2021年10月15日
悪性胸水に対しOK-432(ピシバニール)を用いた胸膜癒着術
終日臥床状態、意思疎通ほぼ不能の患者のがん性胸膜炎制御に忙殺されている。
毎日1000-1500mlの胸水が出続けるので、週末返上で頑張っている。
胸膜癒着術を行おうにも体位変換ができないので、今週から取り掛かり始めた胸膜癒着術に何を使おうか難渋した。
まずは毒性のマイルドなミノサイクリンから取り組んでみたのだが、全くの鳴かず飛ばず。
昨日はピシバニール(OK-432)を10KE使用し、お決まりの高熱に苛まれたが、これまでのところ胸水は減少傾向にある。
なるべくならこのまま凌ぎたい。
タルクを使ってもよいが、体位変換が満足にできない以上、おそらく癒着効果は背側のみに留まるだろう。
ピシバニールに関する国内外の臨床試験結果をまとめておく。
胸膜癒着術に期待できる効果を患者・家族に示すにあたり、根拠となる数字が示されている。
Comparison of OK-432 and mitomycin C pleurodesis for malignant pleural effusion caused by lung cancer. A randomized trial
K T Luh et al., Cancer. 1992 Feb 1;69(3):674-9.
doi: 10.1002/1097-0142(19920201)69:3<674::aid-cncr2820690313>3.0.co;2-5.
背景:
胸膜癒着術の有効性について、2種の新規薬剤(OK-432、マイトマイシンC)を比較する前向き無作為化臨床試験を行った。
方法:
悪性胸水を合併した肺がん患者53人を対象とした。試験参加中は、化学療法や放射線治療は行わなかった。胸水ドレナージによる排液後、参加者をOK-432群(OK-432を 10KE(Klinische Einheit)単位/回、毎週胸腔内投与)とMMC群(マイトマイシンCを8mg/回、毎週胸腔内投与)に無作為に割り付けた。胸水の排液がなくなるか、連続して4回の治療を行った段階で治療終了とした。
結果:
OK-432群に26人、MMC群に27人が割り付けられた。患者背景(年齢、性別、組織型、PS、胸膜癒着術の前に行われた治療)は両群間で同等だった。OK-432群の方が完全胸水制御率が高かった(OK-432群73%、MMC群41%)。胸水制御率(完全制御+部分制御)は両群とも同等だった(OK-432群88%、MMC群67%)。完全胸水制御に至るまでに必要だった治療回数は、OK-432群の方が少なかった(OK-432群 1.9±0.9回、MMC群2.8±0.9回)。生存期間中央値は両群間で有意差を認めなかった(OK-432群5.8ヶ月、MMC群5.1ヶ月)。胸水無増悪期間はOK-432群が有意に長かった(OK-432群7.0ヶ月、MMC群1.5ヶ月)。合併症発生率は、OK-432群の方が高かった(OK-432群80%、MMC群30%)。一過性の発熱反応が最も頻度の高い合併症だった。免疫学的検証を行ったところ、OK-432群では末梢血中のリンパ球数が増加し、CD4/CD8比が低下していた。一方、MMC群では末梢血中のリンパ球数が軽度低下し、CD4/CD8比には有意な変化を認めなかった。
結論:
OK-432による胸膜癒着術は、悪性胸水を合併した肺がん患者の胸水制御に有効である。
Randomized phase II trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515
Kimihide Yoshida et al., Lung Cancer. 2007 Dec;58(3):362-8.
doi: 10.1016/j.lungcan.2007.07.009. Epub 2007 Aug 22.
背景:
治療歴のない非小細胞肺がん患者に合併した悪性胸水貯留の胸膜癒着術に使う薬として、ブレオマイシン(BLM)、OK-432(加熱殺菌処理を施したStreptococcus pyogenesを粉砕処理した薬品)、シスプラチン+エトポシドの3群の効果と毒性を評価した。
方法:
適格条件を満たした患者を各治療群に無作為割り付けした。BLM群はBLM 1mg/kg(最高用量60mg / body)、OK-432群は0.2KE / kg(最高用量10KE / body)、PE群はシスプラチン80mg/㎡+エトポシド80mg/㎡とした。胸水制御割合は4週間ごとに規定の判定基準で評価した。胸膜癒着術が成功した患者には、シスプラチン+エトポシド併用化学療法を3-4週間ごとに2コース以上行った。無作為割り付けから、胸水の再増悪が認められるか、患者が死亡するまでの期間を胸水無増悪生存期間と定義した。主要評価項目は、4週間経過時点での胸水無増悪生存割合とした。
結果:
105人の患者が登録され、102人の患者が効果判定対象となった。4週胸水無増悪生存割合はBLM群で68.6%、OK-432群で75.8%、PE群で70.6%だった。生存期間中央値はBLM群で32.1週間、OK-432群で48.1週間、PE群で45.7週間だった。各治療群間で、これら評価項目に有意差を認めなかった。BLM群に1名、間質性肺炎による治療関連死を認めたが、それ以外の毒性は許容範囲だった。
結論:
本試験結果から、4週胸水無増悪生存割合が最も高かったOK-432を今後の臨床試験における標準治療群とする。
毎日1000-1500mlの胸水が出続けるので、週末返上で頑張っている。
胸膜癒着術を行おうにも体位変換ができないので、今週から取り掛かり始めた胸膜癒着術に何を使おうか難渋した。
まずは毒性のマイルドなミノサイクリンから取り組んでみたのだが、全くの鳴かず飛ばず。
昨日はピシバニール(OK-432)を10KE使用し、お決まりの高熱に苛まれたが、これまでのところ胸水は減少傾向にある。
なるべくならこのまま凌ぎたい。
タルクを使ってもよいが、体位変換が満足にできない以上、おそらく癒着効果は背側のみに留まるだろう。
ピシバニールに関する国内外の臨床試験結果をまとめておく。
胸膜癒着術に期待できる効果を患者・家族に示すにあたり、根拠となる数字が示されている。
Comparison of OK-432 and mitomycin C pleurodesis for malignant pleural effusion caused by lung cancer. A randomized trial
K T Luh et al., Cancer. 1992 Feb 1;69(3):674-9.
doi: 10.1002/1097-0142(19920201)69:3<674::aid-cncr2820690313>3.0.co;2-5.
