2014年04月13日
C型慢性肝炎の治療
春の学会行脚が始まりました。
今朝までは東京国際フォーラムで日本内科学会総会、明日からは京都で日本呼吸器内視鏡学会総会です。
内科学会は守備範囲が大きすぎて、いつも何を勉強していいのかわからないうちに終わってしまうのですが、今回は慢性C型肝炎の講演を聴いてきました。
演者は虎の門病院の熊田博光先生です。
なんだか自分が学生のころに比べるとやたらと治療が進歩しているようで、目からうろこが落ちました。
感動が新鮮なうちに、自分のための備忘録として記載します。
慢性C型肝炎は、放置すると肝硬変に進展し、肝細胞癌の発生母地となります。
C型肝炎ウイルス(HCV)は1989年にウイルスそのものではなくウイルス塩基配列が最初に発見されたそうです。
学生のころ、確か感染制御学講座(ぼくらはウイルス学講座と言ってましたが)の原田先生が、
「米国のカイロン社がHCVを見つけた。」
「カイロン社は、検査キットの開発に目鼻がつくまで、HCVを見つけたことを公表しなかった。」
とかなんとかおっしゃっていたような気がしますが、そうすると、HCVの塩基配列を見つけたのはカイロン社、ということになるのでしょうか。
それまで、B型肝炎ウイルス(HBV)にはインターフェロン(IFN)が有効であったため、HCVに対してもIFN療法が行われることになりました。
その後のHCV治療の変遷は、概ね以下のとおりです。
1992年 IFN単独療法(α,β)の24週間投与
2003年 PegINFα(週1回投与)の48週間投与
2004年 PegINF+リバビリン(Riba)併用48週間投与:治癒率49.2%
2011年 PegIFN+Riba+第1世代プロテアーゼ阻害剤(テラプレビル)併用12週間→PegINF+Riba併用12週間:治癒率73%
2013年 PegIFN+Riba+第2世代プロテアーゼ阻害剤(シメプレビル)併用12週間→PegIFN+Riba併用12週間:治癒率88.6-91.7%
2010年以降に承認された治療で、急速に治癒率が向上していることがわかります。
そしてついに、セリンプロテアーゼ2剤併用療法が登場します。
うつ病や高齢のためにIFN投与の適応外とされていた患者さんにも道が開けたようです。
ダクラタスビル+アスナプレビル併用療法により、PegIFN+Riba無効例において80.5%、PegINF使用不能例では87.4%の治癒率を達成しました。
現在も、IFNを含む治療、含まない治療いずれも開発が進んでいるようですが、HCVの治療がIFNなしで=内服のみで行えるようになる日は、それほど遠くはなさそうです。
今朝までは東京国際フォーラムで日本内科学会総会、明日からは京都で日本呼吸器内視鏡学会総会です。
内科学会は守備範囲が大きすぎて、いつも何を勉強していいのかわからないうちに終わってしまうのですが、今回は慢性C型肝炎の講演を聴いてきました。
演者は虎の門病院の熊田博光先生です。
なんだか自分が学生のころに比べるとやたらと治療が進歩しているようで、目からうろこが落ちました。
感動が新鮮なうちに、自分のための備忘録として記載します。
慢性C型肝炎は、放置すると肝硬変に進展し、肝細胞癌の発生母地となります。
C型肝炎ウイルス(HCV)は1989年にウイルスそのものではなくウイルス塩基配列が最初に発見されたそうです。
学生のころ、確か感染制御学講座(ぼくらはウイルス学講座と言ってましたが)の原田先生が、
「米国のカイロン社がHCVを見つけた。」
「カイロン社は、検査キットの開発に目鼻がつくまで、HCVを見つけたことを公表しなかった。」
とかなんとかおっしゃっていたような気がしますが、そうすると、HCVの塩基配列を見つけたのはカイロン社、ということになるのでしょうか。
それまで、B型肝炎ウイルス(HBV)にはインターフェロン(IFN)が有効であったため、HCVに対してもIFN療法が行われることになりました。
その後のHCV治療の変遷は、概ね以下のとおりです。
1992年 IFN単独療法(α,β)の24週間投与
2003年 PegINFα(週1回投与)の48週間投与
2004年 PegINF+リバビリン(Riba)併用48週間投与:治癒率49.2%
2011年 PegIFN+Riba+第1世代プロテアーゼ阻害剤(テラプレビル)併用12週間→PegINF+Riba併用12週間:治癒率73%
2013年 PegIFN+Riba+第2世代プロテアーゼ阻害剤(シメプレビル)併用12週間→PegIFN+Riba併用12週間:治癒率88.6-91.7%
2010年以降に承認された治療で、急速に治癒率が向上していることがわかります。
そしてついに、セリンプロテアーゼ2剤併用療法が登場します。
うつ病や高齢のためにIFN投与の適応外とされていた患者さんにも道が開けたようです。
