2015年07月30日

日本臨床腫瘍学会2日目

 ちょっと間が空いてしまいましたが、2015/7/17の日本臨床腫瘍学会で見聞きしたことのメモです。

<免疫チェックポイント阻害剤の現状と今後の展望>Dr Roy S Herbst
・mutational burden:腫瘍によって遺伝子異常の数が異なり、遺伝子異常が少ないものもあれば多いものもある。
 Alexandrov et al, Nature 500, 415-421, 2013
日本臨床腫瘍学会2日目
・免疫チェックポイント阻害薬は、遺伝子異常が多い腫瘍の方が効きやすい傾向がある。
・前立腺癌、MMR遺伝子異常を伴う大腸癌、骨髄腫、膵癌には免疫チェックポイント阻害薬は効かない。
・免疫療法のキーワードは”特異性”、”免疫記憶”、”適応性”
・T細胞は腫瘍細胞を認識、攻撃する機能を持つ。
・PD-L1の発現は免疫のスイッチをオフにすることができる。
・Nivolumabの臨床試験、CheckMate017(肺扁平上皮癌)、057(肺非扁平上皮癌)
・MK3475(pembrolizumb)
・MPDL3280(抗PD-L1抗体)の第I相試験報告(Herbst et al, Nature, 2014 / Rizvi 2014)
 奏効割合           喫煙者      非喫煙者
 Nivolumab          26%       8%
 MK3475            26%       10%
 MPDL3280          26%       0%
・免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験で見られる生存曲線は、分子標的薬のそれよりは化学療法のそれに近いが、長期生存が多く認められるのが特徴
・抗体医薬のIgG classの違い
→IgG1抗体医薬に比べると、IgG4抗体やengineered IgG1抗体はADCC活性が40%程度低くなる。
・免疫関連有害事象あれこれ
→甲状腺炎、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、下垂体炎、下垂体機能低下症、副腎機能不全、神経障害、髄膜炎、ギランバレー症候群、虹彩炎、ブドウ膜炎、などなど
・内分泌器官に関連した有害事象は非可逆的
・CheckMate063試験
・PD-L1抗体陽性率とPembrolizumabの効果の相関
→Garon et al, NEJM 2015
・POPLAR study
・MPDL3280と化学療法の併用(Liu et al, ASCO 2015)
・有望な奏効割合が示されれば、生存に関する最終結果が出ていなくても迅速承認される可能性あり
・免疫チェックポイント阻害薬は、免疫染色によって治療効果予測ができるかもしれないが、使用する抗体によって陽性割合がバラバラなのが問題。
・小細胞癌において、pembrolizumabの奏効割合は35%程度、ChackMate 063試験と同様に、Nivolumab+Ipilimumab併用療法の開発も進行中。


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Posted by tak at 12:05│Comments(2)その他
この記事へのコメント
非喫煙だと奏功率が抗がん剤レベルなのですね。
PD-L1抗体は0%ですか、期待してたんですけどね。
PD-L1発現率も含めた解析はされてましたでしょうか?
そもそも発現率の確認方法によって違いますが。
Posted by のぞみパパ at 2015年07月30日 12:39
のぞみパパさんへ
 おはようございます。どうも、免疫チェックポイント阻害薬は、喫煙者の福音のような薬ですね。PD-L1発現率と効果に関する報告はまだ限定的ですが、おしなべて効果予測に役立つとの報告がある一方で、ほかにも予測因子が隠れていそうだとか、そもそも発現率の評価法が標準化されておらず箸にも棒にもかからない、といった意見が錯綜しており、まだまだ議論の途上です。分子標的薬の効果が期待できるような患者さんには、逆に免疫チェックポイント阻害薬の効果は限定的となるようです。
Posted by taktak at 2015年07月31日 09:10
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