2018年06月11日

KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか

 進行肺扁平上皮癌に対する初回治療としての免疫チェックポイント阻害薬+化学療法の有効性を検証する試験。
 アテゾリズマブがIMpower131試験、ペンブロリズマブはKEYNOTE-407試験。
 全生存期間解析についてどちらも中間解析時点とはいえ、KEYNOTE-407試験では既に有意な延長効果が示されている。

・PD-L1≧50%の場合には単剤治療の有効性が確立されていること
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e914135.html
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e934659.html
・KEYNOTE-189試験で肺非扁平上皮癌への有効性も示されていること
 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e931610.html
・そして今回のKEYNOTE-407試験の結果
を総合すると、ドライバー遺伝子変異のない進行非小細胞肺癌に対する初回治療のキードラッグとして、ペンブロリズマブは全く隙がない。
 

2018 ASCO: Pembrolizumab Plus Chemotherapy as First-Line Treatment of Metastatic Squamous NSCLC: KEYNOTE-407 Study
Abst. #105

By The ASCO Post
Posted: 6/8/2018 11:44:39 AM
Last Updated: 6/8/2018 12:20:38 PM

 進行肺扁平上皮癌に対する初回治療として、カルボプラチン+パクリタキセルあるいはカルボプラチン+ナブパクリタキセルにペンブロリズマブを上乗せする意義を検証した二重盲検ランダム化プラセボ対照第3相比較試験であるKEYNOTE-407試験の結果が、2018年のASCO年次総会で発表された。
 KEYNOTE-407試験には、559人の進行肺扁平上癌患者が参加した。主要評価項目は全生存期間と無増悪生存期間とされ、副次評価項目には奏功割合や奏功持続期間が含まれていた。

KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか


 本試験における生存期間中央値は、ペンブロリズマブ併用群で15.9ヶ月(13.2ヶ月-未到達)、化学療法単独群で11.3ヶ月(9.5ヶ月-14.8ヶ月)だった。化学療法単独群に割り付けられた患者のうち89人(42.8%)は、二次治療で抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体の治療を受けるために化学療法を中断したが、そのうち75人はプロトコール治療で認められていたペンブロリズマブ単剤療法を受けた。化学療法にペンブロリズマブを上乗せすることによって、有意に生存期間が延長し、化学療法単独と比較して死亡リスクが36%減少することが明らかになった(ハザード比0.64、95%信頼区間は0.49-0.85、p=0.0008)。
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか

 この治療効果は、以下のごとくPD-L1の発現状態によらず認められた(PD-L1発現≧50%でのみハザード比の95%信頼区間が1.0をまたいではいるが)。
・PD-L1発現<1% ハザード比0.61(0.38-0.98)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか
・PD-L1発現 1-49% ハザード比0.57(0.36-0.90)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか
・PD-L1発現≧50% ハザード比0.64(0.37-1.10)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか

 PD-L1発現状態のみならず、他のどのサブグループ解析においても(年齢、性別、ECOG-PS、参加地域、パクリタキセル併用かナブパクリタキセル併用か)ペンブロリズマブ併用群が有意に全生存期間において優れていた。
 本試験における無増悪生存期間中央値は、ペンブロリズマブ群で6.4ヶ月(6.2ヶ月-8.3ヶ月)、化学療法単独群で4.8ヶ月(4.3-5.7ヶ月)だった。化学療法にペンブロリズマブを上乗せすることによって、無増悪生存期間も有意に改善した(ハザード比0.56(0.45-0.70)、p<0.0001)。
 こちらも以下のごとく、PD-L1発現状態によらずペンブロリズマブ併用群が優れていた。
・PD-L1発現<1% ハザード比0.68(0.47-0.98)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか
・PD-L1発現 1-49% ハザード比0.56(0.39-0.80)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか
・PD-L1発現≧50% ハザード比0.37(0.24-0.58)
KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか

KEYNOTE-407試験、ペンブロリズマブがアテゾリズマブを一歩リードか

 初回の中間解析時点では、奏効割合はペンブロリズマブ併用群で58.4%(48.2%-68.1%)、化学療法単独群は35.0%(25.8%-45.0%)だった(p=0.0004)。2回目の中間解析時点では、ペンブロリズマブ群で57.9%(51.0%-63.8%)、化学療法単独群で38.4%(32.7%-44.4%)と、初回解析時点とほぼかわらなかった。奏効持続期間は、ペンブロリズマブ併用群で7.7ヶ月、化学療法単独群で4.8ヶ月だった。
 今回の臨床試験で、過去に認められなかった種類の有害事象はなかった。Grade 3以上の有害事象はペンブロリズマブ併用群で69.8%、化学療法単独群で68.2%に認めた。
 ペンブロリズマブ併用群の20%以上に認めた有害事象は貧血(53.2%)、脱毛(46.0%)、好中球減少(37.8%)、嘔気(35.6%)、血小板減少(30.6%)、下痢(29.9%)、食欲低下(24.5%)、便秘(23.0%)、倦怠感(22.7%)、無力症(21.6%)、関節痛(20.5%)、末梢神経障害(20.5%)だった。ペンブロリズマブ併用群において高頻度に認められた免疫関連有害事象は、甲状腺機能低下症(7.9%)、甲状腺機能亢進症(7.2%)、肺臓炎(6.5%)、大腸炎(2.5%)、肝炎(1.8%)、重篤な皮膚障害(1.8%)、下垂体機能低下症(1.1%)、甲状腺炎(1.1%)、腎炎(0.7%)だった。ペンブロリズマブ併用群のうち10人、化学療法単独群のうち6人に治療関連死が発生し、それぞれに1人の肺臓炎患者を含んでいた。


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