ダクラタスビル+アスナプレビル併用療法により、PegIFN+Riba無効例において80.5%、PegINF使用不能例では87.4%の治癒率を達成しました。
現在も、IFNを含む治療、含まない治療いずれも開発が進んでいるようですが、HCVの治療がIFNなしで=内服のみで行えるようになる日は、それほど遠くはなさそうです。
2014年04月13日
遅ればせながら・・・Best of ASCO 2014 in 神戸 1日目
先日upし忘れていたBest of ASCO 2014の印象記を載せ忘れていたので、改めて載せておきます。
ちなみに、1)の#LBA7008の話題は、既にNew England Journal of Medicineにpublishされていました。
興味がある方は、下記リンクをご覧ください。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1400376?query=TOC
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今日から、Best of ASCO 2014が神戸ポートピアホテルで開催されています。
例年、東京もしくは横浜で行われていますが、今年は神戸で開催です。
2日間缶詰で、専門分野外の内容も多分に含まれているので、目を白黒させたり上転させたりしながら過ごしています。
忘れないうちに、印象に残った話を記します。
1)血液がん(白血病)
#7005 再発/治療抵抗性の急性リンパ芽球性白血病に対するBlinatumomabの第II相試験
BlinatumomabはBiTE(Bispecific T-cell engaging antibody)とも称される特殊な抗体です。
細胞障害性T細胞上のCD3と標的細胞上のCD19の両方を認識します。
B細胞系の急性リンパ芽球性白血病細胞が高率にCD19を発現しています。
本疾患にBlinatumomabを投与することで、細胞障害性T細胞と腫瘍細胞が会合し、細胞性免疫が発揮されることを期待しています。
単アームの第II相試験が行われたのですが、完全奏効割合が43%で、奏効した患者さんだけ集めると、生存期間中央値が約10ヶ月とのこと。
さんざん前治療がされたあとのこの成績は、とても有望なんだそうです。
#LBA7008 再発/治療抵抗性の慢性リンパ性白血病に対するIbrutinibとOfatumumabの第III相比較試験 RESONATE trial
Ofatumumabは完全ヒト型抗CD20抗体で、同系統のRituximabより抗腫瘍活性が高く、欧米では慢性リンパ性白血病に対して適応が認められています。
一方のIbrutinibはブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬という新しいカテゴリーの分子標的薬で、2013年にマントル細胞リンパ腫に対して米国FDAの承認を受けています。
今回は、慢性リンパ性白血病に対して、これら両薬剤がガチンコ対決をしたわけです。
結果はIbrutinibの圧勝で、全生存期間、無増悪生存期間、各サブグループ解析ともに、かつて見たこともないくらい完膚なきまでにofatumumabをやっつけています。
2)血液がん(リンパ腫と骨髄腫)
#8501 SEXIE-R-CHOP-14 trial
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にR-CHOP療法をしたときに、Rituximabの効き目に性差があるよ、というお話。
女性に対する375mg/㎡と同等の効果を得るには、男性では500mg/㎡は使わないとダメなんだそうです。
その背景にある理論は明らかにされていないようです。
3)開発中の治療薬
今回取り上げられていたのは、FGFR(線維芽細胞成長因子受容体)阻害薬、nanog(多能性幹細胞マーカー、iPS細胞の山中先生がクローニングしたことで知られている)阻害薬、CD137(T細胞活性化に関わる膜蛋白)作動薬でした。個別の話より、「テーラーメイド医療からプレシージョン医療へ」というコンセプトに興味をそそられました。EGFR阻害薬やALK阻害薬といった薬が使えるかどうかを見るために患者の腫瘍サンプルを個別に検査に提出するのでなくて、最初から腫瘍サンプルの遺伝子異常を網羅的に検索し、得られた情報を元に多数の候補薬から治療薬を選択していく、というアプローチだそうです。分子標的薬の選択枝が膨大になりつつあるので、次世代シーケンサーやコンパニオン診断薬による網羅的解析が実地臨床で実現したら、そんな話になるでしょうね。臓器・組織型横断的な治療薬選択が行われるようになるでしょう。
4)ランチョンセミナー ASCO2014の後、EGFR遺伝子変異の世界で何が起こったか?
