2017年02月25日
進行非小細胞肺がんで治療を受けなかったら
進行肺がんの診断がついても、積極的な治療を受けない患者さんは少なからず存在する。
積極的な治療を受けなかった患者さんのデータは、学会発表や論文ではあまり出てこない。
面白くないからだ。
しかし、臨床の現場で、治療をするかしないかの議論を患者さん、家族とする際には、こうしたデータはとても重要だ。
選択の目安となるからだ。
一般に、進行非小細胞肺癌の患者さんを無治療経過観察したときの生命予後は4-6ヶ月というのが相場だろう。
ところが、今回報告された大規模なレトロスペクティブ試験の結果はより深刻だ。
IV期の進行非小細胞肺癌患者さんを無治療経過観察した場合、生存期間中央値は2ヶ月と示されている。
・・・IV期の非小細胞肺癌患者を対象とする臨床試験では、「3ヶ月以上の生命予後が期待できる」という条件が付されることが多い。
そうすると、実地臨床におけるIV期の患者の半分以上は臨床試験の対象になりえないことになる。
治療手段が増えているにも関わらず、無治療経過観察となる患者は、少なくとも米国では増加しているらしい。
高齢化の影響なのか。
医療者が疲弊していて、手が回らないのか。
経済的に困窮していて、治療が受けられないのか。
Increasing Rates of No Treatment in Advanced-Stage Non-Small Cell Lung Cancer Patients: A Propensity-Matched Analysis
David EA et al., J Thorac Oncol 12(3), 437-445, 2017
・米国では、2,016年に非小細胞肺癌で死亡した患者は158,080人と見積もられている
・高齢、低学歴、健康保険未加入、進行期の患者ほど治療を受けていない、との仮説を立てて、National Cancer Data Baseを用いたレトロスペクティブ研究で検証した
・1,998年から2,012年にかけて、1,571,087人の非小細胞肺癌患者が抽出された
・他の癌を合併した人(392,129人)、人種が不明な人(31,869人)、臨床病期が不明な人(237,599人)を除外して、909,490人を調査対象とした
・そのうち21%(190,539人)は治療を受けていなかった(stage I: 13.5%, stage II: 15.4%, stage IIIA: 16.5%, stage IIIB: 22.2%, stage IV: 25.5%)
・どの臨床病期の患者においても、治療を受けなかった患者は高齢で、任意健康保険でなく公的健康保険に加入している傾向にあった
・14年間の調査期間中に、stage IもしくはIIで治療を受けなかった患者は、それぞれ0.66%(p<0.0001)、0.23%(p=0.022)減少していた
・同じ期間中に、stage IIIAもしくはIVで治療を受けなかった患者は、それぞれ0.21%(p=0.003)、0.4%(p<0.0001)増加していた
・stage IIIBで治療を受けなかった患者の割合は、同じ期間内に有意な増減を示さなかった
・stage IIIAの患者6,144人を抽出し、放射線化学療法を受けた患者と受けなかった患者の生命予後を比較したところ、生存期間中央値は16.5ヶ月 vs 6.1ヶ月(p<0.0001)だった
・stage IVの患者19,046人を抽出し、化学療法を受けた患者と受けなかった患者の生命予後を比較したところ、生存期間中央値は9.3ヶ月 vs 2.0ヶ月(p<0.0001)だった
積極的な治療を受けなかった患者さんのデータは、学会発表や論文ではあまり出てこない。
面白くないからだ。
しかし、臨床の現場で、治療をするかしないかの議論を患者さん、家族とする際には、こうしたデータはとても重要だ。
選択の目安となるからだ。
一般に、進行非小細胞肺癌の患者さんを無治療経過観察したときの生命予後は4-6ヶ月というのが相場だろう。
ところが、今回報告された大規模なレトロスペクティブ試験の結果はより深刻だ。
IV期の進行非小細胞肺癌患者さんを無治療経過観察した場合、生存期間中央値は2ヶ月と示されている。
・・・IV期の非小細胞肺癌患者を対象とする臨床試験では、「3ヶ月以上の生命予後が期待できる」という条件が付されることが多い。
そうすると、実地臨床におけるIV期の患者の半分以上は臨床試験の対象になりえないことになる。
治療手段が増えているにも関わらず、無治療経過観察となる患者は、少なくとも米国では増加しているらしい。
高齢化の影響なのか。
医療者が疲弊していて、手が回らないのか。
経済的に困窮していて、治療が受けられないのか。
Increasing Rates of No Treatment in Advanced-Stage Non-Small Cell Lung Cancer Patients: A Propensity-Matched Analysis
David EA et al., J Thorac Oncol 12(3), 437-445, 2017
・米国では、2,016年に非小細胞肺癌で死亡した患者は158,080人と見積もられている
・高齢、低学歴、健康保険未加入、進行期の患者ほど治療を受けていない、との仮説を立てて、National Cancer Data Baseを用いたレトロスペクティブ研究で検証した
・1,998年から2,012年にかけて、1,571,087人の非小細胞肺癌患者が抽出された
・他の癌を合併した人(392,129人)、人種が不明な人(31,869人)、臨床病期が不明な人(237,599人)を除外して、909,490人を調査対象とした
・そのうち21%(190,539人)は治療を受けていなかった(stage I: 13.5%, stage II: 15.4%, stage IIIA: 16.5%, stage IIIB: 22.2%, stage IV: 25.5%)
・どの臨床病期の患者においても、治療を受けなかった患者は高齢で、任意健康保険でなく公的健康保険に加入している傾向にあった
・14年間の調査期間中に、stage IもしくはIIで治療を受けなかった患者は、それぞれ0.66%(p<0.0001)、0.23%(p=0.022)減少していた
・同じ期間中に、stage IIIAもしくはIVで治療を受けなかった患者は、それぞれ0.21%(p=0.003)、0.4%(p<0.0001)増加していた
・stage IIIBで治療を受けなかった患者の割合は、同じ期間内に有意な増減を示さなかった
・stage IIIAの患者6,144人を抽出し、放射線化学療法を受けた患者と受けなかった患者の生命予後を比較したところ、生存期間中央値は16.5ヶ月 vs 6.1ヶ月(p<0.0001)だった
・stage IVの患者19,046人を抽出し、化学療法を受けた患者と受けなかった患者の生命予後を比較したところ、生存期間中央値は9.3ヶ月 vs 2.0ヶ月(p<0.0001)だった
2022年01月04日の記事より・・・終末期医療におけるささやかな目標
悪性胸水に対しOK-432(ピシバニール)を用いた胸膜癒着術
病勢進行後の治療をどう考えるか
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリンの効果について
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
悪性胸水に対しOK-432(ピシバニール)を用いた胸膜癒着術
病勢進行後の治療をどう考えるか
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリンの効果について
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
Posted by tak at 21:59│Comments(0)
│緩和医療