2021年06月22日
アナモレリンの効果について
振り返ってみると、アナモレリンの開発にはそれなりに時間がかかっている。
2015年に一度、アナモレリンに関する記載を残していた。
→http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e828753.html
これを読んだだけでも、開発に難航していたことがよく分かる。
結局のところ、アナモレリンを使用すると体重減少と食欲不振、血中プレアルブミン濃度は改善するものの、運動機能の改善には至らないとのこと。
比較的運動機能の保たれた、悪液質を伴う進行非小細胞肺がん患者がよい適応ということなのだろうか。
繰り返しになるが、使い始めるタイミングが意外と難しい薬である。
Anamorelin (ONO-7643) for the treatment of patients with non-small cell lung cancer and cachexia: Results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter study of Japanese patients (ONO-7643-04)
Nobuyuki Katakami et al., Cancer. 2018 Feb 1;124(3):606-616.
doi: 10.1002/cncr.31128. Epub 2017 Dec 4.
背景:
体重(主として除脂肪体重(lean body mass, LBM))の減少や食欲不振といったがん悪液質の症状は、進行がんの患者ではよく見られるものである。今回の試験では、がん悪液質を伴う日本人がん患者において、新規の選択的グレリン受容体作動薬であるアナモレリン(ONO-7643)の有効性と安全性を検証することを目的とした。
方法:
今回の二重盲検臨床試験(ONO-7643-04)では、がん悪液質を伴う切除不能III / IV期非小細胞肺がん患者174人を対象とした。患者はアナモレリン群(アナモレリンを連日100mg内服)とプラセボ群に割り付けられ、12週間のプロトコール治療を受けた。主要評価項目は12週間経過時点での、ベースラインの除脂肪体重からの変化量とした。除脂肪体重は、二重エネルギーX線吸収測定法を用いて測定した。
→※二重エネルギーX線吸収測定法:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/53/4/53_119/_pdf/-char/ja
副次評価項目は、食欲・体重・QoL・握力・6分間歩行負荷試験結果の変化量とした。
結果:
ベースラインから12週間後の除脂肪体重の最小二乗平均(±標準誤差)は、アナモレリン群で1.38±0.18、プラセボ群で-0.17±0.17で、アナモレリン群で有意に増加していた(p<0.0001)。ベースラインからの変化量は、除脂肪体重、体重、食欲不振症状のいずれにおいても、全ての評価時点においてアナモレリン群とプラセボ群で有意差を認めた。アナモレリン群では治療開始3週間時点、9週間時点で血中プレアルブミンが増加していた。握力や6分間歩行負荷試験の測定値は両群で差がなかった。アナモレリンによる12週間の治療は、非小細胞肺がん患者においては安全で忍容性良好だった。
結論:
日本人進行非小細胞肺がん患者において、アナモレリンは有意に除脂肪体重を増加させ、食欲不振の兆候や栄養状態を改善したが、運動機能は改善しなかった。がん悪液質に対する有効な治療法はこれまでなかったため、アナモレリンは有益な治療選択肢になりうる。
2015年に一度、アナモレリンに関する記載を残していた。
→http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e828753.html
これを読んだだけでも、開発に難航していたことがよく分かる。
結局のところ、アナモレリンを使用すると体重減少と食欲不振、血中プレアルブミン濃度は改善するものの、運動機能の改善には至らないとのこと。
比較的運動機能の保たれた、悪液質を伴う進行非小細胞肺がん患者がよい適応ということなのだろうか。
繰り返しになるが、使い始めるタイミングが意外と難しい薬である。
Anamorelin (ONO-7643) for the treatment of patients with non-small cell lung cancer and cachexia: Results from a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter study of Japanese patients (ONO-7643-04)
Nobuyuki Katakami et al., Cancer. 2018 Feb 1;124(3):606-616.
doi: 10.1002/cncr.31128. Epub 2017 Dec 4.