香港からTony Mok先生が来られて、お話してくださいました。
①既存のEGFR-TKIではどれがベスト・チョイスなのか、②術後補助化学療法としてのEGFR-TKIの意義は、③第3世代EGFR-TKIの手ごたえは、④EGFR-TKIと化学療法併用の展望、⑤EGFR-TKIと他の分子標的薬・抗体医薬の併用について、と、確かに今年は、EGFR-TKIに関する話題が、広く深く得られた年でした。細かい内容はまた後日。
午後からは消化器がん、支持療法とケア、乳がんのセッションでしたが、このころはもう意識朦朧としていました。
ただ、乳がん領域の治療開発アルゴリズムに綻びが生じつつあるとの話が出ていました。
何らかの薬の開発をするにあたり、治癒不能の患者さんを対象にすると、患者さんの数が少なめなので参加者を集めるのに時間がかかる、手術により根治可能な患者さんの根治率を上げるために術後治療で勝負しようとすると、今度は治療成績の差を見ていくのに時間がかかる、ということで、このところ10年は、根治切除可能な患者さんに術前治療として薬を使って、その後の摘出腫瘍を顕微鏡で見て、腫瘍が完全に制御されているか否かで治療薬としての有望性を見極める、という方向に向かっていたそうです。摘出腫瘍に腫瘍細胞が残存していなければ病理学的完全奏効(pCR)と判断して、おそらくは根治率も高いだろう、ということで、pCR率が無再発生存の代替指標として考えられていたとのこと。
しかし、今年明らかになった臨床試験の結果では、pCR率が高ければ無再発生存率、全生存率がよくなるとは限らない、とのことです。
治療開発アルゴリズムの見直しを迫られるというのはとても大きな出来事で、これまでpCRの向上を示して評価を受けた治療は、全て見直しを迫られるということです。
血液がんと乳がんは、常に他のがんの治療開発の行く先を占うと言われますが、肺がん領域での治療開発においても大いに参考にすべきです。
ちなみに、1)の#LBA7008の話題は、既にNew England Journal of Medicineにpublishされていました。
興味がある方は、下記リンクをご覧ください。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1400376?query=TOC
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今日から、Best of ASCO 2014が神戸ポートピアホテルで開催されています。
例年、東京もしくは横浜で行われていますが、今年は神戸で開催です。
2日間缶詰で、専門分野外の内容も多分に含まれているので、目を白黒させたり上転させたりしながら過ごしています。
忘れないうちに、印象に残った話を記します。
1)血液がん(白血病)
#7005 再発/治療抵抗性の急性リンパ芽球性白血病に対するBlinatumomabの第II相試験
BlinatumomabはBiTE(Bispecific T-cell engaging antibody)とも称される特殊な抗体です。
細胞障害性T細胞上のCD3と標的細胞上のCD19の両方を認識します。
B細胞系の急性リンパ芽球性白血病細胞が高率にCD19を発現しています。
本疾患にBlinatumomabを投与することで、細胞障害性T細胞と腫瘍細胞が会合し、細胞性免疫が発揮されることを期待しています。
単アームの第II相試験が行われたのですが、完全奏効割合が43%で、奏効した患者さんだけ集めると、生存期間中央値が約10ヶ月とのこと。
さんざん前治療がされたあとのこの成績は、とても有望なんだそうです。
#LBA7008 再発/治療抵抗性の慢性リンパ性白血病に対するIbrutinibとOfatumumabの第III相比較試験 RESONATE trial
Ofatumumabは完全ヒト型抗CD20抗体で、同系統のRituximabより抗腫瘍活性が高く、欧米では慢性リンパ性白血病に対して適応が認められています。
一方のIbrutinibはブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬という新しいカテゴリーの分子標的薬で、2013年にマントル細胞リンパ腫に対して米国FDAの承認を受けています。
今回は、慢性リンパ性白血病に対して、これら両薬剤がガチンコ対決をしたわけです。
結果はIbrutinibの圧勝で、全生存期間、無増悪生存期間、各サブグループ解析ともに、かつて見たこともないくらい完膚なきまでにofatumumabをやっつけています。
2)血液がん(リンパ腫と骨髄腫)
#8501 SEXIE-R-CHOP-14 trial
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にR-CHOP療法をしたときに、Rituximabの効き目に性差があるよ、というお話。
女性に対する375mg/㎡と同等の効果を得るには、男性では500mg/㎡は使わないとダメなんだそうです。
