2021年04月14日
第III相CheckMate816試験・・・ニボルマブ併用術前化学療法により病理学的完全奏効割合が改善
こちらは、ニボルマブ+プラチナ併用化学療法を術前に行うことにより、病理学的完全奏効割合が有意に改善したとする第III相臨床試験。
術前治療による病理学的完全奏効は術後再発割合を下げ、生存期間延長に寄与するとされている。
しかしながら、本治療の真価は生存期間解析の結果を以て確認すべきである。
術前治療の有用性が第III相臨床試験で示されることはほとんどなく、非常に貴重な報告である。
このテーマに関する過去の記事を検索してみたが、わずかに1本しか見つからなかった。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e507188.html
CT003 - Nivolumab (NIVO) + platinum-doublet chemotherapy (chemo) vs chemo as neoadjuvant treatment (tx) for resectable (IB-IIIA) non-small cell lung cancer (NSCLC) in the phase 3 CheckMate 816 trial
Patrick M. Forde et al., AACR 2021
背景:
遠隔転移のない非小細胞肺がん患者において、手術療法は治癒が期待できる治療だが、手術を受けた患者のうち30-80%で術後再発する。再発リスクの高い患者では術前もしくは術後化学療法が推奨されるものの、その治療効果はさほど高くなく、術前化学療法により病理学的完全奏効が得られることは少ない。PD-1経路を治療標的とした免疫チェックポイント阻害薬は進行非小細胞肺がん患者の生命予後を改善したが、完全切除可能な患者における免疫チェックポイント阻害薬の有効性について、第III相臨床試験の結果はまだ報告されていない。近年、ニボルマブ単剤、あるいはニボルマブと化学療法の併用に関する第II相単アーム臨床試験において、有望な病理学的完全奏効割合が示された。今回は、完全切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前療法としてのニボルマブ併用化学療法群と化学療法単独群を比較するランダム化第III相オープンラベルCheckMate816試験について、主要評価項目の1つである病理学的完全奏効の最終解析結果について報告する。
方法:
臨床病期IB(原発巣の最大径が4cm以上)からIIIA期(AJCC第7版準拠)の完全切除可能非小細胞肺がん患者で、ECOG-PS 0-1、EGFR遺伝子変異もしくはALK融合遺伝子のないものを対象とし、ニボルマブ+プラチナ併用化学療法群(NC群:ニボルマブ360mg+プラチナ併用化学療法を3週ごとに3コース施行)とプラチナ併用化学療法単独群(C群:プラチナ併用化学療法を3週ごとに3コース施行)に無作為に割り付けて、その後に手術を行った。割付調整因子は臨床病期(IB / II期 vs IIIA期)、PD-L1発現状態(≧1% vs <1%)、性別とした。主要評価項目は、独立委員会評価による病理学的完全奏効割合と無再発生存期間とした。病理学的完全奏効は切除した肺とリンパ節に生存腫瘍細胞が全く認められない(0%)ことと定義した。手術が行われなかった患者は、術前治療の効果が得られなかったものとみなした。副次評価項目は全生存期間、major pathological response(MPR:切除した肺とリンパ節に認められる生存腫瘍細胞が全体の10%以下)、試験参加から死亡もしくは遠隔転移発覚までの期間、とした。探索的評価項目は奏効割合、治療効果予測因子としてPD-L1発現状態とtumor mutational burden(TMB)とした。
結果:
NC群、C群ともに患者数は179人で、患者背景に差はなかった。intent-to-treat解析において、NC群で有意に病理学的完全奏効割合が改善した(NC群で24.0%、C群で2.2%、オッズ比は13.94(99%信頼区間は3.49-55.75、p<0.0001)。この所見は、どのサブグループ解析においても同様に認められた;IB / II期(26.2% vs 4.8%)、IIIA期以上(23.0% vs 0.9%)、PD-L1<1%(16.7% vs 2.6%)、PD-L1≧1%(32.6% vs 2.2%)、TMB低値(22.4% vs 1.9%)、TMB高値(30.8% vs 2.7%)。MPR割合(36.9% vs 8.9%)、奏効割合(53.6% vs 37.4%)、画像診断上の病期改善割合(30.7% vs 23.5%)もNC群で良好だった。定型的な手術はNC群の83.2%、C群の75.4%で実施された。毒性により手術不能となった患者は各群2人ずつと少数で、病勢進行により手術不能となった患者はNC群で12人、C群で17人だった。Grade 3-4の薬物療法関連有害事象はNC群の33.5%、C群の36.9%で、Grade 3-4の手術関連有害事象はNC群の11.4%、C群の14.8%で認められた。
結論:
CheckMate816試験は、主要評価項目の1つである完全奏効割合をNC群が統計学的有意に改善することを示した。ニボルマブ+プラチナ併用化学療法による毒性として新規なものは認められず、本治療を行うことにより手術実施に支障をきたすことはなかった。
術前治療による病理学的完全奏効は術後再発割合を下げ、生存期間延長に寄与するとされている。
しかしながら、本治療の真価は生存期間解析の結果を以て確認すべきである。
術前治療の有用性が第III相臨床試験で示されることはほとんどなく、非常に貴重な報告である。
このテーマに関する過去の記事を検索してみたが、わずかに1本しか見つからなかった。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e507188.html
CT003 - Nivolumab (NIVO) + platinum-doublet chemotherapy (chemo) vs chemo as neoadjuvant treatment (tx) for resectable (IB-IIIA) non-small cell lung cancer (NSCLC) in the phase 3 CheckMate 816 trial
