2019年11月27日

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌の一次治療成績比較

 FLAURA試験の全生存期間結果が公表されて、そろそろこの分野の治療成績を俯瞰してみたくなった。
 乱暴といわれることを覚悟して、主だった第III相臨床試験(JO25567のみ第II相試験)の全生存期間、無増悪生存期間の中央値を並べてみた。
 中には特定の国の中でだけ行われたもの、数か国の共同で行われたもの、グローバルに国際共同試験として行われたものを含んでおり、患者背景も臨床試験が行われた時期もまちまちなので、単純比較はできない。
 しかし逆に、臨床試験が行われた地域、行われた時期などを見ていくと、見えてくるものがあるかも知れない。

EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌の一次治療成績比較

 私が気になったことをいくつか挙げる。
・単剤治療としての無増悪生存期間は、ゲフィチニブとアファチニブが同等、エルロチニブがちょっと良くて、ダコミチニブでもう少し改善、オシメルチニブでさらに改善
・単剤治療同士の全生存期間を比較したとき、JO25567試験におけるエルロチニブ群の全生存期間は47.4ヶ月と抜きんでている
・同じ国で行った治療であるにもかかわらず、ゲフィチニブ単剤療法における全生存期間は、NEJ002試験における30.5ヶ月からNEJ009試験における38.8ヶ月までかなりばらつきがある
・全生存期間における現時点での最善データはNEJ009試験のゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド療法による50.9ヶ月である
・NEJ009試験におけるゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド療法、RELAY試験におけるエルロチニブ+ラムシルマブ療法(これらの治療は、病勢進行後にT790Mが検出されればオシメルチニブによる二次治療を適用可能である)の無増悪生存期間は約20ヶ月で、FLAURA試験におけるオシメルチニブの18.9ヶ月を凌ぐ
→実際にNEJ009試験では、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド群の全生存期間が50.9ヶ月であったことから、病勢進行後全生存期間は概ね30ヶ月に達すると見積もられ、後治療の影響の大きさが推し量れる
・病勢進行後全生存期間が最も長いのは、JO25567試験のエルロチニブ群における37.6ヶ月である
・EGFR阻害薬+αの臨床試験における病勢進行後全生存期間は、EGFR阻害薬単剤の臨床試験における病勢進行後生存期間よりも長い傾向にある
などなど・・・。

 これから先、RELAY試験における全生存期間、オシメルチニブ+αの各臨床試験結果などが出てくるのかもしれないが、どの治療選択がベストなのかはよくよく考える必要があるだろう。
 オシメルチニブ単剤療法での38.6ヶ月、ゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセド療法の50.9ヶ月、それぞれの全生存期間の間には実に1年以上の開きがあるのだが、近所で後者の治療が行われたという話はほとんど聞かない。
 嘆かわしいことではないだろうか。


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