2016年04月30日

liquid biopsyの妥当性を検証する前向き試験

 いわゆるliquid biopsyの妥当性に関する論文報告があったようです。
 要約に目を通してみると、
・進行非小細胞・非扁平上皮癌の遺伝子変異検索に関する限り、EGFR Ex.19およびEx.21変異検出については組織検体を用いた検査と遜色ない
・採血した日から遺伝子変異検査結果が返ってきた日までの日数は、圧倒的に通常の検査法よりliquid biopsyのほうが早い(おそらく、採血後に生検検体採取のための検査が行われた患者さんや、生検検体がうまく取れずに何度も検査をした患者さんが含まれているせいだろうと思います)
・T790M変異検出時の陽性的中率、KRAS変異検出時の感度は他の変異に比べてやや劣る
とされています。
 
 liquid biopsyは遺伝子変異検索を非侵襲的に行うためのもの、という捉え方が一般的かもしれません。
 ただ、通常生検とは異なり、liquid biopsyの結果から「がん」という病気を確定診断する段階にはまだ至っておらず、今のところは生検組織検体を用いた診断を補完するもの、という位置づけに留まります。
 今後は、「非肺がん患者では、EGFR変異、KRAS変異(さらには、次世代シーケンサーで包括的に調べうるその他のドライバー遺伝子変異)が全く認められない」、という研究データが欲しいですね。
 そうすると、初回診断時のliquid biopsyでこれらの異常が検出された場合には病理診断が不要、というところまで診断概念が発展し、そうすると血液検査で肺癌と確定診断できるというとても大きなパラダイムシフトが起こります。
 発見された遺伝子異常に対する分子標的薬があれば、薬物療法の方針まで決まります。
 ここまで来ると、患者さんや病理診断医の負担がぐっと経るかもしれませんね。
 ただ、特定の遺伝子異常が見つからなかった患者さんでは、従来どおりの生検診断が必要になるでしょうし、こういった患者さんを集めて研究を進めると、発癌に関わるepigeneticな異常が新たに見つかるかもしれません。
 liquid biopsyを研究している先生方には、その辺まで意識しながら研究や学会活動を進めていただけると、臨床医としてはとても助かります。


Prospective Validation of Rapid Plasma Genotyping for the Detection of EGFR and KRAS Mutations in Advanced Lung Cancer.
Sacher AG, Paweletz C, Dahlberg SE, Alden RS, O'Connell A, Feeney N, Mach SL, Jänne PA, Oxnard GR.
JAMA Oncol. 2016 Apr 7, [Epub ahead of print]

背景:
 血漿中循環DNA(cell free FNA, cfDNA)は、組織検体を用いた遺伝子変異検索や再生検が抱える本質的な欠点(侵襲、不確実性)を克服し、迅速・非侵襲的な遺伝子変異検索を可能にする可能性を秘めている。
目的:
 血漿をもちいたデジタルPCR(ddPCR)による、EGFR Ex.19, Ex.21, T790M変異およびKRAS変異の迅速診断について、前向きに検証すること
方法:
 米国国立癌研究所包括がんセンターにおいて、2014年7月3日から2015年6月30日にかけて患者を集積した。進行非小細胞・非扁平上皮癌患者で、(1)新規に確定診断され、これから初回治療を開始する、あるいは(2)既にEGFR-TKIによる治療を受けて耐性化し、再生検を計画されている、のいずれかを満たす患者を対象とした。患者登録後、直ちに血漿サンプルを採取し、EGFR Ex.19, Ex.21, T790M, KRAS G12Xについて検索した。全ての患者は組織検体を用いた遺伝子変異検索のために生検が行われ、その結果をゴールデンスタンダードとした。血漿サンプル採取日から検査結果報告書が返ってきた日までの営業日数をターンアラウンドタイム(TAT)として測定した。
結果:
 180人の患者が参加した。62%が女性だった。年齢中央値は62歳、範囲は37-93歳だった。120人は新規に診断された患者、60人はEGFR-TKI治療後に耐性化した患者だった。遺伝子変異検索を行ったところ、EGFR Ex.19 / Ex.21変異陽性者が80人、T790M変異陽性者が35人、KRAS G12X変異陽性者が25人だった。血漿ddPCRを用いた遺伝子変異検索ににかかったTATの中央値は3日間(1-7日間)だった。組織検体を用いた遺伝子変異検索にかかったTATの中央値は、新規に診断された患者で12日間(1-54日間)、耐性化後に再生検が行われた患者で27日間(1-146日間)だった。血漿ddPCRと組織検体での遺伝子変異検索結果を比較したところ、陽性的中率はEGFR Ex.19変異で100%(95%信頼区間は91-100%)、EGFR Ex.21変異で100%(95%信頼区間は85-100%)、KRAS G12X変異で100%(95%信頼区間は79-100%)、T790M変異ではやや低く79%(95%信頼区間は62-91%)だった。感度はEGFR Ex.19変異で82%(95%信頼区間は69-91%)、EGFR Ex.21変異で74%(95%信頼区間は55-88%)、T790M変異で77%(95%信頼区間は60-90%)、KRAS G12X変異ではやや低く64%(95%信頼区間は43-82%)だった。EGFRやKRAS変異に関する感度は多発転移巣を有する患者や、肝転移、骨転移を有する患者で高い傾向にあった。
結論:
 血漿ddPCRは高い特異度で迅速にEGFRおよびKRAS遺伝子変異を検出し、治療法選択や再生検回避のために有用である。また、腫瘍遺伝子変異の空間的多様性(tumor heterogenity)のために、組織検索では遺伝子変異解析が困難な患者においても、血漿ddPCRを用いればT790M変異検出が可能かもしれない。
  

