2015年07月19日
日本臨床腫瘍学会1日目の続きの続き
<Immuno-Oncology ・・・The New Frontier. Dr Naiyer Rizvi>
・世界全体での肺がん罹患数は年間182万人、死亡数は152万人
・従来の三大治療、すなわち手術・放射線・殺細胞性抗腫瘍薬/分子標的薬に、免疫療法を加えて四大治療と呼ぶべき状況になりつつある
・1970年代の樹状細胞の発見から1990年代の免疫チェックポイント分子の発見を経て、現在に至るまでの腫瘍免疫学の歴史を概観
・腫瘍細胞とCD4陽性細胞との抗原提示・認識のやりとりと、腫瘍細胞とCD8陽性細胞との抗原認識・攻撃のやりとりの簡単なまとめ
・腫瘍細胞上の、免疫賦活作用を持つ蛋白群(CD28, OX40, GITR, CD137, CD27, HVEM)と免疫寛容を招く蛋白群(CTLA4, PD-L1, TIM-3, BTLA, VISTA, LAG3)
・免疫寛容に関する文献紹介
Vasely et al, Ann Rev Immunol 235-271, 2011
Zitvogel et al, Lancet Resp Med, 2013
・PD-L1の活性化には2つのメカニズムがある→Innate resistance, Adaptive resistance
・T細胞を介した免疫調節療法には、4つの方法がある
1)ワクチン/アジュバント療法
2)T細胞受容体の改変
3)共刺激受容体アゴニストに対する抗体療法(CD40, CD137, CD27, OX40)
4)免疫チェックポイント阻害療法(PD1, LAG3,PDL1/2, CTLA4)
・腫瘍細胞が体内に出来てから腫瘍免疫が成立するまでの7段階・・・Chen DS et al, Immunity 1-10, 2013
1)release of cancer cell
2)Cancer antigen presentation
3)Priming and activation(CTLA4, CD137, OX40, CD27)
4)-6)・・・筆記が追いつかず
7)Cancer cell Killing・・・CARS
・免疫チェックポイント阻害薬と有害事象およびその発現時期
皮膚毒性、肝炎、膵炎、腸炎および下痢、下垂体炎、甲状腺炎、副腎機能不全、肺障害
・免疫関連有害事象のGrade分類→発現してから治療反応性を見極めるまではGradeがつけられない?
Grade 1:支持療法と治療中断で対応可能
Grade 2:治療中断後も1週間以上症状が続き、PSL 0.5mg/kg程度のステロイドカバーが必要
Grade 3-4:PLS 1-2mg/kg程度の治療が1ヶ月以上必要で、その後徐々に減量
・ニボルマブによる肺障害症例の画像供覧→右肺下葉S8-9に片側性に胸膜直下をスペアするような浸潤影が出現しており、ステロイド投与後に緩やかに改善→organizing pneumonia様で、TKIによる肺障害とは雰囲気が異なる
・免疫チェックポイント阻害薬の効果発現の4パターン
Walchok et al, Clin Cancer Res 7412-7420, 2009
Hoos et al, Ann Oncol viii47-52, 2012
1)治療初期から腫瘍が縮小
2)一旦増大して、その後腫瘍縮小
3)???・・・2)との違いがわからず
4)一旦増大、新規病変も出現するも、その後どちらも縮小
→果たしてどのタイミングで効果判定をするべきなのか、それとも毒性が軽微なら可能な限り続けるべきなのか?
