2020年11月16日

臨床像を信じるか、病理像を信じるか

 先日、ちょっと考えさせられることがあった。

 高血糖の患者の精査中に胸部異常陰影が見つかった。
 気管支鏡下生検で腺がんと診断された。
 腫瘍マーカーを測定したところ、CEA(腺がんのマーカー)とproGRP(小細胞がんのマーカー)が上昇している。
 血糖コントロールの悪化の原因を調べると、どうも副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が異常高値を示している。
 全身精査の結果、進行期であることがわかった。

 生検病理診断は腺がんと確定しているが、腫瘍マーカー上昇のパターン、ACTH高値の所見からは、小細胞がんの存在も疑われる。
 手術可能な病期なら、外科切除して病巣を丸ごと顕微鏡で検索すれば全体像がはっきりするが、進行期では手術をするわけにはいかない。
 この場合、どのように治療に結びつけるべきか。

 まずは、型のごとくドライバー遺伝子変異の有無とPD-L1発現状態を調べ、結果に応じて治療を組み立てるべきだろう。
 また、できれば遠隔転移部位を別に生検し、腺がんと小細胞がんのどちらが出てくるか確認するべきだろう。

 ドライバー遺伝子変異とPD-L1発現状態を度外視して考えて、遠隔転移部位は不幸にも生検不能な場所だったと仮定すると。
 ACTH異常高値の状態がそのまま続くと、肺がん薬物療法の合併症が難治性になる可能性がある。
 そのため、個人的には初回治療として、小細胞がんに準拠した治療をしたい。
 気管支鏡による生検診断は「木を見て森を見ず」かも知れない。
 


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Posted by tak at 22:51│Comments(0)検査法
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