2016年04月12日

OncoPrime

<OncoPrimeから見た肺癌診療におけるClinical Sequence>
 2016年4月8日、日本呼吸器学会総会、京都大学 武藤学先生

・日常臨床としてのクリニカル・シーケンスの対象
 原発不明癌
 希少癌
 標準治療不応の進行・再発癌

・OncoPrimeのイメージ
http://www.mki.co.jp/service_news/service_news_2015/0309_01.html

・OncoPrime ポータルサイト
http://oncoprime.cancer.kuhp.kyoto-u.ac.jp/

・OncoPrime提出は完全自費診療
 米国へ外注し、結果は1ヶ月程度で返ってくる
 結果はA4用紙20-60枚分にも及ぶ
 結果はOncoPrimeカンファレンスで解読する
 どんな遺伝子変異があって、どんな治療薬があるのか、判明する
 治療もほとんどの場合は治験もしくは自費診療になる

・OncoPrime sequenceは検査成功率が高い

・適応外使用に対していかに対応するか
 自由診療に対応できるように、生命保険会社に相談、対応可能な商品開発をしてもらう

・2015年4月から2016年2月までに計72人の患者さんをスクリーニング
 actionable mutationを89%で見出した。
 国内で承認された薬の治療対象となる人が58%
 FDAで承認された薬の治療対象となる人が37%

・68人を調べた段階でのうちわけ
 クリニカル・シーケンス成功:64人、失敗:4人
 actionable mutation陽性:57人、陰性:7人
 57人のうち3割程度は結果に基づいた治療につなげることができた

・実例
 原発不明癌、実地臨床でのEGFR遺伝子変異検査では(-), OncoPrimeでEGFR遺伝子変異が判明、Erlotinibが奏効
 非小細胞肺癌、実地臨床でのEGFR遺伝子変異検査では(-), OncoPrimeで希少なEGFR遺伝子変異が判明、Erlotinib+BVが奏効
 膵がん、OncoPrimeでBRCA1(+)が判明、BRCA1変異には白金製剤が有効なため、SOX療法を行い奏効
 →一般に、膵がんに対するSOX療法は有効性が否定されていて、実地臨床で行われることはない
 →標準治療がカバーできない患者群をOncoPrimeでsalvageできる可能性の好例

・HER2 mutationのうち、S310F, G660Dに対しては、afatinibが有効

・京都大学病院内の電子カルテシステムをOncoPrimeに適合するように再構築し、OncoPrimeから得られた遺伝情報と各種の臨床情報をリンクさせ、将来ビッグデータとして活用できるように整備

・同じシステムを他の施設で共用できるように、クリニカル・バイオバンク研究会を発足
 京都大学、北海道大学、岡山大学、千葉大学が連携
 佐賀大学、東京医科歯科大学も参加予定

 スティーブ・ジョブズも病を得たとき、クリニカル・シーケンスを使用して、治療薬を探していたようですね。
 伝記に記されているので、興味がある方は一読してみてください。


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