2016年09月28日
米国での定位体幹部放射線照射成績
現在私が勤務している病院では、合併症を多数抱えた超高齢者が次々に入院してくる。
ときどき70歳代の患者さんを担当すると、「若い」と感じる。
昨日も胸部多発浸潤影で相談された患者が91歳で、気管支鏡での精密検査をすべきかどうか、心底悩んでいる。
実臨床の場では、レントゲンやCT画像で明らかに肺がんだろうと感じても、検査も治療もできないということがしばしばある。
早期の段階で見つかっていても、患者さんが寝たきり状態で高度の認知症であれば、ただ見守るしかない。
がんセンターや大学病院、基幹病院で最先端の治療や治験に参加する機会に恵まれる患者さんもいれば、早期に見つかったにも関わらずただ病勢の進行を見守って、天に召されるまで何一つ治療の恩恵を受けられない患者さんもいる。
そんな中にあって、体幹部定位放射線照射やサイバーナイフといった21世紀の放射線治療は、一部の患者さんには福音となっている。
国内で語られることが多い治療だが、今回は海外の学会で興味深い実臨床ベースの報告があったようだ。
こういった治療選択肢があるんだ、ということを知らないと患者への情報提供すら出来ないので、肺がん治療の専門家のみならず、広く一般に知られるべき内容である。
ASTRO 2016: Widespread Adoption of SBRT Has Improved Survival Rates for Elderly Patients With Early-Stage Lung Cancer
By The ASCO Post
Posted: 9/27/2016 1:49:12 PM
Last Updated: 9/27/2016 1:49:12 PM
高齢の早期非小細胞肺癌患者に対する体幹部定位放射線照射により、ここ10年で生存割合がざっと40%から60%に向上したと報告された。
近年、体幹部定位放射線照射は手術不能の早期非小細胞肺癌患者に対する標準的治療に位置付けられている。古典的な放射線照射法に比べて、体幹部定位放射線照射は治療標的を絞り込み、わずか1-5回の高線量分割照射で治療する。合併症を多数抱え、外科的治療選択をしがたい高齢患者において、地域医療における主要な治療策として体幹部定位放射線照射が普及しつつある。
今回の報告では、米国の国立がん研究所のSEERデータベースを用いて、体幹部定位放射線照射の普及に伴い、高齢早期非小細胞肺癌患者の全生存期間ないし無病生存期間がどのように変化したか、あるいは高齢者治療における放射線照射と外科治療の比較について解析を行った。
データベースから、2004年―2012年の間にI期の非小細胞肺癌と診断された60歳以上の患者62,213人を抽出した。腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌と組織診断され、局所治療を受けた記録が残っている患者を対象とした。
60-64歳、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85-89歳、90歳以上の年齢区分に分けて、全生存期間と無病生存期間を解析した。治療方法と年齢を指標として、Kaplan-Meier法、ログランク検定、コックス比例ハザードモデル、Fischerの正確確率検定を用いて解析した。
今回の対象期間内で、体幹部定位放射線照射の治療成績が飛躍的に向上していることが分かった。2004年から2012年というのは、体幹部定位放射線照射が地域医療において広く普及した期間にあたるが、放射線照射単独治療後の2年生存割合は39%から58%へ、20%近くも向上した(p<0.001)。一方で、外科手術単独治療後の2年生存割合は79%から84%へ、5%向上していた(p<0.001)。放射線治療も手術も受けなかった患者の2年生存割合は、変化なかった(28%から33%に変化、p=0.29)。
同様に、放射線照射単独治療後の2年無病生存割合は48%から72%に改善し(p<0.001)、手術単独群でも87%から91%に改善していた(p<0.001)。放射線治療も手術も受けなかった患者では、38%から45%に変化していたが、ギリギリ有意差には至らなかった。
I期の非小細胞肺がんに対する手術の適用は、患者が高齢になるほど減少した(p<0.001)。60-64歳の年齢層の81%が手術を受けた一方で、80歳以上では手術が可能な患者は47%に留まった。対照的に、放射線治療の適用は、高齢になるほど増加した。60-64歳の年齢層では11%が放射線治療を受けたに過ぎないが、90歳以上では39%が放射線治療を受けていた(p<0.001)。治療を受けなかった患者は、60-64歳の年齢層では7%程度だったが、90歳以上の年齢層では40%にも上っていた。
全生存期間と無病生存期間が改善したにも拘らず、放射線治療を受けた患者の生存割合は、手術を受けた高齢者の生存割合よりも劣っていた。著者らは、より全身状態のよい患者が手術を受けるという選択バイアスが一部で働いたのだろうと説明している。そのため彼らは、患者背景をマッチさせた上での放射線治療と手術療法の比較試験の必要性を強調している。同様に、放射線治療群の中に姑息的な体幹部定位照射症例や古典的な前後対向二門照射施行症例が含まれていることも手術群の方が優れていた理由の例として挙げている。
