2017年11月19日

抗がん薬治療中は刺身を食べてはいけないのか

抗がん薬治療中は刺身を食べてはいけないのか
 小児がんのため、10歳で亡くなった患者さんの作品。
 ある生命保険会社主催の展覧会に出品されていたもののようだ。
 数年前から、肺がん関連の学会・講演会でときおり引き合いに出されるようになった。

 なぜこうした作品が取り上げられるのかというと、
 「抗がん薬治療で白血球が少なくなったら、感染リスクのある非加熱食品は食べない方がいい」
という神話があるからだ。
 確かに、治療中にお刺身やお鮨を食べて、そのせいで急性腸炎を起こして治療に難渋した患者さんは何度か経験した。
 私が初期研修を受けた大学病院では、抗がん薬治療中の患者さんのための「加熱ラップ食」なるものが存在し、患者さんの白血球が下がると上司の指示で食事を変更していた。

 多分、治療中にお刺身を食べていいとか食べてはならないとかの二極論では処理できない問題なのではないか。 
 刺身を食べないよりも、食べた方が感染リスクは増えるに決まっている。
 さばの刺身を食べる人は、アニサキス症のリスクを背負い込んでも食べたいから食べるのだ。
 生牡蠣を食べる人は、ノロウイルス感染のリスクを背負い込んでも食べたいから食べるのだ。
 個々の患者さんが、どれだけリスク管理に重点を置くのか、それに基づいて行動するのか、ということだと思う。

 小児がんの治療は白血球が減る期間が長く続くし、基本は入院治療だから、白血球減少の期間が限られていて、外来治療が基本の肺がん治療と同列には語れない。
 だからこそ、小児科の先生も、生ものを食べていいよ、とは言えないのではないか。
 そこを理解した上でこの作品を見つめなければならない。




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Posted by tak at 08:53│Comments(0)その他
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