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2024年12月26日

・Osi-risk TORG-TG2101試験・・・オシメルチニブ投与中止後のEGFR-TKI再投与とその安全性について




 今年ももうすぐ終わりですね。

 振り返ってみれば、あまり筆が進まない1年でした。

 理由は様々です。

・有望だと報告される治療があまりに多すぎて、どれから手を付けていいかわからない

・免疫チェックポイント阻害薬関連では、近年周術期や局所進行期に関する報告が多数を占めていて、進行期の治療については材料が出尽くした感がある

・分子標的薬関連では、希少なドライバー遺伝子変異集団における治療選択肢が増えた、という報告が多かった

・本業が忙しく、ブログ運営に割ける余力が減った

・母に進行肺腺がん皮膚転移による病状悪化を疑わせることがあり、落ち着かなかった

・義父の進行肺腺がんの病状が現在進行形であまり思わしくない

・自分自身も手術を受けなくてはならなくなり、診断結果によってはがんサバイバーの仲間入り




 ことに自分自身の病気については想像していたより遥かに影響がありました。

 詳しくは別の記事で書きます。

 

 入院して3日目を迎え、明日は手術を受ける予定です。

 手術はおろか、入院生活すら人生で初めての経験です。

 クリスマス、子供の誕生日、年末年始と、入院患者として病院で過ごすことになりました。

 過敏と言ってもいいくらい感染対策が万全の病院で、新型コロナウイルスPCRが陰性であることを確認しないと入院させてもらえませんでした(専用病室で3時間ほど待機しました)し、外出・外泊はもちろんのこと、入院したが最期、退院するまで面会謝絶です。

 そんなわけで自由時間がたくさんあるので、周術期で身動きが取れない期間を除いては、病棟内で運動したり、読書をしたり、論文を読んだり、ブログを書くことにしました。




 今回取り上げるのは、オシメルチニブ初回治療後に薬剤性肺障害を来した場合、肺障害回復後にEGFR-TKI再投与をしてもよいものか、という後方視的研究です。

 薬剤性肺障害を起こした後にEGFR-TKI再投与すること自体、なかなか"challenging"な診療だと思うのですが、実際のところオシメルチニブ再投与で50%、その他のEGFR-TKIにスイッチしても15%程度は薬剤性肺障害の再燃に見舞われるようです。

 当たり前と言えば当たり前、オシメルチニブ再投与に至っては50%で済んでまだましだったのでは、という気もします。

 とはいえ、せっかく腫瘍縮小効果が得られたのに薬剤性肺障害で治療中止せざるを得なくなった、となると再投与したくなるのは人情です。

 考察の項でまとめられていたように、患者さん、ご家族と担当医が再投与のリスクを共有したうえで取り組むのであれば、選択肢としてはアリなのかもしれません。







 




Real-World Data on Subsequent Therapy for First-Line Osimertinib-Induced Pneumonitis: Safety of EGFR-TKI Rechallenge (Osi-risk Study TORG-TG2101)




Nishioka et al.
Target Oncol. 2024 May;19(3):423-433. 
doi: 10.1007/s11523-024-01048-x. Epub 2024 Apr 13.




背景:

 オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性進行肺がんに対する有望な治療選択肢ではあるが、この薬を使用したときの薬剤性肺障害合併割合はとりわけ日本人で高い。さらには、薬剤性肺障害から回復したあと、EGFR-TKI再投与(rechallenge)を含む次治療の安全性と有効性についてはいまだ明らかでない。




目的:

 初回治療でオシメルチニブを使用したのちに薬剤性肺障害を来した患者において、EGFR-TKI rechallengeの安全性を検証することを本研究の目的とし、rechallenge後の薬剤性肺障害再発に主眼を置いた。




方法:

 2018年08月から2020年09月にかけて、日本国内34施設から後方視的に患者を集積した。EGFR遺伝子変異陽性肺がん患者で、オシメルチニブによる初回治療後に薬剤性肺障害を来した患者を対象とした。




結果:

 124人が解析対象となった。そのうち68人(54.8%)はEGFR-TKI rechallengeを受けた。EGFR-TKI rechallenge後の薬剤性肺障害再発割合は、12ヶ月時点で27%(95%信頼区間17-39)だった。薬剤性肺障害再発累積発生数は、その他の(第1/2世代)EGFR-TKI rechallenge集団と比較して、オシメルチニブrechallenge集団で有意に高かった(ハザード比3.1、95%信頼区間1.3-7.5、p=0.013)。多変数解析の結果、rechallengeで使用したEGFR-TKIの種類(オシメルチニブ vs その他のEGFR-TKI)と薬剤性肺障害再発の間に有意な相関が見られ、薬剤性肺障害初発時の重症度や状態とは関連がなかった(ハザード比3.29、95%信頼区間1.12-9.68、p=0.03)。




結論:

 初回治療でオシメルチニブを使用し、薬剤性肺障害により中止したのちにオシメルチニブrechallengeを行った場合、その他のEGFR-TKIでrechallengeを行うのと比較して薬剤性肺障害再発割合が高い。