「合併症のために手術が難しい、もしくは何らかの理由で手術を受けたがらない患者に対し、担当医は放射線治療の選択肢を自信をもって勧めるべきである」
「地域のがんセンターにおいて体幹部定位放射線照射を続けることで、より多くの患者が体幹部定位放射線照射の恩恵を受け、年齢や合併症のために治療が成されないままになっている患者が減ることを願っている」
「依然として手術施行群の治療成績が最もよいが、今回の研究により、①手術適応のない患者に対する体幹部定位放射線照射療法の有用性、②ここ10年間で、放射線治療による治療成績が他の治療法に比べて加速度的に改善していること、が明らかになった」
「体幹部定位放射線照射へのアクセスを向上させることで、今後増えていく高齢早期肺がん患者の治療成績の向上も期待される」
と著者らはコメントしている。
ときどき70歳代の患者さんを担当すると、「若い」と感じる。
昨日も胸部多発浸潤影で相談された患者が91歳で、気管支鏡での精密検査をすべきかどうか、心底悩んでいる。
実臨床の場では、レントゲンやCT画像で明らかに肺がんだろうと感じても、検査も治療もできないということがしばしばある。
早期の段階で見つかっていても、患者さんが寝たきり状態で高度の認知症であれば、ただ見守るしかない。
がんセンターや大学病院、基幹病院で最先端の治療や治験に参加する機会に恵まれる患者さんもいれば、早期に見つかったにも関わらずただ病勢の進行を見守って、天に召されるまで何一つ治療の恩恵を受けられない患者さんもいる。
そんな中にあって、体幹部定位放射線照射やサイバーナイフといった21世紀の放射線治療は、一部の患者さんには福音となっている。
国内で語られることが多い治療だが、今回は海外の学会で興味深い実臨床ベースの報告があったようだ。
こういった治療選択肢があるんだ、ということを知らないと患者への情報提供すら出来ないので、肺がん治療の専門家のみならず、広く一般に知られるべき内容である。
ASTRO 2016: Widespread Adoption of SBRT Has Improved Survival Rates for Elderly Patients With Early-Stage Lung Cancer
By The ASCO Post
Posted: 9/27/2016 1:49:12 PM
Last Updated: 9/27/2016 1:49:12 PM
高齢の早期非小細胞肺癌患者に対する体幹部定位放射線照射により、ここ10年で生存割合がざっと40%から60%に向上したと報告された。
近年、体幹部定位放射線照射は手術不能の早期非小細胞肺癌患者に対する標準的治療に位置付けられている。古典的な放射線照射法に比べて、体幹部定位放射線照射は治療標的を絞り込み、わずか1-5回の高線量分割照射で治療する。合併症を多数抱え、外科的治療選択をしがたい高齢患者において、地域医療における主要な治療策として体幹部定位放射線照射が普及しつつある。
今回の報告では、米国の国立がん研究所のSEERデータベースを用いて、体幹部定位放射線照射の普及に伴い、高齢早期非小細胞肺癌患者の全生存期間ないし無病生存期間がどのように変化したか、あるいは高齢者治療における放射線照射と外科治療の比較について解析を行った。
データベースから、2004年―2012年の間にI期の非小細胞肺癌と診断された60歳以上の患者62,213人を抽出した。腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌と組織診断され、局所治療を受けた記録が残っている患者を対象とした。
60-64歳、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85-89歳、90歳以上の年齢区分に分けて、全生存期間と無病生存期間を解析した。治療方法と年齢を指標として、Kaplan-Meier法、ログランク検定、コックス比例ハザードモデル、Fischerの正確確率検定を用いて解析した。
今回の対象期間内で、体幹部定位放射線照射の治療成績が飛躍的に向上していることが分かった。2004年から2012年というのは、体幹部定位放射線照射が地域医療において広く普及した期間にあたるが、放射線照射単独治療後の2年生存割合は39%から58%へ、20%近くも向上した(p<0.001)。一方で、外科手術単独治療後の2年生存割合は79%から84%へ、5%向上していた(p<0.001)。放射線治療も手術も受けなかった患者の2年生存割合は、変化なかった(28%から33%に変化、p=0.29)。
同様に、放射線照射単独治療後の2年無病生存割合は48%から72%に改善し(p<0.001)、手術単独群でも87%から91%に改善していた(p<0.001)。放射線治療も手術も受けなかった患者では、38%から45%に変化していたが、ギリギリ有意差には至らなかった。