Posted by tak at 19:24Comments(0)検査法

2016年04月29日

PD-L1発現を見るための検査

 既に非小細胞肺癌で承認されたニボルマブは年間3000-4000万円、近い将来承認されるであろうペンブロリズマブは年間1億円の薬価がかかります。
 このうち90%以上は国民全体が税金や借金として負担します。
 それだけに、治療効果予測因子を開発し、不要な使用を避けるのが喫緊の課題といわれています。
 いまのところはっきりしているのは、腫瘍細胞もしくは腫瘍に浸潤する炎症細胞のPD-L1発現状態が予測因子として一定の有用性がありそう、ということです。
 しかしながら、そのPD-L1発現状態を見るための方法はさまざまあり、今のところ標準化されていません。
 そのために、ニボルマブが使用可能になった現在も、PD-L1発現をみる検査を一般臨床で利用することは出来ません。
 おそらく、ペンブロリズマブの承認時にはコンパニオン診断(Dako 22C3 assay)が利用可能になるでしょう。
 また、標準化を待たず、各治療薬ごとにコンパニオン診断薬が異なる、という状況になるでしょう。
 既にEGFRやALKの治療では、コンパニオン診断の取り扱いが問題になっています。
 個人的には、科学的に妥当ならばどの検査でもよくて、ほぼ商業的な問題だろうと思っています。

 今年のAACRでなされた報告では、異なるPD-L1検査間の一致率が検証され、どの検査でもよさそう、という結論に至ったようです。
 ただ、それぞれの検査でどこにカットオフ値を設定したら結果が一致する、ということは示されていますが、治療効果予測を行う上でどこにカットオフ値を設定するか、というのはまた別問題です。


AACR 2016: Comparison of Three Different PD-L1 NSCLC Diagnostic Tests Shows a High Degree of Concordance

Abst.# LB-094, Ratcliffe et al, AACR Annural Meeting 2016

 現在市販されている3種のPD-L1関連検査の検出精度はどれも同様であることが報告された。
 Ratcliffe女史は、
 「PD-1抗体、PD-L1抗体は単独療法でも併用療法でも、さまざまな癌種で効果があることが確認されつつある」
と語り、どの患者がPD-L1を高発現していて、PD-1抗体やPD-L1抗体の効果が期待できるのか、いくつかの異なる検査で効果的に調べることができると説明している。
 「これまでは、いくつかあるPD-L1関連検査が同じようにPD-L1発現を検出できるのかはっきりしていなかった。それぞれの検査が異なる背景で、異なる抗体を用いて、異なる手順で開発されてきた。このことは、治療効果が期待できる患者選別の信頼性を損なうなど、実地臨床におけるさまざまな問題に結びつく」

 今回は、durvalumabの開発段階でVentana社とAstraZeneca社が共同開発したVentana SP263抗体、Pembrolizumabの開発段階でDako社がコンパニオン診断として開発し米国食品医薬品局の承認を受けたDako 22C3抗体、そしてNivolumabの開発段階でDako社が開発したDako 28-8抗体について検討した。

 これら3種ともに、各抗体でPD-L1蛋白を認識して、腫瘍細胞の細胞膜を染色し、その陽性割合を評価する。それぞれの検査種ごとにカットオフ値を設定し、検査結果がカットオフ値を超えた場合、その患者は治療反応性が期待できると判定される。
 非小細胞肺癌患者から採取された約500の生検検体が評価された。
 Ventana SP263でカットオフ値を25%としたものと、Dako 28-8でカットオフ値を10%としたものが同等だった。また、Ventana SP263とDako 22C3でそれぞれカットオフ値を50%とした場合も、高精度で結果が一致していた。いずれも、90%以上の一致率だった。  

2016年04月29日

BRAF変異を有する非小細胞肺癌とdabrafenib

 原発性肺がんにおいて、ALK遺伝子再構成、ROS1遺伝子再構成、RET遺伝子再構成など、希少な遺伝子異常がさまざま報告されています。
 BRAF V600E変異もそういった希少な遺伝子異常のひとつです。
 今回は、このBRAF変異に対するdabrafenibの報告です。
 EGFR遺伝子変異を含め、上記の各遺伝子異常に対する治療の中では、ちょっと物足らない結果のような気がします。
 また、治療を受けた患者において、実に17%が皮膚がんを発症したというのは、本当ならちょっと受け入れがたい話です。
 これまた、ちょっと前のASCO evening postから。

 Planchardらは、BRAF変異陽性の進行非小細胞肺癌患者に対し、BRAFキナーゼ阻害薬であるdabrafenibの有効性を検証する第II相試験を行い、Lancet Oncology誌に発表した。BRAF V600E変異は肺腺癌の1-2%に認められるとされる。

 治療歴のない6人を含む、84人の患者が本試験に参加し、1回150mg、1日2回のdabrafenibを服用した。患者の平均年齢は66歳、50%が女性で、76%が白人、22%がアジア人、37%が非喫煙者だった。化学療法歴は、1レジメンが51%、2レジメンが18%、3レジメンが31%だった。
 78人の既治療患者において、奏効割合は33%(26人)、病勢コントロール割合は24%(19人)だった。未治療の6人では、奏効割合は67%(4人)だった。既治療患者での奏効持続期間中央値は9.6ヶ月で、未治療患者の奏効持続期間は3.2-12.5ヶ月の範囲だった。既治療患者の無増悪生存期間中央値は5.5ヶ月で、未治療患者の無増悪生存期間は4.0-16.6ヶ月の範囲だった。
 
 Grade 3以上の有害事象は、皮膚扁平上皮癌発症が12%、無力症が5%、基底細胞癌発症が5%だった。深刻な有害事象は42%に認められた。dabrafenibに関連すると思われる頭蓋内出血により1人が死亡した。


  

2016年04月29日

肝転移と放射線治療

 肺がんには転移しやすい場所があります。
 いつも講義で学生に伝えていますが、
・肺(原発巣以外の別の部分へ)
・肝臓
・副腎
・骨
・脳
というのが好発部位です。

 これらのうち、よく緩和的な放射線治療の対象となるのは、神経症状の出やすい脳や、痛みの出やすい骨です。
 定位放射線照射が一般化してからは、手術後の肺内転移再発(新規発症の肺癌も含めて)に対しても放射線治療を行うことが多くなりました。
 ここ数年は手術よりも体の負担が少ない定位放射線照射が行われる機会が多いようです。
 その一方で、肝転移に対する放射線治療はあまり聞きませんし、私自身も自分の担当患者さんにしたことはありません。

 そういったわけで、肝転移巣への放射線照射にどの程度の意義があるのかわからないのですが、肝転移巣に対する放射線照射の効果には、もともとのがんがどこから発生したものかによって差がある、といった報告があります。
 大腸がんからの肝転移は効果が乏しいようです。
 個人的には、原発巣がどこか、という検討は治療選択上はあまり役立たない気がします。
 一方、彼らが現在計画中の、遺伝子発現スコアにより放射線照射量を決める、というアプローチは、放射線治療の個別化という意味では多少の魅力があります。
 ただし、放射線照射量を規定する因子は、腫瘍の放射線感受性よりも周囲臓器の照射限界量と考えられていますから、治療抵抗性の腫瘍にはより多くの放射線を当てる、という取り組みの一方で、いかに周囲臓器への照射を範囲・照射量ともに抑えるか、という工夫も必要になるでしょう。
 以下、ちょっと前のASCO evening postより。
 論文自体は2015年の7月にpublishされており、なぜ今回取り上げられたのかは不明です。
 

Study Finds Radiosensitivity Differences Between Liver Metastases Based on Primary Histology

Ahmed et al.

