2017年04月29日
PD-L1評価の一致率
当院からこれまでに2件、経気管支肺生検検体をPD-L1評価に提出した。
1件は扁平上皮癌、1件は腺癌の患者だ。
前者は22C3抗体のみ、後者は22C3抗体、28-8抗体両方で評価した。
前者は5%の陽性率、後者は22C3抗体が30%、28-8抗体が5%の陽性率だった。
後者はPembrolizumabの初回治療を希望していたのだが、この結果では使えない。
抗体によって30%だったり、5%だったりというのも腑に落ちない。
諦めきれずにプレパラートを取り寄せたが、自分で確認したら、所見をつけてくださった病理医は、むしろ好意的に、やや陽性細胞を水増しして評価してくれたのではないかという印象だった。
結果は素直に受け入れて、患者と相談して、初回治療は殺細胞性抗腫瘍薬による化学療法から開始することにした。
以下の報告では、22C3抗体と28-8抗体で評価した場合、結果はほぼ同等と考えてよいとのこと。
実臨床上の有益性という観点からも(22C3抗体の結果はPembrolizumabを選ぶか、Nivolumabを選ぶかという観点で必要な情報だが、28-8抗体の結果は厳密に言えばPembrolizumabを使うかどうかの判断には役立たない)、次回からは、22C3抗体だけで評価することにするか。
Assessment of Immunohistochemistry Assays for PD-L1 Expression in NSCLC
By Matthew Stenger
Posted: 3/30/2017 9:09:11 AM
Last Updated: 3/30/2017 9:09:11 AM
米国食品医薬品局が承認済みのPD-L1用免疫染色キット4種の相同性を見るための試験において、非小細胞肺癌患者のサンプルでは、腫瘍細胞のPD-L1発現評価一致率は高かった一方、炎症細胞のPD-L1発現評価一致率は低かった。Rimmらが、JAMA Oncology誌上で発表した。
今回の検討では、2008年1月から2010年12月にかけて採取された非小細胞肺がん患者90人分の標本について4セットの連続切片を作成し、異なる3施設で28-8抗体(Nivolumabのコンパニオン診断として承認済み)、22C3抗体(Pembrolizumabのコンパニオン診断として承認済み)、SP142抗体(Atezolizumabのコンパニオン診断)、E1L3N抗体でPD-L1発現を評価した。プレパラートは13人の病理医により診断、スコアリングされた。
SP142によるスコアは、他の抗体でのスコアよりも低値だった(腫瘍細胞:SP142 1.99, 22C3 2.96, 28-8 3.26, E1L3N 3.20、炎症細胞:SP142 1.62, 22C3 2.15, 28-8 2.28, E1L3N 2.28)。腫瘍細胞に関しては、28-8抗体とE1L3N抗体の間では有意差はなかったが、22C3抗体では28-8抗体、E1L3N抗体に比べてわずかながら有意に(0.24-0.30)低かった。
スコアリング結果の抗体間での相同性について相関係数を調べたところ、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.813)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.277)だった。病理医間での相同性についても、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.832-0.882)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.172-0.229)だった。
SP142以外の抗体で腫瘍細胞を評価した場合には、結果はほぼ一致すると考えてよさそうである。
1件は扁平上皮癌、1件は腺癌の患者だ。
前者は22C3抗体のみ、後者は22C3抗体、28-8抗体両方で評価した。
前者は5%の陽性率、後者は22C3抗体が30%、28-8抗体が5%の陽性率だった。
後者はPembrolizumabの初回治療を希望していたのだが、この結果では使えない。
抗体によって30%だったり、5%だったりというのも腑に落ちない。
諦めきれずにプレパラートを取り寄せたが、自分で確認したら、所見をつけてくださった病理医は、むしろ好意的に、やや陽性細胞を水増しして評価してくれたのではないかという印象だった。
結果は素直に受け入れて、患者と相談して、初回治療は殺細胞性抗腫瘍薬による化学療法から開始することにした。
以下の報告では、22C3抗体と28-8抗体で評価した場合、結果はほぼ同等と考えてよいとのこと。
実臨床上の有益性という観点からも(22C3抗体の結果はPembrolizumabを選ぶか、Nivolumabを選ぶかという観点で必要な情報だが、28-8抗体の結果は厳密に言えばPembrolizumabを使うかどうかの判断には役立たない)、次回からは、22C3抗体だけで評価することにするか。
Assessment of Immunohistochemistry Assays for PD-L1 Expression in NSCLC