その背景にある理論は明らかにされていないようです。
3)開発中の治療薬
今回取り上げられていたのは、FGFR(線維芽細胞成長因子受容体)阻害薬、nanog(多能性幹細胞マーカー、iPS細胞の山中先生がクローニングしたことで知られている)阻害薬、CD137(T細胞活性化に関わる膜蛋白)作動薬でした。個別の話より、「テーラーメイド医療からプレシージョン医療へ」というコンセプトに興味をそそられました。EGFR阻害薬やALK阻害薬といった薬が使えるかどうかを見るために患者の腫瘍サンプルを個別に検査に提出するのでなくて、最初から腫瘍サンプルの遺伝子異常を網羅的に検索し、得られた情報を元に多数の候補薬から治療薬を選択していく、というアプローチだそうです。分子標的薬の選択枝が膨大になりつつあるので、次世代シーケンサーやコンパニオン診断薬による網羅的解析が実地臨床で実現したら、そんな話になるでしょうね。臓器・組織型横断的な治療薬選択が行われるようになるでしょう。
4)ランチョンセミナー ASCO2014の後、EGFR遺伝子変異の世界で何が起こったか?
香港からTony Mok先生が来られて、お話してくださいました。
①既存のEGFR-TKIではどれがベスト・チョイスなのか、②術後補助化学療法としてのEGFR-TKIの意義は、③第3世代EGFR-TKIの手ごたえは、④EGFR-TKIと化学療法併用の展望、⑤EGFR-TKIと他の分子標的薬・抗体医薬の併用について、と、確かに今年は、EGFR-TKIに関する話題が、広く深く得られた年でした。細かい内容はまた後日。
午後からは消化器がん、支持療法とケア、乳がんのセッションでしたが、このころはもう意識朦朧としていました。
ただ、乳がん領域の治療開発アルゴリズムに綻びが生じつつあるとの話が出ていました。
何らかの薬の開発をするにあたり、治癒不能の患者さんを対象にすると、患者さんの数が少なめなので参加者を集めるのに時間がかかる、手術により根治可能な患者さんの根治率を上げるために術後治療で勝負しようとすると、今度は治療成績の差を見ていくのに時間がかかる、ということで、このところ10年は、根治切除可能な患者さんに術前治療として薬を使って、その後の摘出腫瘍を顕微鏡で見て、腫瘍が完全に制御されているか否かで治療薬としての有望性を見極める、という方向に向かっていたそうです。摘出腫瘍に腫瘍細胞が残存していなければ病理学的完全奏効(pCR)と判断して、おそらくは根治率も高いだろう、ということで、pCR率が無再発生存の代替指標として考えられていたとのこと。
しかし、今年明らかになった臨床試験の結果では、pCR率が高ければ無再発生存率、全生存率がよくなるとは限らない、とのことです。
治療開発アルゴリズムの見直しを迫られるというのはとても大きな出来事で、これまでpCRの向上を示して評価を受けた治療は、全て見直しを迫られるということです。
血液がんと乳がんは、常に他のがんの治療開発の行く先を占うと言われますが、肺がん領域での治療開発においても大いに参考にすべきです。
2014年04月13日
ピルと肺がん
デトロイトのSEERデータベースを用いて、2001年11月から2005年10月までの実質4年間に肺がんと診断された患者さんから、485人の女性肺がん患者さんを抽出し、月経歴や女性ホルモン薬の服用状況を聴取して、予後を調べたという報告。
女性ホルモン薬を服用していた方が長生きしたとのことです。
Survival in Women with NSCLC - The Role of Reproductive History and Hormone Use
Hannah Katcoff, BA, Angela S. Wenzlaff, MPH, and Ann G. Schwartz, PhD, MPH
J Thorac Oncol. 2014;9: 355–361

女性ホルモン薬を服用していた方が長生きしたとのことです。
Survival in Women with NSCLC - The Role of Reproductive History and Hormone Use
Hannah Katcoff, BA, Angela S. Wenzlaff, MPH, and Ann G. Schwartz, PhD, MPH
J Thorac Oncol. 2014;9: 355–361

2014年04月11日
Motesanib(MONET1 study)のアジア人サブグループ解析
血管内皮増殖因子(VEGF)阻害抗体のBevacizumabがCarboplatin+Paclitaxel併用化学療法に上乗せすることによって生存期間を延長することはよく知られており、非小細胞・非扁平上皮癌の一般臨床で広く用いられています。
一方、いわゆる小分子化合物の分子標的薬にも血管増殖過程を阻害するものがありますが、Motesanibはその中に含まれます。
