2016年02月27日

OsimertinibとCeritinib

 2月26日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で、以下の薬の効能・効果が認められたとのこと。

・Osimertinib(タグリッソTM)
 「EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFR T790M変異陽性の手術不能・再発非小細胞肺がん」の治療薬として了承

・Ceritinib(ジカディアTM)
 「クリゾチニブ(ザーコリ)に抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の治療薬として了承

 予想の通りなのですが、長い使用条件が付されています。

 Osimertinibは、
1)EGFR遺伝子変異陽性(Exon 19 / Exon 21)を有し
2)既存のEGFR遺伝子変異阻害薬使用歴があり、なおかつ治療抵抗性となり
3)T790M変異陽性が確認された
4)手術不能・再発非小細胞肺がん
患者さんが対象です。
 裏を返せば、初回診断時にT790M陽性だったとしても、初回治療からOsimertinibを使ってよい、ということにはなりません。
 また、T790M陽性が確認されない限りは、使用できません。
 T790Mをどのように確認するかは明記されておらず、コンパニオン診断やリキッド・バイオプシーの問題は先送りです。
 これから再生検を行う動きが活発化しそうですが、診断する側の準備はまだ整っているとはいえません。 
 どの時点で再生検を考慮するのか、再生検をしてもT790Mが陰性だった場合にそこであきらめるのか、再挑戦するのか。
 検査を行う医師は、「肺癌であるかどうか」「組織型はなにか」という議論を越えて、「遺伝子変異プロファイルがどのようになっているのか」を明らかにすることを求められていること、その結論が出せなければ検査をする意味がないことを肝に銘じて検査に望まねばなりません。

 Ceritinibの使用条件も、現状を考えると悩ましいです。
 J-ALEX studyが早期有効中止となったため、今後Alectinibが初回治療から使用され始める可能性が高いですが、CeritinibはあくまでもCrizotinib使用歴があることが前提条件です。
 ALK陽性肺癌患者さんの治療シーケンスとして、
1)Crizotinib→Alectinib→Ceritinib
2)Crizotinib→Ceritinib→Alectinib
3)Alectinib→Crizotinib→Ceritinib
となることが考えられますが、J-ALEX studyの結果を踏まえれば、3)を選択することになります。
 3rd lineまでCeritinibの出番はありません。
 明記はされていませんが、ALK肺癌もいずれは再生検が求められ、その結果を踏まえて治療シーケンスを決めることになるでしょうね。
 


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