2012年02月15日
バレンタインデーに患者さんからチョコを頂いたら
昨日はバレンタインデーで、私の誕生日でもありました。
患者さんから飲食物を頂いたらその場で食べなくてはならない、を実践しようと張り切って外来診療しました。
おかげさまで、86歳の方と72歳の方からチョコレートを頂きました。
大喜びで「是非一緒に食べましょう!」と封を開けたら、出てきたのはウイスキーボンボン・・・。
さすがに診療中にアルコールはご法度か・・・ということで、断念しました。
お医者さんにバレンタインデーのチョコをあげるときは、ウイスキーボンボンは避けましょう。
患者さんから飲食物を頂いたらその場で食べなくてはならない、を実践しようと張り切って外来診療しました。
おかげさまで、86歳の方と72歳の方からチョコレートを頂きました。
大喜びで「是非一緒に食べましょう!」と封を開けたら、出てきたのはウイスキーボンボン・・・。
さすがに診療中にアルコールはご法度か・・・ということで、断念しました。
お医者さんにバレンタインデーのチョコをあげるときは、ウイスキーボンボンは避けましょう。
2012年02月03日
患者から飲食物を勧められたら、その場で頂かなければならない。
以前、里見清一先生著「偽善の医療」に関して触れました。
「消えてなくなれセカンドオピニオン」など強い論調の内容が多く、賛成できるか否かはともかく、クリアカットな一冊です。
その中に「患者から飲食物を勧められたら、その場で頂かなければならない。」という内容の章がありました。
里見先生ご自身にとって、ある終末期の肺癌患者さんに勧められた飲食物を頂かなかったことが未だに痛恨の極みであると書かれており、それ以後は勧められたら必ずその場で、患者さんの見ている前で頂くようにされているそうです。
これは意外と難しい。
私にも経験はありますが、勧められたものの中には
「ノニジュース」
「がんに効くといわれている健康食品」
「純度が極めて高いウコンエキス」
「そう簡単には手に入らない朝鮮人参入り健康ドリンク」
なども含まれており、その場で頂くのにかなりの勇気が必要なものも含まれています。
ですが、今日は実践してみました。
強い癌性疼痛に悩まされているパンコースト腫瘍の患者さんで、医療用麻薬の調整で疼痛コントロールを図っていますが、副作用の嘔気によりほとんど食事に手をつけられません。
そんな患者さんが、「こんなのを息子が持ってきたんだけど、飲んでもよかろうか」と差し出されたのが、ゼリー状の栄養飲料です。
ウィ〇ー・イン・〇リーみたいなもんです。
「あなたが食べられそうなものなら、特に制限はしませんよ。となりにあるプリンもおいしそうですね」
とお話ししたら
「じゃあ、先生どうぞ」
と勧めてくださいました。
私も考えましたが、
「それじゃあ、私が息子さん持参のゼリーを試してみますから、あなたもプリンをお相伴してくださいませんか」
とお答えしたところ了承。
昼まではプリンを食べる気もしなかったそうですが、ご一緒したところ、私がゼリー状飲料を飲み干すより先にプリンをぺろりと平らげてしまわれました。
「先生が一緒に食べてくれたから、安心したわ」
とのことでした。
私が第三者だったら、患者さんのベッドサイドで患者さんから勧められたものを食べる医者はどうだろう、と疑問に思います。
でも、患者と医者の関係は、第三者の目に気を遣いながら築くものではありません。
「患者から飲食物を勧められたら、その場で頂かなければならない」
これはありだ!と実感しました。
里見先生によると「その場で」「患者が見ている前で」というのが特にポイントなのだそうです。
今後は、できる限りそのようにしていきます。
嫌いなもの以外はできる限り。
「消えてなくなれセカンドオピニオン」など強い論調の内容が多く、賛成できるか否かはともかく、クリアカットな一冊です。
その中に「患者から飲食物を勧められたら、その場で頂かなければならない。」という内容の章がありました。
里見先生ご自身にとって、ある終末期の肺癌患者さんに勧められた飲食物を頂かなかったことが未だに痛恨の極みであると書かれており、それ以後は勧められたら必ずその場で、患者さんの見ている前で頂くようにされているそうです。
これは意外と難しい。
私にも経験はありますが、勧められたものの中には
「ノニジュース」
「がんに効くといわれている健康食品」
「純度が極めて高いウコンエキス」
