2011年06月24日
局所進行非小細胞肺癌
一昨日EBUS併用気管支鏡を行った患者さんの確定診断がつきました。
腺癌だそうです。
幸いなことに、右肺上葉と近傍の縦隔リンパ節転移のみでした。
上大静脈を巻き込んでいるため手術は不可能ですが、局所進行癌として放射線化学療法の予定です。
いわゆる「局所進行癌」は、内科医として肺癌の治癒を目指せる数少ない機会です。
小細胞癌も非小細胞癌も、放射線・抗癌薬を適切に併用すると、5年生存割合は20-25%程度見込めるといわれています。
しかし、大分に帰ってきてからこれまでに150人近くの肺癌患者さんに関わってきましたが、そのうち放射線化学療法を行えた方はたったの5人です。
皆さん、名前も顔もはっきりと思い浮かびます。
うち2人は、残念ながら既にお亡くなりになってしまいました。
しかし、それでも「治癒を目指して治療しましょう」といえるのは嬉しいことです。
局所進行に留まっている間に、万難を排して早く治療を開始して差し上げたいと思います。
腺癌だそうです。
幸いなことに、右肺上葉と近傍の縦隔リンパ節転移のみでした。
上大静脈を巻き込んでいるため手術は不可能ですが、局所進行癌として放射線化学療法の予定です。
いわゆる「局所進行癌」は、内科医として肺癌の治癒を目指せる数少ない機会です。
小細胞癌も非小細胞癌も、放射線・抗癌薬を適切に併用すると、5年生存割合は20-25%程度見込めるといわれています。
しかし、大分に帰ってきてからこれまでに150人近くの肺癌患者さんに関わってきましたが、そのうち放射線化学療法を行えた方はたったの5人です。
皆さん、名前も顔もはっきりと思い浮かびます。
うち2人は、残念ながら既にお亡くなりになってしまいました。
しかし、それでも「治癒を目指して治療しましょう」といえるのは嬉しいことです。
局所進行に留まっている間に、万難を排して早く治療を開始して差し上げたいと思います。
2011年06月21日
胃がんとハーセプチン
いち早く臨床導入された抗体医薬のひとつに、ハーセプチン(トラスツズマブ)があります。
乳癌の一部には、細胞膜上にHER2という蛋白がたくさん存在します。
そういった患者さんに対し、化学療法に加えてハーセプチンを用いると、治療効果が高くなります。
2009年の米国臨床腫瘍学会で、進行胃癌でもHER2がたくさんあったら、ハーセプチンの併用により治療効果が高まることが報告され、2010年の9月に以下の如く論文化されました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014067361061121X
なぜこんな話を突然始めるかというと、そんな患者さんに遭遇したからです。
胃癌術後で、肺に異常陰影が出現したため気管支鏡下生検を行ったら、胃癌の肺転移ということになりました。
肺に病巣があっても、原因が胃癌である以上は、治療は胃癌に準じたものとなります。
一応私もがん薬物療法専門医の端くれですから、上記の報告の存在くらいは知っていました。
病理医には「この組織型ではHER2が陽性になる可能性はほとんどないよ」と危うく門前払いをくらいそうになりましたが、食い下がって気管支鏡下生検組織を調べてもらったら強陽性でした。
肺癌におけるEGFR遺伝子変異もそうですが、陽性になりやすい場合とそうでない場合があります。
しかし、「陽性になりやすい」ことと「陽性である」こと、「陽性になりにくい」ことと「陽性でない」ことは全く意味合いが異なります。
結果によって患者さんの予後が大きく変わるとなると、検査をしないことは罪ですらあるように思います。
非小細胞肺癌の領域では、喫煙者や扁平上皮癌の患者にはEGFR遺伝子変異検査は不要であるとの風潮が有ります。
しかし、つい先日私も、扁平上皮癌の患者さんでEGFR遺伝子変異陽性の方に出会いました。
2002年に初めてgefitinibを使って著効した患者さんも、80歳くらいの扁平上皮癌のおじいさんでした。
検査をすることには副作用は有りませんし、かかるお金も全額自費だったとしても20000円ですので、1コース数十万円もかかる化学療法に着手する前にやっておくべきです。
最高の治療効果をあげるには、治療内容を決める根拠となる最高の診断が必要です。
診断に携わる医師にも、その後の治療にどのような選択肢があり、それを決めるためにどのような検査手法が必要なのか、確かな知識が不可欠です。
「診断がついてから紹介してね」「とりあえず癌の診断がついたから、あとはよろしく」といった態度は、医療の本質からもかけ離れているのではないでしょうか。
乳癌の一部には、細胞膜上にHER2という蛋白がたくさん存在します。
そういった患者さんに対し、化学療法に加えてハーセプチンを用いると、治療効果が高くなります。
2009年の米国臨床腫瘍学会で、進行胃癌でもHER2がたくさんあったら、ハーセプチンの併用により治療効果が高まることが報告され、2010年の9月に以下の如く論文化されました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S014067361061121X
なぜこんな話を突然始めるかというと、そんな患者さんに遭遇したからです。
胃癌術後で、肺に異常陰影が出現したため気管支鏡下生検を行ったら、胃癌の肺転移ということになりました。
肺に病巣があっても、原因が胃癌である以上は、治療は胃癌に準じたものとなります。
一応私もがん薬物療法専門医の端くれですから、上記の報告の存在くらいは知っていました。
病理医には「この組織型ではHER2が陽性になる可能性はほとんどないよ」と危うく門前払いをくらいそうになりましたが、食い下がって気管支鏡下生検組織を調べてもらったら強陽性でした。
肺癌におけるEGFR遺伝子変異もそうですが、陽性になりやすい場合とそうでない場合があります。