I期の非小細胞肺がんに対する手術の適用は、患者が高齢になるほど減少した(p<0.001)。60-64歳の年齢層の81%が手術を受けた一方で、80歳以上では手術が可能な患者は47%に留まった。対照的に、放射線治療の適用は、高齢になるほど増加した。60-64歳の年齢層では11%が放射線治療を受けたに過ぎないが、90歳以上では39%が放射線治療を受けていた(p<0.001)。治療を受けなかった患者は、60-64歳の年齢層では7%程度だったが、90歳以上の年齢層では40%にも上っていた。
全生存期間と無病生存期間が改善したにも拘らず、放射線治療を受けた患者の生存割合は、手術を受けた高齢者の生存割合よりも劣っていた。著者らは、より全身状態のよい患者が手術を受けるという選択バイアスが一部で働いたのだろうと説明している。そのため彼らは、患者背景をマッチさせた上での放射線治療と手術療法の比較試験の必要性を強調している。同様に、放射線治療群の中に姑息的な体幹部定位照射症例や古典的な前後対向二門照射施行症例が含まれていることも手術群の方が優れていた理由の例として挙げている。
「合併症のために手術が難しい、もしくは何らかの理由で手術を受けたがらない患者に対し、担当医は放射線治療の選択肢を自信をもって勧めるべきである」
「地域のがんセンターにおいて体幹部定位放射線照射を続けることで、より多くの患者が体幹部定位放射線照射の恩恵を受け、年齢や合併症のために治療が成されないままになっている患者が減ることを願っている」
「依然として手術施行群の治療成績が最もよいが、今回の研究により、①手術適応のない患者に対する体幹部定位放射線照射療法の有用性、②ここ10年間で、放射線治療による治療成績が他の治療法に比べて加速度的に改善していること、が明らかになった」
「体幹部定位放射線照射へのアクセスを向上させることで、今後増えていく高齢早期肺がん患者の治療成績の向上も期待される」
と著者らはコメントしている。
2016年09月17日
進行非小細胞肺癌に対するニボルマブ単剤初回治療
第III相試験で優越性が否定されてしまった(http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e863977.html)今となっては後の祭りだが、2015年に発表されたニボルマブ単剤の進行非小細胞肺癌初回治療の第I相試験結果が論文化された。そうは言いながらも改めて結果を見てみると、4人の完全奏効患者がいたり、生存期間中央値が19ヶ月を超えていたりで、単剤療法であることを考えると明らかに既存の殺細胞性抗腫瘍薬とは一線を画している。Check Mate 026試験の詳細をよく見極めたうえで、対象患者を絞り込む手立てさえあれば、十分初回治療に耐える薬剤と思われる。
Nivolumab Monotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.
Gettinger et al.
J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2980-7
背景:
ニボルマブは抗PD-1抗体で、既治療進行非小細胞肺癌に対してドセタキセルと比べて生存期間を延長することが示されている。Check Mate 012試験では進行非小細胞肺癌に対するニボルマブ単剤療法の第I相試験を行った。
方法:
52人の患者が、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに、病勢進行もしくは耐容不能の有害事象に至るまで継続した。病勢進行後の後治療はプロトコールに従って許容された。主要評価項目は安全性で、副次評価項目は奏効割合と24週間無増悪生存割合とした。全生存期間は探索的評価項目とした。
結果:
全グレードのなんらかの有害事象は、患者全体の71%で認めた。疲労・倦怠が29%、発疹が19%、嘔気が14%、下痢が12%、皮膚掻痒症が12%、関節痛が10%だった。10人(19%)の患者ではGrade 3 / 4の有害事象が出現した。Grade3以上の発疹は、複数の患者で認められた唯一のGrade 3 / 4の有害事象だった(2人、4%で発症)。6人の患者では、治療関連有害事象のためにプロトコール治療を中止した。完全奏効し治療を継続している4人(8%)を含めた奏効割合は23%(12人)だった。12人中9人(75%)は11週時点の初回効果判定時に奏効に至っており、8人(67%)はデータ解析時点でも治療継続中であった(最短5.3ヶ月から最長25.8ヶ月)。PD-L1発現陽性の患者での奏効割合は28%(32人中9人)で、陰性患者での奏効割合は14%(14人中2人)だった。無増悪生存期間中央値は3.6ヶ月で、24週無増悪生存割合は41%(95%信頼区間は27%-54%)だった。生存期間中央値は19.4ヶ月で、1年生存割合は73%(95%信頼区間は59%-83%)、1年半生存割合は57%(95%信頼区間は42%-70%)だった。
結論:
ニボルマブ単剤初回治療は、忍容可能な安全性プロファイルとdurable responseを示した。
Nivolumab Monotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.
Gettinger et al.
