2018年02月28日
中心静脈ポート
「たかだか肺がんの薬物療法くらいに、中心静脈ポートなんて必要ない!」
というのが、私の持論だった。
「殺細胞性抗腫瘍薬の点滴に、輸液ポンプを使うのはナンセンスだ!」
というのと同じくらいの勢いで、そう思っていた。
肺がんの薬物療法に、日をまたぐような治療はない。
大腸がんの治療とは違うのだ。
きちんと血管確保をすれば、中心静脈ポートに感染を起こすリスクを冒すよりもいい、と考えていた。
また、ビノレルビンやアムルビシンのようないわゆる起壊死性抗腫瘍薬が血管外漏出した際に、輸液ポンプを使っているとどんどん血管外漏出を助長してしまうわけで、そうした点から輸液ポンプは使わない主義だった。
・・・しかし、これは本当に正しいのか?
最近、末梢挿入型中心静脈ルート(PICC)を使うことが多い。
商品名「グローション・カテーテル」というシリコン製のキットを使うのだが、これがとても具合がいい。
使い始めたころは挿入するのに大変難渋したが、今ではエコーガイド下にわりとスムーズに挿入できるようになり、他の医師からもしばしば依頼を受ける始末。
http://oitahaiganpractice.blog.fc2.com/blog-entry-22.html
従来の中心静脈用カテーテルに比べて、遥かに患者のストレスが少なく、挿入時の合併症もなく、感染も起こさず、しかも長持ちする。
たぶん中心静脈ポートでもそれなりに技術革新があるのではないか。
最近、肺小細胞がん患者さんの二次化学療法とその後の支持療法を濃厚に行うことがあったが、ポートにかなり助けられた。
中心静脈ポートが利用できる環境にあるのなら、そして腕の血管が心細くなってきたら、積極的に検討すべきだ。
そして、中心静脈ポートからの点滴という前提なら、輸液ポンプを使うのもありだ。
最近は、ポンプではないけれど、輸液の滴下速度が適正かどうかを管理してくれるデバイスも存在する(DRIP EYEだったかな?当院にはないけれど、たぶん採用している病院は多数あるだろう)。
そろそろ認識を改めなければ。
というのが、私の持論だった。
「殺細胞性抗腫瘍薬の点滴に、輸液ポンプを使うのはナンセンスだ!」
というのと同じくらいの勢いで、そう思っていた。
肺がんの薬物療法に、日をまたぐような治療はない。
大腸がんの治療とは違うのだ。
きちんと血管確保をすれば、中心静脈ポートに感染を起こすリスクを冒すよりもいい、と考えていた。
また、ビノレルビンやアムルビシンのようないわゆる起壊死性抗腫瘍薬が血管外漏出した際に、輸液ポンプを使っているとどんどん血管外漏出を助長してしまうわけで、そうした点から輸液ポンプは使わない主義だった。
・・・しかし、これは本当に正しいのか?
最近、末梢挿入型中心静脈ルート(PICC)を使うことが多い。
商品名「グローション・カテーテル」というシリコン製のキットを使うのだが、これがとても具合がいい。
使い始めたころは挿入するのに大変難渋したが、今ではエコーガイド下にわりとスムーズに挿入できるようになり、他の医師からもしばしば依頼を受ける始末。
http://oitahaiganpractice.blog.fc2.com/blog-entry-22.html
従来の中心静脈用カテーテルに比べて、遥かに患者のストレスが少なく、挿入時の合併症もなく、感染も起こさず、しかも長持ちする。
たぶん中心静脈ポートでもそれなりに技術革新があるのではないか。
最近、肺小細胞がん患者さんの二次化学療法とその後の支持療法を濃厚に行うことがあったが、ポートにかなり助けられた。
中心静脈ポートが利用できる環境にあるのなら、そして腕の血管が心細くなってきたら、積極的に検討すべきだ。
そして、中心静脈ポートからの点滴という前提なら、輸液ポンプを使うのもありだ。
最近は、ポンプではないけれど、輸液の滴下速度が適正かどうかを管理してくれるデバイスも存在する(DRIP EYEだったかな?当院にはないけれど、たぶん採用している病院は多数あるだろう)。
そろそろ認識を改めなければ。
2018年02月21日
JAVELIN Lung 200のupdated data
倫理的配慮からやむを得ない試験デザインだったのだと思うが、プロトコール治療後の免疫チェックポイント阻害薬クロスオーバーによってnegative studyとなってしまったのは痛恨の出来事だろう。
一方、PD-L1中等度発現以上の患者群で、どの程度クロスオーバーされていたのかは興味深い。
ここをきちんと解析することによって、中等度発現以上のサブグループではやっぱり使っていいんじゃないの、Pembrolizumabとバッティングするけど考えてみていいんじゃないの、ということになるかも知れない。
ともかくも、PD-1 / PD-L1に関わる治療開発に当たっては、よく考えて試験デザインをしないとならないようだ。
Update on Phase III JAVELIN Lung 200 Trial of Avelumab Monotherapy in Previously Treated Patients With Advanced NSCLC