 放射線照射は、主な病巣のコントロールが1年以上できている場合において、肝転移巣の治療選択肢として一般的である。しかし、治療効果には個人差があり、効果予測因子ははっきりしていない。Moffitt Cancer CenterのAhmedらは、放射線治療感受性は腫瘍の原発巣がどこかによって異なると報告した。

 以前、Ahmedらは、10種の異なる遺伝子発現状態に基づいて、放射線治療感受性を予測するradiosensitivity index(RSI)を開発した。Moffitt Cancer CenterのJavier Torres-Rocaは、
 「RSIは現在利用できる治療効果予測スコアの中では最もよく検証された指標であり、放射線感受性に関するより深い理解や放射線治療の個別化アプローチに向けての重要なステップである」
とコメントしている。
 彼らはまた、腫瘍転移巣の放射線感受性が解剖学的な部位によって異なることをRSIを用いて示した。たとえば、大腸がんの肺転移巣は、肝転移巣よりも放射線感受性が高い。
 
 今回は、肝転移巣に研究対象を絞った。RSIを利用した放射線感受性に関するTotal Cancer Care Databaseから、372ヶ所の異なる肝転移巣を抽出、分析した。その結果、肝転移巣は原発巣によって異なる放射線感受性を示していた。
 調査対象となったのは、肝転移を有し、放射線治療を受けた33人の患者だった。原発巣の内訳は、大腸がん、乳がん、肛門がん、肺腺がんだった。大腸がんからの肝転移は、他に比べて有意に放射線治療抵抗性だった。大腸がんからの肝転移巣10ヶ所は経過観察期間中に制御不能となり、一方他の部位からの肝転移巣は、経過観察期間中には悪化していなかった。

 Ahmedは、
 「今回の検討により、肝転移巣に対する治療選択において原発巣の組織型が重要な判断基準であり、放射線治療医が治療適応を判断する際に意識しなければならない要素であることがはっきりした。この結果を踏まえ、肝転移巣に対する定位放射線照射を行う際に、RSIスコアなどの遺伝子スコアをもとに照射量を設定する臨床試験を計画している」
と話していた。

 
  

Posted by tak at 14:03Comments(0)放射線治療

2016年04月16日

悪性胸膜中皮腫に対するリステリア免疫療法

 こちらも、ELCC2016から。
 うわさには聞いていましたが、悪性胸膜中皮腫に対するリステリア免疫療法の結果が報告されたようです。 
 全く新しい治療概念です。
 生きた病原菌を患者さんに注射するなんて、さらにそのあとに引き続いて感染症の増悪を招く恐れのある化学療法を行うなんて、しかもそれで菌血症、敗血症に関わる致命的な有害事象の報告がないなんて・・・。
 おっどろき!です。

・Abst. #208O_PR, Jahan et al.
 悪性胸膜中皮腫に対して、化学療法にリステリア生菌を用いた免疫療法を併用するPhase Ibの臨床試験が行われ、90%以上の病勢コントロール割合、59%の奏効割合が得られた。
 悪性胸膜中皮腫は肺を裏打ちする胸膜から発生する腫瘍で、稀ではあるが治療が難しい。標準治療はシスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法だが、奏効割合は30%程度で、生存期間延長効果は限定的である。悪性胸膜中皮腫では、腫瘍内にメゾテリン蛋白が強く発現されている。CRS-207は生物工学によって病原性に関わる2ヶ所の遺伝子を欠失させ、メゾテリンを発現するようにデザインされたリステリア菌の弱毒株である。
 過去の検討では、メゾテリンを発現する腫瘍に罹患した患者にCRS-207を使用すると、抗メゾテリン反応が惹起され、腫瘍特異的な細胞免疫反応が起こることが確認された。また、化学療法との相乗効果を示唆するデータも確認されており、CRS-207と化学療法の併用は理にかなっている。
 化学療法施行可能な切除不能進行悪性胸膜中皮腫患者を対象に、CRS-207と標準化学療法の影響を確認する臨床試験を行った。38人の患者が参加し、当初2週間ごとに2回のCRS-207投与を行い、3週ごとに最大6コースのシスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法を行い、続いて2回のCRS-207投与を3週ごとに行った。さらに、適格患者は8週ごとにCRS-207維持投与を行った。8週間ごとに病勢評価を行った。
 観察期間中央値は9.4ヶ月(0.2-28.1ヶ月)、奏効割合は59%、病勢安定は35%、病勢コントロール割合は94%だった。無増悪生存期間中央値は8.5ヶ月だった。
  CRS-207に関連する主要な毒性はスパイク状の発熱と悪寒戦慄だった。infusion reactionといっていいもので、24時間以内には緩解した。
 プロトコール治療後に3人の患者において腫瘍組織の免疫組織化学的分析が行われたが、腫瘍組織内への著明な白血球浸潤が確認された。CD8陽性細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞が動員されていた。
 現在、第III相試験の計画が進行中で、今年中には何らかの動きがあるだろう、ということだった。  

Posted by tak at 09:45Comments(0)その他

2016年04月16日

updated AURA study results for 1st and 2nd line setting

 肺がんのブログとはまったく関係ありませんが、現在熊本を中心として九州中部で大規模な群発地震が発生しています。
 以前から、別府湾から九重・阿蘇を通って熊本に抜ける線に沿って火山や活断層が集中しており、この地域を中心とした大きな地震が起きる可能性がささやかれていました。
 南阿蘇など、地震というよりは地殻変動と表現したほうがいいくらいのありさまです。
 川内・玄海・伊方の各原発に複合災害が起こらないことを祈るばかりです。