Patrick M. Forde et al., AACR 2021
背景:
遠隔転移のない非小細胞肺がん患者において、手術療法は治癒が期待できる治療だが、手術を受けた患者のうち30-80%で術後再発する。再発リスクの高い患者では術前もしくは術後化学療法が推奨されるものの、その治療効果はさほど高くなく、術前化学療法により病理学的完全奏効が得られることは少ない。PD-1経路を治療標的とした免疫チェックポイント阻害薬は進行非小細胞肺がん患者の生命予後を改善したが、完全切除可能な患者における免疫チェックポイント阻害薬の有効性について、第III相臨床試験の結果はまだ報告されていない。近年、ニボルマブ単剤、あるいはニボルマブと化学療法の併用に関する第II相単アーム臨床試験において、有望な病理学的完全奏効割合が示された。今回は、完全切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前療法としてのニボルマブ併用化学療法群と化学療法単独群を比較するランダム化第III相オープンラベルCheckMate816試験について、主要評価項目の1つである病理学的完全奏効の最終解析結果について報告する。
方法:
臨床病期IB(原発巣の最大径が4cm以上)からIIIA期(AJCC第7版準拠)の完全切除可能非小細胞肺がん患者で、ECOG-PS 0-1、EGFR遺伝子変異もしくはALK融合遺伝子のないものを対象とし、ニボルマブ+プラチナ併用化学療法群(NC群:ニボルマブ360mg+プラチナ併用化学療法を3週ごとに3コース施行)とプラチナ併用化学療法単独群(C群:プラチナ併用化学療法を3週ごとに3コース施行)に無作為に割り付けて、その後に手術を行った。割付調整因子は臨床病期(IB / II期 vs IIIA期)、PD-L1発現状態(≧1% vs <1%)、性別とした。主要評価項目は、独立委員会評価による病理学的完全奏効割合と無再発生存期間とした。病理学的完全奏効は切除した肺とリンパ節に生存腫瘍細胞が全く認められない(0%)ことと定義した。手術が行われなかった患者は、術前治療の効果が得られなかったものとみなした。副次評価項目は全生存期間、major pathological response(MPR:切除した肺とリンパ節に認められる生存腫瘍細胞が全体の10%以下)、試験参加から死亡もしくは遠隔転移発覚までの期間、とした。探索的評価項目は奏効割合、治療効果予測因子としてPD-L1発現状態とtumor mutational burden(TMB)とした。
結果:
NC群、C群ともに患者数は179人で、患者背景に差はなかった。intent-to-treat解析において、NC群で有意に病理学的完全奏効割合が改善した(NC群で24.0%、C群で2.2%、オッズ比は13.94(99%信頼区間は3.49-55.75、p<0.0001)。この所見は、どのサブグループ解析においても同様に認められた;IB / II期(26.2% vs 4.8%)、IIIA期以上(23.0% vs 0.9%)、PD-L1<1%(16.7% vs 2.6%)、PD-L1≧1%(32.6% vs 2.2%)、TMB低値(22.4% vs 1.9%)、TMB高値(30.8% vs 2.7%)。MPR割合(36.9% vs 8.9%)、奏効割合(53.6% vs 37.4%)、画像診断上の病期改善割合(30.7% vs 23.5%)もNC群で良好だった。定型的な手術はNC群の83.2%、C群の75.4%で実施された。毒性により手術不能となった患者は各群2人ずつと少数で、病勢進行により手術不能となった患者はNC群で12人、C群で17人だった。Grade 3-4の薬物療法関連有害事象はNC群の33.5%、C群の36.9%で、Grade 3-4の手術関連有害事象はNC群の11.4%、C群の14.8%で認められた。
結論:
CheckMate816試験は、主要評価項目の1つである完全奏効割合をNC群が統計学的有意に改善することを示した。ニボルマブ+プラチナ併用化学療法による毒性として新規なものは認められず、本治療を行うことにより手術実施に支障をきたすことはなかった。
根治切除術直後の非小細胞肺がん患者に、バイオマーカー解析をするべきか
オシメルチニブによる術前療法・・・NeoADAURAの前哨戦
非小細胞肺がんの周術期治療をどのように考えるか
尿路上皮がんと術後補助ニボルマブ療法
IMpower010試験・・・術後補助化学療法におけるアテゾリズマブ
IMPACT / WJOG6410L試験・・・我が国発の術後補助ゲフィチニブ療法第III相試験
実際に術前免疫チェックポイント阻害薬を受けた患者さんのコメント
第II相NEOSTAR試験・・・術前ニボルマブ+イピリムマブ併用療法
LCMC3・・・アテゾリズマブ単剤による術前治療の効果
ADAURA試験サブグループ解析・・・術後補助化学療法の有無、病期別の解析結果
母親の子宮頸がんから転移した、子供の転移性肺がん
学会報告0004:術前診断のついていなかった小細胞肺がん手術例のまとめ
あれから20年も、この先10年も
CheckMate816試験・・・まだまだこれから
T.M.先生、ADAURA試験について語る
ADAURA試験
ゲフィチニブの術後補助化学療法は全生存期間を延長しないが・・・ADJUVANT-CTONG1104
JCOG1205/1206・・・斜陽のイリノテカン
免疫チェックポイント阻害薬による術前免疫療法
術後補助化学療法にもオシメルチニブ・・・ADAURA試験、「顕著な有効性」を示す
オシメルチニブによる術前療法・・・NeoADAURAの前哨戦
非小細胞肺がんの周術期治療をどのように考えるか
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あれから20年も、この先10年も
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ADAURA試験
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