2014年12月17日
新しい肺癌WHO分類
最近学会や研究会でよく取りざたされる話題のひとつに、「肺癌WHO分類改訂」があります。
「腺癌」「扁平上皮癌」「小細胞癌」といった病名は、いわゆる「組織診断名」と呼ばれるものです。
肺癌の病巣を顕微鏡で見てみるとその見た目は様々ですが、大きく以上の3つ(あえて「大細胞癌」は無視します)と「その他」に分けられます。
この「顕微鏡で見た感じ」でどのように分類するべきかを定めたものが、WHO分類です。
前回は2004年に改訂されましたが、このたび2015年5月に久しぶりに改訂される予定です。
診断基準の改訂ですから、臨床現場に与えるインパクトはとても大きいです。
2014年と2015年では、同じ病気なのに病名が全く異なる、なんてことも起こりえます。
2011年には、この改訂に先立って、腺癌に関する分類案が発表され、現在の病理分類はほぼこちらに準拠しています。
2011年案では、いくつかのポイントがあります。
先だって開催された肺癌学会総会でWilliam D. Travis先生が残された発表抄録を参考にしつつ書きますと、
・手術適応のない患者では小さな生検検体しか得られないが、これを使って組織型決定からドライバー遺伝子(EGFR, ALK等)の検索まで無理なく行うために、必要十分なだけの免疫染色を行う。
・完全切除されれば100%の治癒が期待できる腺癌として、Adenocarcinoma in situ (AIS)とMinimally invasive adenocarcinoma (MIA)を提唱する。
・細気管支肺胞上皮癌/Bronchioloalveolar carcinoma (BAC)や混合型腺癌/mixed subtype adenocarcinomaという用語は今後使わないことを推奨する。
・腺癌の発育亜形として鱗状発育型/lepidic growth(従来のBACに相当)、腺房型/acinar, 乳頭型/papillary, solid/充実型, 微小乳頭型/micropapillaryを定める。
・微小乳頭型/micropapillaryは新たに追加した予後不良の亜形である。
・粘液産生型細気管支肺胞上皮癌/mucinous BACはInvasive mucinous adenocarcinomaと呼称変更する。
今回の肺癌学会では、「新しい肺癌病理分類」と銘打ってシンポジウムが組まれ、Travis先生の他にMari Mino-Kenudson先生、野口雅之先生、谷田部 恭先生がご発表されました。
Mari Mino-Kenudoson先生は、腺癌以外の組織型に関するお話をされました。
「大細胞癌」という診断は、肺癌の中でも特定の組織型に分類しえないいわば「分類不能型」の肺癌の呼称だったのですが、治療法の選択に資するため今後は免疫染色を用いてできるだけ低分化腺癌もしくは低分化扁平上皮癌に分類するような趨勢になっています。
主として用いられる免疫染色マーカーは、腺癌ではTTF-1、扁平上皮癌ではp40に言及されていました。
また、2004年のWHO分類では位置づけが曖昧だった大細胞神経内分泌癌/Large cell neuroendocrine carcinoma (LCNEC)については、2015年改訂では神経内分泌腫瘍として扱われるだろうとのことでした。
野口雅之先生は生検検体を用いた病理診断をいかに適切に行うか、分類不能型をいかに減らし、腺癌 / 扁平上皮癌の鑑別をいかに行って最適な治療につなげていくかを話されました。
谷田部 恭先生は、われわれ臨床医にはなじみが薄いPCR、FISH、免疫染色の基礎知識、それぞれの利点・欠点についてわかりやすくお話ししてくださいました。
肺癌組織分類の細かい内容は、患者さんはおろかわれわれ臨床医にも理解しにくい、ときには実地臨床に反映されにくい内容も含まれますが、自分の興味が続く限りは追いかけていきたいと思っています。
「腺癌」「扁平上皮癌」「小細胞癌」といった病名は、いわゆる「組織診断名」と呼ばれるものです。
肺癌の病巣を顕微鏡で見てみるとその見た目は様々ですが、大きく以上の3つ(あえて「大細胞癌」は無視します)と「その他」に分けられます。
この「顕微鏡で見た感じ」でどのように分類するべきかを定めたものが、WHO分類です。
前回は2004年に改訂されましたが、このたび2015年5月に久しぶりに改訂される予定です。
診断基準の改訂ですから、臨床現場に与えるインパクトはとても大きいです。
2014年と2015年では、同じ病気なのに病名が全く異なる、なんてことも起こりえます。
2011年には、この改訂に先立って、腺癌に関する分類案が発表され、現在の病理分類はほぼこちらに準拠しています。
2011年案では、いくつかのポイントがあります。