「そう簡単には手に入らない朝鮮人参入り健康ドリンク」
なども含まれており、その場で頂くのにかなりの勇気が必要なものも含まれています。
ですが、今日は実践してみました。
強い癌性疼痛に悩まされているパンコースト腫瘍の患者さんで、医療用麻薬の調整で疼痛コントロールを図っていますが、副作用の嘔気によりほとんど食事に手をつけられません。
そんな患者さんが、「こんなのを息子が持ってきたんだけど、飲んでもよかろうか」と差し出されたのが、ゼリー状の栄養飲料です。
ウィ〇ー・イン・〇リーみたいなもんです。
「あなたが食べられそうなものなら、特に制限はしませんよ。となりにあるプリンもおいしそうですね」
とお話ししたら
「じゃあ、先生どうぞ」
と勧めてくださいました。
私も考えましたが、
「それじゃあ、私が息子さん持参のゼリーを試してみますから、あなたもプリンをお相伴してくださいませんか」
とお答えしたところ了承。
昼まではプリンを食べる気もしなかったそうですが、ご一緒したところ、私がゼリー状飲料を飲み干すより先にプリンをぺろりと平らげてしまわれました。
「先生が一緒に食べてくれたから、安心したわ」
とのことでした。
私が第三者だったら、患者さんのベッドサイドで患者さんから勧められたものを食べる医者はどうだろう、と疑問に思います。
でも、患者と医者の関係は、第三者の目に気を遣いながら築くものではありません。
「患者から飲食物を勧められたら、その場で頂かなければならない」
これはありだ!と実感しました。
里見先生によると「その場で」「患者が見ている前で」というのが特にポイントなのだそうです。
今後は、できる限りそのようにしていきます。
嫌いなもの以外はできる限り。
2012年02月01日
サリドマイドと肺癌治療
サリドマイドといえば、催奇形性を有する制吐薬、睡眠薬として知られています。
胎児の四肢発育初期において、血管の成長を抑制する結果、短肢症を引き起こすと考えられています。
換言すれば、サリドマイドは血管新生を抑制する働きを持つということになり、基礎実験でも証明されています。
腫瘍医学の領域では、近年サリドマイドが多発性骨髄腫の標準治療薬として認知され、一般臨床で使用されています。
一方、肺癌診療の領域でもサリドマイドの有用性が検討されています。
今回紹介する論文は、放射線化学療法にサリドマイドを併用することで治療成績の向上を目指すものでしたが、残念ながら失敗に終わり、有害事象が増えるだけの結果となっています。
J Clin Oncol 30.Published Ahead of Print on January 23, 2012
Randomized Phase III Study of Thoracic Radiation in Combination With Paclitaxel and Carboplatin With or Without Thalidomide in Patients With Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer: The ECOG 3598 Study
【目的】本研究の主目的は、切除不能のIII期非小細胞肺癌に対し、放射線化学療法にサリドマイドを併用するか否かで生命予後に差が出るかを検証することである。
【対象と方法】治療法をPC群(標準治療群):カルボプラチン6AUC+パクリタキセル225mg/m2,day1を2コース行い、その後カルボプラチン2AUC+パクリタキセル45mg/m2の毎週投与と計60Gyの放射線照射、あるいはTPC群(試験治療群):PC群に加え、サリドマイドを200mg/日から内服開始し、最大1000mg/日まで増量可能、のいずれかとし、参加者は(1)、(2)のいずれかに無作為に割り付けられた。
【結果】全体で546人の患者が適格で、275人がPC群に、271人がTPC群に割り付けられた。生存期間中央値、無増悪生存期間中央値、奏効割合はPC群でそれぞれ15.3ヶ月、7.4ヶ月、35%だった。一方TPC群ではそれぞれ16ヶ月、7.8ヶ月、38.2%と、PC群との比較で有意な差はなかった。一方、Grade 3の毒性はTPC群で高頻度であった。いくつかのGrade3以上のイベントはTPC群で頻度が高く、血栓塞栓症、疲労、うつ状態、めまい、感覚神経障害、振戦、便秘、呼吸困難、低酸素血症、低カリウム血症、皮疹、浮腫が見られた。低用量アスピリンを併用しても血栓塞栓症の頻度は低下しなかった。