背景:
体重(主として除脂肪体重(lean body mass, LBM))の減少や食欲不振といったがん悪液質の症状は、進行がんの患者ではよく見られるものである。今回の試験では、がん悪液質を伴う日本人がん患者において、新規の選択的グレリン受容体作動薬であるアナモレリン(ONO-7643)の有効性と安全性を検証することを目的とした。
方法:
今回の二重盲検臨床試験(ONO-7643-04)では、がん悪液質を伴う切除不能III / IV期非小細胞肺がん患者174人を対象とした。患者はアナモレリン群(アナモレリンを連日100mg内服)とプラセボ群に割り付けられ、12週間のプロトコール治療を受けた。主要評価項目は12週間経過時点での、ベースラインの除脂肪体重からの変化量とした。除脂肪体重は、二重エネルギーX線吸収測定法を用いて測定した。
→※二重エネルギーX線吸収測定法:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/53/4/53_119/_pdf/-char/ja
副次評価項目は、食欲・体重・QoL・握力・6分間歩行負荷試験結果の変化量とした。
結果:
ベースラインから12週間後の除脂肪体重の最小二乗平均(±標準誤差)は、アナモレリン群で1.38±0.18、プラセボ群で-0.17±0.17で、アナモレリン群で有意に増加していた(p<0.0001)。ベースラインからの変化量は、除脂肪体重、体重、食欲不振症状のいずれにおいても、全ての評価時点においてアナモレリン群とプラセボ群で有意差を認めた。アナモレリン群では治療開始3週間時点、9週間時点で血中プレアルブミンが増加していた。握力や6分間歩行負荷試験の測定値は両群で差がなかった。アナモレリンによる12週間の治療は、非小細胞肺がん患者においては安全で忍容性良好だった。
結論:
日本人進行非小細胞肺がん患者において、アナモレリンは有意に除脂肪体重を増加させ、食欲不振の兆候や栄養状態を改善したが、運動機能は改善しなかった。がん悪液質に対する有効な治療法はこれまでなかったため、アナモレリンは有益な治療選択肢になりうる。
悪性胸水に対しOK-432(ピシバニール)を用いた胸膜癒着術
病勢進行後の治療をどう考えるか
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
進行非小細胞肺がんで治療を受けなかったら
終末期の鎮静(再掲)
病勢進行後の治療をどう考えるか
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
進行非小細胞肺がんで治療を受けなかったら
終末期の鎮静(再掲)
この記事へのコメント
当院の腫瘍医も適応症と時期が使いづらいと言ってました。期待しすぎただけでしょうか・・・
Posted by とある放射線治療医 at 2021年06月25日 10:57
とある放射線治療医さんへ
コメントありがとうございます。
悪液質というとどうしても終末期を想像してしまいますので、そもそもイメージが悪く、患者に説明するのが難しいですね。悪液質に対する従来のイメージで患者に説明しようとすると、
「がん終末期の特徴の一つとして、食欲不振や体重減少を伴う悪液質という現象があります。あなたはそういった状況にありそうです。食欲増進のために開発されたアナモレリンという内服薬がありますが、試してみませんか?」
という感じになるのでしょうが、説明を受ける側からすると正直言ってあまりよい印象を受けませんね。
むしろ、悪液質に対する対応も、がん治療早期から始めるべき(生存期間延長をも目指した良い意味での)緩和治療と捉えるべきなのでしょうね。これから積極的治療を行う段階にある患者に対して、より全身状態を高めて安全に治療を続けるため、悪液質の改善にも取り組んで体力をつけましょう、そのためにアナモレリンの力も借りましょう、という姿勢で臨むべきなのでしょう。我々の側にも、そうした意味での意識のパラダイムシフトが必要なのだと感じます。悪液質の厳密な定義にこだわらず、それこそ胃薬を定期処方するくらいの意識でがん患者の治療早期から積極的にアナモレリンを使用すると、案外それだけでも生命予後が改善するかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
悪液質というとどうしても終末期を想像してしまいますので、そもそもイメージが悪く、患者に説明するのが難しいですね。悪液質に対する従来のイメージで患者に説明しようとすると、
「がん終末期の特徴の一つとして、食欲不振や体重減少を伴う悪液質という現象があります。あなたはそういった状況にありそうです。食欲増進のために開発されたアナモレリンという内服薬がありますが、試してみませんか?」
という感じになるのでしょうが、説明を受ける側からすると正直言ってあまりよい印象を受けませんね。
むしろ、悪液質に対する対応も、がん治療早期から始めるべき(生存期間延長をも目指した良い意味での)緩和治療と捉えるべきなのでしょうね。これから積極的治療を行う段階にある患者に対して、より全身状態を高めて安全に治療を続けるため、悪液質の改善にも取り組んで体力をつけましょう、そのためにアナモレリンの力も借りましょう、という姿勢で臨むべきなのでしょう。我々の側にも、そうした意味での意識のパラダイムシフトが必要なのだと感じます。悪液質の厳密な定義にこだわらず、それこそ胃薬を定期処方するくらいの意識でがん患者の治療早期から積極的にアナモレリンを使用すると、案外それだけでも生命予後が改善するかもしれませんね。
Posted by tak at 2021年06月30日 11:41
ありがとうございました。
疼痛管理と同じく、食べられなくなる前の栄養介入を考える良い機会ですね。
疼痛管理と同じく、食べられなくなる前の栄養介入を考える良い機会ですね。
Posted by とある放射線治療医 at 2021年06月30日 21:56