2019年06月03日

ASCO 2019...KEYNOTE-001 非小細胞肺癌サブセットの5年間追跡データ

 今夜は涼しいし、いつものルーチン業務が早く終わった。
 当直業務もひと段落したので、メールでやってきたASCO 2019の話題を書き残す。

 ペンブロリズマブの長期経過観察データが出てきた。
 第I相試験でありながら、参加者総数は550人と第III相試験並み。
 細かい患者背景は不均一ながら、逆により実地臨床に近い患者集団と見ることもできるわけで、参考になる。
 とりわけ、未治療の患者は既治療の患者に比べて、腫瘍縮小はそれなりながら、縮小効果持続期間は長くなり、全体として長期生存の割合は高くなる、というのは、興味深いデータだ。

 それから、進行非小細胞肺癌の患者が、未治療で1/4が、既治療でも1/6が5年生存するというのは、ごっつい結果ではないですか?
 我々の世代は、進行非小細胞肺癌の患者はそもそも5年生存しない、と習った気がします。




2019 ASCO: KEYNOTE-001: 5-Year Survival Data for Patients With Advanced NSCLC Treated With Pembrolizumab
By The ASCO Post
Posted: 6/1/2019 12:46:10 PM
Last Updated: 6/2/2019 11:20:04 PM
JCOに発表されたrapid communicationsはこちら→https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.19.00934

 KEYNOTE-001試験の患者登録が開始された2011年といえば、免疫チェックポイント阻害薬はまだ広く普及しておらず、ほとんどの治験参加者は化学療法や分子標的治療を経験済みだった。本試験には550人の進行非小細胞肺癌患者が参加し、101人は未治療、449人は既治療の患者だった。全ての患者は、ペンブロリズマブ2mg/kgを3週ごとに、もしくは10mg/kgを2-3週ごとに投与された。後に、ペンブロリズマブの投与法は患者の体重によらず1回200mgの3週ごと単回投与に変更され、これがそのまま実地臨床でも用いられている。
 今回のKETNOTE-001試験、非小細胞肺癌コホートの調査において、追跡期間中央値は60.6(51.8-77.9)ヶ月だった。解析時点で、18%(100人)の患者が生存していた。未治療の患者、既治療の患者の5年生存割合はそれぞれ23%、15.5%だった。また、PD-L1が高発現であるほど生存期間は延長する傾向にあった。未治療の患者でPD-L1発現が50%以上の患者、50%以下の患者の5年生存割合はそれぞれ29.6%、15.7%だった。既治療の患者で、PD-L1発現が50%以上の患者、1-49%の患者、1%未満の患者の5年生存割合はそれぞれ25%、12.6%、3.5%だった。
 既治療の患者では、42%(95%信頼区間:32%-52%)に縮小効果が見られ、奏効持続期間中央値は16.8ヶ月だった。一方、未治療の患者では23%(95%信頼区間:19%‐27%)に縮小効果が見られ、効果持続期間中央値は38.9ヶ月だった。
 免疫関連有害事象は治験参加者の17%に認められた。最も頻度の高い有害事象は甲状腺機能低下症で、最も重篤な有害事象は肺臓炎だった。



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この記事へのコメント
やはり免疫チェックポイント阻害薬は早期導入ほど予後が良い傾向にあるんですかね。

それに引き換え、小細胞肺癌は何とかならないか・・・
Posted by とある放射線治療医 at 2019年06月04日 09:44
とある放射線治療医さんへ

 コメントありがとうございます。免疫チェックポイント阻害薬の使い方、PD-L1発現が高い方では早期に使った方がいい気がしますね。一方、世間的に語られているほどには、PD-L1発現が乏しい患者への効果はあまり期待できないようです。少なくとも、身の回りの患者を診る限りではそう感じます。
 進展型小細胞癌でも、ペンブロリズマブ併用化学療法をFDAが承認したようですよ。いずれ日本も追随するのではないでしょうか。
https://www.ascopost.com/News/60162?email=214799f9ba6e76332ab0981b4c0dee885a1f5a03354d0548b3c6e68d1a3829aa&utm_medium=Email&utm_campaign=TAP%20EN
Posted by tak at 2019年06月19日 08:59
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