Motesanibは経口投与の分子標的薬で、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-1,2,3、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、Kitを阻害します。
MotesanibをCarboplatin+Paclitaxel併用化学療法に上乗せすることの効果を検証する第III相臨床試験(MONET1 study)の結果が2012年に論文化されていますが、残念ながら生存期間延長効果は認められませんでした。
International, Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Phase III Study of Motesanib Plus
Carboplatin/Paclitaxel in Patients With Advanced Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer: MONET1
Giorgio V. Scagliotti, Ihor Vynnychenko, Keunchil Park, Yukito Ichinose, Kaoru Kubota, Fiona Blackhall,
Robert Pirker, Rinat Galiulin, Tudor-Eliade Ciuleanu, Oleksandr Sydorenko, Mircea Dediu,
Zsolt Papai-Szekely, Natividad Martinez Banaclocha, Sheryl McCoy, Bin Yao, Yong-jiang Hei,
Francesco Galimi, and David R. Spigel
J Clin Oncol 30:2829-2836, 2012
そのMONET1 studyのアジア人サブグループ解析が論文化されています。
Phase III study (MONET1) of motesanib plus carboplatin/paclitaxel in patients with advanced nonsquamous
nonsmall-cell lung cancer (NSCLC): Asian subgroupanalysis
K. Kubota, Y. Ichinose, G. Scagliotti, D. Spigel, J. H. Kim, T. Shinkai, K. Takeda, S.-W. Kim,
T.-C. Hsia, R. K. Li, B. J. Tiangco, S. Yau,W.-T. Lim, B. Yao, Y.-J. Hei & K. Park
Annals of Oncology 25: 529–536, 2014
<背景>今回、非小細胞非扁平上皮癌患者に対するCarboplatin+Paclitaxel+motesanib併用療法がCarboplatin+Paclitaxel併用療法に対して全生存期間を改善するかどうかを検証する第III相試験、MONET1 studyにおいて、事前に計画されていたアジア人サブグループ解析を行った。
<対象と方法>stage IIIB/IVもしくは術後再発の非小細胞・非扁平上皮肺がんで、薬物療法歴のない患者を対象とした。Carboplatin(6AUC)+Paclitaxel(200mg/㎡)を3週毎、最大6コース行う群と、これにmotesanibを上乗せする群を比較した。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、安全性とした。
<結果>227人のアジア人患者が本試験に参加し、解析対象となった。生存期間中央値はmotesanib併用群で20.9ヶ月、非併用群で14.5ヶ月だった(p=0.0223)。無増悪生存期間中央値はそれぞれ7.0ヶ月、5.3ヶ月だった(p=0.0004)。奏効割合はそれぞれ62%、27%だった(p<0.0001)。Grade 3以上の有害事象はmotesanib併用群で有意に高頻度(79% vs 61%)であった。<<結論>今回行ったMONET 1 studyのアジア人サブグループ解析では、motesanib併用により有意に全生存期間、無増悪生存期間、奏効割合が改善した。




このデータ、Carboplatin+Paclitaxel+Bevacizumabに関する国内ランダム化第II相試験(JO19907試験)の結果を彷彿とさせます。
上記併用群の全生存期間中央値は22.8ヶ月、無増悪生存期間中央値は6.9ヶ月、奏効割合は60.7%でした。
ただ、Bevacizumabに関しては、海外第III相試験と国内第II相試験までで検証は終了しており、これがエビデンスとしては少し弱い理由なのだと思いますが、motesanibについては、アジア人患者を対象として、改めて第III相試験が行われているようです。
一方、いわゆる小分子化合物の分子標的薬にも血管増殖過程を阻害するものがありますが、Motesanibはその中に含まれます。