<AURA study>O1-8-1
・日本人は24人が参加、うちT790M陽性患者は55.6%
・奏効割合は67%
・肺障害は2人で発現し、うち1人(4.2%)では治療中止
・参加者全体での肺毒性発現割合は2.7%
・日本人では2人(8.5%)の治療関連死→有害事象が少なく安全な治療とは今のところ言いがたい
・AZD9291への耐性化変異が確認されている(Nature Med 560-562 2015, Cancer Res 2489-2500 2015)
・C797S耐性変異は耐性化した患者の40%に発現していたが、全てEx. 19 del.の患者だった
<AURA study - 1st line cohort>O1-8-2
・AZD9291はin vitroではEx.19 del.陽性のPC1細胞株の耐性化を遅らせる
・全患者60人中5人の患者において、未治療の状態でT790Mが確認されている
・主な有害事象は皮疹、下痢、胃炎だった
・肺障害は3人で認められ、うち2人は日本人だった
・全体での奏効割合は63%(80mg cohort)、83%(160mg cohort)、73%(total)
・日本人での奏効割合は57%(80mg cohort)、88%(160mg cohort)、73%(total)
・Ex. 19とEx.21での奏効割合はほぼ同じ
・進行中の臨床試験:AURA3(AZD9291 vs chemotherapy)、FLAURA(1st line AZD9291 vs Gefitinib/Erlotinib)
<JO28638 study 1st line Erlotinib+Onartuzumab>
・Onartuzumabは抗MET抗体で、METへのHGF会合を阻害する
・EGFR遺伝子変異陽性で、MET-IHC陽性の患者が70%を占める
・MET-Lung study(OAM4971g)の試験結果を受けて、本試験を含めて全てのOnartuzumab関連試験が中止された
・無増悪生存期間中央値8.5ヶ月、生存期間中央値15.6ヶ月、奏効割合68.9%、病勢コントロール割合88.5%、肺障害発現割合6.6%
<ErlotinibとBevacizumab併用療法のin vitroでの解析>
・T790M陽性細胞に対する併用効果(縮小効果)は少ないが、Bevacizumabを中止すると早期に再増殖→再増殖を抑制する効果はありそう
・MET増幅細胞に対する併用効果は高い
<EGFR陽性肺がんの再生検に関する後方視的検討>愛知県がんセンター
・2005年から2015年にかけて肺がん患者700人余りを対象に調査、再生検を行ったのが120人、EGFR陽性例は68人
・Ex. 19 / Ex. 21 / others = 32人 / 35人 / 2人(うち1人はdoublet)
・T790M陽性は36人(52.9%)、陰性は32人、以下のデータはT790M陽性患者、陰性患者別に提示
・TBLBで診断できたのは6人、6人
・他の部位の生検で診断できたのは6人、10人
・胸水で診断できたのは16人、13人
・無増悪生存期間中央値は18ヶ月、11ヶ月(p=0.04)
・局所再燃例は70%、34%(p=0.014)
・生存期間中央値は68ヶ月、29ヶ月
・T790Mは初回治療後の無増悪生存期間が長い、局所再燃例が多い、生存期間中央値が長いという特徴がある
・参考文献
Clin Cancer Res 2015(高感度PCR、digital PCR)
Cancer 119 4325-32, 2013
Hata et al, Clin Cancer Res 2240-2247, 2013
これで1日目の内容は大体終わり。
・世界全体での肺がん罹患数は年間182万人、死亡数は152万人
・従来の三大治療、すなわち手術・放射線・殺細胞性抗腫瘍薬/分子標的薬に、免疫療法を加えて四大治療と呼ぶべき状況になりつつある
・1970年代の樹状細胞の発見から1990年代の免疫チェックポイント分子の発見を経て、現在に至るまでの腫瘍免疫学の歴史を概観
・腫瘍細胞とCD4陽性細胞との抗原提示・認識のやりとりと、腫瘍細胞とCD8陽性細胞との抗原認識・攻撃のやりとりの簡単なまとめ
・腫瘍細胞上の、免疫賦活作用を持つ蛋白群(CD28, OX40, GITR, CD137, CD27, HVEM)と免疫寛容を招く蛋白群(CTLA4, PD-L1, TIM-3, BTLA, VISTA, LAG3)
・免疫寛容に関する文献紹介
Vasely et al, Ann Rev Immunol 235-271, 2011
Zitvogel et al, Lancet Resp Med, 2013
・PD-L1の活性化には2つのメカニズムがある→Innate resistance, Adaptive resistance
・T細胞を介した免疫調節療法には、4つの方法がある
1)ワクチン/アジュバント療法
2)T細胞受容体の改変
3)共刺激受容体アゴニストに対する抗体療法(CD40, CD137, CD27, OX40)
4)免疫チェックポイント阻害療法(PD1, LAG3,PDL1/2, CTLA4)
・腫瘍細胞が体内に出来てから腫瘍免疫が成立するまでの7段階・・・Chen DS et al, Immunity 1-10, 2013
1)release of cancer cell
2)Cancer antigen presentation
3)Priming and activation(CTLA4, CD137, OX40, CD27)
4)-6)・・・筆記が追いつかず
7)Cancer cell Killing・・・CARS
・免疫チェックポイント阻害薬と有害事象およびその発現時期
皮膚毒性、肝炎、膵炎、腸炎および下痢、下垂体炎、甲状腺炎、副腎機能不全、肺障害
・免疫関連有害事象のGrade分類→発現してから治療反応性を見極めるまではGradeがつけられない?
Grade 1:支持療法と治療中断で対応可能
Grade 2:治療中断後も1週間以上症状が続き、PSL 0.5mg/kg程度のステロイドカバーが必要
Grade 3-4:PLS 1-2mg/kg程度の治療が1ヶ月以上必要で、その後徐々に減量
・ニボルマブによる肺障害症例の画像供覧→右肺下葉S8-9に片側性に胸膜直下をスペアするような浸潤影が出現しており、ステロイド投与後に緩やかに改善→organizing pneumonia様で、TKIによる肺障害とは雰囲気が異なる
・免疫チェックポイント阻害薬の効果発現の4パターン
Walchok et al, Clin Cancer Res 7412-7420, 2009
Hoos et al, Ann Oncol viii47-52, 2012
1)治療初期から腫瘍が縮小
2)一旦増大して、その後腫瘍縮小
3)???・・・2)との違いがわからず
4)一旦増大、新規病変も出現するも、その後どちらも縮小
→果たしてどのタイミングで効果判定をするべきなのか、それとも毒性が軽微なら可能な限り続けるべきなのか?
