2021年09月01日

進行非小細胞肺癌二次もしくは三次治療のアムルビシン単剤療法

 このテーマは2015年に一度取り上げた。

・進行非小細胞肺癌二次もしくは三次治療のアムルビシン単剤療法
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e805383.html

 当時はまだ論文化されていなかった。
 最近この内容について問い合わせを受け、再度調べてみたら2017年に論文化されていたので読んでみた。
 いまさら進行非小細胞肺がんに対してアムルビシンやらドセタキセルやらですか、と言われればそれまでだが、治療選択肢は多いに越したことはない。
 二次治療、あるいは三次治療であるにもかかわらず、生存期間中央値が14ヶ月前後というのは、無視できない数字ではないだろうか。


A randomized, open-label, phase III trial comparing amrubicin versus docetaxel in patients with previously treated non-small-cell lung cancer

Yoshioka et al., Ann Oncol. 2017 Feb 1;28(2):285-291.
doi: 10.1093/annonc/mdw621.

背景:
 アムルビシンは非小細胞肺がん、小細胞肺がん、どちらにも使用できるように認可されている。しかしながら、非小細胞肺がんに対する標準治療として、アムルビシンとドセタキセルの治療効果を直接比較した報告は過去にない。

方法:
 過去に1レジメン、あるいは2レジメンの化学療法治療歴(少なくとも1レジメンはプラチナ併用化学療法を含む)のある日本人非小細胞肺がん患者を対象に、ランダム化第III相比較試験を企画した。対象患者はA群(アムルビシン 35mg/㎡を1日目から3日目に点滴、3週ごとに繰り返し)とD群(ドセタキセル 60mg/㎡を1日目に点滴、3週ごとに繰り返し)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間、奏効割合、安全性とした。

結果:
 2010年10月から2012年6月にかけて、32施設から202人の患者が登録された。各群に101人が割り付けられ、A群の66人、D群の54人がプロトコール治療を完遂した(=本試験においては、「病勢進行が確認されるまで継続できた」という意味)。治療コース数の中央値は、A群で3コース(1-36)、D群で3コース(1-14)だった。A群のうち15人、D群のうち9人は10コース以上のプロトコール治療を受けた。無増悪生存期間中央値(A群3.6ヶ月(95%信頼区間2.1-3.8)、D群3.0ヶ月(95%信頼区間2.2-4.7)、ハザード比0.90(95%信頼区間0.65-1.25)、p=0.54)、全生存期間中央値(A群14.6ヶ月(95%信頼区間12.3-16.9)、D群13.5ヶ月(95%信頼区間9.1-18.2)、ハザード比0.97(95%信頼区間0.69-1.36)、p=0.86)は両治療群間で同等だった。奏効割合はA群で14.4%(14/97)、D群で19.6%(19/97)で、p=0.45と有意差を認めなかった。病勢コントロール割合は両群ともに55.7%だった。有害事象は全ての患者で発生し、Grade3以上の好中球減少はA群で82.7%、D群で78.8%に、Grade3以上の白血球減少はA群で63.3%、D群で70.7%に、Grade3以上の発熱性好中球減少はA群の13.3%、D群の18.2%に発生した。その他、両群間で差が見られた有害事象としては、赤血球減少(A群57.1%、D群32.3%)、血小板減少(A群56.1%、D群19.2%)、末梢浮腫(A群1.0%、D群17.2%)、爪異常(A群0%、D群10.1%)が挙がった。薬剤性肺障害はA群では認められず、D群では4.0%で認められた。A群では8件の心毒性が確認され、うち3件(動悸2人、期外収縮1人)はアムルビシンとの因果関係があるとされたが、アムルビシン投与を中断することなく軽快した。A群の半数以上は、アムルビシンによるプロトコール治療を終えた後にドセタキセルの投与を受けていた。

結論:
 既治療進行非小細胞肺がん患者において、アムルビシンはドセタキセルと比較して、主要評価項目である無増悪生存期間を延長できなかった。



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