2019年10月18日

CheckMate 017 / 057の統合解析・・・5年生存割合は

 進行非小細胞肺癌に対する二次治療におけるニボルマブの有用性を検討したCheckMate 017 / 057試験。
 5年生存割合のデータがWCLC2019で公表されていた。




 二次治療からの5年生存割合が13.4%、5年無増悪生存割合が8.0%というのは立派な成績。
 TPS<1%でも5年生存割合は8.0%。
 
 「この治療をすれば、8人に1人は5年生存できますよ」
なんて、殺細胞性抗腫瘍薬だけしかなかったころには口が裂けても言えなかった。
 ドライバー遺伝子変異陽性の患者に対してならともかく、陰性の患者にもこうしたことが言える世の中になったのはありがたい。  

2019年10月17日

FLAURA全生存期間解析・・・初回治療オシメルチニブ、アジア人とExon21変異では全生存期間を延長せず

 EGFR阻害薬は、どちらかというとアジア人の方が有効なイメージを持っていた。
 オシメルチニブではどうもそうではなさそうだ。






 先般開催された2019年欧州臨床腫瘍学会年次総会で、FLAURA試験の追跡調査結果が発表された。
 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対し、ゲフィチニブ、エルロチニブに対してオシメルチニブが無増悪生存期間、全生存期間を延長しているのは紛れもない事実。
 ただ、問題はforest plotに示されたサブグループ解析の結果である。
 アジア人、Exon 21変異の患者群では、両治療群間に全生存期間の有意差はついていない。
 本試験全体の結論を左右するものではないにせよ、我が国で診療している立場としては問題である。
 日本人サブグループではどんな結論が出るのか、見てみたいところ。
  

2019年10月08日

2019年ノーベル医学生理学賞は「細胞の低酸素応答メカニズム」研究へ

 2019年のノーベル医学生理学賞は、「細胞の低酸素応答メカニズム」の解明に尽力したWilliam G. Kaelin Jr, MD、Sir Peter J. Ratcliffe, FRS、Gregg L. Semenza, MD, PhDの3氏に贈られるとのこと。

 インターネット上で記事をナナメ読みしてみると、
・酸素の運び手である赤血球の造成を促すホルモン、エリスロポイエチンの遺伝子がどのように低酸素状態で発現誘導されるのか
・Hypoxia induced factor(HIF)やvon-Hippel Lindou(vHL)遺伝子がどのように低酸素応答に関わるのか
といったことを明らかにしたことが主な業績の様子。

 結局がん領域では有効性は示されなかったが、エリスロポイエチンは腎性貧血に対する治療薬として広く流通している。
 また、HIFやvHL遺伝子は、腎細胞癌の領域では常に意識される要素であるし、肺癌領域でもベバシズマブが使えるようになってから、肺癌の微小環境にまつわる話題のときによく登場していた。
 HIFの発現がベバシズマブの有効性を左右するのではないか、効果予測因子として有効なのではないかといった研究は、一昔前によく目にしていたような気がする。

 ただ、今回ノーベル賞に輝いたのは、そうした実利的な面よりもむしろ、「好気的環境に適応した細胞・生物が、どのように周囲の酸素環境に合わせて自己調節を行っているか」という、純科学的な、それも普遍的なテーマに対しての評価であるようだ。

 最近、本庶佑先生の(「ほんじょたすく」という入力で一発変換されるようになっていること自体に、ノーベル賞受賞のインパクトの強さを感じる)「がん免疫療法とは何か」(岩波書店、2019年)を図書館で借りてきて読んでいる。
 新書なのでそんなに厚くない本だが、本庶先生の哲学が詰め込まれていて、読みごたえがある。
 秋の夜長にお勧めしたい。

 今回の受賞テーマについても、一般向けの書籍が出たらぜひ読んでみたいものだ。

   

Posted by tak at 13:13Comments(0)その他

2019年10月01日

KEYNOTE-024 data updated

 TPS>50%の患者に対する初回ペンブロリズマブ単剤療法の有効性を検討したKEYNOTE-024試験。
 これまで何度となく取り上げてきた。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e856772.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e874097.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e906138.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e914135.html

 WCLC2019でupdate dataが公表されていた。




 生存期間中央値はペンブロリズマブ群で26.3ヶ月、化学療法群で14.2ヶ月と、ペンブロリズマブ群の生存期間が以前よりやや短縮し、
その差が縮まっていた。
 しかし、今回の生存曲線を見る限り、ペンブロリズマブ群には39ヶ月未満の時期における打ち切り例がほぼ認められず、3年までの生存データとしてはほぼ確定したと言っていいだろう。
 ハザード比0.65、生存期間はほぼダブルスコアという事実は変わっていない。

