が確認された時点において(小細胞癌と初回診断された患者はその時点において)、65人(97%)は古典的な小細胞癌と診断され、残り2人は大細胞神経内分泌癌と診断された
・形質転換後に遺伝子変異検索が行われた患者の全てにおいて、初回診断時に確認されたEGFR遺伝子変異がそのまま保持されていた
・形質転換時点でT790M変異を伴っていた患者は5人いて、そのうち1人は初回診断時から、3人はEGFR-TKI開始から形質転換までに、1人は形質転換後にT790Mが確認された
・T790M変異を認めた小細胞癌患者5人のうち、非小細胞肺癌・小細胞肺癌の混合型の組織像をとっていたものが2人含まれていた
・もともとT790M変異が確認されていた19人のうち、15人では形質転換時にT790M変異が消失しており、その中には初回診断時からT790M変異を伴っていた患者1人も含まれていた
・ごく一部の患者では、初回診断時に次世代シーケンサーを用いてがん抑制遺伝子TP53やRb1の検索がなされ、TP53は100%(7人中7人)、Rb1は50%(8人中4人)で検出された
・形質転換時点でがん抑制遺伝子を検討したところ、TP53変異を79%(38/48)、Rb1変異を58%(18/31)、PIK3CA変異を27%(14/52)に認めた
・形質転換が確認されたのち、多くの患者が化学療法を受け、その治療レジメン中央値は2レジメン(0-6)だった
・プラチナ製剤+エトポシド併用療法が最も頻用され、53人が治療を受けており、そのうち10人は形質転換前に既にプラチナ併用化学療法を受けていた
・データ入手可能だった患者46人について解析したところ、プラチナ製剤+エトポシド併用療法の奏功割合は54%だった
・腺癌に対するプラチナ併用化学療法治療歴のある患者10人に限って言えば奏効割合は80%(8/10)だった
・プラチナ製剤+エトポシド併用化学療法後の無増悪生存期間中央値は3.4ヶ月(2.4-5.4)だった
・免疫チェックポイント阻害薬を使用した17人の患者では、奏効は全く見られず、臨床的有用性も皆無だった
・PD-1阻害薬、PD-L1阻害薬いずれかの単剤療法を受けた患者が9人、イピリムマブ+ニボルマブ併用療法を受けた患者が8人いた
・最も長い期間免疫チェックポイント阻害薬の治療を続けた患者ですら、その期間はたった9週間に過ぎなかった
・タキサン系の化学療法を受けた患者は21人おり、形質転換後タキサン投与までの治療レジメン中央値は2レジメンだった
・タキサン単剤療法を受けた患者は、21人中14人だった
・データ入手可能だった20人について解析したところ、タキサンを含むレジメンの奏功割合は50%で、著効例も含まれていた
・タキサン系治療開始後の無増悪生存期間中央値は2.7ヶ月(1.3-3.4)だった
・パクリタキセル使用患者7人での奏効割合71%(5/7)、ナブパクリタキセル使用患者7人での奏効割合71%(5/7)の一方で、ドセタキセルを使用した6人の中には奏効した患者はいなかった
・形質転換時点で、病勢進行を示していた病巣から採取した組織標本内に腺癌組織が含まれていた患者が少なくとも4人いた
・形質転換後は中枢神経系転移を高率に認めた
・中枢神経系の経過を追跡できた59人の患者のうち、38人(64%)は経過中に中枢神経病変による病勢進行を認めた
・形質転換後の経過観察期間中央値は8.1ヶ月(0-26.9)で、その間に45人(67%)の患者が死亡した
・初回診断からの生存期間中央値は31.5ヶ月(24.8-41.3)だった
・形質転換確認からの生存期間中央値は10.9ヶ月(8.0-13.7)だった


困ったことに、相談を受けた方々はみなさんタバコを吸わない人ばかり。
小細胞がんはタバコを吸う人の病気であって、自業自得でしょ、という論理は通用しない。
実際、今回の論文で対象となった患者さんのうち73%は非喫煙者であり、初回診断から小細胞癌だった方に至っては全例が非喫煙者である。
裏を返せば、非喫煙者に発生した小細胞癌は、何らかの個別のドライバー遺伝子変異に依存しているという仮説も成り立つのではないか。
非喫煙者の小細胞癌を見つけたら、網羅的遺伝子解析を加えたら何らかのドライバー遺伝子変異が見つかって、治療につながるのではないだろうか。
今回の論文では、小細胞癌形質転換後にパクリタキセルやナブパクリタキセルが有用であるとか、免疫チェックポイント阻害薬が全く効かないとか、実臨床で役に立ちそうなtipsが散見される。
また、形質転換後もEGFR-TKIを使用された患者が半数に上るというのも、患者・医療者の心情をうかがわせる。
稀な病態で臨床試験を組みにくい患者群だけに、こうしたレトロスペクティブな論文でもしっかりと輝きを放っている。
治療が複雑化し、治療経過を含めた患者背景の多様性が今後増していく一方であることを考えると、今後はこうしたレトロスペクティブな報告の重要性が増すかもしれない。
EGFR-Mutant Adenocarcinomas That Transform to Small-Cell Lung Cancer and Other Neuroendocrine Carcinomas: Clinical Outcomes.
