2020年05月03日

抗TIGIT抗体、Tiragolumabの第III相試験?肺がんの一次治療で??

 日経メディカルの記事を眺めていて気が付いた。
 中外製薬の新薬開発状況についてまとめられた中に、抗TIGITヒトモノクローナル抗体、Tiragolumabの臨床試験について触れられている。
 https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/pipeline.html
 驚くべきことに、非小細胞肺がん、非小細胞肺がん、いずれも第III相試験が現在進行中とのこと。

 TIGIT?
 初耳。
 こういう免疫チェックポイント蛋白らしい。
 https://www.immunooncology.jp/medical/immune-pathways/tigit.html
 細胞障害性T細胞、メモリーT細胞、NK細胞、制御性T細胞の表面に発現している。
 腫瘍細胞表面のCD155蛋白やCD112蛋白と会合し、細胞障害性T細胞、NK細胞といった免疫活性化細胞は抑制し、免疫を不活化する制御性T細胞は活性化するとのこと。

 第II相試験の計画も結果も聞いたことないのに、いきなり第III相試験。
 それも、一次治療での臨床試験らしい。
 SKYSCRAPER-01試験が非小細胞肺がん、SKYSCRAPER-02試験が小細胞肺がんに関する試験コードネームとのこと。
 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04294810
 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04256421
 
 SKYSCRAPER-01試験は、未治療の局所進行・進行非小細胞肺がん患者を対象に、アテゾリズマブにTiragolumabを上乗せするかしないかを比較する第III相臨床試験で、主要評価項目は無増悪生存期間と全生存期間。
 SKYSCRPER-02試験は、未治療の進展型小細胞肺がん患者を対象に、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ併用療法にTiragolumabを上乗せするかしないかを比較する第III相臨床試験で、主要評価項目は無増悪生存期間と全生存期間。

 非小細胞肺がんにおいては、SKYSCRAPER-01試験の全段階と考えられる第II相試験が行われ、患者集積は既に終了している。
 https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03563716
 結果はまだ公表されていないようだが、おそらく手ごたえがあるのだろう。
 また、結果を公表せずに開発を進めるのには、競合する他の製薬会社、他の臨床試験が林立していることが背景にありそうだ。
 https://www.evaluate.com/vantage/articles/news/trial-results/roches-next-immuno-oncology-combo-big-bet-tigit

 しかし。
 非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブとTiragolumabの併用ならまだしも、小細胞がんに対するアテゾリズマブを含めた4剤併用療法、どの程度浸透するだろうか。
 結果が出るころ、CoVID-19で傷ついた世界経済は、こうした治療を積極的に実地臨床へ取り入れられるだろうか。


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