本文より:

・オシメルチニブは第3世代のEGFR-TKIであり、第1世代と比較して無増悪生存期間や全生存期間を延長することが知られている

・一方、FLAURA試験やOsi-fact研究の結果から、日本人にオシメルチニブを使用した場合の薬剤性肺障害発生割合が高いことも知られている(FLAURA試験:12.3%、Osi-fact研究:12.8%)

・画像所見上は薬剤性肺障害と同一だが自覚症状を伴わない、一過性無症候性すりガラス陰影(transient asymptomatic pulmonary opacity, TAPO)が報告されており、薬剤性肺障害とは異なる現象と考えられていて、TAPOを認めてもオシメルチニブ投与を継続することが許容されている

・しかしながら、TAPOの発生機序や診断基準は今のところ明確でない

・今回の研究では、オシメルチニブ使用後に薬剤性肺障害を来したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者におけるその後の治療についてのリアルワールドデータを集積することと、EGFR-TKIのrechallenge治療の安全性を評価することを目的とした

・日本国内34施設で、オシメルチニブによる初回治療後に薬剤性肺障害を起こしたEGFR遺伝子変異陽性切除不能非小細胞肺がん患者の臨床情報を後方視的に見直した

・2018年08月から2020年09月の期間に治療を受けた患者を対象とした

・UICC-TNM分類第8版を用いて病期分類した

・データ集積は2021/03/31で打ち切った

・本試験は参加した各施設の倫理委員会で承認され、インフォームド・コンセントは各施設ホームページ上に掲載したオプトアウトの形式を用いて行った

・本試験におけるEGFR-TKI rechallenge治療は、オシメルチニブによる初回治療後に最初の薬剤性肺障害を起こしたのち、二次治療以降の治療でオシメルチニブを含むEGFR-TKIを再投与することと定義した

・TAPOと診断されオシメルチニブを継続投与された患者においては、オシメルチニブによる初回治療期間はオシメルチニブの初回治療を開始してからTAPOと診断されるまでの期間とし、EGFR-TKIのrechallenge治療期間はTAPOと診断されてからオシメルチニブの最終投与日または患者死亡日までとした

・EGFR-TKIによる薬剤性肺障害のCT所見は以下のように分類した

 〇器質化肺炎(OP)パターン:末梢優位の多発斑状陰影

 〇過敏性肺臓炎(HP)パターン

 〇びまん性肺胞障害(DAD)パターン

 〇非特異型間質性肺炎(NSIP)パターン

 〇分類不能(NE)パターン

・124人の患者が集積された

・大多数の患者がECOG-PS 0-1(85.5%)で、組織型は腺がん(98.4%)だった

・PD-L1≧50%の患者は12.1%だった

・オシメルチニブによる薬剤性肺障害を重症度別に分類すると、grade 1が32.3%、grade 2が33.9%、grade 3が25.8%、grade 4が1.6%、grade 5が6.4%だった

・オシメルチニブの初回投与開始から薬剤性肺障害発症までの期間中央値は60日間(3-434)だった

・全体集団と、EGFR-TKIのrechallenge集団との間に、患者背景の差はなかった

・rechallenge集団は68人、ECOG-PS 0-1(88.3%)、腺がん(97.1%)、PD-L1≧50%(7.4%)、オシメルチニブ開始から薬剤性肺障害発生までの期間中央値56.5日間(5-434)だった

・rechallenge集団には、オシメルチニブによる初回治療でgrade4の薬剤性肺障害を起こした患者はいなかった

・全体集団124人のうち、87人が二次治療を受け、うち46人はEGFR-TKI rechallenge治療を受け、41人は化学療法を受けた

・二次治療のEGFR-TKIで最も多く用いられたのはオシメルチニブ(19人、41.3%)で、二次治療の化学療法で最も多く用いられたのはカルボプラチン+ペメトレキセド併用療法(12人、29.3%)だった

・二次治療で化学療法を受けた患者のうち、22人は二次治療後最終的にEGFR-TKIのrechallenge治療を受けた

・結局、総計68人の患者がEGFR-TKIのrechallenge治療を受けた

・研究期間中、薬剤性肺障害が再発するまでの期間は中央値に達しなかった(範囲は18.8ヶ月-未到達)

・3ヶ月薬剤性肺障害再発割合は21%(95%信頼区間12-32)、6ヶ月薬剤性肺障害再発割合は25%(95%信頼区間15-37)、12ヶ月薬剤性肺障害再発割合は27%(95%信頼区間17-39)だった

・rechallenge集団をオシメルチニブrechallenge集団とその他のEGFR-TKI rechallenge集団に分けたところ、増悪までの期間中央値はオシメルチニブrechallenge集団で9.2ヶ月(2.2-未到達)、その他のEGFR-TKI rechallenge集団で未到達(未到達-未到達)だった

