2011年03月26日
原子力発電所と発癌(福島原発の問題も含めて)
東北・関東の地震が起きてから2週間、福島原発の問題が取りざたされるようになってから、私にはひとつの疑問がありました。
女川原発も被災地の真っ只中にあったのに、どうして福島原発だけが現状のようになってしまったのか。
その答えが、以下のリンクに書いてあるような気がしました。
私は原子力発電所と健康被害、ことに発癌のリスクに関して、あまりにも無知でした。
学生に「肺癌のリスクについて」なんて話しているのがとても恥ずかしい。
長文ですが、とても分かりやすく記載されています。
筆者の方自身、悪性腫瘍に罹患され、残念ながら1997年に亡くなられたそうです。
それを踏まえて読むと、この文章の凄みが際立ちます。
まるで今日の福島原発の姿を予言しているかのようです。
福島原発を含め、原発周辺に住まう方々や若い人たちの未来に思いを馳せながら、読んでみてください。
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
女川原発も被災地の真っ只中にあったのに、どうして福島原発だけが現状のようになってしまったのか。
その答えが、以下のリンクに書いてあるような気がしました。
私は原子力発電所と健康被害、ことに発癌のリスクに関して、あまりにも無知でした。
学生に「肺癌のリスクについて」なんて話しているのがとても恥ずかしい。
長文ですが、とても分かりやすく記載されています。
筆者の方自身、悪性腫瘍に罹患され、残念ながら1997年に亡くなられたそうです。
それを踏まえて読むと、この文章の凄みが際立ちます。
まるで今日の福島原発の姿を予言しているかのようです。
福島原発を含め、原発周辺に住まう方々や若い人たちの未来に思いを馳せながら、読んでみてください。
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html
2011年03月25日
がんと感染症
がんの診療と感染症は切っても切れない関係にあります。
そもそも、がんの患者さんは一般の方より体の抵抗力が落ちているといわれています。
みずぼうそうウイルスが原因の帯状疱疹の患者さんをみたら、がんの存在を疑って全身を調べなさいと教科書に載っているくらいです。
実際、この3年間で、帯状疱疹を合併した肺癌の患者さんは5人いました。
今年に入ってからでも2人経験しています。
昨日、静岡県立がんセンター感染症内科の先生が大分にお越しになりました。
先生が経験された様々な患者さんの例を紹介してくださいましたが、ほとんどが私も経験のある合併感染症ばかりでした。
おそらく、がんの診療に携わる以上はどこでも同じようなことで困っているのだなと感じ、わが意を得たりとの思いでした。
幸い、呼吸器内科医はもともと感染症診療に強い職種です。
多彩な病原体により起こる呼吸器感染症の患者さんに、日常的に対応しているからです。
がんセンター在籍中も、しばしば感染症合併患者さんや呼吸不全患者さんの相談を他の診療科の医師から受けていました。
肺がんの診療が主体であることはもちろんですが、呼吸器内科医としての基本的なものの考え方も忘れずにおきたいものです。
そもそも、がんの患者さんは一般の方より体の抵抗力が落ちているといわれています。
みずぼうそうウイルスが原因の帯状疱疹の患者さんをみたら、がんの存在を疑って全身を調べなさいと教科書に載っているくらいです。
実際、この3年間で、帯状疱疹を合併した肺癌の患者さんは5人いました。
今年に入ってからでも2人経験しています。
昨日、静岡県立がんセンター感染症内科の先生が大分にお越しになりました。
先生が経験された様々な患者さんの例を紹介してくださいましたが、ほとんどが私も経験のある合併感染症ばかりでした。
おそらく、がんの診療に携わる以上はどこでも同じようなことで困っているのだなと感じ、わが意を得たりとの思いでした。
幸い、呼吸器内科医はもともと感染症診療に強い職種です。
多彩な病原体により起こる呼吸器感染症の患者さんに、日常的に対応しているからです。
がんセンター在籍中も、しばしば感染症合併患者さんや呼吸不全患者さんの相談を他の診療科の医師から受けていました。
肺がんの診療が主体であることはもちろんですが、呼吸器内科医としての基本的なものの考え方も忘れずにおきたいものです。
2011年03月24日
同意説明文書
病院に入院すると、夥しい量の書類にサインを求められ、当惑する患者さんも少なくないはずだ。
実際のところ、合併症を伴う可能性のある検査には、必ず「同意説明文書」なるものがついて回る。
我々肺癌診療に携わる呼吸器内科医にとって、気管支鏡はとても大事な、慣れ親しんだ検査である。
