2020年06月30日
ALEX試験、最新の生存解析結果
もはや、ALK陽性肺がん初回治療の不動の第一選択と言っていいアレクチニブ。
このことを決定づけた第III相臨床試験、標準投与量が我が国と他国で異なることから、我が国ではJ-ALEX試験として、他国ではALEX試験として施行された。
今回は、ALEX試験における生存解析の最新報告。
アレクチニブ群で、追跡期間中央値が4年を超えてもまだ生存期間中央値未到達で、5年生存割合が62.5%というのは、とても立派なことだ。
本当に、ドライバー遺伝子変異があるかないかで、患者の運命が大きく変わってしまう。
EGFR遺伝子変異の有無がゲフィチニブの有効性を左右することが明らかとなったのが2004年の話だが、それから16年経過して、治療対象となるドライバー遺伝子変異の種類が増えるとともに、個々の遺伝子変異に対する治療の進歩も目覚ましい。
それだけに、診断プロセスに見落としや怠慢があってはならないし、分子標的薬の対象である患者に対して適切な説明もなくそれ以外の治療を行うことは、厳に慎まなければならない。
そして、もはや5年生存ではなく、その先を見据えた治療開発が必要になったと言ってよいだろう。
Updated overall survival (OS) and safety data from the randomized, phase III ALEX study of alectinib (ALC) versus crizotinib (CRZ) in untreated advanced ALK+ NSCLC.
Peters et al., ASCO2020 abst.#9518
背景:
ALK融合遺伝子陽性の未治療進行非小細胞肺がんを対象に、アレクチニブとクリゾチニブの有効性を比較した第III相ALEX試験について、無増悪生存期間の最終結果は既に報告されている。すなわち、アレクチニブ群で34.8ヶ月(95%信頼区間は17.7ヶ月から未到達)、クリゾチニブ群で10.9ヶ月(95%信頼区間は9.1-12.9ヶ月)、ハザード比0.43(95%信頼区間は0.32-0.58)だった。今回は、前回の同様の報告から12ヶ月の追跡調査を行い、2019年11月29日カットオフ時点での5年生存割合最新データについて報告する。
方法:
免疫染色による中央判定でALK融合遺伝子陽性を確認した臨床病期IIIB / IV期の非小細胞肺がん患者で、ECOG-PSは0-2、過去に全身薬物療法の治療歴のない患者を対象に、アレクチニブ群(アレクチニブ600mg/日、152人)とクリゾチニブ群(クリゾチニブ250mg/日、151人)に1:1の割合で割り付けた。治療開始前の段階で、無症候性の脳転移を有する患者は参加可能とした。全生存期間は副次評価項目で、本試験の有効性判定にはもともと寄与しない臨床試験デザインとなっていた。
結果:
追跡期間中央値は、アレクチニブ群で48.2ヶ月、クリゾチニブ群で23.2ヶ月だった。全生存期間に関するデータは今だ不十分で(死亡イベントの発生割合は37%、ハザード比は0.67(95%信頼区間は0.46-0.98)、アレクチニブ群の生存期間中央値は未到達、クリゾチニブ群の生存期間中央値は57.4ヶ月(95%信頼区間は34.6-未到達)だった。アレクチニブ群の5年生存割合は62.5%(95%信頼区間は54.3%-70.8%)、クリゾチニブ群の5年生存割合は45.5%(95%信頼区間は33.6-57.4%)だった。治療開始前に脳転移があった患者に限ればハザード比は0.58(95%信頼区間は0.34-1.00)、脳転移がなかった患者に限ればハザード比は0.76(95%信頼区間は0.45-1.26)だった。サブグループ解析を行っても、生存期間に関するアレクチニブ群の優位性は一貫していた。今回の追跡調査において、毒性に関する新たな知見は得られなかった。アレクチニブ群の35%、クリゾチニブ群の9%は未だにプロトコール治療を継続していた。プロトコール治療終了後、1レジメン以上の後治療を行った患者において(アレクチニブ群の32.2%、クリゾチニブ群の45.7%)、アレクチニブ群で最も多く用いられたALK阻害薬はロルラチニブであり(7.2%)、クリゾチニブ群で最も多く用いられたLAK阻害薬はセリチニブだった(15.2%)
・ALEX試験 概略