J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2980-7
背景:
ニボルマブは抗PD-1抗体で、既治療進行非小細胞肺癌に対してドセタキセルと比べて生存期間を延長することが示されている。Check Mate 012試験では進行非小細胞肺癌に対するニボルマブ単剤療法の第I相試験を行った。
方法:
52人の患者が、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに、病勢進行もしくは耐容不能の有害事象に至るまで継続した。病勢進行後の後治療はプロトコールに従って許容された。主要評価項目は安全性で、副次評価項目は奏効割合と24週間無増悪生存割合とした。全生存期間は探索的評価項目とした。
結果:
全グレードのなんらかの有害事象は、患者全体の71%で認めた。疲労・倦怠が29%、発疹が19%、嘔気が14%、下痢が12%、皮膚掻痒症が12%、関節痛が10%だった。10人(19%)の患者ではGrade 3 / 4の有害事象が出現した。Grade3以上の発疹は、複数の患者で認められた唯一のGrade 3 / 4の有害事象だった(2人、4%で発症)。6人の患者では、治療関連有害事象のためにプロトコール治療を中止した。完全奏効し治療を継続している4人(8%)を含めた奏効割合は23%(12人)だった。12人中9人(75%)は11週時点の初回効果判定時に奏効に至っており、8人(67%)はデータ解析時点でも治療継続中であった(最短5.3ヶ月から最長25.8ヶ月)。PD-L1発現陽性の患者での奏効割合は28%(32人中9人)で、陰性患者での奏効割合は14%(14人中2人)だった。無増悪生存期間中央値は3.6ヶ月で、24週無増悪生存割合は41%(95%信頼区間は27%-54%)だった。生存期間中央値は19.4ヶ月で、1年生存割合は73%(95%信頼区間は59%-83%)、1年半生存割合は57%(95%信頼区間は42%-70%)だった。
結論:
ニボルマブ単剤初回治療は、忍容可能な安全性プロファイルとdurable responseを示した。
2016年09月17日
ニボルマブ+プラチナ+α併用化学療法
2014年の米国臨床腫瘍学会や欧州臨床腫瘍学会で報告された、進行非小細胞肺癌初回治療におけるニボルマブの第I相試験の結果が論文化された。
既に臨床導入されている二次治療でのニボルマブ単剤療法とは異なり、3週間に1回の投与を継続する、という治療スケジュールになっている。
第I相試験なので対象患者数は限られているものの、今回取り上げられた治療の中ではニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群の生存期間延長効果が突出していた。扁平上皮癌や非扁平上皮癌に特化した治療レジメンとの組み合わせよりも古典的な非小細胞肺癌全体をカバーするパクリタキセル+カルボプラチンが、同じような位置づけのニボルマブと相乗効果を発揮していそうなのは興味深い。一方で、患者背景を見ると、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群には腺癌(86%)、EGFR遺伝子変異陰性(86%)、KRAS遺伝子変異陽性(43%)、喫煙歴あり(79%)と、ニボルマブが効きそうな背景を有する患者が多く含まれている。こうしたことも今回の結果に反映されているかも知れない。Spider plotを見ても、明らかにdurable responseと思われる患者が、上記の併用群では多数含まれているように見えた。
Nivolumab in Combination With Platinum-Based Doublet Chemotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.
Rizvi et al.
J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2969-79.
背景:
ニボルマブは既治療進行非小細胞肺癌に対する生存期間延長効果が既に示されている。マルチコホート第I相試験であるCheck Mate 012試験は、進行非小細胞癌に対してニボルマブを単剤で、あるいは既存の標準治療と併用で治療したときの安全性と有効性を検証する試験である。今回、ニボルマブとプラチナ併用化学療法(PT-DC)の同時併用に関して報告する。
対象と方法:
対象患者は56人で、ニボルマブとプラチナ併用化学療法を同時併用で、3週間ごとに4コース行い、その後にニボルマブを病勢進行もしくは耐容不能な有害事象が起こるまで継続する治療スケジュールにした。治療レジメンは、扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ジェムシタビン療法、非扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ペメトレキセド療法、あるいは全ての非小細胞肺癌を対して、ニボルマブを5ないしは10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン療法のいずれかとした。主要評価項目は安全性と忍容性とした。副次評価項目は、奏効割合、24週無増悪生存割合とした。探索的評価項目として、全生存期間、PD-L1発現状態ごとの奏効割合とした。
結果:
当初6週間の治療期間においては、用量制限毒性は認められなかった。45%(56人中26人)の患者では、Grade 3-4の治療関連有害事象を認めた。7%(4人)で肺臓炎を発症した。21%(12人)で治療関連有害事象によりプロトコール治療を中止した。ニボルマブ+シスプラチン+ジェムシタビン群、ニボルマブ+シスプラチン+ペメトレキセド群、ニボルマブ10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群の奏効割合はそれぞれ33%, 47%, 47%, 43%だった。同様に、24週間無増悪生存割合はそれぞれ51%, 71%, 38%, 51%だった。2年生存割合は25%, 33%, 27%, 62%だった。PD-L1発現状態によらず、一定の奏効が認められた。
結論:
ニボルマブを上乗せしても、プラチナ併用化学療法のみの場合の安全性プロファイルとさして違いはなかったが、治療関連有害事象による治療中止はプラチナ併用療法のみの場合より多い印象だった。治療効果は有望で、とりわけニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群ではよい結果が得られた。
既に臨床導入されている二次治療でのニボルマブ単剤療法とは異なり、3週間に1回の投与を継続する、という治療スケジュールになっている。
第I相試験なので対象患者数は限られているものの、今回取り上げられた治療の中ではニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群の生存期間延長効果が突出していた。扁平上皮癌や非扁平上皮癌に特化した治療レジメンとの組み合わせよりも古典的な非小細胞肺癌全体をカバーするパクリタキセル+カルボプラチンが、同じような位置づけのニボルマブと相乗効果を発揮していそうなのは興味深い。一方で、患者背景を見ると、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群には腺癌(86%)、EGFR遺伝子変異陰性(86%)、KRAS遺伝子変異陽性(43%)、喫煙歴あり(79%)と、ニボルマブが効きそうな背景を有する患者が多く含まれている。こうしたことも今回の結果に反映されているかも知れない。Spider plotを見ても、明らかにdurable responseと思われる患者が、上記の併用群では多数含まれているように見えた。
Nivolumab in Combination With Platinum-Based Doublet Chemotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.