 一方で、現在スイスのジュネーブでは、European Lung Cancer Conference(ELCC)2016が行われています。
 Osimertinibの報告について。
 FLAURA studyの結果が出たら、治療体系が一変しそうです。
 単にT790M陽性患者さんの治療薬としてでなく、T790Mのゲートキーパー変異を含めた既知のEGFR遺伝子変異全体をカバーする治療薬として認識するのが正しい解釈でしょう。
 したがって、afatinib以降行われているように、変異型別の評価を行うのが適切と思われます。

・LBA1_PR, Ramalingam et al.
 Phase IのAURA study, 一次治療でOsimertinibが使用された患者さんに関する報告です。
 推奨用量である80mg/日、その2倍量である160mg/日を一次治療で使用したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者さん60人について報告されています。観察期間中央値は16.6ヶ月です。ということは、半数以上の患者さんは16.6ヶ月以上生存している可能性が高いということです。
 奏効割合は77%、無増悪生存期間中央値は160mg/日を服用している患者さんで19.3ヶ月、80mg/日を服用している患者さんでは未到達(ということは、多分19.3ヶ月よりは長いだろうと予想されます)でした。全体に毒性は軽く、とりわけ80mg/日を服用している患者さんでの忍容性は良好で、毒性に伴う減量が必要だったのはちょうど10%だったということです。
 発表したRamalingam先生によると、
 「今回報告した奏効割合は、これまでにEGFR遺伝子変異陽性患者に対して一次治療として報告されたものの中で最良の効果である。無増悪生存期間の結果は、一次治療ないし二次治療の結果としてこれまでに報告されてきた10-13ヶ月を大きく凌駕しており、「エキサイティング!」である。多くの患者は今もって病勢進行に至っておらず、治療効果は続いている。」
 病勢進行に至った患者は、T790M変異以外の耐性機序によるものと考えられる。
 1次治療におけるOsimertinibの有効性は、Osimertinib vs Gefitinib / Erlotinibという構図で、500人以上の患者が参加するFLAURA studyが進行中で、今後1年半以内には結論が出る予定である。

・LBA2_PR
 の、初回EGFR阻害薬治療後に病勢進行に至ったEGFR遺伝子変異陽性・T790M耐性変異陽性非小細胞肺癌患者さんに対するOsimertinibを80mg/日で使用するAURA studyの結果について、直近の結果が報告された。Phase I expansion cohort 63人では奏効割合は71%、無増悪生存期間中央値は9.7ヶ月、2件のPhase II study 411人では奏効割合は66%、無増悪生存期間中央値は11ヶ月だった。
 発表したJames Yang先生によると、
 「今回報告した奏効割合や無増悪生存期間の結果はこれまでのAURA試験の報告と同様である。間質性肺炎やQT延長といった毒性の頻度は低い。EGFR阻害薬治療後に病勢進行に至り、次治療として化学療法を行った場合に比べて、本治療により4-5ヶ月程度の無増悪生存期間延長が得られることがわかった。こういった患者さんに対しては、Osimertinibは標準治療となったと結論でき、同様に病勢進行後のT790M変異検査を行うこともまた標準診療として必須である。」

 OsimertinibはEGFR遺伝子変異・T790M耐性変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する最初の治療薬として、米国、欧州、日本で迅速承認されている。
  

2016年04月14日

EGFR-TKI耐性化の3つのパターン

 これも出典不明の学会メモから。
 内容は簡潔ですが、耐性化後の経過をよく言い表していると思います。

・EGFR-TKI耐性化後の3パターン
 1)あっという間に増悪(dramatic progression)
 2)ゆっくりと増悪(gradually progression)
 3)局所的に増悪(locally progression)
 2)→3)→1)の順に予後がよい。

・T790M陽性で耐性化した場合、耐性化までの無増悪生存期間(PFS)は短いが、その後の生存期間(post progression survival)は長い。
→第3世代EGFR-TKIを使わなくても、どちらかというとT790M陽性の場合は予後がよい、ということになります。
 第3世代EGFR-TKIが使えるようになれば、もともと予後がいい方だった患者さん(耐性化全体の半分程度を占めるわけですが)の予後がさらに伸びることになります。
 それ以外の、予後不良の患者さんの治療法もはやく見出されますように。

 以上の2点を関連付けると、「ゆっくりと増悪する、もしくは局所的に増悪する患者さんは、T790M陽性である可能性が高く、比較的予後はよい」ということもできそうです。
 身近な患者さんを診ていても、これは当てはまるように思います。  

2016年04月13日

Nivolumabと多剤併用のphase I

 たしか、2014年7月の日本臨床腫瘍学会総会で、国立がん研究センターの神田先生が話しておられた内容だと思います。
 Nivolumab関連の第I相試験。

1st line
 ① CDDP+GEM+Nivolumab→maintenance Nivolumab, n=6
 ② CDDP+PEM+Nivolumab→maintenance (Nivolumab+PEM), n=6
 ③ CBDCA+PTX+BV+Nivolumab→maintenance (Nivolumab+BV), n=6
2nd line
 ④ Docetaxel+Nivolumab→maintenance Nivolumab, n=6

Adverse event
 G4 Depression in Arm②
 G3 Pulmonary infection in Arm④

Response
     PR rate SD rate
①     33.3% 50%
②     50% 33.3%
③     83.3% ND
④     ND      ND
ND: メモが追い付かず。


 
  

2016年04月13日

NSCLC個別化医療時代の気管支鏡診断

<NSCLC個別化医療時代の気管支鏡診断>
 2015年11月26日、日本肺癌学会総会 東京都済生会中央病院 笹田真滋先生

・AZD9291, CO1686などの第3世代EGFR阻害薬が登場し、再生検の必要性が増してきた。

・再生検の論文報告
 Kuiper et al, Oncology 2014
 Yu et al, Clin Cancer Res 2013: 155人の再生検結果について報告、ほとんどがCTガイド下肺針生検
 Yoon et al, Radiology 2012