しかし、「陽性になりやすい」ことと「陽性である」こと、「陽性になりにくい」ことと「陽性でない」ことは全く意味合いが異なります。
結果によって患者さんの予後が大きく変わるとなると、検査をしないことは罪ですらあるように思います。
非小細胞肺癌の領域では、喫煙者や扁平上皮癌の患者にはEGFR遺伝子変異検査は不要であるとの風潮が有ります。
しかし、つい先日私も、扁平上皮癌の患者さんでEGFR遺伝子変異陽性の方に出会いました。
2002年に初めてgefitinibを使って著効した患者さんも、80歳くらいの扁平上皮癌のおじいさんでした。
検査をすることには副作用は有りませんし、かかるお金も全額自費だったとしても20000円ですので、1コース数十万円もかかる化学療法に着手する前にやっておくべきです。
最高の治療効果をあげるには、治療内容を決める根拠となる最高の診断が必要です。
診断に携わる医師にも、その後の治療にどのような選択肢があり、それを決めるためにどのような検査手法が必要なのか、確かな知識が不可欠です。
「診断がついてから紹介してね」「とりあえず癌の診断がついたから、あとはよろしく」といった態度は、医療の本質からもかけ離れているのではないでしょうか。
2011年06月05日
高齢者非小細胞肺癌の国内臨床試験の最新報告
これまで正式発表はされていませんでしたが、現在開催中の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で下記試験結果が公表されるようです。
http://abstract.asco.org/AbstView_102_77479.html
70歳以上の切除不能非小細胞肺癌の患者さんを対象に
DP群(試験治療):シスプラチン(体表面積あたり25mg)+ドセタキセル(体表面積あたり20mg)を1日目、8日目、15日目に投与して、4週ごとに反復。
D群(標準治療):ドセタキセル(体表面積あたり60mg)を1日目に投与して、3週毎に反復
の治療効果を比較する試験です。
本臨床試験は、新潟大学の塚田先生が非常に苦労して遂行された前試験を引き継ぐ形で行われました。
ヨーロッパでカルボプラチン+パクリタキセル+維持療法erlotinibが有望と報告されたため、本試験結果にも期待した方が多かったかもしれません。
しかし、中間解析の段階で、DP群13.3ヶ月、D群17.3ヶ月と生存期間中央値に大きく差がつき、今後試験を継続してもDP群がD群を上回る可能性は0.996%しかないということで、試験中止となりました。
中等度以上の毒性に関しては、DP群/D群で好中球減少が11%/88%、貧血が16/3%、食欲不振が10/1%、発熱性好中球減少が0/17%、薬剤性肺炎が2/3%で、おしなべてDP群の方が軽微だったようですが、一方で治療関連死がDP群に3例発生しました。
生活の質に関するアンケート結果も、D群の方が優れていたようです。
結論として、DP治療は標準治療であるD治療に対して、いかなる点においても優越性は証明できなかったとされています。
中間解析で終了となった試験は、その後の解析で結果が変わることもあるので注意が必要です。
本試験も、最終解析を行ったら差はなかった、という可能性は十分あると思います。
ただし、DP治療がD治療の成績に並ぶ可能性はあっても、凌ぐ可能性は上記の通り1%以下です。
治療の簡便性、治療関連死、患者さんの生活の質を考えると、DP治療を行う意義はありません。
私共の関連施設ではみなで相談して、大分県における肺癌高齢者を75歳以上と定義しています。
75歳以上の方の標準治療としては、これまでどおりドセタキセル単剤治療をお勧めしていこうと思います。
http://abstract.asco.org/AbstView_102_77479.html
70歳以上の切除不能非小細胞肺癌の患者さんを対象に
DP群(試験治療):シスプラチン(体表面積あたり25mg)+ドセタキセル(体表面積あたり20mg)を1日目、8日目、15日目に投与して、4週ごとに反復。
D群(標準治療):ドセタキセル(体表面積あたり60mg)を1日目に投与して、3週毎に反復
の治療効果を比較する試験です。
本臨床試験は、新潟大学の塚田先生が非常に苦労して遂行された前試験を引き継ぐ形で行われました。
ヨーロッパでカルボプラチン+パクリタキセル+維持療法erlotinibが有望と報告されたため、本試験結果にも期待した方が多かったかもしれません。
しかし、中間解析の段階で、DP群13.3ヶ月、D群17.3ヶ月と生存期間中央値に大きく差がつき、今後試験を継続してもDP群がD群を上回る可能性は0.996%しかないということで、試験中止となりました。
中等度以上の毒性に関しては、DP群/D群で好中球減少が11%/88%、貧血が16/3%、食欲不振が10/1%、発熱性好中球減少が0/17%、薬剤性肺炎が2/3%で、おしなべてDP群の方が軽微だったようですが、一方で治療関連死がDP群に3例発生しました。
生活の質に関するアンケート結果も、D群の方が優れていたようです。
結論として、DP治療は標準治療であるD治療に対して、いかなる点においても優越性は証明できなかったとされています。
中間解析で終了となった試験は、その後の解析で結果が変わることもあるので注意が必要です。
本試験も、最終解析を行ったら差はなかった、という可能性は十分あると思います。
ただし、DP治療がD治療の成績に並ぶ可能性はあっても、凌ぐ可能性は上記の通り1%以下です。
治療の簡便性、治療関連死、患者さんの生活の質を考えると、DP治療を行う意義はありません。
私共の関連施設ではみなで相談して、大分県における肺癌高齢者を75歳以上と定義しています。
75歳以上の方の標準治療としては、これまでどおりドセタキセル単剤治療をお勧めしていこうと思います。