Marcoux N, et al. J Clin Oncol. 2019 Feb 1;37(4):278-285
背景:
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者のうち、おおむね3-10%は、治療経過中に小細胞肺癌に形質転換すると言われている。しかし、こうした患者の臨床経過については、あまりよく知られていない。
方法:
EGFR遺伝子変異陽性の小細胞肺癌、あるいは高悪性度神経内分泌癌の患者を8施設から集積し、その臨床的特徴を調べた。
結果:
67人の患者が抽出された。38人は女性、29人は男性だった。Exon 19欠失変異が46人(69%)、Exon 21 L858R点突然変異が17人(25%)、その他が2人(6%)だった。初回診断時点で、58人は非小細胞肺癌、9人は小細胞癌もしくは混合型小細胞肺癌と診断されていた。小細胞肺癌もしくは混合型小細胞肺癌と診断されたこれら9人を除き、残り58人は全て、小細胞肺癌への形質転換を来す前に、1種類もしくは多種類のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の治療を受けていた。初回診断から、小細胞肺癌形質転換を来すまでの期間中央値は17.8ヶ月(95%信頼区間は14.3ヶ月-26.2ヶ月)だった。形質転換を来してからは、プラチナ製剤+エトポシド併用療法もしくはタキサン単剤療法を行うと高い奏効割合を示したが、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた17人では全く効果が見られなかった。初回診断からの生存期間中央値は31.5ヶ月(95%信頼区間は24.8-41.3ヶ月)、一方で小細胞肺癌形質転換を来してからの生存期間中央値は10.9ヶ月(95%信頼区間は8.0-13.7ヶ月)だった。59人の患者では、小細胞肺癌と最初に診断された時点で、組織を用いた遺伝子変異解析が行われた。これらすべての患者において、当初からあったEGFR遺伝子変異は引き続き認められ、T790M変異が確認されていた19人のうち15人では、小細胞肺癌形質転換が確認された時点ではT790M変異が消失していた。その他、TP53やRb1、PIK3CAの変異も認められた。小細胞肺癌に対する治療後、数人の患者では非小細胞肺癌クローンの再活性化も認められた。小細胞肺癌形質転換後は、中枢神経系への転移が高頻度に認められた。
以下、本文より気になったところを箇条書き
・今回の報告では、小細胞肺癌、高悪性度神経内分泌癌を一括して小細胞肺癌と表記する
・2006年から2018年までに、遺伝子変異陽性小細胞肺癌と診断された67人を抽出した
・女性38人、男性29人
・年齢中央値は56歳
・白人が49%、アジア人が42%だった
・非喫煙者は73%だった
・初回診断時に非小細胞肺癌と診断されたのは58人(87%)で、うち57人(83%)は腺癌だった
・9人(13%)は初回診断時から小細胞肺癌、もしくは混合型小細胞肺癌と診断されていた
・67人すべてが初回診断時にEGFR遺伝子変異を有しており、Exon 19欠失変異が46人(69%)、Exon 21 L858R点突然変異が17人(25%)だった
・初回診断時点で非小細胞肺癌と診断された58人は、全例が小細胞癌形質転換までに薬物療法を受けており、治療レジメンの中央値は2レジメン(1-6)で、そのうち少なくとも1レジメンはEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKIと略)を使用していた
・初回治療でオシメルチニブを使用した患者は1人のみだった
・17人(29%)の患者は治療開始後にT790M耐性変異を獲得していた
・23人(40%)の患者は形質転換までに2レジメン以上のEGFR-TKIを使用していた