・再生検の場合、病巣の組織が固い、出血が多い

・EBUS-TBNAでの再生検
 PET(+)のリンパ節にターゲットを絞る
 elastographyを用いると、固い(青く描出される)リンパ節の方が、がん細胞が得られる確率が高い

・ホルマリン固定、Diff-Quick, Papanicoleau, ROSE

・再生検組織は壊死組織をしばしば伴う

・国立がん研究センター中央病院での再生検結果のまとめ
 全部で53件、がん細胞 / 組織が得られたのは43件(83%)、このうち11件はT790M(+), 11件はT790M(-), 1件は小細胞癌転化
 がん細胞 / 組織が得られなかった9件中、5件はwithinだったにも関わらず(-)、4件はatypical cellどまり,1件は感染だった。

・TBLBを行うなら、できれば太径GSを用いた方がいい

・鉗子生検するときは、ゆっくり鉗子を閉じて、数秒待ってから引き抜くといい

・EBUS-TBLBと合併症
 Izumo et al, Respiration 129-135, 2015

・気管支鏡ナビゲーションシステム
 BF-Navi→Direct Pathに進化
 Lung Point

・針を用いた気管支鏡下肺病巣穿刺
 ガイドシース越しに穿刺針を刺入して道を作り、その後probeを挿入し、withinにもっていく

・TBLBの流れ
 ① CT, PETでターゲットとする病巣を決める
 ② 気管支鏡ナビゲーションを作成する
 ③ EBUS-GS法を用いてTBLBを行う
 ④ 最初の生検ではROSEを行う
 ⑤ ROSE陰性なら針で穿刺して再挑戦
 ⑥ 再度生検してROSE、以後繰り返し  

Posted by tak at 08:53Comments(0)検査法

2016年04月12日

免疫チェックポイント阻害薬の安全性と応用

<免疫チェックポイント阻害薬の安全性と応用>
 2016年4月9日 日本呼吸器学会総会 宮城県立がんセンター 前門戸 仁先生

・docetaxelと比較して、Nivolumabは有害事象の頻度自体は少ない
 all grade: 86% vs 58%
 >grade 3: 55%vs 7%

・Ipilimumabでは、時系列では皮膚→消化器→肝臓→内分泌の順に有害事象が出現する

・Nivolumabに関連したILDは全体の5-6%に発症する。
 国内外で頻度に差は見られない。
 ほとんどが投与開始から8週以内に発症する(9例中7例)。

・irAEでsteroid投与が必要になった患者では、腫瘍縮小効果もよい傾向

・PSL<10mgとなったら再投与を考慮する。  

2016年04月12日

免疫チェックポイント阻害薬の有効性と評価

<免疫チェックポイント阻害薬の有効性と評価>
 2016年4月9日、日本呼吸器学会総会 がん研有明病院 西尾誠人先生

・免疫チェックポイント阻害薬開発の歴史を概観(どの演者の発表でも頻出)

・抗原提示の際のc0-stimulatory factor
 CD28, OX40, GITR, CD137, CD27, HVEM
 これらが発現していないとT-cellがactivationされない

・免疫チェックポイント
 PD-1, CTLA-4, TIM-3, BTLA, VISTA, LAG3

・Pidilizumab(CT-011):第3の抗PD-1抗体

・抗PD-L1抗体
 BMS935559: N Engl J Med 2455-2465, 2012: ORR 10%
 Duravalumab: ORR 16%
 Avelumab
 Atezolizumab: Nature 2014: ORR 23%

・durable response

・survival prolongationの検討


・TAX-317 Shephard J Clin Oncol 2000, 2nd line DOC vs BSC for NSCLC, mOS 7M vs 4M

・抗PD-1抗体は扁平上皮癌、PD-L1発現(+)だと効果が高く、EGFRm(+)だと効果が低い

・これからのpIII study
 OAK study: Atezolizumab, n=1225
 JAVELIN study: Avelumab, n=650
 ARCTIC study: Durvalumab, n=730
 CheckMate 026: 1st line vs platinum doublet, 1°endpointはOS, PD-L1発現>1%の患者が対象
 CheckMate 227: 1°endpointはPFS, All comers
 KEYNOTE 024
 KETNOTE 042

・IMPOWER 130, 131, 132, 150

・耐性メカニズムの検証
 TIM3のupregulation; Nature Feb 17th 2016
    

2016年04月12日

免疫チェックポイント阻害薬の基礎的開発

<免疫チェックポイント阻害薬の基礎的開発>
 2016年4月9日、日本呼吸器学会総会 国立がん研究センター 吉村清先生

 ・・・遅刻しちゃったので、途中から。

・driver antigenよりcommon antigenのmutationがある方が免疫チェックポイント阻害薬は有効
 Snyder et al, N Engl J Med 2189-2199, 2014
 Rizvi et al, Science 124-128, 2015

・免疫チェックポイント阻害薬の効果発現には、invasive frontへのT cell invasion(TIL)が必要
 国立がん研究センターでは、invasive frontに高発現するマーカーを同定して、研究を進めている。

・免疫チェックポイント阻害薬同士の併用
 抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体
 抗PD-1抗体+免疫賦活薬(弱毒化したリステリア菌)
  Dung et al, J Clin Oncol 1325-1333, 2015
 抗PD-1抗体+免疫賦活薬(gut bacteria)
 抗PD-1抗体+CAR-T療法
  Lancet 2014に抗PD-1抗体とCD19 CAR-T療法の併用について報告あり、CR割合92%  

2016年04月12日

がん免疫のABC

<がん免疫のABC>
 2015年11月28日、日本肺癌学会総会 西岡安彦先生

・免疫システムの分類
 自然免疫
  NK細胞
  NKT細胞
  γδT細胞
 獲得免疫
  抗体・液性免疫
  CTL、細胞性免疫

・2000年から2005年の基礎研究報告では、担がんマウスにおける獲得免疫の重要性が強調されてきた。

・effector細胞の細胞障害メカニズム
 パーフォリン
 グランザイムB

・がん抗原
 1991年にMAGE3が発見された

・がん抗原ペプチドとHLA拘束性

・免疫モニタリング方法の確立
 遅延型免疫反応
 ELISPOT
 HLAテトラマー

・樹状細胞ワクチン
 奏効割合が低く、実用的でないと結論された

・Sipuleucel-T
 2010年、米国でSipuleucel-T(プロベンジTM)が前立腺がん治療用がんワクチンとして承認された。

・抗CTLA-4抗体Ipilimumabがmelanoma治療薬として承認された。

・durable response

・免疫能増強戦略から、免疫をブロックする機序(免疫チェックポイント)を解除する戦略へシフト

・CheckMate-017試験(for Squamous cell lung cancer):有効中止

・CheckMate-057試験(for non-Sq NSCLC)

