2016年07月07日

クライオプローブは今どこに?

 経気管支肺凍結生検(クライオプローブ)の話題、約2年前に取り上げてから、そのままお蔵入りになっていました。
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e757834.html

 第3世代EGFR阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が実地臨床に導入され、効果予測の観点から再生検の重要性が頻りに言われていますが、初回診断時に比べると生検自体が困難であるとか、安全な生検と的確な病理・遺伝子診断が必ずしも両立しないとか、様々な論点が出てきています。
 liquid biopsyが実用化されればそれでいいのかというとそういうわけでもなく、循環血液中にctDNAが流れるようになって検出率が上がるころには並行して病勢が進行していて、これまた早期診断と検出感度は両立しない可能性が高いと思われます。
 そういった論点の一部を解決してくれそうなのがクライオプローブで、経気管支生検時に大きな組織を採取できる、挫滅のない凍結組織が取れる、そのため病理診断に適している、さらには合併症はそれほどひどくならない、といった風です。
 しかしながら、我が国での導入は立ち遅れています。

 今回の日本呼吸器内視鏡学会総会では、動物実験のデータが発表されていました。
 ブタさんでクライオプローブを使ったらどうなるか、という実験ですが、当然のことながら大きな組織が取れているようです。

 一方、国立がん研究センター東病院では、患者さんを対象としたクライオプローブの単施設臨床試験が今年から開始されています。
 通常の経気管支肺生検後にクライオプローブの生検を追加するというものです。
 主要評価項目は安全性ですので、位置づけとしては第I相試験相当でしょうか。
 しかし、目標登録数は200人とそこそこの規模ですので、この結果をもって実地臨床への導入を目指していると考えていいでしょう。
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000026321


第39回日本呼吸器内視鏡学会総会
#O22-4 凍結生検の有用性の検討

・クライオプローブによる気管支鏡下生検の既報
 Hetzel et al, Eur Respir J 2012
 Casoni et al, PLoS one 2014
 Pajares et al, Respirology 2014
 Frutcher et al, Respirology 2014
 Jonathan et al, PLoS one 2013
・ミニブタを対象に、BF-P290を用いて無作為化比較
・通常のTBLBを行う群と、クライオプローブを用いる群に割付
・クライオプローブは5秒間CO2送気し凍結
・クライオプローブでは最大径6mm大の組織採取ができた
・TBLB群: 採取組織径2.4±0.6137mm3、挫滅が多い
・クライオプローブ:採取組織径27.1±3.491mm3で挫滅が少ない
・クライオプローブに特徴的な有害事象はない
・まだわが国ではfirst in humanの検証を行う道筋はついていない


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Posted by tak at 08:31│Comments(0)検査法
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