2021年06月06日
KRAS G12C変異陽性非小細胞肺がん、Sotorasibで1年長生き
まだ身の回りでは1件くらいしかKRAS G12C変異患者を見たことはないけれど。
2021/05/28付をもって、米国食品医薬品局は既治療KRAS p.G12C陽性進行非小細胞肺がんに対するsotorasibを薬事承認した。
KRAS遺伝子変異陽性の患者に対して、分子標的薬単剤で1年以上の生存期間延長が示されたのは、見事だ。
さて、我が国の実臨床にもこの恩恵がもたらされる日は来るのか?
Sotorasib for Lung Cancers with KRAS p.G12C Mutation
Ferdinandos Skoulidis, M.D., Ph.D. et al., N Engl J Med June 4, 2021
DOI: 10.1056/NEJMoa2103695
2021 ASCO Annual Meeting abst.#9003, CodeBreaK100 trial
背景:
Sotorasibは第I相試験において、KRAS p.G12C変異陽性の進行固形がんに対する有効性を示しており、その中でとりわけ非小細胞肺がんサブグループで有望な抗腫瘍活性を示していた。
方法:
今回の単アーム第II相試験において、既に標準治療を終えたKRAS p.G12C変異陽性非小細胞肺がん患者を対象にsotorasib 960mg1日1回内服投与の有効性を検証した。主要評価項目は独立評価委員会判定による奏効割合(完全奏効(CR)患者+部分奏効(PR)患者 / 全患者)とした。副次評価項目には、奏効持続期間、病勢コントロール割合(CR患者+PR患者+病勢安定(SD)患者 / 全患者)、無増悪生存期間、全生存期間、安全性を含めた。sotorasibの有効性と関わるバイオマーカーについても探索的評価を行った。
結果:
126人の患者が登録され、その大半(81.0%)はプラチナ併用化学療法とPD-1もしくはPD-L1阻害薬の前治療歴を有していた。独立評価委員会判定によると、124人はベースラインで測定可能病変を有し、腫瘍縮小効果について評価された。奏効は46人の患者で認められ(奏効割合37.1%、95%信頼区間28.6-46.2%)、そのうち4人(3.2%)は完全奏効、42人(33.9%)は部分奏効だった。奏効持続期間中央値は11.1ヶ月(95%信頼区間6.9ヶ月-未到達)だった。病勢コントロールは100人の患者で得られ、病勢コントロール割合は80.6%(95%信頼区間72.6-87.2%)だった。無増悪生存期間中央値は6.8ヶ月(95%信頼区間5.1-8.2ヶ月)、生存期間中央値は12.5ヶ月(95%信頼区間10.0ヶ月-未到達)だった。
治療関連有害事象は126人中88人(69.8%)で認められ、Grade 3の有害事象は25人(19.8%)を、Grade 4相当は1人(0.8%)だった。PD-L1発現状態、tumor mutational burden(TMB)、共存する他の遺伝子異常(STK11、KEAP1、もしくはTP53)の有無でサブグループ解析をしたが、どのサブグループでもsotorasibにより一定の腫瘍縮小効果が認められた。
結論:
今回の第II相試験において、前治療歴のあるKRAS p.G12C陽性非小細胞肺がんに対し、sotorasibは新たな有害事象を伴わず長期にわたる臨床的有用性をもたらした。
2021/05/28付をもって、米国食品医薬品局は既治療KRAS p.G12C陽性進行非小細胞肺がんに対するsotorasibを薬事承認した。
KRAS遺伝子変異陽性の患者に対して、分子標的薬単剤で1年以上の生存期間延長が示されたのは、見事だ。
さて、我が国の実臨床にもこの恩恵がもたらされる日は来るのか?
Sotorasib for Lung Cancers with KRAS p.G12C Mutation
Ferdinandos Skoulidis, M.D., Ph.D. et al., N Engl J Med June 4, 2021
DOI: 10.1056/NEJMoa2103695
2021 ASCO Annual Meeting abst.#9003, CodeBreaK100 trial
背景:
Sotorasibは第I相試験において、KRAS p.G12C変異陽性の進行固形がんに対する有効性を示しており、その中でとりわけ非小細胞肺がんサブグループで有望な抗腫瘍活性を示していた。
方法:
今回の単アーム第II相試験において、既に標準治療を終えたKRAS p.G12C変異陽性非小細胞肺がん患者を対象にsotorasib 960mg1日1回内服投与の有効性を検証した。主要評価項目は独立評価委員会判定による奏効割合(完全奏効(CR)患者+部分奏効(PR)患者 / 全患者)とした。副次評価項目には、奏効持続期間、病勢コントロール割合(CR患者+PR患者+病勢安定(SD)患者 / 全患者)、無増悪生存期間、全生存期間、安全性を含めた。sotorasibの有効性と関わるバイオマーカーについても探索的評価を行った。
結果:
126人の患者が登録され、その大半(81.0%)はプラチナ併用化学療法とPD-1もしくはPD-L1阻害薬の前治療歴を有していた。独立評価委員会判定によると、124人はベースラインで測定可能病変を有し、腫瘍縮小効果について評価された。奏効は46人の患者で認められ(奏効割合37.1%、95%信頼区間28.6-46.2%)、そのうち4人(3.2%)は完全奏効、42人(33.9%)は部分奏効だった。奏効持続期間中央値は11.1ヶ月(95%信頼区間6.9ヶ月-未到達)だった。病勢コントロールは100人の患者で得られ、病勢コントロール割合は80.6%(95%信頼区間72.6-87.2%)だった。無増悪生存期間中央値は6.8ヶ月(95%信頼区間5.1-8.2ヶ月)、生存期間中央値は12.5ヶ月(95%信頼区間10.0ヶ月-未到達)だった。
治療関連有害事象は126人中88人(69.8%)で認められ、Grade 3の有害事象は25人(19.8%)を、Grade 4相当は1人(0.8%)だった。PD-L1発現状態、tumor mutational burden(TMB)、共存する他の遺伝子異常(STK11、KEAP1、もしくはTP53)の有無でサブグループ解析をしたが、どのサブグループでもsotorasibにより一定の腫瘍縮小効果が認められた。