By The ASCO Post
Posted: 2/20/2018 4:27:50 PM
Last Updated: 2/20/2018 9:40:04 PM
2月15日、第III相JAVELIN Lung 200試験の追跡調査結果が公表された。本試験の目的は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行した切除不能、術後再発、もしくは進行非小細胞肺がん患者に対する二次治療として、Avelumabとドセタキセルの効果を比較することだった。
本試験は主要評価項目であるPD-L1発現が1%以上ある患者の全生存期間延長を達成できなかった(ハザード比0.90, 95%信頼区間0.72-1.12, p=0.1627)が、プロトコール治療終了後に免疫チェックポイント阻害薬の治療へクロスオーバーされたドセタキセル群の患者割合が想定以上に高く、このことが全生存期間結果に影響している可能性がある(プロトコール治療後に免疫チェックポイント阻害薬治療を受けた患者の割合は、ドセタキセル群で26.4%、Avelumab群で5.7%)。
一方で、PD-L1発現が中等度以上のサブグループ(PD-L1発現割合が50%以上の患者群で、患者全体の40%程度を占める)およびPD-L1発現が高度のサブグループ(PD-L1発現割合が80%以上の患者群で、患者全体の30%を占める)では、ドセタキセル群に対するAvelumab群の全生存期間延長効果が確認された(中等度以上のサブグループではハザード比0.67、95%信頼区間は0.51-0.89、p=0.0052、高度のサブグループではハザード比0.59、95%信頼区間は0.42-0.83、p=0.0022)。
今回の臨床試験で確認された有害事象のプロファイルは、過去のJAVELIN臨床試験群と比べて、新奇なものはなかった。
JAVELIN Lung 200の詳細な結果は、今後の学術集会で明らかにされる予定で、製薬会社は規制当局とデータを共有し、今後の薬事承認申請に向けて交渉を進めることになる。
2017年、Avelumabは進行メルケル細胞腫瘍に対してFDAとEUから、進行尿路上皮癌に対してFDAから薬事承認を受けている。また、2017年12月には、未治療進行腎細胞がんに対する多剤併用療法の一翼として、FDAのブレークスルー治療指定を受けている。
一方、PD-L1中等度発現以上の患者群で、どの程度クロスオーバーされていたのかは興味深い。
ここをきちんと解析することによって、中等度発現以上のサブグループではやっぱり使っていいんじゃないの、Pembrolizumabとバッティングするけど考えてみていいんじゃないの、ということになるかも知れない。
ともかくも、PD-1 / PD-L1に関わる治療開発に当たっては、よく考えて試験デザインをしないとならないようだ。
Update on Phase III JAVELIN Lung 200 Trial of Avelumab Monotherapy in Previously Treated Patients With Advanced NSCLC
By The ASCO Post
Posted: 2/20/2018 4:27:50 PM
Last Updated: 2/20/2018 9:40:04 PM
2月15日、第III相JAVELIN Lung 200試験の追跡調査結果が公表された。本試験の目的は、プラチナ併用化学療法後に病勢進行した切除不能、術後再発、もしくは進行非小細胞肺がん患者に対する二次治療として、Avelumabとドセタキセルの効果を比較することだった。
本試験は主要評価項目であるPD-L1発現が1%以上ある患者の全生存期間延長を達成できなかった(ハザード比0.90, 95%信頼区間0.72-1.12, p=0.1627)が、プロトコール治療終了後に免疫チェックポイント阻害薬の治療へクロスオーバーされたドセタキセル群の患者割合が想定以上に高く、このことが全生存期間結果に影響している可能性がある(プロトコール治療後に免疫チェックポイント阻害薬治療を受けた患者の割合は、ドセタキセル群で26.4%、Avelumab群で5.7%)。
一方で、PD-L1発現が中等度以上のサブグループ(PD-L1発現割合が50%以上の患者群で、患者全体の40%程度を占める)およびPD-L1発現が高度のサブグループ(PD-L1発現割合が80%以上の患者群で、患者全体の30%を占める)では、ドセタキセル群に対するAvelumab群の全生存期間延長効果が確認された(中等度以上のサブグループではハザード比0.67、95%信頼区間は0.51-0.89、p=0.0052、高度のサブグループではハザード比0.59、95%信頼区間は0.42-0.83、p=0.0022)。
今回の臨床試験で確認された有害事象のプロファイルは、過去のJAVELIN臨床試験群と比べて、新奇なものはなかった。
JAVELIN Lung 200の詳細な結果は、今後の学術集会で明らかにされる予定で、製薬会社は規制当局とデータを共有し、今後の薬事承認申請に向けて交渉を進めることになる。
