2021年08月31日

免疫チェックポイント阻害薬と抑うつ反応

 がん薬物療法による有害事象の中には、多分因果関係が分からない、見過ごされているものも多数ある。
 味覚障害や聴覚障害など、その最たるものだろう。

 既に亡くなった患者だが、免疫チェックポイント阻害薬をかなり長期間使用したのちに、前触れなく抑うつ反応を起こした患者がいた。
 もともとが社交的で朗らかな患者だっただけに、随分と面食らった。
 食事をしてくれない。
 話もしてくれない。
 体を起こしてさえくれない。
 病状を考えると進行肺がんによる抑うつに陥っても何ら不思議はない患者だったのだが、それにしてもそうなる前との落差が大きく、戸惑った。
 一時期は全く食事を食べなくなり、中心静脈路確保、高カロリー輸液まで必要となる有様だった。
 結局ごくありふれた抗うつ薬・抗不安薬であるデパス(エチゾラム)を処方して、少なくとも抑うつは快方に向かった。
 
 しかし、久し振りに考え直してみると、免疫チェックポイント阻害薬の有害事象だったのではないかという気がしてきた。
 免疫チェックポイント阻害薬と抑うつ反応の関連性についての報告は調べる限りでは見つけきれなかった。
 この患者については、過去のブログ記事で断片的に取り上げていたので、備忘録として残しておく。


 
・早速PD-L1検査
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e890120.html
・検体不足
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e890923.html
・PD-L1評価のため再生検したものの・・・
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e893894.html
・30%・・・
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e895217.html
・アテゾリズマブ、使用可能に
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e931095.html
・ペンブロリズマブ後のアテゾリズマブ、残念ながら無効中止
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e941860.html
・ステロイド使用中の患者とPD-1/PD-L1阻害薬の効果
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e942028.html
・「無増悪生存期間は延長しないが、全生存期間は延長する」ということの意味
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e967731.html
・正月をどこで迎えるかということ
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968219.html


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この記事へのコメント
やはり先生の臨床例を聞いて·····
まさか、とは思いましたが私の母もアテゾリズマブ再投与の2〜4日後に今まで出たことのないような倦怠感や頭がボーッとした感じが出始めました。入院した時は歩いていましたが、再入院になり変わらない症状に気力も削がれ、食事量も減り衰弱してしまいました。
何とか輸液、食事、メイバランスを摂取しています。あと、めまいの症状も現れましたが、これまで母はそんな訴えを起こしたことを聞いたことがありませんでした。抗不安薬で気分は和らぐのですが、気分障害が強いので、精神科に介入してもらい気分が上向きになれば、と願っています。治療は奏功していたので、足元を救われてしまった感じで困りました。
問題は倦怠感と頭の少しボーッとした感じですこれがなくなれば·······
類似例は結構あるのでは、と思えますが。
Posted by TAKE at 2021年09月08日 10:25
TAKEさんへ

 コメントありがとうございます。がん患者さんのみならず、抑うつに悩む方は少なからずおられます。うつの薬物療法は副作用が多く、呼吸器内科医的には嚥下障害で相談を受けることがしばしばです。これはこれで、一つの大きなテーマですね。
Posted by taktak at 2021年09月08日 20:30
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