結論:
今回の第II相試験において、前治療歴のあるKRAS p.G12C陽性非小細胞肺がんに対し、sotorasibは新たな有害事象を伴わず長期にわたる臨床的有用性をもたらした。
セルペルカチニブ、上市
CLIP1-LTK融合遺伝子の発見・・・LC-SCRUM Asiaから
セルペルカチニブ、2021年12月13日発売予定
セルペルカチニブと過敏症
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
脳転移を有する患者集団に対しても、免疫チェックポイント阻害薬は有効なのか
第4世代ALK阻害薬・・・TPX-0131とNVL-655
セルペルカチニブ、製造販売承認
ドライバー遺伝子変異陽性患者におけるPACIFICレジメンの有効性
HER2遺伝子変異陽性肺がんに対するtrastuzumab deruxtecan
オシメルチニブ耐性化後は、耐性機序同定や分子標的治療は意味がないのか
EGFR/ALK陽性非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用療法
ドライバー遺伝子異常検出におけるジレンマとmultiplex PCR
中国人患者におけるRET阻害薬(Selpercatinib, Pralsetinib)の有効性
オシメルチニブによる術前療法・・・NeoADAURAの前哨戦
BRAF遺伝子変異と縁がない
RET阻害薬、セルペルカチニブがやってくる
進行が速い進行肺腺がんに遭遇したらどう振る舞うか
ARROW試験のupdated data...RET肺がんとpralsetinib
EGFRエクソン20挿入変異に対するAmivantamab
CLIP1-LTK融合遺伝子の発見・・・LC-SCRUM Asiaから
セルペルカチニブ、2021年12月13日発売予定
セルペルカチニブと過敏症
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
脳転移を有する患者集団に対しても、免疫チェックポイント阻害薬は有効なのか
第4世代ALK阻害薬・・・TPX-0131とNVL-655
セルペルカチニブ、製造販売承認
ドライバー遺伝子変異陽性患者におけるPACIFICレジメンの有効性
HER2遺伝子変異陽性肺がんに対するtrastuzumab deruxtecan
オシメルチニブ耐性化後は、耐性機序同定や分子標的治療は意味がないのか
EGFR/ALK陽性非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用療法
ドライバー遺伝子異常検出におけるジレンマとmultiplex PCR
中国人患者におけるRET阻害薬(Selpercatinib, Pralsetinib)の有効性
オシメルチニブによる術前療法・・・NeoADAURAの前哨戦
BRAF遺伝子変異と縁がない
RET阻害薬、セルペルカチニブがやってくる
進行が速い進行肺腺がんに遭遇したらどう振る舞うか
ARROW試験のupdated data...RET肺がんとpralsetinib
EGFRエクソン20挿入変異に対するAmivantamab
この記事へのコメント
KRASとその他driver遺伝子の相互排他性を考えると、これまでKRAS遺伝子異常はがっかり因子と考えられてきたわけですが、これで少し希望が見えたような気もします。大腸癌ではすでにKRAS/BRAF遺伝子異常の検査が保険診療でされている(抗EGFR抗体薬の負の効果予測因子として)のに、なぜ肺癌では保険診療として調べられないのか疑問に思っています。1%未満の希少肺癌の検索ももちろん大事なのですが、KRASは日本人の非小細胞肺癌の5-10%ですから、圧倒的に多いです。NGSで高い金払って結局KRAS陽性で現実を突きつけられることもあるわけです。なのでEGFRと同じ段階で調べれば効率がよいと思います。もちろんG12Cに続き、他のvariantでも分子標的治療が開発されることを切に願っています。
またKRAS遺伝子異常は肺癌以外に膵癌(90%以上)、大腸癌(30-40%)でも陽性になるので、当院では転移性肺腫瘍やdouble cancerの鑑別に使うこともあります(大腸癌の場合のみ保険適応です)。
またKRAS遺伝子異常は肺癌以外に膵癌(90%以上)、大腸癌(30-40%)でも陽性になるので、当院では転移性肺腫瘍やdouble cancerの鑑別に使うこともあります(大腸癌の場合のみ保険適応です)。
Posted by 呼吸器外科医 at 2021年06月08日 20:24
呼吸器外科医さんへ
コメントありがとうございます。KRAS遺伝子変異検査は、条件付きではありますが一応肺癌でも保険診療として認められています。
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_3_1_1_1/d004-2.html
そのため、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測として、一定の利用価値があると思っていました。欧米ほどではないものの非小細胞肺がんの5-10%という頻度はEGFRについで高く、治療方針決定に有益ならば積極的に利用すべきですよね。Sotorasib、国内でも早く使えるようになるといいですね。
コメントありがとうございます。KRAS遺伝子変異検査は、条件付きではありますが一応肺癌でも保険診療として認められています。
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_3_1_1_1/d004-2.html
そのため、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測として、一定の利用価値があると思っていました。欧米ほどではないものの非小細胞肺がんの5-10%という頻度はEGFRについで高く、治療方針決定に有益ならば積極的に利用すべきですよね。Sotorasib、国内でも早く使えるようになるといいですね。
Posted by tak
at 2021年06月13日 14:15