・Nonsynonymus mutation - neoantigen

・Mismatch repair gene deletion(+)だと予後良好

・smokerには効きやすい

・併用療法(複合免疫療法)

・細胞療法
 CAR-T療法
 NKT療法
 γδT療法
  

Posted by tak at 08:20Comments(0)腫瘍ワクチン

2016年04月12日

OncoPrime

<OncoPrimeから見た肺癌診療におけるClinical Sequence>
 2016年4月8日、日本呼吸器学会総会、京都大学 武藤学先生

・日常臨床としてのクリニカル・シーケンスの対象
 原発不明癌
 希少癌
 標準治療不応の進行・再発癌

・OncoPrimeのイメージ
http://www.mki.co.jp/service_news/service_news_2015/0309_01.html

・OncoPrime ポータルサイト
http://oncoprime.cancer.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

・OncoPrime提出は完全自費診療
 米国へ外注し、結果は1ヶ月程度で返ってくる
 結果はA4用紙20-60枚分にも及ぶ
 結果はOncoPrimeカンファレンスで解読する
 どんな遺伝子変異があって、どんな治療薬があるのか、判明する
 治療もほとんどの場合は治験もしくは自費診療になる

・OncoPrime sequenceは検査成功率が高い

・適応外使用に対していかに対応するか
 自由診療に対応できるように、生命保険会社に相談、対応可能な商品開発をしてもらう

・2015年4月から2016年2月までに計72人の患者さんをスクリーニング
 actionable mutationを89%で見出した。
 国内で承認された薬の治療対象となる人が58%
 FDAで承認された薬の治療対象となる人が37%

・68人を調べた段階でのうちわけ
 クリニカル・シーケンス成功:64人、失敗:4人
 actionable mutation陽性:57人、陰性:7人
 57人のうち3割程度は結果に基づいた治療につなげることができた

・実例
 原発不明癌、実地臨床でのEGFR遺伝子変異検査では(-), OncoPrimeでEGFR遺伝子変異が判明、Erlotinibが奏効
 非小細胞肺癌、実地臨床でのEGFR遺伝子変異検査では(-), OncoPrimeで希少なEGFR遺伝子変異が判明、Erlotinib+BVが奏効
 膵がん、OncoPrimeでBRCA1(+)が判明、BRCA1変異には白金製剤が有効なため、SOX療法を行い奏効
 →一般に、膵がんに対するSOX療法は有効性が否定されていて、実地臨床で行われることはない
 →標準治療がカバーできない患者群をOncoPrimeでsalvageできる可能性の好例

・HER2 mutationのうち、S310F, G660Dに対しては、afatinibが有効

・京都大学病院内の電子カルテシステムをOncoPrimeに適合するように再構築し、OncoPrimeから得られた遺伝情報と各種の臨床情報をリンクさせ、将来ビッグデータとして活用できるように整備

・同じシステムを他の施設で共用できるように、クリニカル・バイオバンク研究会を発足
 京都大学、北海道大学、岡山大学、千葉大学が連携
 佐賀大学、東京医科歯科大学も参加予定

 スティーブ・ジョブズも病を得たとき、クリニカル・シーケンスを使用して、治療薬を探していたようですね。
 伝記に記されているので、興味がある方は一読してみてください。  

Posted by tak at 00:08Comments(0)個別化医療

2016年04月11日

肺がんに対するPrecision Medicine

<肺がんに対するPrecision Medicine>
 2016年4月8日、日本呼吸器学会総会、国立がん研究センター中央病院 堀之内秀仁先生

・Human genome Project
 Rubin et al, Nature 2015
 genome information for 14,000 persons, but there are many defect of clinical information.
・Crizotinib
 2005 developed for c-Met inhibitor
 2007 approved for c-Met inhibitor
  August - NSCLC with ALK rearrangement reported
December - Parital response confirmed with crizotinib for ALK rearranged NSCLC
・Sequist et al, Sci Translational Med 2011
re-biopsy profiling with SNAP shot NGS system, n = 37
pre- and post-TKI therapy specimens compared
・3re generation EGFR-TKI
CO1686
ASP8273
AZD9291
全てphase I studyでpromising waterfall plot confirmed
・Precision Medicine Initiative
米国人100万人のコホート調査
 生活習慣、運動習慣、治療、既往などの情報を集積する
 プライバシー問題にどう対応するか
 規制の近代化をいかに進めるか
 官民連携をいかに進めるか
・NCI-MATCH project
・ALCHEMIST project
・LUNG-MAP ( master protocol ) for Squamous
PIK3CA, EGFR, c-Met, CCNP1, CDK4 etc. screening
・National Lung Matrix trial(England)
・SHIVA trial: 臓器、癌腫を問わない、driver oncogeneに基づいた横断的trial
・日本国内では検査室の品質管理制度が立ち遅れている
・CLIA基準対応は、TOP-GEARかLC-SCRUM
 国立がん研究センター主導のTOP-GEARはNCC oncopanel Ver.4を使用してシーケンス
 LC-SCRUMはOncomine Cancer research Panel(OCP)を利用する。
・MGH: databese管理としてLIMで自動化→somatic mutationになることがある。
・GENIE
・TAPER(ASCO)
  