・ALEX試験 生存曲線

・J-ALEX and ALEX
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e902483.html
・ALEX試験のアジア人サブグループ解析
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e916937.html
このことを決定づけた第III相臨床試験、標準投与量が我が国と他国で異なることから、我が国ではJ-ALEX試験として、他国ではALEX試験として施行された。
今回は、ALEX試験における生存解析の最新報告。
アレクチニブ群で、追跡期間中央値が4年を超えてもまだ生存期間中央値未到達で、5年生存割合が62.5%というのは、とても立派なことだ。
本当に、ドライバー遺伝子変異があるかないかで、患者の運命が大きく変わってしまう。
EGFR遺伝子変異の有無がゲフィチニブの有効性を左右することが明らかとなったのが2004年の話だが、それから16年経過して、治療対象となるドライバー遺伝子変異の種類が増えるとともに、個々の遺伝子変異に対する治療の進歩も目覚ましい。
それだけに、診断プロセスに見落としや怠慢があってはならないし、分子標的薬の対象である患者に対して適切な説明もなくそれ以外の治療を行うことは、厳に慎まなければならない。
そして、もはや5年生存ではなく、その先を見据えた治療開発が必要になったと言ってよいだろう。
Updated overall survival (OS) and safety data from the randomized, phase III ALEX study of alectinib (ALC) versus crizotinib (CRZ) in untreated advanced ALK+ NSCLC.
Peters et al., ASCO2020 abst.#9518
背景:
ALK融合遺伝子陽性の未治療進行非小細胞肺がんを対象に、アレクチニブとクリゾチニブの有効性を比較した第III相ALEX試験について、無増悪生存期間の最終結果は既に報告されている。すなわち、アレクチニブ群で34.8ヶ月(95%信頼区間は17.7ヶ月から未到達)、クリゾチニブ群で10.9ヶ月(95%信頼区間は9.1-12.9ヶ月)、ハザード比0.43(95%信頼区間は0.32-0.58)だった。今回は、前回の同様の報告から12ヶ月の追跡調査を行い、2019年11月29日カットオフ時点での5年生存割合最新データについて報告する。
方法:
免疫染色による中央判定でALK融合遺伝子陽性を確認した臨床病期IIIB / IV期の非小細胞肺がん患者で、ECOG-PSは0-2、過去に全身薬物療法の治療歴のない患者を対象に、アレクチニブ群(アレクチニブ600mg/日、152人)とクリゾチニブ群(クリゾチニブ250mg/日、151人)に1:1の割合で割り付けた。治療開始前の段階で、無症候性の脳転移を有する患者は参加可能とした。全生存期間は副次評価項目で、本試験の有効性判定にはもともと寄与しない臨床試験デザインとなっていた。
結果:
追跡期間中央値は、アレクチニブ群で48.2ヶ月、クリゾチニブ群で23.2ヶ月だった。全生存期間に関するデータは今だ不十分で(死亡イベントの発生割合は37%、ハザード比は0.67(95%信頼区間は0.46-0.98)、アレクチニブ群の生存期間中央値は未到達、クリゾチニブ群の生存期間中央値は57.4ヶ月(95%信頼区間は34.6-未到達)だった。アレクチニブ群の5年生存割合は62.5%(95%信頼区間は54.3%-70.8%)、クリゾチニブ群の5年生存割合は45.5%(95%信頼区間は33.6-57.4%)だった。治療開始前に脳転移があった患者に限ればハザード比は0.58(95%信頼区間は0.34-1.00)、脳転移がなかった患者に限ればハザード比は0.76(95%信頼区間は0.45-1.26)だった。サブグループ解析を行っても、生存期間に関するアレクチニブ群の優位性は一貫していた。今回の追跡調査において、毒性に関する新たな知見は得られなかった。アレクチニブ群の35%、クリゾチニブ群の9%は未だにプロトコール治療を継続していた。プロトコール治療終了後、1レジメン以上の後治療を行った患者において(アレクチニブ群の32.2%、クリゾチニブ群の45.7%)、アレクチニブ群で最も多く用いられたALK阻害薬はロルラチニブであり(7.2%)、クリゾチニブ群で最も多く用いられたLAK阻害薬はセリチニブだった(15.2%)
・ALEX試験 概略

・ALEX試験 生存曲線

・J-ALEX and ALEX
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e902483.html
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http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e916937.html
セルペルカチニブ、上市
CLIP1-LTK融合遺伝子の発見・・・LC-SCRUM Asiaから
セルペルカチニブ、2021年12月13日発売予定
セルペルカチニブと過敏症
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
脳転移を有する患者集団に対しても、免疫チェックポイント阻害薬は有効なのか
第4世代ALK阻害薬・・・TPX-0131とNVL-655
セルペルカチニブ、製造販売承認
ドライバー遺伝子変異陽性患者におけるPACIFICレジメンの有効性
HER2遺伝子変異陽性肺がんに対するtrastuzumab deruxtecan
オシメルチニブ耐性化後は、耐性機序同定や分子標的治療は意味がないのか
EGFR/ALK陽性非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用療法
ドライバー遺伝子異常検出におけるジレンマとmultiplex PCR
中国人患者におけるRET阻害薬(Selpercatinib, Pralsetinib)の有効性
オシメルチニブによる術前療法・・・NeoADAURAの前哨戦
BRAF遺伝子変異と縁がない
RET阻害薬、セルペルカチニブがやってくる
進行が速い進行肺腺がんに遭遇したらどう振る舞うか
ARROW試験のupdated data...RET肺がんとpralsetinib
EGFRエクソン20挿入変異に対するAmivantamab
CLIP1-LTK融合遺伝子の発見・・・LC-SCRUM Asiaから
セルペルカチニブ、2021年12月13日発売予定
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根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
脳転移を有する患者集団に対しても、免疫チェックポイント阻害薬は有効なのか
第4世代ALK阻害薬・・・TPX-0131とNVL-655
セルペルカチニブ、製造販売承認
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EGFR/ALK陽性非小細胞肺がんに対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ペンブロリズマブ併用療法
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進行が速い進行肺腺がんに遭遇したらどう振る舞うか
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