2018年04月28日

KEYNOTE-189再掲-Game Changer-

 KEYNOTE-189の結果が論文化されていたので読んでみた。
 何分、初回の中間解析で有効中止となってしまったものだから、生存解析の結果はまだまだ未成熟と言わざるを得ない。
 とはいえ、分子標的治療でもないのに、全生存期間の解析で、しかもドライバー遺伝子変異のない患者を対象として、ハザード比が0.49というのは驚異的である。
 そう遠くない将来に我が国でも標準治療となるだろう。

 あとは、
・本治療により、どの程度の長期生存が見込めるのか
・扁平上皮癌でも同じような現象が起こるのか
・化学療法の上乗せは本当に必要なのか
と言ったところが検証課題として残るだろう。

 また、文面ではあまり大きく扱われていないものの、治療関連死がペンブロリズマブ併用群、非併用群ともに5%前後というのはやや高すぎる。
 「この治療をしたら20人に1人は治療のために亡くなります」
というのは、担当医としては結構キツイ。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e927301.html


Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer
Gandhi et al., N Engl J Med 2018
DOI: 10.1056/NEJMoa1801005


<適格基準>
・18歳以上
・病理診断された進行非小細胞・非扁平上皮癌
・EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子いずれも陰性
・進行肺癌に対する薬物療法の既往なし
 →術前・術後化学療法は許容される
 →登録から6ヶ月以内、30Gy以上の胸部放射線照射歴はNG
・PS 0もしくは1

<試験デザイン>
・二重盲見、ランダム化試験
・患者はみなシスプラチン(75mg/㎡)あるいはカルボプラチン(5AUC)とペメトレキセド(500mg/㎡)の併用療法を3週ごとに4コース行い、その後にペメトレキセド(500mg/㎡)の維持療法を3週ごとに継続した
・加えて、200mg/bodyのペンブロリズマブ群、あるいはプラセボ群に2:1の不均等割付をし、いずれも化学療法と並行して3週ごとに、最大35コース投与
・割付調整因子はPD-L1発現状態(TPS≧1% vs TPS<1%)、使用するプラチナ製剤(シスプラチン vs カルボプラチン)、喫煙歴(非喫煙者 vs 喫煙経験者)
・プロトコール治療は病勢進行、忍容不能の毒性、担当医判断、患者の同意撤回のいずれかに至るまで継続された
・プラセボ群の患者で、効果安全性評価委員会が病勢進行と判断したものには、ペンブロリズマブ単剤療法へのクロスオーバーを許容した
・針生検標本、もしくは切除標本のホルマリン固定・パラフィン包埋切片に対し、抗PD-L1抗体(22C3クローン)を用いてTPSを評価した
・プロトコール治療中、担当医・患者・本試験のスポンサー企業代表者のどの当事者に対しても、PD-L1の発現状態は知らされなかった

<評価項目>
・主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間の両者とした
・副次評価項目は奏効割合、奏効持続遺憾、安全性とした

<統計学的事項>
・統計解析では、2回の中間解析と最終解析を計画した
・片側検定でαエラーの有意水準を0.025と設定した
・90%の検出力で、無増悪生存期間のハザード比期待値を0.70とし、αエラーの有意水準を0.0095割り振った
・同じく90%の検出力で、全生存期間のハザード比期待値を0.70とし、αエラーの有意水準を0.0155割り振った
・以上から、570人の患者集積が必要と見積もった
・予定の患者集積が完了し、およそ370イベントの病勢進行あるいは患者死亡の時点で初回の中間解析を行う予定とした
・2017年11月8日までに410イベントが発生した
・多重性の調整を行って解析したところ、無増悪生存期間でp=0.00559、全生存期間でp=0.00128といずれも有意水準を満たした
・2018年1月10日に独立データモニタリング委員会に諮り、本試験は有効中止とすべきと勧告された
・今回公表するデータは、以上の初回中間解析時点のデータに関するものである

