2021年03月24日

CheckMate451試験、進展型肺小細胞癌に対するニボルマブ+イピリムマブ併用維持療法は無効

 進展型肺小細胞癌に対するプラチナ併用化学療法初回治療後にニボルマブ+イピリムマブ併用維持療法を行うことの意義を検証するCheckMate451第III相臨床試験の結果が報告されていた。
 端的に言って、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法もしくはニボルマブ単剤療法によるswitch maintenance therapyは無効だった。
 有害事象も治療関連死も明らかに増えており、本治療は勧められない。
 TMB≧13/1Mbaseの患者集団であればニボルマブ+イピリムマブ併用療法の意義がありそうだと付記されていたが、この患者集団に特化した第III相試験を新たに行わない限り、more toxicな本治療を行う必然性はないだろう。



Immunotherapy Doublet as Maintenance Therapy for Extensive-Disease Small Cell Lung Cancer
The ASCO Post
Posted: 3/18/2021 2:17:00 PM
Last Updated: 3/21/2021 12:09:41 PM

Nivolumab and Ipilimumab as Maintenance Therapy in Extensive-Disease Small-Cell Lung Cancer: CheckMate 451
Taofeek K. Owonikoko et al., J Clin Oncol 2021
DOI: 10.1200/JCO.20.02212 Journal of Clinical Oncology

背景:
 進展型小細胞肺がんの患者において、プラチナ併用初回化学療法による腫瘍縮小には期待できるものの、その効果に持続性はない。CheckMate451試験は二重盲検第III相臨床試験で、進展型小細胞肺がん患者に対する初回化学療法後の維持療法としてニボルマブ+イピリムマブ併用療法、あるいはニボルマブ単剤療法の有用性を検討したものである。

方法:
 進展型小細胞肺がんと診断され、ECOG-PS 0 /1、4コース以下の初回化学療法後に病勢進行に至っていない患者を対象とした。患者を1:1:1の割合で無作為に割り付けた。NI群(279人)ではニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを3週間ごとに12週間投与し、引き続いてニボルマブ240mgを2週間ごとに投与した。N群(280人)ではニボルマブ240mgを2週間ごとに投与した。P群(275人)ではプラセボを投与した。病勢進行あるいは忍容不能の毒性が出現するまで継続し、投与期間は最長2年間とした。主要評価項目はNI群とP群の間での全生存期間比較とし、副次評価項目は階層的に解析した。

結果:
 2015年10月から2018年1月にかけて、32か国から参加した834人の患者が無作為割り付けの対象となった。最短の経過観察期間は8.9ヶ月、各治療群における観察期間中央値はNI群で8.4ヶ月、N群で9.9ヶ月、P群で9.1ヶ月だった。P群と比較して、NI群の全生存期間に有意な延長は認められなかった(ハザード比0.92(95%信頼区間0.75-1.12)、p=0.37、生存期間中央値はNI群で9.2ヶ月(95%信頼区間8.0-10.2ヶ月)、P群で9.6ヶ月(95%信頼区間8.2‐11.0ヶ月))。P群と比較して、N群の生存期間延長効果も同様に見られなかった(ハザード比0.84(95%信頼区間0.69-1.02)、N群の生存期間中央値は10.4ヶ月(95%信頼区間9.5‐12.1ヶ月))。無増悪生存期間について、P群に対するハザード比はNI群で0.72(95%信頼区間0.60-0.87)、N群で0.67(95%信頼区間は0.56-0.81)だった。無増悪生存期間中央値はNI群で1.7ヶ月、N群で1.9ヶ月、P群で1.4ヶ月だった。奏効割合はNI群で9.1%、N群で11.5%、P群で4.2%だった。奏効持続期間中央値はNI群で10.2ヶ月、n群で11.2ヶ月、P群で8.1ヶ月だった。参加者のうち、580人ではベースラインのTumor mutational burden(TMB)データが得られ、TMBが1Mbaseあたり13以上の患者集団では、P群に対してNI群で全生存期間が延長する傾向が認められた(ハザード比0.61、95%信頼区間0.39-0.94)。Grade 3-4の治療関連有害事象は、NI群の52.2%、N群の11.5%、P群の8.4%認められた。重篤な治療関連有害事象はNI群の37.4%、N群の6.1%、P群の2.9%で認められた。治療関連死はNI群で7人(横紋筋融解症1人、心筋炎1人、肝不全1人、辺縁系脳症1人、重症筋無力症1人、脳炎1人、免疫関連腸炎1人)、N群で1人(脳炎1人)、P群で1人(肺臓炎)認められた。

結論:
 ニボルマブ+イピリムマブ併用による維持療法は、進展型小細胞肺がんの初回化学療法後の生存期間延長効果を示さないことが分かった。


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