・EGFR-TKI使用開始から形質転換までの期間中央値は15.8ヶ月(1.3-53.4)だった
・初回診断から形質転換までの期間中央値は17.8ヶ月(14.3-26.2)だった
・ほとんどの患者(53/58=93%)は形質転換時点でEGFR-TKIを使用中だった
・形質転換が確認された時点において(小細胞癌と初回診断された患者はその時点において)、65人(97%)は古典的な小細胞癌と診断され、残り2人は大細胞神経内分泌癌と診断された
・形質転換後に遺伝子変異検索が行われた患者の全てにおいて、初回診断時に確認されたEGFR遺伝子変異がそのまま保持されていた
・形質転換時点でT790M変異を伴っていた患者は5人いて、そのうち1人は初回診断時から、3人はEGFR-TKI開始から形質転換までに、1人は形質転換後にT790Mが確認された
・T790M変異を認めた小細胞癌患者5人のうち、非小細胞肺癌・小細胞肺癌の混合型の組織像をとっていたものが2人含まれていた
・もともとT790M変異が確認されていた19人のうち、15人では形質転換時にT790M変異が消失しており、その中には初回診断時からT790M変異を伴っていた患者1人も含まれていた
・ごく一部の患者では、初回診断時に次世代シーケンサーを用いてがん抑制遺伝子TP53やRb1の検索がなされ、TP53は100%(7人中7人)、Rb1は50%(8人中4人)で検出された
・形質転換時点でがん抑制遺伝子を検討したところ、TP53変異を79%(38/48)、Rb1変異を58%(18/31)、PIK3CA変異を27%(14/52)に認めた
・形質転換が確認されたのち、多くの患者が化学療法を受け、その治療レジメン中央値は2レジメン(0-6)だった
・プラチナ製剤+エトポシド併用療法が最も頻用され、53人が治療を受けており、そのうち10人は形質転換前に既にプラチナ併用化学療法を受けていた
・データ入手可能だった患者46人について解析したところ、プラチナ製剤+エトポシド併用療法の奏功割合は54%だった
・腺癌に対するプラチナ併用化学療法治療歴のある患者10人に限って言えば奏効割合は80%(8/10)だった
・プラチナ製剤+エトポシド併用化学療法後の無増悪生存期間中央値は3.4ヶ月(2.4-5.4)だった
・免疫チェックポイント阻害薬を使用した17人の患者では、奏効は全く見られず、臨床的有用性も皆無だった
・PD-1阻害薬、PD-L1阻害薬いずれかの単剤療法を受けた患者が9人、イピリムマブ+ニボルマブ併用療法を受けた患者が8人いた
・最も長い期間免疫チェックポイント阻害薬の治療を続けた患者ですら、その期間はたった9週間に過ぎなかった
・タキサン系の化学療法を受けた患者は21人おり、形質転換後タキサン投与までの治療レジメン中央値は2レジメンだった
・タキサン単剤療法を受けた患者は、21人中14人だった
・データ入手可能だった20人について解析したところ、タキサンを含むレジメンの奏功割合は50%で、著効例も含まれていた
・タキサン系治療開始後の無増悪生存期間中央値は2.7ヶ月(1.3-3.4)だった
・パクリタキセル使用患者7人での奏効割合71%(5/7)、ナブパクリタキセル使用患者7人での奏効割合71%(5/7)の一方で、ドセタキセルを使用した6人の中には奏効した患者はいなかった
・形質転換時点で、病勢進行を示していた病巣から採取した組織標本内に腺癌組織が含まれていた患者が少なくとも4人いた
・形質転換後は中枢神経系転移を高率に認めた
・中枢神経系の経過を追跡できた59人の患者のうち、38人(64%)は経過中に中枢神経病変による病勢進行を認めた
・形質転換後の経過観察期間中央値は8.1ヶ月(0-26.9)で、その間に45人(67%)の患者が死亡した
・初回診断からの生存期間中央値は31.5ヶ月(24.8-41.3)だった
・形質転換確認からの生存期間中央値は10.9ヶ月(8.0-13.7)だった