2017年、Avelumabは進行メルケル細胞腫瘍に対してFDAとEUから、進行尿路上皮癌に対してFDAから薬事承認を受けている。また、2017年12月には、未治療進行腎細胞がんに対する多剤併用療法の一翼として、FDAのブレークスルー治療指定を受けている。
2018年02月21日
FDA、局所進行非小細胞肺がんにDurvalumabを承認
何はともあれ、治癒を目指せる治療法が増えるのはとても意義深い。
FDA Expands Approval of Durvalumab to Reduce the Risk of NSCLC Progression
By The ASCO Post
Posted: 2/20/2018 5:56:34 PM
Last Updated: 2/20/2018 9:44:22 PM
2018年2月16日、米国食品医薬品局は、放射線化学療法後に病勢進行に至っていない切除不能III期非小細胞肺がん患者に対するDurvalumab療法を承認した。このsettingの治療としては、これが初の薬事承認となる。切除不能III期非小細胞肺がん患者に対し、進行を抑えるための標準治療はこれまで放射線化学療法だったが、この治療により治癒に至る患者は一握りだった。今回の承認により、放射線化学療法後により長くがんの病勢進行を抑え込む治療を受けられるようになった。
DurvalumabはPD-1 / PD-L1経路を治療標的としている。PD-1 / PD-L1の相互作用を阻害することにより、Durvalumabは患者の免疫システムががん細胞を攻撃する手助けをする。2017年の段階で、Durvalumabは先行して進行膀胱がんに対する迅速承認を受けていた。
今回の承認は、すなわち、放射線化学療法完遂後病勢進行に至っていない切除不能III期非小細胞肺がん患者713人を対象としたPACFIC試験の結果に基づいている。この試験の評価項目は無増悪生存期間だった。無増悪生存期間中央値は、Durvalumabを使用した患者群で16.8か月、使用しなかった患者群で5.6か月だった。加えて、PACIFIC試験のスポンサーであるアストラゼネカ社は、本試験で放射線化学療法後にDurvalumabを使用した患者の全生存期間データをFDAに提出することを、市販後臨床調査の一環として行うことに同意している。
Durvalumabに関連した頻度の高い有害事象は、咳、疲労感、肺臓炎 / 放射線肺炎、上気道感染、呼吸困難、発疹だった。
重篤な有害事象には、肺臓炎、肝炎、腸炎、内分泌障害、腎炎といった免疫関連有害事象が含まれる。Durvalumabはまた、胎児発育に対する毒性も有している。そのため、女性の患者に対しては胎児発育への潜在的なリスクが説明され、避妊することが推奨されねばならない。
FDA Expands Approval of Durvalumab to Reduce the Risk of NSCLC Progression
By The ASCO Post
Posted: 2/20/2018 5:56:34 PM
Last Updated: 2/20/2018 9:44:22 PM
2018年2月16日、米国食品医薬品局は、放射線化学療法後に病勢進行に至っていない切除不能III期非小細胞肺がん患者に対するDurvalumab療法を承認した。このsettingの治療としては、これが初の薬事承認となる。切除不能III期非小細胞肺がん患者に対し、進行を抑えるための標準治療はこれまで放射線化学療法だったが、この治療により治癒に至る患者は一握りだった。今回の承認により、放射線化学療法後により長くがんの病勢進行を抑え込む治療を受けられるようになった。
DurvalumabはPD-1 / PD-L1経路を治療標的としている。PD-1 / PD-L1の相互作用を阻害することにより、Durvalumabは患者の免疫システムががん細胞を攻撃する手助けをする。2017年の段階で、Durvalumabは先行して進行膀胱がんに対する迅速承認を受けていた。
今回の承認は、すなわち、放射線化学療法完遂後病勢進行に至っていない切除不能III期非小細胞肺がん患者713人を対象としたPACFIC試験の結果に基づいている。この試験の評価項目は無増悪生存期間だった。無増悪生存期間中央値は、Durvalumabを使用した患者群で16.8か月、使用しなかった患者群で5.6か月だった。加えて、PACIFIC試験のスポンサーであるアストラゼネカ社は、本試験で放射線化学療法後にDurvalumabを使用した患者の全生存期間データをFDAに提出することを、市販後臨床調査の一環として行うことに同意している。
Durvalumabに関連した頻度の高い有害事象は、咳、疲労感、肺臓炎 / 放射線肺炎、上気道感染、呼吸困難、発疹だった。
重篤な有害事象には、肺臓炎、肝炎、腸炎、内分泌障害、腎炎といった免疫関連有害事象が含まれる。Durvalumabはまた、胎児発育に対する毒性も有している。そのため、女性の患者に対しては胎児発育への潜在的なリスクが説明され、避妊することが推奨されねばならない。