2021年04月14日

LCMC3・・・アテゾリズマブ単剤による術前治療の効果

 何件か、術前免疫チェックポイント阻害薬療法について取り扱う。
 まずはLCMC3試験の初期評価報告について。
 今年1月に開催された世界肺癌会議で取り扱われていた。

 化学療法薬の開発の経緯を振り返ると、周術期治療に関する臨床試験は抗悪性腫瘍薬開発における最終段階と考えていいだろう。
 LCMC3試験において、アテゾリズマブは主要評価項目を達成しており、今後の第III相試験が期待される。
 しかし、他の記事で取り扱うが、この分野ではニボルマブが開発の一歩先を行っているようだ。
 


LCMC3 Findings Indicate Neoadjuvant Atezolizumab Safe, Efficacious in Resectable Stage IB-IIIB NSCLC

Kara Nyberg, PhD, et al., PRESIDENTIAL SYMPOSIUM WCLC 2020 ARCHIVE Abst.#PS01.05

JAN 28, 2021

 第II相Lung Cancer Mutation Consortium(LCMC)3臨床試験の解析データ第一陣から、アテゾリズマブによる術前治療が根治切除可能なIB-IIIB期の非小細胞肺がん患者の一部において検討する価値のある治療選択肢であることが示唆された。EGFR遺伝子変異もしくはALK融合遺伝子を伴わない患者の21%で、切除時点でmajor pathologic response(MPR)‐残存腫瘍細胞が腫瘍全体の10%未満‐に至っており、本試験の主要評価項目を達成した。一方、病理学的完全奏効‐残存腫瘍細胞が全くない‐はこの患者群の7%に留まった。病理学的な評価が可能だった155人のうち43%でアテゾリズマブによる術前治療で病期が改善し、一方19%では病期が進行した。
 術前化学療法と異なり、アテゾリズマブによる術前治療では周術期の合併症や手術関連死を抑えつつ、術前治療終了後すぐに手術を行うことができ、完全切除割合も高かった。本試験は比較的多数の患者を対象に行われたため、術前治療の有効性に関する今後の臨床試験のベンチマークとなり得る結果を残した。

 LCMC3試験はオープンラベル、単アームの試験デザインが特徴である。計181人の根治切除可能なIB-IIIA期、もしくは慎重に手術適応を判断されたIIIB期の非小細胞肺がん患者が参加した。全ての患者は最大2コースの術前アテゾリズマブ療法(1200mg/日、3週ごと)を受け、最後にアテゾリズマブが投与されてから8-28日目(試験治療開始から30日目から50日目)に根治切除を予定することとした。
 181人が本試験に参加し、159人(88%)が術前アテゾリズマブ療法ののちに根治切除に進み、アテゾリズマブの最終投与日から手術を行うまでの期間中央値は22日(11-74日)だった。159人中140人は、試験治療開始から30-50日間の範囲内で根治切除術を受けていた。アテゾリズマブの最終投与から既定の日程以内に手術を受けられなかった19人においても、9人では物流の問題、6人では他の合併症の問題、4人では治療に直接関係のない問題が原因だった。

 手術そのものについては、低侵襲な手術法で臨んだ101人のうち、15人で開胸術への移行を要した。すなわち、ロボット支援手術や胸腔鏡か切除が54%、開胸術が46%を占めたということである。R0切除ができたのは92%で、術前化学療法の臨床試験のhistolical controlと比較して良好だった。

 なお、生存期間解析については追跡期間が2.1年と短いものの、1年無病生存割合はI / II期、III期の患者でいずれも85%、1.5年無病生存割合はI / II期で79%、III期で77%だった。同様に、1年生存割合はI / II期の患者で92%、III期の患者で95%、1.5年生存割合はI / II期の患者で91%、III期の患者で87%だった。


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