2019年08月20日

カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ、我が国でも進展型小細胞肺癌一次治療に使用可能に

 分子標的薬よりも先に、免疫チェックポイント阻害薬が進展型小細胞肺癌の領域に乗り入れてきた。
 いずれ、限局型にもこうした動きが出てくるかもしれない。

 関連する臨床試験は、IMpower133試験。
 関連記事は以下を参照のこと。
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e943506.html

 ただ、喫煙関連肺癌に対して公費から高額医療が供されるのは、やはり納得できない。
 たばこを国内販売禁止にするのが先なのでは?



 厚生労働省の薬食審医薬品第二部会は8月2日、抗PD-L1抗体テセントリクの進展型小細胞肺がん適応追加の承認可否を審議し、承認することを了承した。同剤は小細胞肺がんの適応を持つ初の免疫チェックポイント阻害薬となる。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽テセントリク点滴静注1200 mg(アテゾリズマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「進展型小細胞肺がん」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

 免疫チェックポイント阻害薬で、抗PD-L1抗体。小細胞肺がんは、増殖が速く転移しやすいのが特徴。早期発見は困難で、手術だけでは再発しやすい一方、抗がん剤や放射線治療に対する反応が良いとされる。国内の肺がんの年間罹患患者数は約12.5万人。肺がん患者のうち約20%が小細胞肺がん患者、このうち60~70%が進展型と診断される。

 同剤の進展型小細胞肺がんの適応は、海外では2019年5月時点で米国など4か国で承認済。
  

2019年08月20日

オシメルチニブ、FLAURA試験で全生存期間も有意に延長

 これで、EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌に対するゲフィチニブ、エルロチニブの単剤治療としての役割はほぼ終わった。
 ややもすると、他のEGFR阻害薬もそうかも知れない。

https://www.astrazeneca.com/content/astraz/media-centre/press-releases/2019/tagrisso-significantly-improves-overall-survival-in-the-phase-iii-flaura-trial-for-1st-line-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer-09082019.html



<アストラゼネカのタグリッソ、第3相FLAURA試験においてEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの一次治療薬として全生存期間を有意に改善>

 アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot]、以下、アストラゼネカ)は、2019年8月9日、第3相FLAURA試験における全生存期間(OS)の改善を発表した。本試験は、前治療歴のない局所進行あるいは転移性EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんを対象とした、オシメルチニブの無作為化二重盲検多施設共同試験である。

 オシメルチニブは第3相FLAURA試験において、従来の標準治療(SoC)であるエルロチニブまたはゲフィチニブとの比較で、統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるOSの改善を示し、副次評価項目を達成した。2017年7月には、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示しており、病勢進行または死亡に至るまでの期間を延長した。なお、オシメルチニブの安全性および忍容性は、これまでに行われた試験の安全性プロファイルと同様だった。

アストラゼネカは、今後の学術集会にてFLAURA試験の全生存期間データを発表する予定。




9 August 2019 07:00 BST

Tagrisso is the only medicine demonstrating statistically-significant overall survival benefit in this setting. Also increased the time patients with central nervous system metastases lived without disease progression

AstraZeneca today announced positive overall survival (OS) results from the Phase III FLAURA trial, a randomised, double-blinded, multi-centre trial of Tagrisso (osimertinib) in previously-untreated patients with locally-advanced or metastatic non-small cell lung cancer (NSCLC) whose tumours have epidermal growth factor receptor (EGFR) mutations.

Tagrisso showed a statistically-significant and clinically-meaningful improvement in OS, a secondary endpoint in the FLAURA Phase III trial, compared with erlotinib or gefitinib both of which were previous standard-of-care (SoC) treatments in this setting. The FLAURA trial met its primary endpoint in July 2017, showing a statistically-significant and clinically-meaningful improvement in progression-free survival (PFS), increasing the time patients lived without disease progression or death from any cause. The safety and tolerability of Tagrisso was consistent with its established profile.

José Baselga, Executive Vice President, Oncology R&D said: “Today’s positive results show that Tagrisso provides an unprecedented survival outcome versus previous standard-of-care epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitors, reaffirming Tagrisso as the 1st-line standard-of-care for EGFR-mutated metastatic non-small cell lung cancer.”

AstraZeneca plans to present the OS results from the FLAURA trial at a forthcoming medical meeting.

Tagrisso is currently approved in 74 countries, including the US, Japan and the EU, for 1st-line EGFRm metastatic NSCLC.
  

2019年08月01日

電子カルテ

 現在の職場に電子カルテが導入されて、4年程度が経過した。
 所感を少し。
 
 手書きのお手紙が電子メール、SNSに切り替わるように、紙カルテが電子カルテに切り替わるのも、時代の要請であることは間違いない。
 電子カルテが導入されて、情報共有が容易になり、院内のどこにいても患者情報にアクセスできて、記録やオーダーができる。
 一方で、時間の経過とともにシステムに負荷がかかり、齟齬を来すことが多くなる。
 システムがダウンしたら病院機能の大半がストップしてしまう。
 以前の職場ではしばしばそうしたことが起こり、診療の現場が混乱していた。

 先日の臨床腫瘍学会総会、その日の一通りの発表が終わった後に、ひっそりとイブニングセミナーで電子カルテにまつわる話題が提供されていた。
 国立がん研究センター中央病院において、PwCが開発した"Double Jump"の電子カルテシステム導入が検討されているらしい。
 https://www.pwc.com/us/en/industries/health-industries/library/doublejump.html

 既に米国のhigh volume centerには導入実績があるとのこと。
 話を聞く限りでは、インターネット環境へのオープンアクセスが前提で、ログインする職員のセキュリティーをしっかり管理して、安全性を確保しているとのことだった。
 オープンアクセスであるがゆえに、本システムを導入している複数の施設のデータを集約することが可能で、かなり簡単なプロセスで(個人情報をマスクした上での)患者背景、臨床経過、各種検査データ、生命予後を各端末にて集計・表示できるとのことだった。
 例えば、NTRK陽性肺がん患者のデータを複数の施設のデータベースからリアルタイムに抽出して、生命予後を含めた各種データを抽出できる、ということを動画で示していた。
 
 臨床の現場で悪戦苦闘する医療スタッフが、統合された臨床データにアクセスしやすくなる、という点で、アイデアとしてはずっと以前からあったんだろうけど、それを実現したということでとても画期的なシステムのように思われた。
 ただ、日本の風土に合うかどうかは別問題で、既にインターネットを介した電子カルテ管理が受け入れられている米国だからこそ成立するスキームのような気がする。
 基本的にクローズド環境が前提の我が国の電子カルテでは、なかなか多施設間では普及しづらいだろう。
 同じコンセプトで、我が国の電子カルテシステムのトップランナーである富士通がシステム開発をして導入した方が、早くゴールにたどり着ける気がする。


   

Posted by tak at 12:06Comments(0)その他