しかし、合併症の可能性は決して少なくはない。
2006年の全国調査では、検査中に発生する300ml以上の出血(これは、下気道出血としてはかなりの量だ)の頻度は1%を越えていた。
100人に1人は下気道出血で窒息する可能性があるということだ。
しかしながら、実際に死亡した患者さんは0.012%ということなので、その後の処置が良かったのだろう。
そのほか、超音波気管支鏡の登場により、これまでの気管支鏡では経験することのなかった縦隔炎、縦隔出血も合併症として考えなくてはならなくなった。
気管支鏡同意説明文書のupdateが必要かもしれない。
実際のところ、合併症を伴う可能性のある検査には、必ず「同意説明文書」なるものがついて回る。
我々肺癌診療に携わる呼吸器内科医にとって、気管支鏡はとても大事な、慣れ親しんだ検査である。
しかし、合併症の可能性は決して少なくはない。
2006年の全国調査では、検査中に発生する300ml以上の出血(これは、下気道出血としてはかなりの量だ)の頻度は1%を越えていた。
100人に1人は下気道出血で窒息する可能性があるということだ。
しかしながら、実際に死亡した患者さんは0.012%ということなので、その後の処置が良かったのだろう。
そのほか、超音波気管支鏡の登場により、これまでの気管支鏡では経験することのなかった縦隔炎、縦隔出血も合併症として考えなくてはならなくなった。
気管支鏡同意説明文書のupdateが必要かもしれない。
2011年03月22日
がんと宗教
これはあくまで個人的な意見ですが、他の国民に比べると日本人一般の宗教意識は弱いように感じます。
これは良い面でもあり、悪い面でもあります。
イスラム教区、キリスト教区、ユダヤ教区では常に教義と紛争が背中合わせです。
同一宗教の中でも、派閥間の争いが殺し合いに発展するくらいです。
少なくとも近現代の日本において、浄土真宗と時宗の信者が殺し合いをした、などという話は聞きません。
これは、よく言えば、日本人がその倫理観念と宗教の間に程よい距離感を保っている、ということかも知れません。
ここからががんの診療に関わることです。
私の日常診療で、患者さんが治療経過中に窮地に陥った際、宗教が精神的支柱になることは少ないように感じます。
いわゆる「悪い知らせ」を受けたとき、患者さんを支えるのは主に家族です。
宗教ではありません。
「アッラー」や「イエス」を信ずる方々は、その点では逆境に強いのかもしれません。
治療を受けるにあたり、心のよりどころは必要です。
勿論個人差はあるでしょうが、われわれの世代の日本人は、宗教が精神的支柱になっているかどうかという点においては、弱いような気がします。
でも、化学療法や放射線療法を行うにあたり、宗教的理由で「輸血が出来ない」患者さんの治療遂行はためらわれます。
治療経過中に輸血が必要となる場合が少なからずあるからです。
2年半前に担当していた患者さんに輸血が必要になった際、奥様がそういった教義をお持ちで、かなり神経をすり減らしました。
輸血が必要になった際に「初めて」輸血が出来ないことが発覚すると、取り返しのつかないことになりかねません。
輸血が出来ない方は、初診時にお話しください。
これは良い面でもあり、悪い面でもあります。
イスラム教区、キリスト教区、ユダヤ教区では常に教義と紛争が背中合わせです。
同一宗教の中でも、派閥間の争いが殺し合いに発展するくらいです。
少なくとも近現代の日本において、浄土真宗と時宗の信者が殺し合いをした、などという話は聞きません。
これは、よく言えば、日本人がその倫理観念と宗教の間に程よい距離感を保っている、ということかも知れません。
ここからががんの診療に関わることです。
私の日常診療で、患者さんが治療経過中に窮地に陥った際、宗教が精神的支柱になることは少ないように感じます。
いわゆる「悪い知らせ」を受けたとき、患者さんを支えるのは主に家族です。
宗教ではありません。
「アッラー」や「イエス」を信ずる方々は、その点では逆境に強いのかもしれません。
治療を受けるにあたり、心のよりどころは必要です。
勿論個人差はあるでしょうが、われわれの世代の日本人は、宗教が精神的支柱になっているかどうかという点においては、弱いような気がします。
でも、化学療法や放射線療法を行うにあたり、宗教的理由で「輸血が出来ない」患者さんの治療遂行はためらわれます。
治療経過中に輸血が必要となる場合が少なからずあるからです。
2年半前に担当していた患者さんに輸血が必要になった際、奥様がそういった教義をお持ちで、かなり神経をすり減らしました。
輸血が必要になった際に「初めて」輸血が出来ないことが発覚すると、取り返しのつかないことになりかねません。
輸血が出来ない方は、初診時にお話しください。
