2020年05月21日
小細胞肺がんにはやっぱりPD-L1阻害薬?・・・CASPIAN試験のupdated data
CASPIAN試験のことは(ちょっと手抜きだけど)以前触れた。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968112.html
今回のASCO 2020 virtual presentationでは、そのupdated dataが示されるらしい。
進展型小細胞肺がんに対して、プラチナ製剤+エトポシド併用療法(PE療法)にデュルバルマブを上乗せすることで生存期間が延長する、というのは、もう間違いなさそうだ。
KEYNOTE-604試験におけるペンブロリズマブ(PD-1阻害薬)上乗せの生存期間延長効果があまりパッとしなかったことを考えると、この分野ではアテゾリズマブやデュルバルマブ(いずれもPD-L1阻害薬)が一歩リードしているといえる。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e974740.html
PE療法に上乗せするなら、アテゾリズマブでもデュルバルマブでも、生存期間中央値は1年ちょっと。
ちなみに、同じ患者集団におけるJCOG9511試験のシスプラチン+イリノテカン併用療法の生存期間中央値は12.8ヶ月。
コストパフォーマンスは、どう考えてもシスプラチン+イリノテカン併用療法がいいのだが・・・。
言い忘れるところだった。
今回の結果を受けると、進展型小細胞肺がんの分野では、トレメリムマブの出番は全くなさそうだ。
昔ならnegative dataは寂しい話だったが、今では治療コストが安くなることの裏返しであり、むしろ歓迎したくなる。
Durvalumab ± tremelimumab + platinum-etoposide in first-line extensive-stage SCLC (ES-SCLC): Updated Results from the phase III CASPIAN study.
Luis G. Paz-Ares et al.
2020 ASCO Virtual Scientific Program
abst.#9002
背景:
CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がん患者を対象に、初回治療としてのプラチナ製剤(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド併用療法群(EP)群、EP+デュルバルマブ併用療法(DEP)群、DEP+トレメリムマブ(DTEP)群の3群を比較するオープンラベル第III相臨床試験である。中間解析時点(データカットオフは2019年3月11日、イベント発生割合は63%)で、EP群と比較してDEP群が統計学的有意に生存期間を延長した(ハザード比0.73、95%信頼区間0.59-0.91、p=0.0047)。今回は、DEP群とEP群の比較に関する最新データと、DTEP群とEP群の初回データを供覧する。
方法:
未治療、WHO-PS 0-1の進展型小細胞肺がん患者を、DEP群、DTEP群、EP群に1:1:1に無作為割付した。DEP群、DTEP群では、4コースの治療の後、デュルバルマブ維持療法を4週間ごとに病勢進行に至るまで継続した。DTEP群では、患者はEP療法完遂後に1度だけトレメリムマブの追加投与を受けた。EP群では、EP療法を最長6コースまで施行し、予防的全脳照射を担当医判断で追加可能とした。主要評価項目は、DEP群 vs EP群、ならびにDTEP群 vs EP群の全生存期間とした。
結果:
DEP群に268人、DTEP群に268人、EP群に269人が割り付けられた。患者背景に偏りはなかった。2020年1月27日までの追跡期間中央値は25.1ヶ月で、イベント発生割合は82%だった。EP群と比較して、DEP群は引き続き全生存期間を統計学的有意に延長していた(ハザード比0.75、95%信頼区間0.62-0.91、p=0.0032、生存期間中央値はDEP群で12.9ヶ月、EP群で10.5ヶ月、2年生存割合はDEP群で22.2%、EP群で14.4%)。一方、DTEP群はEP群に対して統計学的有意に全生存期間を延長できなかった(ハザード比0.82、95%信頼区間0.68-1.00、p=0.0451(有意水準はp≦0.0418と規定されていた)、生存期間中央値10.4ヶ月、2年生存割合23.4%)。副次評価項目の無増悪生存期間と奏効割合も、EP群と比較してDEP群が優位性を保っていた(データは会期中に公表予定)。DTEP群とEP群の奏効割合は両群とも同等だった(58.4% vs 58.0%)。無増悪生存期間中央値も同等だった(DTEP群4.9ヶ月、EP群5.4ヶ月)が、12ヶ月無増悪生存割合はDTEP群16.9%、EP群5.3%でDTEP群の方が優れていた。無増悪生存期間に関するDTEP群とEP群のハザード比は0.84(95%信頼区間は0.70-1.01)だった。
DEP群、DTEP群、EP群における、Grade 3/4の有害事象発生割合はそれぞれ62.3%、70.3%、62.8%だった。治療中断につながる有害事象発生割合はそれぞれ10.3%、21.4%、9.4%だった。治療関連死はそれぞれ4.9%、10.2%、5.6%に認められた。
結論:
プラチナ製剤+エトポシド併用療法にデュルバルマブを加えることにより全生存期間が延長することが再認識され、進展型小細胞肺がんの標準治療としてさらに支持されることになった。また、プラチナ製剤の選択についても、より柔軟に(シスプラチンでも、カルボプラチンでも)選択できるようになった。一方、本治療にさらにトレメリムマブを加えても、今回の患者集団にはメリットがないことも示された。安全性の点では、新規に発見されたものはなかった。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e968112.html
今回のASCO 2020 virtual presentationでは、そのupdated dataが示されるらしい。
進展型小細胞肺がんに対して、プラチナ製剤+エトポシド併用療法(PE療法)にデュルバルマブを上乗せすることで生存期間が延長する、というのは、もう間違いなさそうだ。
KEYNOTE-604試験におけるペンブロリズマブ(PD-1阻害薬)上乗せの生存期間延長効果があまりパッとしなかったことを考えると、この分野ではアテゾリズマブやデュルバルマブ(いずれもPD-L1阻害薬)が一歩リードしているといえる。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e974740.html
PE療法に上乗せするなら、アテゾリズマブでもデュルバルマブでも、生存期間中央値は1年ちょっと。
ちなみに、同じ患者集団におけるJCOG9511試験のシスプラチン+イリノテカン併用療法の生存期間中央値は12.8ヶ月。
コストパフォーマンスは、どう考えてもシスプラチン+イリノテカン併用療法がいいのだが・・・。
言い忘れるところだった。
今回の結果を受けると、進展型小細胞肺がんの分野では、トレメリムマブの出番は全くなさそうだ。
昔ならnegative dataは寂しい話だったが、今では治療コストが安くなることの裏返しであり、むしろ歓迎したくなる。
Durvalumab ± tremelimumab + platinum-etoposide in first-line extensive-stage SCLC (ES-SCLC): Updated Results from the phase III CASPIAN study.
