2020年02月04日

がん疼痛薬物療法

 これもBest of ASCO 2019から。
 WHOの疼痛緩和ガイドラインが改訂されたことは、意外と知られていないのではないか。 
 少なくとも私は、このノートを見直すまでは思い出せなかった。
 不覚。


・2018年2月から3月にかけておこなった遺族調査:死亡前1ヶ月間、患者の疼痛管理の状況はどうだったか
 19%:痛み刺激に反応せず
 18%:痛みなし
 17%:少し痛みあり
 18%:まあまあ痛みあり
 17%:ひどい痛みあり
 11%:とてもひどい痛みあり
→まあまあ、ひどい、とてもひどいを合計すると、46%になる

・WHOのがん疼痛緩和ガイドラインが2019年1月に改訂された
 Cancer pain management...pharmacologic and radioterapeutic
 がん疼痛緩和の5原則:
  経口で(by mouth)
  定刻に(by the clock)
  いつでも使えるように(available and affordable)
  それぞれにあわせて(for the individual)
  注意深く、より繊細に(with attention and in detail)
 →段階的に(by the ladder、いわゆるがん疼痛緩和の3 step ladder...非オピオイド→弱オピオイド→強オピオイド)、は削除された
 →3 step ladderは十分に普及して、概念としてはその役割を終えたと考えられている

〇オピオイドの有害事象

・便秘(opioid induced bowel dysfunction, OIBD もしくはopioid induced constipation, OIC)
 OICはフェンタニルやタペンタドールに比べると、経口モルヒネの方が強いといわれている
 OICの発症頻度(Tokoro, Imai et al., Cancer Med 2019)
  オピオイド開始1週間後:予防薬を服用していれば43.1%、使用していなければ52.4%
  オピオイド開始2週間後:予防薬を服用していれば47.7%、使用していなければ65.0%
 末梢性オピオイド受容体アンタゴニスト( peripheral anti-opioid receptor antagonist, PAMORAs)は日本発の薬
 →スインプロイク、272.10円 / 錠
 →第III相臨床試験、Osako, Satomi et al., ESMO open access 2019
 ASCO 2019 Abst.#11582
  スインプロイク市販後実態調査、対象患者数は204人、うち腹部腫瘍の患者は43%
  スインプロイク投与後24時間以内に自発排便があった患者は71.6%
  62.8%で1週間当たりの排便回数が増えた
  90%の患者は1週間継続服用できた

・OINV(opioid-induced nausea and vomitting)
 オピオイド使用例の20-40%に出現
 POINT study ... Tsuku-ura et al., Oncologist 2015
  ノバミン投与の意義は乏しい
 オランザピンやスインプロイクでOINVを抑制できないか?

〇 オピオイドの長期投与の問題点
 ASCO guideline for survivors of adult cancers 2016


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この記事へのコメント
まさみさんへ

 恐れ入りますが、まさみさんの記載内容は、仮に患者・家族当事者の記載でなかったとしても(むしろその方が罪深いかもしれませんが)、あまりに具体的過ぎます。
 勝手ながら、個人の特定につながりかねないと判断し、一連のコメントを私からの回答も含めて削除させていただきます。
 この場ではこれ以上の往復も致しかねますので、どうかご了承ください。

 
Posted by taktak at 2020年09月27日 20:57
ご迷惑をお掛けしました。
お詫び致します。
Posted by まさみ at 2020年09月28日 07:59
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