先だって開催された肺癌学会総会でWilliam D. Travis先生が残された発表抄録を参考にしつつ書きますと、
・手術適応のない患者では小さな生検検体しか得られないが、これを使って組織型決定からドライバー遺伝子(EGFR, ALK等)の検索まで無理なく行うために、必要十分なだけの免疫染色を行う。
・完全切除されれば100%の治癒が期待できる腺癌として、Adenocarcinoma in situ (AIS)とMinimally invasive adenocarcinoma (MIA)を提唱する。
・細気管支肺胞上皮癌/Bronchioloalveolar carcinoma (BAC)や混合型腺癌/mixed subtype adenocarcinomaという用語は今後使わないことを推奨する。
・腺癌の発育亜形として鱗状発育型/lepidic growth(従来のBACに相当)、腺房型/acinar, 乳頭型/papillary, solid/充実型, 微小乳頭型/micropapillaryを定める。
・微小乳頭型/micropapillaryは新たに追加した予後不良の亜形である。
・粘液産生型細気管支肺胞上皮癌/mucinous BACはInvasive mucinous adenocarcinomaと呼称変更する。
今回の肺癌学会では、「新しい肺癌病理分類」と銘打ってシンポジウムが組まれ、Travis先生の他にMari Mino-Kenudson先生、野口雅之先生、谷田部 恭先生がご発表されました。
Mari Mino-Kenudoson先生は、腺癌以外の組織型に関するお話をされました。
「大細胞癌」という診断は、肺癌の中でも特定の組織型に分類しえないいわば「分類不能型」の肺癌の呼称だったのですが、治療法の選択に資するため今後は免疫染色を用いてできるだけ低分化腺癌もしくは低分化扁平上皮癌に分類するような趨勢になっています。
主として用いられる免疫染色マーカーは、腺癌ではTTF-1、扁平上皮癌ではp40に言及されていました。
また、2004年のWHO分類では位置づけが曖昧だった大細胞神経内分泌癌/Large cell neuroendocrine carcinoma (LCNEC)については、2015年改訂では神経内分泌腫瘍として扱われるだろうとのことでした。
野口雅之先生は生検検体を用いた病理診断をいかに適切に行うか、分類不能型をいかに減らし、腺癌 / 扁平上皮癌の鑑別をいかに行って最適な治療につなげていくかを話されました。
谷田部 恭先生は、われわれ臨床医にはなじみが薄いPCR、FISH、免疫染色の基礎知識、それぞれの利点・欠点についてわかりやすくお話ししてくださいました。
肺癌組織分類の細かい内容は、患者さんはおろかわれわれ臨床医にも理解しにくい、ときには実地臨床に反映されにくい内容も含まれますが、自分の興味が続く限りは追いかけていきたいと思っています。
2014年12月17日
シスプラチン+ペメトレキセド+丸山ワクチン併用療法④コース終了
シスプラチン+ペメトレキセド+丸山ワクチン併用療法を④コース終えた患者さん、昨日2回目の効果判定を行いました。
縮小率は34%程度で、ようやく部分奏効にこぎつけました。
有害事象は化学療法day2-3ごろの食欲不振、便秘くらいで、安全に継続できています。
丸山ワクチンを接種し始めてから食欲が増進傾向にあるようで、これもまあ見方によっては有害事象かもしれません。
患者さん、ご家族と相談しましたが、できるところまで今の治療を続けたいとのご希望でした。
一般にシスプラチン併用化学療法は⑥コースまでは継続していいことになっているのでそこまで続けて、その後ペメトレキセドの維持療法に移行します。
来週は今年最後の⑤コース目。
抗がん薬調整から点滴管理までをすべて自分で行うのは骨が折れますが、治療効果が出ているからやる気も倍増です。
患者さんも週に3回もワクチン注射のために遠くから通ってくださっているわけですし、一緒に頑張ります。
縮小率は34%程度で、ようやく部分奏効にこぎつけました。
有害事象は化学療法day2-3ごろの食欲不振、便秘くらいで、安全に継続できています。
丸山ワクチンを接種し始めてから食欲が増進傾向にあるようで、これもまあ見方によっては有害事象かもしれません。
患者さん、ご家族と相談しましたが、できるところまで今の治療を続けたいとのご希望でした。
一般にシスプラチン併用化学療法は⑥コースまでは継続していいことになっているのでそこまで続けて、その後ペメトレキセドの維持療法に移行します。
来週は今年最後の⑤コース目。
抗がん薬調整から点滴管理までをすべて自分で行うのは骨が折れますが、治療効果が出ているからやる気も倍増です。
患者さんも週に3回もワクチン注射のために遠くから通ってくださっているわけですし、一緒に頑張ります。