背景:
胸膜癒着術の有効性について、2種の新規薬剤(OK-432、マイトマイシンC)を比較する前向き無作為化臨床試験を行った。
方法:
悪性胸水を合併した肺がん患者53人を対象とした。試験参加中は、化学療法や放射線治療は行わなかった。胸水ドレナージによる排液後、参加者をOK-432群(OK-432を 10KE(Klinische Einheit)単位/回、毎週胸腔内投与)とMMC群(マイトマイシンCを8mg/回、毎週胸腔内投与)に無作為に割り付けた。胸水の排液がなくなるか、連続して4回の治療を行った段階で治療終了とした。
結果:
OK-432群に26人、MMC群に27人が割り付けられた。患者背景(年齢、性別、組織型、PS、胸膜癒着術の前に行われた治療)は両群間で同等だった。OK-432群の方が完全胸水制御率が高かった(OK-432群73%、MMC群41%)。胸水制御率(完全制御+部分制御)は両群とも同等だった(OK-432群88%、MMC群67%)。完全胸水制御に至るまでに必要だった治療回数は、OK-432群の方が少なかった(OK-432群 1.9±0.9回、MMC群2.8±0.9回)。生存期間中央値は両群間で有意差を認めなかった(OK-432群5.8ヶ月、MMC群5.1ヶ月)。胸水無増悪期間はOK-432群が有意に長かった(OK-432群7.0ヶ月、MMC群1.5ヶ月)。合併症発生率は、OK-432群の方が高かった(OK-432群80%、MMC群30%)。一過性の発熱反応が最も頻度の高い合併症だった。免疫学的検証を行ったところ、OK-432群では末梢血中のリンパ球数が増加し、CD4/CD8比が低下していた。一方、MMC群では末梢血中のリンパ球数が軽度低下し、CD4/CD8比には有意な変化を認めなかった。
結論:
OK-432による胸膜癒着術は、悪性胸水を合併した肺がん患者の胸水制御に有効である。
Randomized phase II trial of three intrapleural therapy regimens for the management of malignant pleural effusion in previously untreated non-small cell lung cancer: JCOG 9515
Kimihide Yoshida et al., Lung Cancer. 2007 Dec;58(3):362-8.
doi: 10.1016/j.lungcan.2007.07.009. Epub 2007 Aug 22.
背景:
治療歴のない非小細胞肺がん患者に合併した悪性胸水貯留の胸膜癒着術に使う薬として、ブレオマイシン(BLM)、OK-432(加熱殺菌処理を施したStreptococcus pyogenesを粉砕処理した薬品)、シスプラチン+エトポシドの3群の効果と毒性を評価した。
方法:
適格条件を満たした患者を各治療群に無作為割り付けした。BLM群はBLM 1mg/kg(最高用量60mg / body)、OK-432群は0.2KE / kg(最高用量10KE / body)、PE群はシスプラチン80mg/㎡+エトポシド80mg/㎡とした。胸水制御割合は4週間ごとに規定の判定基準で評価した。胸膜癒着術が成功した患者には、シスプラチン+エトポシド併用化学療法を3-4週間ごとに2コース以上行った。無作為割り付けから、胸水の再増悪が認められるか、患者が死亡するまでの期間を胸水無増悪生存期間と定義した。主要評価項目は、4週間経過時点での胸水無増悪生存割合とした。
結果:
105人の患者が登録され、102人の患者が効果判定対象となった。4週胸水無増悪生存割合はBLM群で68.6%、OK-432群で75.8%、PE群で70.6%だった。生存期間中央値はBLM群で32.1週間、OK-432群で48.1週間、PE群で45.7週間だった。各治療群間で、これら評価項目に有意差を認めなかった。BLM群に1名、間質性肺炎による治療関連死を認めたが、それ以外の毒性は許容範囲だった。
結論:
本試験結果から、4週胸水無増悪生存割合が最も高かったOK-432を今後の臨床試験における標準治療群とする。
病勢進行後の治療をどう考えるか
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリンの効果について
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
進行非小細胞肺がんで治療を受けなかったら
終末期の鎮静(再掲)
抗がん薬治療における植物との付き合い方
髄膜癌腫症と姑息的全脳全脊髄放射線照射
肺がん診療におけるステロイド薬の使い方
アナモレリンの効果について
アナモレリン、意外と使いどころが難しい・・・
ラムシルマブの胸水制御効果・・・ベバシズマブよりは劣るか
がん性胸膜炎、悪性胸水貯留と血管増殖因子阻害薬(ベバシズマブ、ラムシルマブ)
アナモレリン、間に合わず。
がん病状悪化時の対応と、他疾患による急変時の対応と、治療関連急変時の対応
緩和ケア病棟の閉鎖
終末期ケアとCoVID-19緊急事態宣言のせめぎあい
がん疼痛薬物療法
スタッフが流す涙
L858R, Exon 19 deletion以外のEGFR遺伝子変異
フェントステープとアブストラル
白菊会
反省会
進行非小細胞肺がんで治療を受けなかったら
終末期の鎮静(再掲)