2020年01月12日

METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib

 METエクソン14スキッピング変異にクリゾチニブが効く、という話題を取り上げて、はや3年が経過した。
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e888165.html

 2019年のASCOで、ほかにもCapmatinibやTepotinibが効く、という発表があった。
 忘れないように取り上げておく。
 以下を見る限り、クリゾチニブと比較して、遥かにMETエクソン14スキッピング変異による産物への阻害活性が高い薬たちのようだ。

METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib

 出現頻度は肺腺がんの3-4%ということだから、ALK融合遺伝子陽性患者の割合と遜色ない。
 これら両者で、最大8%となると、無視してはならない割合だ。
 ROS1やBRAF-V600Eなどより、METエクソン14skipの方が優先度合いが高くなりそうだ。
 
 九州がんセンターから立案された、本遺伝子変異を有する患者に対するクリゾチニブの効果・安全性を検討するCo-MET試験も、すでに患者登録は終了していると聞く。
 そろそろ、本遺伝子変異に対しても、実地臨床で診断・治療の道が開かれる頃だろうか。


Capmatinib (INC280) in METΔex14-mutated advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): Efficacy data from the phase II GEOMETRY mono-1 study.
Juergen Wolf. et al., 2019 ASCO Annual Meeting Abst. #9004

背景:
 Capmatinibは高い活性を有する選択的MET阻害薬である。GEOMETRY mono-1試験のこれまでのデータから、METエクソン14スキッピング変異を有する非小細胞肺がん患者において臨床的意義のある奏効割合と対応可能な毒性プロファイルが明らかになっている(コホート4は1-2レジメンの治療歴のある患者集団で、コホート5bは治療歴のない患者集団だが、とりわけコホート5bでは奏効割合が高かった)。今回は、奏効持続期間と無増悪生存期間に関する結果を提示する。
方法:
 GEOMETRY mono-1は第II相、マルチコホートの、多施設共同臨床試験である。METエクソン14スキッピング変異もしくはMET遺伝子増幅を有する進行非小細胞肺がんの患者6コホートを対象に、Capmatinibの効果を評価するのが目的である。適格基準は、18歳以上、ECOG-PS 0-1、ALK融合遺伝子あるいはEGFR遺伝子変異いずれも陰性、stage IIIB/IVとした。METエクソン14スキッピング変異を有する患者が(MET遺伝子増幅の状態とは関係なく)コホート4あるいはコホート5bに割り付けられ、Capmatinib 400mgを1日2回服用した。主要評価項目は奏効割合とした。主な副次評価項目は奏効持続期間とした。
結果:
 2018年11月08日までに、METエクソン14スキッピング変異を有する患者97人(コホート4 69人、コホート5b 28人)が治療効果の評価が可能な状態にあった。コホート4における奏効割合は39.1%(95%信頼区間は27.6-51.6%)で、コホート5bにおける奏効割合は71.4%(51.3-86.8%)だった。今回の解析を行った段階ではまだデータは未成熟であったが、治療効果の持続性については期待できる効果が得られた。奏効持続期間中央値はコホート4で9.72ヶ月(95%信頼区間は4.27-11.14ヶ月)、コホート5bで8.41ヶ月(95%信頼区間は5.55-未到達)だった。無増悪生存期間中央値はコホート4で5.42ヶ月(95%信頼区間は4.17-6.97ヶ月)、コホート5bで9.13(95%信頼区間は5.52-13.86ヶ月)だった。安全性については、既報と特に変わりなかった。発現頻度が25%を超える、最も発現頻度が高く両コホートに共通する有害事象は、末梢浮腫(49.2%)、嘔気(43.2%)、嘔吐(28.3%)で、ほとんどの有害事象はGrade 1もしくは2だった。
結論:
 CapmatinibはMET14スキッピング変異を持つ進行非小細胞肺がん患者の治療選択肢として、過去の治療歴に関わらず有望な治療選択肢である。

METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib
METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib
METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib
METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib
METエクソン14スキッピング変異に対する治療開発のその後・・・CapmatinibとTepotinib



Phase II study of tepotinib in NSCLC patients with METex14 mutations.
Paul K. Paik.et al., 2019 ASCO Annual Meeting, Abst. #9005

背景:
 非小細胞肺がんの3-4%に認められると報告されているMETエクソン14スキッピング変異は、腫瘍化に関わり、MET阻害薬に感受性で、リキッドバイオプシーで検出可能である。今回は現在進行中のtepotinib(高い選択性を有するMET阻害薬)に関する単アーム第II相臨床試験・・・リキッドバイオプシーもしくは生検によってMET14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がんと診断された患者を対象とした臨床試験・・・について報告する。
方法:
 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子陰性の進行非小細胞肺がん患者を対象に、リキッドバイオプシーでMET14スキッピング変異が確認された患者(集積目標は60人以上)あるいは生検でMET14スキッピング変異が確認された患者(集積目標は60人以上、リキッドバイオプシー陽性例との重複も予測して)を前向きに登録し、病勢進行・忍容不能の毒性・治療同意取り下げのいずれかに至るまでtepotinib 500mg1日1回を服用させた。主要評価項目は独立した評価委員会の評価による奏効割合、副次評価項目は担当医の評価による奏効割合と安全性とした。
結果:
 これまでに、85人(リキッドバイオプシー群55人、生検群52人)の患者が本試験に登録された。2018年10月16日のデータカットオフ時点までに、リキッドバイオプシー群の中で評価可能だった患者35人において、奏効割合は委員会評価で51.4%、担当医評価で63.9%だった。同様に、生検群の中で評価可能だった41人において、奏効割合は委員会評価で41.5%、担当医評価で58.5%だった。奏効持続期間や、治療ラインごとの奏効割合は図表に示すとおりだった。有害事象について評価可能だった69人の患者において、10%以上の出現頻度で認められた有害事象は、末梢浮腫が47.8%、下痢が18.8%、嘔気が15.9%、衰弱が10.1%だった。Grade 4の有害事象や、患者死亡に至る毒性は認めなかった。治療の永続的な中止に至ったのは2人(2.9%)で、理由は間質性肺炎が1人、嘔吐下痢が1人だった。
結論:
 リキッドバイオプシーもしくは通常生検で検出されたMETエクソン14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん患者に対し、tipotinibは治療ラインとは関係なく、有望な活性を示した。毒性は忍容可能であった。現在も本試験は進行中である。

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