Motesanibは経口投与の分子標的薬で、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)-1,2,3、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、Kitを阻害します。
MotesanibをCarboplatin+Paclitaxel併用化学療法に上乗せすることの効果を検証する第III相臨床試験(MONET1 study)の結果が2012年に論文化されていますが、残念ながら生存期間延長効果は認められませんでした。
International, Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Phase III Study of Motesanib Plus
Carboplatin/Paclitaxel in Patients With Advanced Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer: MONET1
Giorgio V. Scagliotti, Ihor Vynnychenko, Keunchil Park, Yukito Ichinose, Kaoru Kubota, Fiona Blackhall,
Robert Pirker, Rinat Galiulin, Tudor-Eliade Ciuleanu, Oleksandr Sydorenko, Mircea Dediu,
Zsolt Papai-Szekely, Natividad Martinez Banaclocha, Sheryl McCoy, Bin Yao, Yong-jiang Hei,
Francesco Galimi, and David R. Spigel
J Clin Oncol 30:2829-2836, 2012
そのMONET1 studyのアジア人サブグループ解析が論文化されています。
Phase III study (MONET1) of motesanib plus carboplatin/paclitaxel in patients with advanced nonsquamous
nonsmall-cell lung cancer (NSCLC): Asian subgroupanalysis
K. Kubota, Y. Ichinose, G. Scagliotti, D. Spigel, J. H. Kim, T. Shinkai, K. Takeda, S.-W. Kim,
T.-C. Hsia, R. K. Li, B. J. Tiangco, S. Yau,W.-T. Lim, B. Yao, Y.-J. Hei & K. Park
Annals of Oncology 25: 529–536, 2014
<背景>今回、非小細胞非扁平上皮癌患者に対するCarboplatin+Paclitaxel+motesanib併用療法がCarboplatin+Paclitaxel併用療法に対して全生存期間を改善するかどうかを検証する第III相試験、MONET1 studyにおいて、事前に計画されていたアジア人サブグループ解析を行った。
<対象と方法>stage IIIB/IVもしくは術後再発の非小細胞・非扁平上皮肺がんで、薬物療法歴のない患者を対象とした。Carboplatin(6AUC)+Paclitaxel(200mg/㎡)を3週毎、最大6コース行う群と、これにmotesanibを上乗せする群を比較した。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、安全性とした。
<結果>227人のアジア人患者が本試験に参加し、解析対象となった。生存期間中央値はmotesanib併用群で20.9ヶ月、非併用群で14.5ヶ月だった(p=0.0223)。無増悪生存期間中央値はそれぞれ7.0ヶ月、5.3ヶ月だった(p=0.0004)。奏効割合はそれぞれ62%、27%だった(p<0.0001)。Grade 3以上の有害事象はmotesanib併用群で有意に高頻度(79% vs 61%)であった。<<結論>今回行ったMONET 1 studyのアジア人サブグループ解析では、motesanib併用により有意に全生存期間、無増悪生存期間、奏効割合が改善した。




このデータ、Carboplatin+Paclitaxel+Bevacizumabに関する国内ランダム化第II相試験(JO19907試験)の結果を彷彿とさせます。
上記併用群の全生存期間中央値は22.8ヶ月、無増悪生存期間中央値は6.9ヶ月、奏効割合は60.7%でした。
ただ、Bevacizumabに関しては、海外第III相試験と国内第II相試験までで検証は終了しており、これがエビデンスとしては少し弱い理由なのだと思いますが、motesanibについては、アジア人患者を対象として、改めて第III相試験が行われているようです。