【結論】局所進行非小細胞肺癌患者の放射線化学療法にサリドマイドを併用すると、毒性は増強するが生命予後は改善しなかった。
非小細胞肺癌で1件、小細胞癌で2件、サリドマイド併用化学療法の有効性に関する第III相臨床試験が行われていますが、いずれもnegative studyでした。
ベバシツマブを局所進行非小細胞肺癌、小細胞肺癌の放射線化学療法に併用する試みも成されましたが、高率に気管食道瘻を合併するため、禁忌と目されています。
腫瘍血管阻害薬と放射線化学療法は、相性が悪いようです。
ある意味特筆すべきは、本試験が開始された2000年の頃からサリドマイドが脚光を浴びていたということです。
足かけ7年かけて患者集積、それでも本試験は途中終了を余儀なくされており、局所進行非小細胞肺癌の大規模臨床試験を完遂することの難しさが垣間見えます。
胎児の四肢発育初期において、血管の成長を抑制する結果、短肢症を引き起こすと考えられています。
換言すれば、サリドマイドは血管新生を抑制する働きを持つということになり、基礎実験でも証明されています。
腫瘍医学の領域では、近年サリドマイドが多発性骨髄腫の標準治療薬として認知され、一般臨床で使用されています。
一方、肺癌診療の領域でもサリドマイドの有用性が検討されています。
今回紹介する論文は、放射線化学療法にサリドマイドを併用することで治療成績の向上を目指すものでしたが、残念ながら失敗に終わり、有害事象が増えるだけの結果となっています。
J Clin Oncol 30.Published Ahead of Print on January 23, 2012
Randomized Phase III Study of Thoracic Radiation in Combination With Paclitaxel and Carboplatin With or Without Thalidomide in Patients With Stage III Non–Small-Cell Lung Cancer: The ECOG 3598 Study
【目的】本研究の主目的は、切除不能のIII期非小細胞肺癌に対し、放射線化学療法にサリドマイドを併用するか否かで生命予後に差が出るかを検証することである。
【対象と方法】治療法をPC群(標準治療群):カルボプラチン6AUC+パクリタキセル225mg/m2,day1を2コース行い、その後カルボプラチン2AUC+パクリタキセル45mg/m2の毎週投与と計60Gyの放射線照射、あるいはTPC群(試験治療群):PC群に加え、サリドマイドを200mg/日から内服開始し、最大1000mg/日まで増量可能、のいずれかとし、参加者は(1)、(2)のいずれかに無作為に割り付けられた。
【結果】全体で546人の患者が適格で、275人がPC群に、271人がTPC群に割り付けられた。生存期間中央値、無増悪生存期間中央値、奏効割合はPC群でそれぞれ15.3ヶ月、7.4ヶ月、35%だった。一方TPC群ではそれぞれ16ヶ月、7.8ヶ月、38.2%と、PC群との比較で有意な差はなかった。一方、Grade 3の毒性はTPC群で高頻度であった。いくつかのGrade3以上のイベントはTPC群で頻度が高く、血栓塞栓症、疲労、うつ状態、めまい、感覚神経障害、振戦、便秘、呼吸困難、低酸素血症、低カリウム血症、皮疹、浮腫が見られた。低用量アスピリンを併用しても血栓塞栓症の頻度は低下しなかった。
【結論】局所進行非小細胞肺癌患者の放射線化学療法にサリドマイドを併用すると、毒性は増強するが生命予後は改善しなかった。
非小細胞肺癌で1件、小細胞癌で2件、サリドマイド併用化学療法の有効性に関する第III相臨床試験が行われていますが、いずれもnegative studyでした。
ベバシツマブを局所進行非小細胞肺癌、小細胞肺癌の放射線化学療法に併用する試みも成されましたが、高率に気管食道瘻を合併するため、禁忌と目されています。
腫瘍血管阻害薬と放射線化学療法は、相性が悪いようです。
ある意味特筆すべきは、本試験が開始された2000年の頃からサリドマイドが脚光を浴びていたということです。
足かけ7年かけて患者集積、それでも本試験は途中終了を余儀なくされており、局所進行非小細胞肺癌の大規模臨床試験を完遂することの難しさが垣間見えます。