・6ヶ月薬剤性肺障害再発割合はオシメルチニブrechallenge集団で46%(95%信頼区間24-68)、その他のEGFR-TKI rechallenge集団で15%(95%信頼区間6.3-29)だった

・12ヶ月薬剤性肺障害再発割合はオシメルチニブrechallenge集団で50%(95%信頼区間28-72)、その他のEGFR-TKI rechallenge集団で15%(95%信頼区間6.3-29)だった

・薬剤性肺障害の累積発生割合は、その他のEGFR-TKI rechallenge集団と比較して有意にオシメルチニブrechallenge集団で高かった(ハザード比3.1、95%信頼区間1.3-7.5、p=0.013)

・多変数解析を行ったところ、rechallenge治療でオシメルチニブを使うこと(補正ハザード比3.93、95%信頼区間1.58-9.80、p=0.003)、オシメルチニブ初回治療開始から初回の薬剤性肺障害を発症するまでの期間が60日間以内であること(補正ハザード比4.58、95%信頼区間1.57-13.34、p=0.005)の2項目が、EGFR-TKI rechallenge治療後の薬剤性肺障害再発の有意な危険因子だった

・全体集団124人中87人が二次治療を受け、うち19人はオシメルチニブrechallengeを、27人はその他のEGFR-TKI rechallengeを、41人は化学療法を受けていた

・二次治療期間における12ヶ月薬剤性肺障害再発割合は、オシメルチニブrechallenge集団で47.4%(95%信頼区間24.4-71.1)、その他のEGFR-TKI rechallenge集団で15%(95%信頼区間6.3-29)、化学療法集団で7.3%(95%信頼区間1.5-20)だった

・薬剤性肺障害の累積発生割合は、化学療法集団と比較して有意にオシメルチニブrechallenge集団で高かった(ハザード比5.85、95%信頼区間1.88-18.2、p=0.002)

・その他のEGFR-TKI rechallenge集団と化学療法集団の間で、薬剤性肺障害の累積発生割合の有意差は認めなかった(ハザード比1.31、95%信頼区間0.67-2.54、p=0.43)

・オシメルチニブ初回治療後の薬剤性肺障害(124人)についてCT分類別に解析したところ、OPパターンが最多(57人、46.0%)で、HPパターン(25人、20.2%)、DADパターン(24人、19.2%)、NSIPパターン(7人、5.6%)と続いた

・EGFR-TKI rechallenge後の薬剤性肺障害再発(19人)時の解析では、OPパターンが最多(10人、52.6%)で、HPパターン(5人、26.3%)、DADパターン(2人、10.5%)、NSIPパターン(1人、5.3%)と続いた

・EGFR-TKI rechallenge後に薬剤性肺障害を再発した患者集団としなかった患者集団において、初回の薬剤性肺障害のCTCAE grade、ステロイド治療内容、CTパターンの相違は認めなかった

・EGFR-TKI rechallenge後に薬剤性肺障害を再発した患者では、約10%がCTCAE grade 3以上の重症度だった




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この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
久しぶりにブログを拝見しました。
以前、母の相談に乗っていただいた者です。オシメルチニブ再投与の記事は母も行っていたので懐かしく感じます。その節はありがとうございました。

明日手術とのことで驚きました。まずは成功とお体の回復を心よりお祈りしています。
Posted by もこもこ at 2024年12月26日 20:35
もこもこさんへ

 こんばんは。
 ご連絡ありがとうございました。
 オシメルチニブ使用後、治療効果がなくなった後にどんな治療をするのか、いまだによく相談を受けるテーマです。
 内服薬の手軽さから、いきなり2-4種の点滴薬併用に切り替えて抗がん薬治療に取り組むとなると、高齢の方であればあるほど二の足を踏みますし、担当医の側でも勧めません。
 事実上、オシメルチニブが最大にして最後の治療薬、ということも多々あります。
 新しい治療薬が出てきてはいますが、少なくともオシメルチニブよりは強い副作用を覚悟しなくてはならないようです。

 おかげさまで手術は終わりました。術後の再出血で短時間に頸がみるみる晴れ、このまま窒息してしまうかも、と心配しましたが、出血部位を数時間圧迫して止血し、どうにか凌ぎました。
Posted by taktak at 2024年12月28日 19:05
タグリッソのことは巷でもよく聞きますし、第三世代のEGFR変異の薬として信頼性の高い薬剤なんですね。ゲフィチニブが上市された時、薬剤性肺障害による治療関連死が結構騒がれて「あの薬はやばい」みたいな事をよく聞きました。今思えば懐かしいですが。

先生、手術は終えられたのですね。
年末年始は休養の日々かな、と思っていましたが、3度ほどアップの連絡があったので「簡単に終わったのかな」くらいに思っていましたが、術後再出血に難儀されたのですね。今まで結構な激務だと感じていましたので、お身体をゆっくり休められたら、と思います。
明日大晦日で2024年も終わりですが、引き続きよろしくお願いいたします。
Posted by Take at 2024年12月30日 19:05
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