 さらに驚くのは、一旦奏効したら、奏効持続期間(DoR)が極めて長いということだ。
 ペンブロリズマブ群の奏効持続期間は未だに中央値に達しておらず、奏効した患者の半数以上は3年間を経過してもなお、腫瘍縮小状態を維持している。
 また、最後のコメントからは、ペンブロリズマブ再投与を受けた患者にも何らかの恩恵がありそうな雰囲気が感じられる。

  

2019年10月01日

KEYNOTE-189再々掲

 化学療法+免疫チェックポイント阻害薬併用療法も随分定着してきた感がある。
 若年、TPSが低めの患者を選択して適用されているように感じる。
 いまのところ、化学療法のみ、あるいは免疫チェックポイント阻害薬のみの治療に比べて、重篤な有害事象が出ているようにも、有害事象の頻度が増えているようにも見えない。

 ASCO2019、WCLC2019でKEYNOTE-189の最新データが公表されていた。
 過去記事へのリンクも併せて引用する。
 全体のOS、PFSの結果のインパクトもさることながら、TPS別のPFS2、TMB別のOSデータが興味深い。
 TPSに関わらず全ての患者層でPFS2が、それも圧倒的なHRのもとに併用療法群で延長している。
 また、TMBに関わらず、全ての患者層でOSが、同様に併用療法群で延長している。
 患者に治療を受け入れる体力、理解力、経済力があれば、分子標的薬の適応がない進行期非扁平上皮・非小細胞肺癌の患者なら、TPS・TMBの値に関わらず(TPS・TMB評価不能の患者も含めて)迷わず勧めていい治療ということになるだろう。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e927301.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e931610.html









Updated Analysis From KEYNOTE-189: Pembrolizumab or Placebo Plus Pemetrexed and Platinum for Previously Untreated Metastatic Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer

Shirish Gadgeel et al. J Clin Oncol 2020
DOI: 10.1200/JCO.19.03136

背景:
 KEYNOTE-189試験において、進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者に対する初回治療として、プラチナ製剤+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ(PPP)併用療法は、プラチナ製剤+ペメトレキセド(PP)併用療法に対して、PD-L1発現状態にかかわらず有意に全生存期間、無再発生存期間を延長した。今回は、その最新解析結果を報告する。

方法:
 対象患者はPPP群(410人)とPP群(206人)に2:1の割合で無作為に割り付けられ、3週間隔、4コースの治療を受けた。その後、PPP群ではペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用維持療法を、PP群ではペメトレキセド+偽薬併用維持療法を最大35コースまで行った。PP群の患者で、病勢進行に至った適格患者は、ペンブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーが許されていた。RECIST ver.1.1に則り腫瘍縮小効果が評価された。今回の追跡調査において、統計学的なα値は割り当てられなかった。

結果:
 2018年9月21日まで(追跡期間中央値は23.1ヶ月)の段階で、全生存期間中央値はPPP群で22.0ヶ月(95%信頼区間は19.5-25.2ヶ月)、PP群で10.7ヶ月(8.7-13.6ヶ月)だった(ハザード比0.56、95%信頼区間0.45-0.70)。無増悪生存期間中央値は、PPP群で9.0ヶ月(8.1-9.9ヶ月)、PP群で4.9ヶ月(4.7-5.5ヶ月)だった(ハザード比0.48、95%信頼区間は0.40-0.58)。無作為化から二次治療後の病勢進行もしくは死亡までの期間、いわゆる二次無増悪生存期間中央値は、PPP群で17.0ヶ月(15.1-19.4ヶ月)、PP群で9.0ヶ月(7.6-10.4ヶ月)だった(ハザード比0.49、95%信頼区間0.40-0.59)。全生存期間、無増悪生存期間は、PD-L1の発現状態によらず、肝転移や脳転移の有無によらず、一貫してPPP群で優れていた。grade 3-5の有害事象の発現率は両治療群間で同等(PPP群で71.9%、PP群で66.8%)だった。

結論:
 進行非扁平上皮非小細胞肺がん患者におけるペンブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤併用療法は、PD-L1発現状態や肝転移、脳転移の有無によらず全生存期間と無増悪生存期間を改善し、毒性は忍容可能で、長期経過観察後もそれらの傾向は続いていた。