Posted by tak at 22:56Comments(0)個別化医療

2016年04月10日

EGFR-TKI耐性NSCLCに対する治療戦略

<EGFR-TKI耐性NSCLCに対する治療戦略>
 2016年4月8日、日本呼吸器学会総会 

・AZD9291: 1st in human studyからわずか3年で製造承認にこぎつけている
・用量は80mgを1日1回、減量時は40mgを1日1回
・AZD9291の日本人におけるデータ
AURA studyのphase II expansion cohort: 日本人は35人(35 / 201=17%)が組み入れ
AURA2 study: 日本人は46人(46 / 210=22%)が組み入れ
これらのデータを併せてPMDAに提出し、製造承認時の参考データとした。
56人(70%)がExon 19 + T790M
24人(30%)がExon 21 + T790M
ORR 63.2%, DCR 93.4%
奏効例のうち、85.4%は6週間以内にPRに、95.8%は12週以内にPRに至っている
・ORRのforest plotでは特定の患者背景で差が出なかった
 脳転移の有無、地域、Exon 19 / 21など
・mPFS 9.7M, 6M PFS 74%, 9M PFS 60%
・AZD9291はwild type EGFRに影響を与えないようにデザインされた薬だが、実際には1G, 2G同様のAEが出ている。下痢、発疹といったAEは軽減されているが、肝障害、ILD、QT延長は同様で、白血球減少を認めた症例もある。
・投与中止に至った6例中4例はILDが原因
剖検例1:CT上はDAD patternをとっていたが、sectionではDADを認めず、診断は肺癌の進行+ショック肝
剖検例2:投与7ヶ月目にDAD pattern + new lesion, 肺野はCT所見どおりDAD, new lesionはSCLC
・AZD9291に関連したILDはsteroidによく反応し、重症例が少ない→1G EGFR-TKIにより起こるILDとは印象が異なる
・日本人80人中5人(6.3%)にILDが出現し、出現時期は4週目から32週目までと幅がある
・liquid biopsyのdataもPMDAには提出されているが、今のところcompanion diagnosisとして認められているのはCobas ver2 Tissue setのみ  

2016年04月10日

EGFR-TKIの耐性機序と第3世代EGFR-TKI

<EGFR-TKIの耐性機序と第3世代EGFR-TKI>
 2016年4月8日、日本呼吸器学会総会 光冨 徹哉先生

・各EGFR-TKIに関連したpivotal study
gefitinib: NEJ002, WJOG3405
erlotinib: OPTIMAL, EURTAC
afatinib: LUX-Lung3, LUX-Lung 6
・EGFR-TKI感受性と二次耐性の獲得
Oncogene Addiction→secondary mutation
T790M: ATPとEGFRの親和性を増幅し、相対的にEGFR-TKIとEGFRの親和性が低下する
Yun et al, PNAS 2070-2075, 2008
Kobayashi et al, Pao et al
c-Met amplification: Engelman
・二次耐性の機序の分類
EGFR modification: T790M, L747S, D761Y, T854A, etc.
EGFR amplification
By-pass track
signal transduction 下流の活性化
・de novo T790M
2/397=0.005% Toyooka et al, N Engl J Med 2005
Hata, Engelman et al, Nature Med 2016
  de novoと2ndary aquiredいずれも可能性としてはあるし、いずれかによって治療戦略が変わる
・剖検例におけるEGFR-TKI耐性機序のheterogeneityの検討
病巣によって耐性機序のheterogeneityあり
Suda et al, Clin Cancer Res 2010
Suda et al, Sci Rep 2010
・Gandara ASCO 2013
systemic-PD, Oligo-PD, CNS-PDの概念
・EGFR-TKI後の各獲得耐性の頻度
Camidge et al, Nature Rev Clin Oncol 2014
・1st generation EGFR-TKI: gefitinib, erlotinib
2nd generation EGFR-TKI: afatinib, dacomitinib
・BIBW2992 ( afatinib ): LUX-Lung 1, phase III
既治療EGFRm(+)NSCLCでのafatinib: ORR 7%, OS prolongation(-)
・WZ4002, Zhow et al, Nature 2009
第3世代EGFR-TKIの嚆矢だが、臨床開発には至らず
・3G EGFR-TKIはピリミジン環とアクリルアミド骨格が共通構造
・AZD9291の関連trial
AURA phase I / II
phase Iでrecommended doseが80mg/日と決定
phase II expansion cohortでORR 60%, mPFS 8.1M
AURA2 confirmtory phase II
ORR 71%
AE: ILD 2%, DM 1%, QT interval prolongation 5%
AURA3 phase III AZD9291 vs platinum doublet chemotherapy( CDDP/CBDCA+PEM ) after EGFR-TKI failure
primary endpoint:PFS
・EGFR-TKI後のchemotherapyの効果
ORR PFS
NEJ002 28.8% ND
Wu et al, J Cancer 247-255 2010 14.7% ND
Masuda et al, Translational Res 2016 26.2% 5.1M
IMPRESS, All patients Soria et al, Lancet Oncol 990-998 2015 34% 5.4M
IMPRESS, liquid T790M(+) population, Mok et al WCLC2015 39% 5.3M
・3G EGFR-TKIへの耐性化機序
C797S
T790M loss
L718Q, L844V, L844R
By-pass track
signal transduction 下流の活性化
SCLC transformation
・T790MとC797Sが同じalleleにのっている場合と、異なるalleleにのっている場合がある。
前者ではTKIはどれも効かなくなるが、後者では1G-TKIと3G-TKIを併用すると治療できそう  

2016年04月09日

utilize ICIs

<Finding how to best utilize the immune checkpoint inhibitors>
 2016年4月8日、国立がん研究センター中央病院 後藤 悌先生
 うわさには聞いていましたが、恐るべきプレゼンテーション能力です。
 Native English presentationです。
 講演の内容よりも、そちらの方に耳を奪われました。
 うらやましいの一言です。
 まだ若い先生ですが、間違いなく世界の舞台でわが国の肺癌を引っ張っていく人材の一人です。