<AURA study>O1-8-1
・日本人は24人が参加、うちT790M陽性患者は55.6%
・奏効割合は67%
・肺障害は2人で発現し、うち1人(4.2%)では治療中止
・参加者全体での肺毒性発現割合は2.7%
・日本人では2人(8.5%)の治療関連死→有害事象が少なく安全な治療とは今のところ言いがたい
・AZD9291への耐性化変異が確認されている(Nature Med 560-562 2015, Cancer Res 2489-2500 2015)
・C797S耐性変異は耐性化した患者の40%に発現していたが、全てEx. 19 del.の患者だった
<AURA study - 1st line cohort>O1-8-2
・AZD9291はin vitroではEx.19 del.陽性のPC1細胞株の耐性化を遅らせる
・全患者60人中5人の患者において、未治療の状態でT790Mが確認されている
・主な有害事象は皮疹、下痢、胃炎だった
・肺障害は3人で認められ、うち2人は日本人だった
・全体での奏効割合は63%(80mg cohort)、83%(160mg cohort)、73%(total)
・日本人での奏効割合は57%(80mg cohort)、88%(160mg cohort)、73%(total)
・Ex. 19とEx.21での奏効割合はほぼ同じ
・進行中の臨床試験:AURA3(AZD9291 vs chemotherapy)、FLAURA(1st line AZD9291 vs Gefitinib/Erlotinib)
<JO28638 study 1st line Erlotinib+Onartuzumab>
・Onartuzumabは抗MET抗体で、METへのHGF会合を阻害する
・EGFR遺伝子変異陽性で、MET-IHC陽性の患者が70%を占める
・MET-Lung study(OAM4971g)の試験結果を受けて、本試験を含めて全てのOnartuzumab関連試験が中止された
・無増悪生存期間中央値8.5ヶ月、生存期間中央値15.6ヶ月、奏効割合68.9%、病勢コントロール割合88.5%、肺障害発現割合6.6%
<ErlotinibとBevacizumab併用療法のin vitroでの解析>
・T790M陽性細胞に対する併用効果(縮小効果)は少ないが、Bevacizumabを中止すると早期に再増殖→再増殖を抑制する効果はありそう
・MET増幅細胞に対する併用効果は高い
<EGFR陽性肺がんの再生検に関する後方視的検討>愛知県がんセンター
・2005年から2015年にかけて肺がん患者700人余りを対象に調査、再生検を行ったのが120人、EGFR陽性例は68人
・Ex. 19 / Ex. 21 / others = 32人 / 35人 / 2人(うち1人はdoublet)
・T790M陽性は36人(52.9%)、陰性は32人、以下のデータはT790M陽性患者、陰性患者別に提示
・TBLBで診断できたのは6人、6人
・他の部位の生検で診断できたのは6人、10人
・胸水で診断できたのは16人、13人
・無増悪生存期間中央値は18ヶ月、11ヶ月(p=0.04)
・局所再燃例は70%、34%(p=0.014)
・生存期間中央値は68ヶ月、29ヶ月
・T790Mは初回治療後の無増悪生存期間が長い、局所再燃例が多い、生存期間中央値が長いという特徴がある
・参考文献
Clin Cancer Res 2015(高感度PCR、digital PCR)
Cancer 119 4325-32, 2013
Hata et al, Clin Cancer Res 2240-2247, 2013
これで1日目の内容は大体終わり。
お引越しします
追憶
肺がん患者に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種は必要か
そろりと面会制限の限定解除
新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方
新型コロナワクチン感染症が治った人は、ワクチンを接種すべきか
抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方
広い意味でのチーム医療
病院内におけるワクチン格差のリスク
順序
2015年度のデータベースから
2014年度のデータベースから
2013年度のデータベースから
2012年度のデータベースから
2011年度のデータベースから
2010年度のデータベースから
2009年度のデータベースから
2008年度のデータベースから
がんと新型コロナウイルスワクチン
進行肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法
追憶
肺がん患者に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種は必要か
そろりと面会制限の限定解除
新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方
新型コロナワクチン感染症が治った人は、ワクチンを接種すべきか
抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方
広い意味でのチーム医療
病院内におけるワクチン格差のリスク
順序
2015年度のデータベースから
2014年度のデータベースから
2013年度のデータベースから
2012年度のデータベースから
2011年度のデータベースから
2010年度のデータベースから
2009年度のデータベースから
2008年度のデータベースから
がんと新型コロナウイルスワクチン
進行肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法
Posted by tak at 09:35│Comments(0)
│その他