2020年08月03日

「Class IIIB」を異なる立場で見てみると

 我々気管支鏡診断に携わる者は、細胞診で「class IIIB」という結果が返ってくるとどうにもやりきれない気分になる。
・そもそも、class IIIB-IVって、IIIBとIVのどっちなのよ
・adenocarcinomaが否定できないって、どの位否定できないってニュアンスでいってんのよ
・「精査を希望します」って、精査した結果得られたのが今回の細胞診検体なんだってば
と叫びたくて叫びたくて、でもその気持ちをぐっとこらえて我慢する。
 なぜ出血や気胸のリスクを負ってでも細胞診断でなく組織診断にこだわるのか、ガイドシース越しの生検にもためらう若い先生方に是非考えてほしい。
 遺伝子変異検索やPD-L1検索に供するため、という以前に、そもそも正確な診断をするために、やっぱり組織採取は必要なのだ。

 以下、細胞診を受託する検査会社のHPより抜粋、一部追記。
http://test-guide.srl.info/hachioji/common/otherdata/d140-010-L196-02.html

 「細胞診報告書」の検査結果,所見,細胞成分,細胞検査士名等を記入して報告いたします。 なおClass判定について,Ⅰ,Ⅱを陰性,Ⅲ,Ⅲa,Ⅲbを疑陽性,Ⅳ,Ⅴを陽性と読み換えることが可能です。 又,ClassⅡR (陰性再検) 必要に応じて使用します。

1. Class判定
Class Ⅰ
: Abscence of atypical or abnormal cells:異型/異常細胞を認めない
Class Ⅱ
: Atypical cytology but no evidence of malignancy.:異型細胞を認めるが悪性の所見はない
Class Ⅲ
: Cytology suggestive of, but not conclusive for maignancy.:疑わしいものの、悪性とは断定できない
Class Ⅲa
: Probably benign atypia.:多分良性範囲内の異形成
Class Ⅲb
: Malignancy suspected.:悪性が疑われる
Class Ⅳ
: Cytology strongly suggestive of malignancy.:悪性を強く示唆する
Class Ⅴ
: Cytology conclusive for malignancy.:悪性と断定する

 さて、「class IIIB」、精査を希望しますとの回答が返ってきて、組織診断をしていなかったらどうするか。
 もう一回患者さんに懇願して気管支鏡をさせてもらうか。
 それでも結果が出せなかったら、どうするのか。
 
 「そもそも、class IIIBなんて中途半端な診断しやがって!」
という短絡的なことを言ってはいけない。
 その前に、自分でプレパラートを見てみなくてはならない。
 そうしないと、診断してくださった細胞診検査士さんや指導医の先生の気持ちはわからない。
 class IIIBをつけたくなる気持ちは、細胞診断する側の立場に立ってみないと、やっぱりわからないのだ。
 
 肺がんの気管支鏡診断に携わる者は、できる限り自分で採取した病理標本は自分で見ておきたい。
 環境が許すなら、細胞診検査士さんや指導医、病理診断医の先生方とときどき病理標本を供覧して、顕微鏡に親しんでおきたい。
 私の経験上、きちんとお約束をしてお伺いすれば、みなさん丁寧に手ほどきをしてくださる。
 こうすることで相互理解も深まるし、診断の流れをスムーズにするためのアイデアも自然と出てくる。
 多分、気管支鏡検査で良質な検体を採取しなくてはというモチベーションも向上する。


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Posted by tak at 22:26│Comments(0)検査法
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