・Non-specific immune reaction
BCG for Bladder Cancer, utilized since 1977 ( mechanisms unclear )
IFN-α, IL-2, picibanil
・Immuno-Oncology Schema: Bourla et al, Oncology 2016
T-cell activation
Antigen Presenting Cell
・vaccine therapy
MAGRIT study, Vansteenkiste et al, Ann Oncol 2014 abst.# 11730
MAGE3 vaccine
・CTLA-4: Leach et al, Science 1996
・PD-1: Iwai et al, PNAS 2002
・CTLA-4 and PD-L1: Anagnostov et al, Clin Cancer Res 2015
・anti-CTLA-4 antibody ( Ipilimumab )
Phan et al, PNAS 2003, for melanoma
Hodi et al, PNAS 2003, for melanoma and ovarian cancer
Hodi et al, N Engl J Med 2010
Robert et al, N Engl J Med 2011
・anti PD-1 antibody ( Nivolumab )
Brahmer et al, J Clin Oncol 2010
・国立がん研究センターでの放射線治療後Nivolumab導入例供覧
基礎疾患にCOPDあり
Nivolumab導入後、多発肺転移巣消失
左肺S6にILD出現
・Hoos et al, Nature Rev Drug Discov 2016
・肺癌領域では、Nivolumabの適正使用量が検証されていない
melanoma: recommended doseは2mg/kgを3週ごと
NSCLC: 特段の根拠もなく3m/kgを2週ごと
Nivolumabの半減期は20日前後
・Trastuzumabのsurvival curve adjusted by Trastuzumab exposure, Yang et al, J Clin Phamac 2016
・Nivolumab for 2nd line RCC, Feng ASCPT 2016
・Pemblorizumab dose design, Herbst et al, Lancet 2015
・Nivolumab PK analysis, 国立がん研究センター中央病院で取り組んでいる。
NivolumabのFc領域を検出・測定対象とする系を作成
・Long Term Efficacy
・ICIs使用中に悪化をみたとき
disease progression?
pseudo-progression?
irAE?
鑑別は難しいが、たいていの患者は
「病勢進行以外の原因だろう」
と訴えるため、治療ストップを行いがたい。
・dillemma of Nivolumab: ORR 20% for Sq
・McLaughlin et al, JAMA oncology 2016
PD-1 heterogeneity, mutation burden
Nature 2013: Laurence et al
Science 2015: Shumacher et al
Science 2015: Rizvi et al
・Clonal neoantigens, McGranahan et al, Science 2016
Clonal? Subcronal?
・irAE experience must build up.
・optimal use: dose, duration, combination  

2016年04月09日

Immuno-Oncology in Lung Cancer

<Immuno-Oncology in Lung Cancer>
 Giuseppe Giaccone MD.

・Johnson et al, ASCO 2013, NSCLC and genetic mutation
・PD-1 inhibitors: Nivolumab, Pembrolizumab, etc.
・PD-L1 inhibitors: Atezorizumab, Durvalumab, avelumab, etc.
・Tumor immunology overview
Padmanee Sharma, James P. Allison, Science 56-61, 2015
Freeman, Sharpe, Nature Immunology 2012
・Nivolumab phase I: Gettinger J Clin Oncol 2004-1012, 2015
129 NSCLC patients enrolled→15% durable response observed ( survival curve seems to be plateau )
ORR 30% ( patients of >5 pack-year smoker )
0% ( light smoker or never smoker )
3 patients died due to ILD ( 2% )
endocrinopathy
・CheckMate 017 study, Brahmer et al, N Engl J Med 123-135, 2015
for Sq patients, PD-L1 expression tested with DACO 28-8 antibody
・CheckMate 057 study, Borghaei et al, N Engl J Med 1627-1639, 2015
for non-Sq patients, PD-L1 expression tested with DACO 28-8 antibody
survival curve crossing as IPASS study
duration of response: 17.2M vs 5.6M
・KEYNOTE 001 study, phase I, Garon et al, N Engl J Med 2018-2028, 2015
n=495 ( 1143 screened )
PD-L1 expression membranous staining tested with 22C3 PharmaDx Test
・KEYNOTE 010 study, phase III, for NSCLC, Herbst et al, Lancet Oncol 2015
・CheckMate 026: 1st line Nivolumab vs platinum doublet, primary endpoint:PFS ( unfortunately! )
・Atezolizumab ( MPDL3280A ): anti-PD-L1 antibody
phase I: PCD4989g study, Nature Nov 27, 2014
phase II: POPLAR study, Spira et al, ASCO 2015
・Durvalumab ( MEDI 4736 ): anti PD-L1 antibody
Rizvi et al, ASCO 2015 ( TATTON trial )
・Avelumab: anti PD-L1 antibody
JAVELIN trial for solid tumor, Gulley et al, ASCO 2015
・Alexandrov et al, Science 2013: mutation burden
Naiger, Rizvi et al, Science 123-128, 2015
・CheckMate 012 study: Nivolumab + Chemotherapy
・KEYNOTE 021 study: Pemblorizumab +Chemotherapy
・ICIs combination
Mellman et al, Nature 2011
Rizvi et al, WCLC 2015
CheckMate 022
・ILD frequency
CheckMate 017: 5%
CheckMate 057: 3%
CheckMate 063: 5%
KEYNOTE 001: 4.8%
・irAE ( immune-related Adverse Event )
skin, endocrinopathy, colitis, etc.
  

2016年04月09日

2016年4月8日 日本呼吸器学会総会 高感度EGFR変異検査

<Highly sensitive detection of EGFR mutation in NSCLC>
 岩間 映二先生、九州大学

・Kohno et al, Cancer Sci 2013: 初回診断時のdriver mutation内訳
・Yu et al, Clin Cancer Res 2014: 再生検時の耐性二次変異の内訳

・各EGFR遺伝子変異検出法の感度
 Sanger sequence method: detection limit 10%
 Cobas EGFR tissue test kit: detection limit 1%
 digital PCR: detection limit 0.1-0.01%
Fluidigm corporation Biomarker HD system
BioRads' QX100 system
RainDrop system

・pre EGFR-TKI treatment T790M positivity (de novo T790M positivity)
Costa et al, Clin Cancer Res 2014: 65.3%( 62/95 )
Fujita et al, J Thorac Oncol 2012: 79%( 30/38 )
Iwama et al, Oncotarget 2015: 20466-20473

・Erlotinib Chmielecki et al, Science Translational Med 2011

・Liquid biopsy
Haber et al, Cancer Discovery 650-651, 2014
digital PCR, BEAMing methodなどのhighly sensitive methodが必要
Karlovich et al, Clin Cancer Res 2016: BEAMing method vs Cobas plasma test
BEAMing(liquid) vs Cobas (tissue): sensitivity 73%, specificity 50%
Cobas(liquid) vs Cobas (tissue): sensitivity 64%, specificity 98%
→BEAMing methodよりCobas plasma testの方がspecificityに優れる  

Posted by tak at 07:57Comments(0)検査法