By Matthew Stenger
Posted: 3/30/2017 9:09:11 AM
Last Updated: 3/30/2017 9:09:11 AM
米国食品医薬品局が承認済みのPD-L1用免疫染色キット4種の相同性を見るための試験において、非小細胞肺癌患者のサンプルでは、腫瘍細胞のPD-L1発現評価一致率は高かった一方、炎症細胞のPD-L1発現評価一致率は低かった。Rimmらが、JAMA Oncology誌上で発表した。
今回の検討では、2008年1月から2010年12月にかけて採取された非小細胞肺がん患者90人分の標本について4セットの連続切片を作成し、異なる3施設で28-8抗体(Nivolumabのコンパニオン診断として承認済み)、22C3抗体(Pembrolizumabのコンパニオン診断として承認済み)、SP142抗体(Atezolizumabのコンパニオン診断)、E1L3N抗体でPD-L1発現を評価した。プレパラートは13人の病理医により診断、スコアリングされた。
SP142によるスコアは、他の抗体でのスコアよりも低値だった(腫瘍細胞:SP142 1.99, 22C3 2.96, 28-8 3.26, E1L3N 3.20、炎症細胞:SP142 1.62, 22C3 2.15, 28-8 2.28, E1L3N 2.28)。腫瘍細胞に関しては、28-8抗体とE1L3N抗体の間では有意差はなかったが、22C3抗体では28-8抗体、E1L3N抗体に比べてわずかながら有意に(0.24-0.30)低かった。
スコアリング結果の抗体間での相同性について相関係数を調べたところ、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.813)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.277)だった。病理医間での相同性についても、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.832-0.882)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.172-0.229)だった。
SP142以外の抗体で腫瘍細胞を評価した場合には、結果はほぼ一致すると考えてよさそうである。
フィルムとシャウカステンの文化
診断がつかないことの喜び
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
肺がんCT検診の比較試験:JECS Study
人工知能による胸部レントゲン読影支援
末梢病変穿刺用キット・・・Periview Flex
IMpower133試験、updated data
EGFR耐性機構としてのRET融合遺伝子出現と、オシメルチニブ+selpercatinib併用療法
RET陽性肺がんの臨床的特徴と治療反応性 シンガポール国立がんセンターの報告から
RET融合遺伝子陽性肺がんに対するselpercatinibの第III相試験:LIBRETTO-431試験の概要
オンコマインDx Target Test マルチ CDxシステム一時供給停止
学会報告0004:術前診断のついていなかった小細胞肺がん手術例のまとめ
あれから20年も、この先10年も
臨床像を信じるか、病理像を信じるか
「Class IIIB」を異なる立場で見てみると
経気管支肺生検の下準備
ドライバー遺伝子変異検査に関する要望書
ドライバー変異林立時代の診断の在り方を真剣に考える
TepotinibがMET exon 14 skipping mutation陽性の非小細胞肺がんに対する承認を取得
リキッドバイオプシーの回数制限緩和
診断がつかないことの喜び
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
肺がんCT検診の比較試験:JECS Study
人工知能による胸部レントゲン読影支援
末梢病変穿刺用キット・・・Periview Flex
IMpower133試験、updated data
EGFR耐性機構としてのRET融合遺伝子出現と、オシメルチニブ+selpercatinib併用療法
RET陽性肺がんの臨床的特徴と治療反応性 シンガポール国立がんセンターの報告から
RET融合遺伝子陽性肺がんに対するselpercatinibの第III相試験:LIBRETTO-431試験の概要
オンコマインDx Target Test マルチ CDxシステム一時供給停止
学会報告0004:術前診断のついていなかった小細胞肺がん手術例のまとめ
あれから20年も、この先10年も
臨床像を信じるか、病理像を信じるか
「Class IIIB」を異なる立場で見てみると
経気管支肺生検の下準備
ドライバー遺伝子変異検査に関する要望書
ドライバー変異林立時代の診断の在り方を真剣に考える
TepotinibがMET exon 14 skipping mutation陽性の非小細胞肺がんに対する承認を取得
リキッドバイオプシーの回数制限緩和
Posted by tak at 19:23│Comments(0)
│検査法