<結果>
・16カ国、126施設で、965人の患者がスクリーニングを受けた
・2016年2月26日から2017年3月6日にかけて、116施設から616人が登録された
・ペンブロリズマブ群には410人、プラセボ群には206人が割り付けられた
・患者背景はほぼ均等に割り付けられたが、ペンブロリズマブ群において有意に男性が多かった(62.0% vs 52.9%、p=0.04)
・TPS≧1%の患者が全体の63.0%を占めていた
・カルボプラチンを使用された患者が全体の72.2%を占めていた
・喫煙経験のある患者が全体の88.1%を占めていた
・経過観察期間の中央値は10.5ヶ月だった
・ペンブロリズマブ群410人のうち125人(30.5%)、プラセボ群206人のうち96人(46.6%)はプロトコール治療後に病勢進行し、何らかの後治療を受けた
・プラセボ群では、206人中67人(32.5%)が病勢進行後にペンブロリズマブ単剤治療を受けた
・12ヶ月生存割合はペンブロリズマブ群で69.2%(95%信頼区間は64.1-73.8%)、プラセボ群で49.4%(42.1-56.2%)
・生存期間中央値はペンブロリズマブ群で未到達、プラセボ群で11.3ヶ月(8.7-15.1ヶ月)
・生存期間に関するハザード比は0.49(0.38-0.64、p<0.001)
・TPS<1%の患者の12ヶ月生存割合はペンブロリズマブ群61.7% vs プラセボ群52.2%、ハザード比0.59(95%信頼区間は0.38-0.92)
・1%<TPS<49%の患者の12ヶ月生存割合はペンブロリズマブ群で71.5% vs プラセボ群で50.9%、ハザード比0.55(95%信頼区間は0.34-0.90)
・TPS≧50%の患者の12ヶ月生存割合はペンブロリズマブ群で73.0% vs プラセボ群で48.1%、ハザード比0.42(95%信頼区間は0.26-0.68)
・無増悪生存期間中央値はペンブロリズマブ群で8.8ヶ月(95%信頼区間は7.6-9.2ヶ月)、プラセボ群で4.9ヶ月(4.7-5.5ヶ月)、ハザード比0.52(0.43-0.64、p<0.001)
・12ヶ月無増悪生存割合はペンブロリズマブ群で34.1%(95%信頼区間は28.8-39.5%)、プラセボ群で17.3%(12.0-23.5%)
・無増悪生存期間はほとんどのサブグループ解析においてペンブロリズマブ群で優勢だったが、65歳以上のサブグループ、TPS<1%のサブグループでは、ハザード比の95%信頼区間が1をまたいでおり、統計学的な有意差はつかなかった
・奏効割合は、ペンブロリズマブ群で47.6%(95%信頼区間は42.6-52.5%)、プラセボ群で18.9%(13.8-25.0%)だった(p<0.001)
・奏効割合は全てのサブグループにおいてペンブロリズマブ群で優勢で、ことにTPS>50%のサブグループでは61.4% vs 22.9%と最も大きな差がついた
・治療関連死はペンブロリズマブ群405人のうち27人(6.7%)で、プラセボ群202人のうち12人(5.9%)で認められた
・両群ともに、最も高頻度に見られた有害事象は嘔気、貧血、全身倦怠感だった
・プラセボ群と比較して、ペンブロリズマブ群の方が10%以上多かった有害事象は下痢と発疹だった
・Grade3以上の有害事象で、プラセボ群よりペンブロリズマブ群で多かった有害事象は発熱性好中球減少症だった
・急性腎障害もペンブロリズマブ群の方が多かった(5.2% vs 0.5%)
・免疫関連有害事象は、ペンブロリズマブ群405人のうち92人(22.7%)で、プラセボ群202人のうち24人(11.9%)で認め、Grade3以上のものに限ればそれぞれ405人中36人(8.9%)、202人中9人(4.5%)だった
・免疫関連有害事象のうち、患者死亡に至ったものは全て肺臓炎であり、3例ともにペンブロリズマブ群で発生していた

<考察>
・TPS>50%の進行非小細胞肺癌患者群においてペンブロリズマブ単剤療法の有効性を示したKEYNOTE-024試験と同様、本試験も初回治療にペンブロリズマブを組み込むことが有効であることを示した
・今後の重要な課題として、今回対象となった患者群において、ペンブロリズマブ療法に化学療法を上乗せする場合としない場合で治療効果に差が出るのかを検証する必要がある
・今回のプラセボ群の治療成績は、プラチナ製剤+ペメトレキセド併用療法について過去に行われた臨床試験の成績と比べるとやや劣っていた
・本試験では、両群ともに生存曲線の末端がプラトーに向かっている印象があった


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