2017年04月21日

第I相臨床試験における、ニボルマブ投与患者の5年生存割合

 2017年4月1日から5日にかけて開催されたAACR年次総会で、進行非小細胞肺癌に対するニボルマブ第I相試験の5年生存割合が16%だったと報告された。

 CA209-003試験は、標準治療後に病勢進行に至った進行非小細胞肺がん患者を対象に、PD-L1発現の有無に関わらず様々な使用量でニボルマブを投与した第I相試験だ。扁平上皮がん患者の5年生存割合は16%、非扁平上皮非小細胞肺がん患者の5年生存割合は15%だった。
 
 5年以上生存した患者16人のうち、9人は男性で、12人は臨床試験に参加した段階でなお、現喫煙者だった。12人は部分奏効で、2人は病勢安定、2人は病勢進行を示していた。8人は特段の有害事象なしに2年間の治療を完遂し、4人は有害事象のために早期に治療を中止した。
 今のところ、どんな患者がニボルマブ治療により長期生存するのかはわからない。今回の検討では、PD-L1発現状態と長期生存との間にはっきりした関係はなかった。
 米国国立がん研究所のSEERデータベースによると、進行非小細胞肺癌の5年生存割合は4.9%だった。



CT077 - Five-year follow-up from the CA209-003 study of nivolumab in previously treated advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): Clinical characteristics of long-term survivors

Brahmer et al., Abst.#CT077 AACR 2017

背景:
 免疫チェックポイント阻害薬が実地臨床に導入されるまでは、プラチナ併用化学療法後に病勢進行に至った非小細胞肺がん患者の治療選択肢は限られていた。進行期の患者の殆どは診断から1年以内に死亡し、5年生存割合は1%未満だった。免疫チェックポイント分子のPD-1を阻害する抗体であるニボルマブは、濃厚な前治療歴のある進行非小細胞肺がん患者を対象とした第I相用量漸増拡大コホート試験において、有望な抗腫瘍効果を示した(CA209-003試験、NCT00730639)。既治療進行非小細胞肺がん患者を対象に、ドセタキセルをコントロール群として行われた2つの第III相臨床試験(CheckMate 017試験および057試験)において、ニボルマブは生存期間を延長し、これらの患者集団において使用可能となった。一方、免疫チェックポイント阻害薬の長期的な有効性、安全性についての報告は限られている。今回は、CA209-003試験での5年間の追跡調査において、進行非小細胞肺がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の生存期間延長効果について提示する。

方法:
 濃厚な前治療歴(先行するがん薬物療法1-5レジメン)を有する進行非小細胞肺がん患者を対象に、ニボルマブ(1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg)を2週間ごとに、最長96週目まで投与した。主要評価項目は安全性と忍容性であり、副次評価項目は奏効割合、奏効持続期間とした。ニボルマブ初回投与からの生存期間は探索的評価項目とした。今回の解析までの最短追跡期間は58.25ヶ月だった。

結果:
 データカットオフまでの期間で、カプランマイヤー曲線で推計した全患者(n=129)における5年生存割合は16%(95%信頼区間は10-23%)だった。5年生存割合は扁平表皮がん(n=54、16%、95%信頼区間は8-28%)と非扁平上皮がん(n=74, 15%、95%信頼区間は8-25%)と
組織型に関わらずほぼ同等だった。5年以上生存した患者16人(年齢中央値は61.5歳、範囲は44-80歳)のうち、9人は男性で、12人は喫煙者だった。このうち、10人の評価可能患者において、7人ではPD-L1発現は1%以上(5人は50%以上)で、3人では1%未満だった。16人のうち9人ではプロトコールに規定された上限までニボルマブを投与されていた。残る7人では、有害事象(4人)、病勢進行(2人)、新しい治療への切り替え(1人)によりニボルマブの投与が中止された。16人中12人では部分奏効、2人で病勢安定、2人で病勢進行と判定されていた。5年経過時点で、12人はニボルマブ投与終了後に特に治療をしておらず、病勢進行も認められなかった。

結論:
 既治療進行非小細胞肺がん患者において、ニボルマブは5年生存割合16%と、特筆すべき長期生存効果を示した。




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