2020年02月15日

クライオプローブを用いた経気管支肺生検、診療報酬加算対象へ

 液化炭酸ガスを冷媒として、瞬間凍結した組織を気管支鏡下に採取するクライオプローブ生検。
 最初に取り上げてから、はや6年の歳月がたった。
 関連記事は以下。
 
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e757834.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e901380.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e859762.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e889077.html

 その後、日本国内で使用できるようになったのはいいものの、日本全国津々浦々に浸透したとはいいがたい。
 大分にはまだ入ってきていない。

 理由は以下のような点だろう。
1)機材が高い
 主な装置が500-600万円、処置用のプローブ(消耗品)が1本200万円、初期導入時費用は計約800万円
 処置用のプローブの平均使用可能回数が100回というから、最低でも1検査2万円のコストがかかる
2)生検時の出血リスクが高い
 大きい組織が取れるがゆえに、組織を取り出すときには気管支鏡ごといったん引き抜かなければならない
 経気管支肺生検時、出血による合併症のリスクを最小限に抑えるため、普通は生検直後に気管支鏡で出血源の気管支を塞ぐ
 クライオプローブ生検ではそれができないわけで、出血による合併症リスクが問題視されている
 学会報告などでは一般の気管支鏡化生検と比較して出血リスクは少ないと報告されているが、おそらくそれは真実ではない
 全例気管内挿管をして検査をするという前提の違いや、どの程度の出血を臨床的に問題視するかという施設間の温度差が横たわっている
3)本生検をしても、医療機関への経済的なメリットはない
 使用できるようになったけれど、クライオプローブ生検をやったからといって、追加の収入は医療機関には認められていなかった
 
 検査における患者のリスクが増し、800万円という初期投資、2万円 / 検査というランニングコストが医療機関に発生する一方で、メリットは質の良い大きな組織がとれるという一点に尽きる。
 質の良い大きな組織は、病理診断の正確性には寄与するものの、遺伝子変異検索やPD-L1評価については必ずしも従来生検に対するアドバンテージとはいいがたい。
 従来生検でそれなりにうまく機能しているからである。 

 しかし、次世代シーケンサーを用いた解析が曲がりなりにも保険診療できるようになったことで、風向きが変わったような気がする。
 昨日小耳にはさんだところによると、来年度の診療報酬改定において、クライオプローブ生検が診療報酬加算対象になるとのこと。
 要は、クライオプローブ生検を行うことで医療機関は追加収入が得られ、適正な診療報酬額が認められれば、1)や3)の点は一定範囲で解決することになる。
 適応症が肺がんのみならず、その他一般の呼吸器疾患も認められるのであれば、間質性肺炎等の診断が難しい疾患の診断についても朗報となるだろう。


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Posted by tak at 13:56│Comments(0)検査法
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