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2015年09月29日

The immune related Response Criteria (irRC)

 通常、腫瘍縮小効果の評価には、RECIST基準を用います。
 簡単に言えば、測定しやすい病巣をいくつかピックアップして、治療開始前と治療後について、病巣の長さの和を比較します。
 病巣が消失したら「完全奏効」、長さの和が30%以上縮小したら「部分奏効」、20%以上増大したら「病勢増悪」、どれにもはまらなければ「安定」と判定します。 
 また、新たな病巣が出現した場合には、長さの和の如何によらず「病勢増悪」と判断します。

 ところが、免疫チェックポイント阻害薬では、このRECIST基準が役に立たないことがしばしばあるそうです。
 CTLA-4阻害薬を用いた治療では、初期には長さの和が増大して「病勢増悪」と判断されるところが、最終的には「完全奏効」や「部分奏効」と判断される患者さんが出てきました。その他にも、CTLA-4阻害薬により「完全奏効」に至った患者さんが「部分奏効」に至るまでの期間の中央値が30ヶ月(長い!)であったり、CTLA-4阻害薬により少なくとも4年以上長生きできている患者さんのうち約4分の1は効果判定上は「病勢増悪」に留まっていたりと、RECIST基準における効果判定と実際の長生き効果が結びつかないことが認められています。
 そのため、「The immune related Response Criteria(irRC) - 免疫関連効果判定基準 - 」なる新たな効果判定基準が提唱されています。
 ざっとその特徴を箇条書きにすると、
・病巣の大きさは、RECIST基準では一方向のみ計測していたが、irRCでは二方向(長径と、それに直交する短径)を計測する
・「完全奏効」の基準は、RECIST基準と同じく「全ての標的病変の消失」「全ての非標的病変の消失」「全てのリンパ節が短径10mm以下になる」「新規病変を認めない」を満たす
・「部分奏効」においては、50%以上の腫瘍量の縮小を見た場合とし、複数回(少なくとも二回)の効果判定で確認されなければならない
・「病勢増悪」においては、「直近の評価時点と比較して」「25%以上の腫瘍量の増大を見た場合」とし、「新規病変も腫瘍量の一部として含め(新規病変出現を即「病勢増悪」とは判定しない)」、複数回(少なくとも二回)の効果判定で確認されなければならない
・「安定」はRECIST同様に、「完全奏効」「部分奏効」「病勢増悪」いずれにも合致しない場合とする
ということです。
 
 「病勢増悪」の判断を、かなり慎重に行うこととなっており、「安定」と判定される患者さんがやたらと多くなりそうです。
 効果判定基準が変わる、というのも、免疫チェックポイント阻害薬の大きな特徴のひとつです。


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