Rizvi et al.
J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2969-79.
背景:
ニボルマブは既治療進行非小細胞肺癌に対する生存期間延長効果が既に示されている。マルチコホート第I相試験であるCheck Mate 012試験は、進行非小細胞癌に対してニボルマブを単剤で、あるいは既存の標準治療と併用で治療したときの安全性と有効性を検証する試験である。今回、ニボルマブとプラチナ併用化学療法(PT-DC)の同時併用に関して報告する。
対象と方法:
対象患者は56人で、ニボルマブとプラチナ併用化学療法を同時併用で、3週間ごとに4コース行い、その後にニボルマブを病勢進行もしくは耐容不能な有害事象が起こるまで継続する治療スケジュールにした。治療レジメンは、扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ジェムシタビン療法、非扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ペメトレキセド療法、あるいは全ての非小細胞肺癌を対して、ニボルマブを5ないしは10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン療法のいずれかとした。主要評価項目は安全性と忍容性とした。副次評価項目は、奏効割合、24週無増悪生存割合とした。探索的評価項目として、全生存期間、PD-L1発現状態ごとの奏効割合とした。
結果:
当初6週間の治療期間においては、用量制限毒性は認められなかった。45%(56人中26人)の患者では、Grade 3-4の治療関連有害事象を認めた。7%(4人)で肺臓炎を発症した。21%(12人)で治療関連有害事象によりプロトコール治療を中止した。ニボルマブ+シスプラチン+ジェムシタビン群、ニボルマブ+シスプラチン+ペメトレキセド群、ニボルマブ10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群の奏効割合はそれぞれ33%, 47%, 47%, 43%だった。同様に、24週間無増悪生存割合はそれぞれ51%, 71%, 38%, 51%だった。2年生存割合は25%, 33%, 27%, 62%だった。PD-L1発現状態によらず、一定の奏効が認められた。
結論:
ニボルマブを上乗せしても、プラチナ併用化学療法のみの場合の安全性プロファイルとさして違いはなかったが、治療関連有害事象による治療中止はプラチナ併用療法のみの場合より多い印象だった。治療効果は有望で、とりわけニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群ではよい結果が得られた。
2016年09月17日
全脳照射はなくてもいい?
2016年9月5日、下記の報告が欧州呼吸器学会の年次集会で発表され、同時にLancet誌に掲載された。
非小細胞肺癌に合併した脳転移に対する全脳照射は広く普及しているものの、エビデンスは乏しい。全脳照射に関するランダム化比較試験は、1971年に論文化されたECOGの小さな(参加患者数48人)臨床試験1報しかない。それすら、生存期間延長効果が乏しかったため、著者らは全脳照射は標準治療たりえないと結論している。
今回の報告は、全脳照射は必要ないのではないか、という逆説的な見地から行われた臨床試験に関するものである。
Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy (QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial.
Mulvenna et al
Lancet. 2016 Sep 2. pii: S0140-6736(16)30825-X. doi: 10.1016/S0140-6736(16)30825-X. [Epub ahead of print]
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)30825-X/abstract
背景:
デキサメサゾン併用全脳照射は、QoLや生命予後の改善効果を示したランダム化比較試験がないにもかかわらず、脳転移を有する非小細胞肺癌患者の治療に広く用いられている。全能照射を行ったとしても、こうした患者の予後は不良である。今回われわれは、QoLや生命予後の悪化を伴わずに、全脳照射を省略できるかどうかを検証した。
方法:
The Quality of Life after Treatment for Brain Metastases(QUARTZ)試験は、英国の69施設、豪州の3施設が参加したランダム化第III相非劣勢試験である。外科治療や定位脳照射の適応がない脳転移を有する非小細胞肺癌患者を、デキサメサゾン投与を含む支持療法単独群と、支持療法に加え全脳照射(計20Gyを5日間で分割照射)を行う群に1:1に割付けた。デキサメサゾンの投与量は、患者の症状にあわせて調整し、症状の改善とともに減量した。各治療群への割付は、治療施設、Karnofsky performance status, 性別、脳転移の状態、原発巣の状態を割付調整因子として、ロンドン大学内のthe Medical Reseach Council Clinical Allocationが事務局となり、各施設からの電話連絡を受けて最小化法によって行った。主要評価項目はquality-adjusted life-years(QALYs、QoLで調整した生存年)とした。QALYsは全生存期間と、週ごとに聴取した各患者のEQ-5D質問表の回答内容から測定した。支持療法単独群において、全脳照射併用群に対して7QALY日以上の差がついていなければ非劣勢であると仮定して、必要症例数は534人と見積もった(80%の検出力、片側5%検定)。解析は割り付けられた全患者を対象に、intention-to-treatで行った。
結果:
2007年3月2日から2014年8月29日までに、538人の患者が参加し、支持療法単独群に269人、全脳照射併用群に239人が割り付けられた。患者背景に偏りはなく、患者の年齢中央値は66歳(範囲は38歳から85歳)だった。両群間で重篤な有害事象に差は見られなかったが、全脳照射を受けた患者では、治療中に傾眠、脱毛、嘔気、皮膚乾燥、皮膚掻痒の有害事象を認めた。全生存期間(ハザード比1.06, 95%信頼区間は0.90-1.26)、QoL、デキサメサゾン使用量に両群間の差は認めなかった。平均QALYの差は4.7QALY日(支持療法群で41.7QALY日、全脳照射併用群で46.4QALY日)で、両側検定における90%信頼区間は-12.7から3.3QALY日だった。
結論:
本試験は支持療法群の非劣勢を証明し、QALYの差がわずかだったことや、生存期間とQoLにおいて両群間の差が認められなかったことから、全脳照射による治療効果はほとんど期待できないと結論した。
・60歳以下の患者においては、全脳照射による生存期間延長効果が認められた。生存期間中央値は、支持療法群で7.6週間(95%信頼区間は4.6-10.1週間)、全脳走者併用群で10.4週間(95%信頼区間は6.3-13.4週間)、ハザード比は1.48(95%信頼区間は1.01-2.16)だった。一方で、70歳以上の患者では、ハザード比は0.75(95%信頼区間は0.56-1.00)と支持療法単独群のほうが優れていた。
・脳転移巣が5ヶ所以上ある患者では、ハザード比は1.37(95%信頼区間は1.01-1.86)と全脳照射群で生存期間の延長を認めた。
・原発巣がよくコントロールされ、Karnofsly performance statusが70以上と良好だった患者でも、全脳照射により生存期間が延長する傾向があった。
・解析時点で、538人の参加者のうち536人が死亡しており、手術や定位照射でコントロール不能な脳転移を有する患者の生命予後の悪さが再認識された。全生存期間中央値は、支持療法単独群で8.5週間、全脳照射併用群で9.2週間だった。
非小細胞肺癌に合併した脳転移に対する全脳照射は広く普及しているものの、エビデンスは乏しい。全脳照射に関するランダム化比較試験は、1971年に論文化されたECOGの小さな(参加患者数48人)臨床試験1報しかない。それすら、生存期間延長効果が乏しかったため、著者らは全脳照射は標準治療たりえないと結論している。
今回の報告は、全脳照射は必要ないのではないか、という逆説的な見地から行われた臨床試験に関するものである。
Dexamethasone and supportive care with or without whole brain radiotherapy in treating patients with non-small cell lung cancer with brain metastases unsuitable for resection or stereotactic radiotherapy (QUARTZ): results from a phase 3, non-inferiority, randomised trial.
Mulvenna et al
Lancet. 2016 Sep 2. pii: S0140-6736(16)30825-X. doi: 10.1016/S0140-6736(16)30825-X. [Epub ahead of print]
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)30825-X/abstract
背景:
デキサメサゾン併用全脳照射は、QoLや生命予後の改善効果を示したランダム化比較試験がないにもかかわらず、脳転移を有する非小細胞肺癌患者の治療に広く用いられている。全能照射を行ったとしても、こうした患者の予後は不良である。今回われわれは、QoLや生命予後の悪化を伴わずに、全脳照射を省略できるかどうかを検証した。
方法:
The Quality of Life after Treatment for Brain Metastases(QUARTZ)試験は、英国の69施設、豪州の3施設が参加したランダム化第III相非劣勢試験である。外科治療や定位脳照射の適応がない脳転移を有する非小細胞肺癌患者を、デキサメサゾン投与を含む支持療法単独群と、支持療法に加え全脳照射(計20Gyを5日間で分割照射)を行う群に1:1に割付けた。デキサメサゾンの投与量は、患者の症状にあわせて調整し、症状の改善とともに減量した。各治療群への割付は、治療施設、Karnofsky performance status, 性別、脳転移の状態、原発巣の状態を割付調整因子として、ロンドン大学内のthe Medical Reseach Council Clinical Allocationが事務局となり、各施設からの電話連絡を受けて最小化法によって行った。主要評価項目はquality-adjusted life-years(QALYs、QoLで調整した生存年)とした。QALYsは全生存期間と、週ごとに聴取した各患者のEQ-5D質問表の回答内容から測定した。支持療法単独群において、全脳照射併用群に対して7QALY日以上の差がついていなければ非劣勢であると仮定して、必要症例数は534人と見積もった(80%の検出力、片側5%検定)。解析は割り付けられた全患者を対象に、intention-to-treatで行った。
結果:
2007年3月2日から2014年8月29日までに、538人の患者が参加し、支持療法単独群に269人、全脳照射併用群に239人が割り付けられた。患者背景に偏りはなく、患者の年齢中央値は66歳(範囲は38歳から85歳)だった。両群間で重篤な有害事象に差は見られなかったが、全脳照射を受けた患者では、治療中に傾眠、脱毛、嘔気、皮膚乾燥、皮膚掻痒の有害事象を認めた。全生存期間(ハザード比1.06, 95%信頼区間は0.90-1.26)、QoL、デキサメサゾン使用量に両群間の差は認めなかった。平均QALYの差は4.7QALY日(支持療法群で41.7QALY日、全脳照射併用群で46.4QALY日)で、両側検定における90%信頼区間は-12.7から3.3QALY日だった。
結論:
本試験は支持療法群の非劣勢を証明し、QALYの差がわずかだったことや、生存期間とQoLにおいて両群間の差が認められなかったことから、全脳照射による治療効果はほとんど期待できないと結論した。
