2021年08月28日

有害事象による治療中止と、その後の治療再開

 分子標的薬や抗体医薬、免疫チェックポイント阻害薬が出てきてからというもの、薬物療法のスケジュールの考え方が大きく変わった。
 いわゆる抗がん薬を用いた薬物療法で、治療中止を要する有害事象に見舞われると、本来の治療予定日から2週間経過しても治療再開のめどが立たなかったら毒性中止、次の治療は別のレジメンに切り替え、というのが一般的だった。
 少なくとも臨床試験における考え方はそうだった。
 
 今は違う。
 分子標的薬にせよ、抗体医薬にせよ、発生した有害事象がある程度許容可能なものならば、治療自体の効果が見込めるならば一定期間の中止後に再開、というのはよくある話になった。
 免疫チェックポイント阻害薬の登場により、治療のインターバルにはあまりこだわらないという流れが決定的になった。
 そもそも免疫チェックポイント阻害薬は薬理作用自体が長く続くので、効果も長引けば副作用も長引きがちである。
 実臨床においては、月単位で中止したのちに免疫チェックポイント阻害薬再開というのは決して珍しくなくなったし、金銭的な理由で一時中断を余儀なくされ、その後再開したという患者さんも少なくない。

 隔世の感がある、と感じるのは、私だけだろうか。


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この記事へのコメント
いつも興味深く拝読しております。
今回は有害事象発生後のことについての記事でしたが、使用薬に耐性ができてしまった後についても、どのように進めたりされるのか、先生のご意見を書いていただけると嬉しいです。
ステージ4の本人は今のところまだ元気だけれど、もう使える薬の選択肢が無いといった場合、どういったプランB、あるいはプランCをお考えでしょうか?
Posted by 患者の妻 at 2021年08月28日 17:17
患者の妻さんへ

 コメントありがとうございます。使用している薬に耐性ができてしまった後の考え方は一言では言い表せないのですが、体調、検査結果、次の候補となる治療に期待する効果、懸念される副作用等から総合的に(なんとなく)決めるように思います。
 非小細胞肺癌ではあまりしませんが、小細胞肺癌では過去に使用してよく効いた治療を再度使う、というのはよくされる手法です。
 様々意見が分かれそうなテーマですけれど、一度記事にしてみます。
Posted by taktak at 2021年08月28日 20:44
お忙しいところ、コメント返信くださりありがとうございます。
どの記事も分かりやすく、たくさん勉強させていただけるこちらのブログは、知らない情報を得られるほぼ唯一の拠り所となっております。
これからも勉強させていただきます。ありがとうございます。
Posted by 患者の妻 at 2021年08月29日 10:02
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