2015年11月01日

ASCOの肺癌診療ガイドライン2015

 既にオンラインでは発表されていましたが、ASCO(米国臨床腫瘍学会)のIV期非小細胞肺癌診療ガイドラインが公表されていたので、要約を以下に記します。

J Clin Oncol 33:3488-3515.

Systemic Therapy for Stage IV Non–Small-Cell Lung Cancer: American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guideline Update
Gregory A. Masters, Sarah Temin, Christopher G. Azzoli, Giuseppe Giaccone, Sherman Baker Jr, Julie R. Brahmer, Peter M. Ellis, Ajeet Gajra, Nancy Rackear, Joan H. Schiller, Thomas J. Smith, John R. Strawn, David Trent, and David H. Johnson

 IV期の非小細胞肺がん患者では、治癒は期待できない。
 パフォーマンスステータス0、1、(2)で、EGFR感受性変異またはALK遺伝子再構成のない患者では、併用化学療法を推奨する。
 治療内容は腫瘍の組織型に基づいて決定する。
 治療早期から、緩和医療を並行して行う。
 パフォーマンスステータス0、1の患者では、プラチナ併用化学療法を行う。
 禁忌条件がなければ、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法においてはベバシツマブを上乗せしてもよい。
 パフォーマンスステータス2の患者では、併用もしくは単剤化学療法、あるいは緩和医療のみを行う。
 EGFR感受性変異を有する患者では、アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブを用いる。
 ALKもしくはROS1遺伝子再構成を有する患者では、クリゾチニブを用いる。
 大細胞神経内分泌癌においては、上記以外にプラチナ製剤とエトポシドの併用を選択肢とする。
 維持療法は、初回の併用療法で腫瘍縮小もしくは病勢安定が得られた患者、あるいは何らかの理由でいったん治療を中断した患者に対するペメトレキセド継続投与を含む。
 二次治療では、非扁平上皮癌患者ではドセタキセル、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ペメトレキセドを使用する。
 扁平上皮癌患者ではドセタキセル、エルロチニブ、ゲフィチニブを使用する。
 ALK遺伝子再構成陽性の患者で、クリゾチニブ療法後に病勢進行を認めたら化学療法かセリチニブ投与を行う。
 三次治療では、エルロチニブもしくはゲフィチニブを使ったことのない患者では、エルロチニブを推奨する。
 日常臨床において、三次化学療法を推奨するだけのデータはない。
 患者の年齢のみを根拠に、治療内容を決めるべきではない。
 →高齢であっても、元気な患者であればより有効な治療を検討するべきである。   

 ASCOのガイドラインは、proof of conceptはともかくとして、基本的には第III相臨床試験でちゃんと結論が出た根拠をもとに構成されています。
 必ずしも実地臨床にそぐわない面もありますが、この内容をベースラインとしてそれぞれの医師が自分の考え方を反映させながら、治療体系を組み立てるとよいと思います。

 それにしても冒頭の
「IV期の非小細胞肺がん患者では、治癒は期待できない。」
という一文は、シンプルで重い言葉です。
 


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Posted by tak at 17:46│Comments(0)その他
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