・60歳以下の患者においては、全脳照射による生存期間延長効果が認められた。生存期間中央値は、支持療法群で7.6週間(95%信頼区間は4.6-10.1週間)、全脳走者併用群で10.4週間(95%信頼区間は6.3-13.4週間)、ハザード比は1.48(95%信頼区間は1.01-2.16)だった。一方で、70歳以上の患者では、ハザード比は0.75(95%信頼区間は0.56-1.00)と支持療法単独群のほうが優れていた。
・脳転移巣が5ヶ所以上ある患者では、ハザード比は1.37(95%信頼区間は1.01-1.86)と全脳照射群で生存期間の延長を認めた。
・原発巣がよくコントロールされ、Karnofsly performance statusが70以上と良好だった患者でも、全脳照射により生存期間が延長する傾向があった。
・解析時点で、538人の参加者のうち536人が死亡しており、手術や定位照射でコントロール不能な脳転移を有する患者の生命予後の悪さが再認識された。全生存期間中央値は、支持療法単独群で8.5週間、全脳照射併用群で9.2週間だった。
2016年09月03日
ザーコリの適応疾患として「ROS1陽性肺癌」を追加申請
2016年8月31日付で、ファイザー社はザーコリの適応疾患として「ROS1陽性肺癌」を追加する申請を行ったようです。
以下のプレスリリースに詳細が記載されています。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2016/2016_08_31.html
問題は、ROS1陽性肺癌を見つけるための検査がいまだ実地臨床では行えないことです。
適応拡大とともにROS1検出のためのコンパニオン診断も承認されるのだと思いますが、sEGFRm,ALKに続き、ROS1も調べなければならないとなると、採取すべき腫瘍検体の量、コストの面でさらに負担が増えます。
現場で働くものとしては、治療選択肢が増えるという意味で期待が高まる反面、ROS1陽性肺癌をいかに検出するか、頭が痛いところです。
以下のプレスリリースに詳細が記載されています。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2016/2016_08_31.html
問題は、ROS1陽性肺癌を見つけるための検査がいまだ実地臨床では行えないことです。
適応拡大とともにROS1検出のためのコンパニオン診断も承認されるのだと思いますが、sEGFRm,ALKに続き、ROS1も調べなければならないとなると、採取すべき腫瘍検体の量、コストの面でさらに負担が増えます。
現場で働くものとしては、治療選択肢が増えるという意味で期待が高まる反面、ROS1陽性肺癌をいかに検出するか、頭が痛いところです。
2016年09月03日
Atezolizumabもやってきた
2016年8月31日付で、Genentech社のAtezolizumabに関するプレスリリースがあった模様です。
プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った非小細胞肺癌の患者さんを対象に、タキソテールとの比較第III相試験で全生存期間を有意に改善したということですから、位置づけとしてはオプジーボと完全に競合します。
オプジーボはPD-1抗体、AtezolizumabはPD-L1抗体ですが、どう使い分けることになるんでしょうね。
Genentech社はRocheグループの傘下にありますから、我が国では中外製薬がAtezolizumabの販売を展開することになるでしょう。
AtezolizumabはPD-L1抗体を用いて腫瘍細胞と腫瘍内浸潤細胞を免疫染色して治療効果予測を行うことで知られていますが、さてさて、病理医の先生方が発狂しないような結果だといいのですが・・・。
Phase III Study Showed Genentech’s Cancer Immunotherapy TECENTRIQTM (Atezolizumab) Helped People with a Specific Type of Lung Cancer Live Significantly Longer Compared to Chemotherapy
Wednesday, Aug 31, 2016
Rocheグループの一員であるGenentech社は、2016年8月31日付で、Atezolizumabに関するOAK試験についてプレスリリースを行った。OAK試験は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較する試験だったが、主要評価項目のひとつである全生存期間を有意に改善した。Atezolizumabの有害事象は、これまでに報告されているものと同様だった。Genentech社は、OAK試験の結果全容を2016年中に予定されている学会で報告する予定である。
Rocheグループの最高医学責任者兼国際開発責任者のSandra Horning博士は次のように述べている。
「OAK試験の結果は、進行非小細胞肺癌の特定の一群に対して、Atezolizumabが有効な選択肢であることの根拠を加えることになった」
「肺癌は予後不良な疾患であるが、OAK試験の結果は大いに肺癌患者を勇気付けるだろう」
「出来るだけ早く、Atezolizumabを治療選択肢の一つとして、患者さんに届けたい」
米国食品医薬品局は、標準化学療法(白金製剤ベースの化学療法、EGFR遺伝子変異陽性またはALK陽性肺がんに対しては適切な分子標的療法)施行中または施行後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLC患者への投与について画期的治療薬に指定していた。本指定は、重篤または致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審査の促進を目的として導入された制度である。
Genentech社は、早期もしくは進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumab単独、もしくはAtezolizumabと他剤との併用療法に関する第III相臨床試験を計8件行っている。