2011年03月21日
放射線被曝その2
職場に来るたびにtwitterを眺めて帰りますが、ときどきためになる情報が流れてきます。
下記リンクは、放射線被曝をわかりやすい目安で教えてくれるサイトです。
以前、根治的胸部放射線照射の総線量を60Gy=60Svと書きました。
しかし、短時間で全身に浴びれば、8Sv=8Gyが致死線量とされているようです。
とてもわかりやすいので、一度ご覧になってみてください。
http://dailynewsagency.com/2011/03/20/radiation-chart/
下記リンクは、放射線被曝をわかりやすい目安で教えてくれるサイトです。
以前、根治的胸部放射線照射の総線量を60Gy=60Svと書きました。
しかし、短時間で全身に浴びれば、8Sv=8Gyが致死線量とされているようです。
とてもわかりやすいので、一度ご覧になってみてください。
http://dailynewsagency.com/2011/03/20/radiation-chart/
2011年03月17日
各地の放射線量
twitterで堀江貴文さんが下記リンクを紹介していました。
とても分かりやすくて参考になるデータだと感じました。
全国の放射能濃度 http://htn.to/EvLoPT
ちなみに、非小細胞肺癌に対する根治的胸部放射線照射で照射される一般的な線量は計60Gyです。
60Gy=60000mGy=60000000μGyです。
2011/3/15-2011/3/16の期間では、17時の水戸での測定値が最高ですが、それでも0.7μGy/時間です。
1時間水戸に滞在したら、0.7μGyの照射を受けるということですね。
肺癌患者さんが病巣に受ける線量の100000000分の1です。
とても分かりやすくて参考になるデータだと感じました。
全国の放射能濃度 http://htn.to/EvLoPT
ちなみに、非小細胞肺癌に対する根治的胸部放射線照射で照射される一般的な線量は計60Gyです。
60Gy=60000mGy=60000000μGyです。
2011/3/15-2011/3/16の期間では、17時の水戸での測定値が最高ですが、それでも0.7μGy/時間です。
1時間水戸に滞在したら、0.7μGyの照射を受けるということですね。
肺癌患者さんが病巣に受ける線量の100000000分の1です。
2011年03月15日
東北地方の肺癌の方々
2011年3月11日に発生した東北関東大震災で被災した方々に、心からのお見舞いを申し上げます。
今のところ、災害の規模や被災者、死傷者の報告、原発の報道に関心が集まっています。
しかし、化学療法を受けていた肺癌患者さんたちのその後の治療予定は、どのようになっているのでしょうか。
日本臨床腫瘍学会では、がん薬物療法専門医のメーリングリストを活用して、被災者の方々の治療受け入れ可能施設のリストを作成しました。
学会ホームページで参照可能です。
震災後まもなく、悪性腫瘍に対する定期的な治療が必要な被災患者さんをどうサポートするかの議論が、メールを通じて始まりました。
連日夥しいメールが飛び交い、既に患者さんの依頼、受け入れの調整が開始されています。
このような自然災害の折には、悪性腫瘍の患者さんのケアはどうしても後回しにされてしまいます。
必要な方は、是非学会ホームページをご利用ください。
今のところ、災害の規模や被災者、死傷者の報告、原発の報道に関心が集まっています。
しかし、化学療法を受けていた肺癌患者さんたちのその後の治療予定は、どのようになっているのでしょうか。
日本臨床腫瘍学会では、がん薬物療法専門医のメーリングリストを活用して、被災者の方々の治療受け入れ可能施設のリストを作成しました。
学会ホームページで参照可能です。
震災後まもなく、悪性腫瘍に対する定期的な治療が必要な被災患者さんをどうサポートするかの議論が、メールを通じて始まりました。
連日夥しいメールが飛び交い、既に患者さんの依頼、受け入れの調整が開始されています。
このような自然災害の折には、悪性腫瘍の患者さんのケアはどうしても後回しにされてしまいます。
必要な方は、是非学会ホームページをご利用ください。
2011年03月04日
病状説明
なぜか、がんに関する病状説明の場合に限って「告知」という言葉が出てきます。
「告知」と聞いて、宗教画のモチーフとして有名な「受胎告知」を想像する方もいらっしゃるかも知れません。
処女マリアに天使のガブリエルが降り、聖霊によってマリアがイエスを身ごもることを告げるあれです。
マリアがいつものようにのんびりと糸を紡いでいると、突然鳩と天使がやってきて、「貴女は処女のまま母親になりますよ」というわけです。