Luis G. Paz-Ares et al.
2020 ASCO Virtual Scientific Program
abst.#9002
背景:
CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がん患者を対象に、初回治療としてのプラチナ製剤(シスプラチンもしくはカルボプラチン)+エトポシド併用療法群(EP)群、EP+デュルバルマブ併用療法(DEP)群、DEP+トレメリムマブ(DTEP)群の3群を比較するオープンラベル第III相臨床試験である。中間解析時点(データカットオフは2019年3月11日、イベント発生割合は63%)で、EP群と比較してDEP群が統計学的有意に生存期間を延長した(ハザード比0.73、95%信頼区間0.59-0.91、p=0.0047)。今回は、DEP群とEP群の比較に関する最新データと、DTEP群とEP群の初回データを供覧する。
方法:
未治療、WHO-PS 0-1の進展型小細胞肺がん患者を、DEP群、DTEP群、EP群に1:1:1に無作為割付した。DEP群、DTEP群では、4コースの治療の後、デュルバルマブ維持療法を4週間ごとに病勢進行に至るまで継続した。DTEP群では、患者はEP療法完遂後に1度だけトレメリムマブの追加投与を受けた。EP群では、EP療法を最長6コースまで施行し、予防的全脳照射を担当医判断で追加可能とした。主要評価項目は、DEP群 vs EP群、ならびにDTEP群 vs EP群の全生存期間とした。
結果:
DEP群に268人、DTEP群に268人、EP群に269人が割り付けられた。患者背景に偏りはなかった。2020年1月27日までの追跡期間中央値は25.1ヶ月で、イベント発生割合は82%だった。EP群と比較して、DEP群は引き続き全生存期間を統計学的有意に延長していた(ハザード比0.75、95%信頼区間0.62-0.91、p=0.0032、生存期間中央値はDEP群で12.9ヶ月、EP群で10.5ヶ月、2年生存割合はDEP群で22.2%、EP群で14.4%)。一方、DTEP群はEP群に対して統計学的有意に全生存期間を延長できなかった(ハザード比0.82、95%信頼区間0.68-1.00、p=0.0451(有意水準はp≦0.0418と規定されていた)、生存期間中央値10.4ヶ月、2年生存割合23.4%)。副次評価項目の無増悪生存期間と奏効割合も、EP群と比較してDEP群が優位性を保っていた(データは会期中に公表予定)。DTEP群とEP群の奏効割合は両群とも同等だった(58.4% vs 58.0%)。無増悪生存期間中央値も同等だった(DTEP群4.9ヶ月、EP群5.4ヶ月)が、12ヶ月無増悪生存割合はDTEP群16.9%、EP群5.3%でDTEP群の方が優れていた。無増悪生存期間に関するDTEP群とEP群のハザード比は0.84(95%信頼区間は0.70-1.01)だった。
DEP群、DTEP群、EP群における、Grade 3/4の有害事象発生割合はそれぞれ62.3%、70.3%、62.8%だった。治療中断につながる有害事象発生割合はそれぞれ10.3%、21.4%、9.4%だった。治療関連死はそれぞれ4.9%、10.2%、5.6%に認められた。
結論:
プラチナ製剤+エトポシド併用療法にデュルバルマブを加えることにより全生存期間が延長することが再認識され、進展型小細胞肺がんの標準治療としてさらに支持されることになった。また、プラチナ製剤の選択についても、より柔軟に(シスプラチンでも、カルボプラチンでも)選択できるようになった。一方、本治療にさらにトレメリムマブを加えても、今回の患者集団にはメリットがないことも示された。安全性の点では、新規に発見されたものはなかった。
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・Osi-risk TORG-TG2101試験・・・オシメルチニブ投与中止後のEGFR-TKI再投与とその安全性について
セルペルカチニブ、上市
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セルペルカチニブ、2021年12月13日発売予定
セルペルカチニブと過敏症
血液脳関門とがん薬物療法
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