OAK試験は、国際多施設共同オープンラベル無作為化第III相試験であり、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った局所進行もしくは進行非小細胞肺癌患者を対象に、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較するものだった。
主要評価項目は2つあり、
・参加した全患者を対象とした、intent-to-treat解析による全生存期間
・PD-L1発現状態で選択した患者サブグループにおける全生存期間
とした。
PD-L1発現は、腫瘍細胞(TC)と腫瘍内浸潤細胞(IC)に対する免疫染色で評価した。Roche Tissue Diagnositics社のSP142抗体を用い、免疫染色スコアをTC1/TC1/TC3もしくはIC1/IC2/IC3と分類した。
副次評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、奏効持続期間、安全性とした。
1225人の患者が1:1の割合で、タキソテール群(75mg/㎡、点滴静注、3週間ごと)とAtezolizumab群(1200mg, 点滴静注、3週間ごと)に無作為に割り付けられた。Atezolizumab療法は治療効果が持続する限りは、耐容不能な毒性に見舞われるまで続けられた。治療効果に関する初回評価は当初の850人が評価可能となった時点で行い、2回目の評価は1225人全てが評価可能となった時点で行われた。
プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った非小細胞肺癌の患者さんを対象に、タキソテールとの比較第III相試験で全生存期間を有意に改善したということですから、位置づけとしてはオプジーボと完全に競合します。
オプジーボはPD-1抗体、AtezolizumabはPD-L1抗体ですが、どう使い分けることになるんでしょうね。
Genentech社はRocheグループの傘下にありますから、我が国では中外製薬がAtezolizumabの販売を展開することになるでしょう。
AtezolizumabはPD-L1抗体を用いて腫瘍細胞と腫瘍内浸潤細胞を免疫染色して治療効果予測を行うことで知られていますが、さてさて、病理医の先生方が発狂しないような結果だといいのですが・・・。
Phase III Study Showed Genentech’s Cancer Immunotherapy TECENTRIQTM (Atezolizumab) Helped People with a Specific Type of Lung Cancer Live Significantly Longer Compared to Chemotherapy
Wednesday, Aug 31, 2016
Rocheグループの一員であるGenentech社は、2016年8月31日付で、Atezolizumabに関するOAK試験についてプレスリリースを行った。OAK試験は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較する試験だったが、主要評価項目のひとつである全生存期間を有意に改善した。Atezolizumabの有害事象は、これまでに報告されているものと同様だった。Genentech社は、OAK試験の結果全容を2016年中に予定されている学会で報告する予定である。
Rocheグループの最高医学責任者兼国際開発責任者のSandra Horning博士は次のように述べている。
「OAK試験の結果は、進行非小細胞肺癌の特定の一群に対して、Atezolizumabが有効な選択肢であることの根拠を加えることになった」
「肺癌は予後不良な疾患であるが、OAK試験の結果は大いに肺癌患者を勇気付けるだろう」
「出来るだけ早く、Atezolizumabを治療選択肢の一つとして、患者さんに届けたい」
米国食品医薬品局は、標準化学療法(白金製剤ベースの化学療法、EGFR遺伝子変異陽性またはALK陽性肺がんに対しては適切な分子標的療法)施行中または施行後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLC患者への投与について画期的治療薬に指定していた。本指定は、重篤または致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審査の促進を目的として導入された制度である。
Genentech社は、早期もしくは進行非小細胞肺癌患者に対して、Atezolizumab単独、もしくはAtezolizumabと他剤との併用療法に関する第III相臨床試験を計8件行っている。
OAK試験は、国際多施設共同オープンラベル無作為化第III相試験であり、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った局所進行もしくは進行非小細胞肺癌患者を対象に、Atezolizumabとタキソテールの効果を比較するものだった。
主要評価項目は2つあり、
・参加した全患者を対象とした、intent-to-treat解析による全生存期間
・PD-L1発現状態で選択した患者サブグループにおける全生存期間
とした。
PD-L1発現は、腫瘍細胞(TC)と腫瘍内浸潤細胞(IC)に対する免疫染色で評価した。Roche Tissue Diagnositics社のSP142抗体を用い、免疫染色スコアをTC1/TC1/TC3もしくはIC1/IC2/IC3と分類した。
副次評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、奏効持続期間、安全性とした。
1225人の患者が1:1の割合で、タキソテール群(75mg/㎡、点滴静注、3週間ごと)とAtezolizumab群(1200mg, 点滴静注、3週間ごと)に無作為に割り付けられた。Atezolizumab療法は治療効果が持続する限りは、耐容不能な毒性に見舞われるまで続けられた。治療効果に関する初回評価は当初の850人が評価可能となった時点で行い、2回目の評価は1225人全てが評価可能となった時点で行われた。