中野京子さんの「怖い絵」という本にも出てきますが、読んでなるほど、マリアはびっくりするでしょう。
がんの告知と同じくらいのインパクトはあると思います。
がんの告知に関しては、国立がん研究センターの「がん告知マニュアル」という文献があります。
参考までに、一度ご参照ください。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/communication/communication01.html
また、患者さんとの言語コミュニケーションを行う上で注意すべき事柄も以下に記載されています。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/communication/communication02.html
私は、積極的治療を希望する患者さん、家族にはほぼ全て「告知」を行ってきました。
治療にあたる上で、必要十分な情報を患者さん本人に伝えるのは当たり前だと考えるからです。
また、関係者が共通認識を持つことは治療遂行上極めて大切で、できるだけ家族にも同席してもらうようにしています。
そして、時間はかかりますが、説明内容は白紙に手書きしつつ面談を進めていきます。
面談終了後、手書きの説明文書のコピーを患者さんや家族に手渡します。
面談の際には当事者は頭が真っ白になってしまうものですが、記録を残せば後で落ち着いて振り返ることが出来ます。
次の面談の機会があった場合、それまでの面談内容をおさらいするのにも役立ちます。
がんの治療は少なからず有害事象(副作用)を伴います。
それでも、その必要性や起こりうる有害事象を事前に知っていれば、心身ともに準備が出来るというものです。
つらいことがあって、しかも耐えるしか手段がないときにも、その末に目指しているものが明確になっていれば、ぐっと歯を食いしばれることもあります。
自分の意思決定が出来る患者さんならば、どんなに高齢であろうと、本人にちゃんと病状を伝えるべきです。
最近思い悩むこともありましたが、やっぱりこれは譲れない一線です。
今後はより一層強い意志をもって診療に当たりたいと思います。
「告知」と聞いて、宗教画のモチーフとして有名な「受胎告知」を想像する方もいらっしゃるかも知れません。
処女マリアに天使のガブリエルが降り、聖霊によってマリアがイエスを身ごもることを告げるあれです。
マリアがいつものようにのんびりと糸を紡いでいると、突然鳩と天使がやってきて、「貴女は処女のまま母親になりますよ」というわけです。
中野京子さんの「怖い絵」という本にも出てきますが、読んでなるほど、マリアはびっくりするでしょう。
がんの告知と同じくらいのインパクトはあると思います。
がんの告知に関しては、国立がん研究センターの「がん告知マニュアル」という文献があります。
参考までに、一度ご参照ください。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/communication/communication01.html
また、患者さんとの言語コミュニケーションを行う上で注意すべき事柄も以下に記載されています。
http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/communication/communication02.html
私は、積極的治療を希望する患者さん、家族にはほぼ全て「告知」を行ってきました。
治療にあたる上で、必要十分な情報を患者さん本人に伝えるのは当たり前だと考えるからです。
また、関係者が共通認識を持つことは治療遂行上極めて大切で、できるだけ家族にも同席してもらうようにしています。
そして、時間はかかりますが、説明内容は白紙に手書きしつつ面談を進めていきます。
面談終了後、手書きの説明文書のコピーを患者さんや家族に手渡します。
面談の際には当事者は頭が真っ白になってしまうものですが、記録を残せば後で落ち着いて振り返ることが出来ます。
次の面談の機会があった場合、それまでの面談内容をおさらいするのにも役立ちます。
がんの治療は少なからず有害事象(副作用)を伴います。
それでも、その必要性や起こりうる有害事象を事前に知っていれば、心身ともに準備が出来るというものです。
つらいことがあって、しかも耐えるしか手段がないときにも、その末に目指しているものが明確になっていれば、ぐっと歯を食いしばれることもあります。
自分の意思決定が出来る患者さんならば、どんなに高齢であろうと、本人にちゃんと病状を伝えるべきです。
最近思い悩むこともありましたが、やっぱりこれは譲れない一線です。
今後はより一層強い意志をもって診療に当たりたいと思います。