2015年04月19日
CPFE合併肺癌
今回の日本呼吸器学会総会では、いつもに増して肺がんと間質性肺炎の領域に関わる話題が多かったような気がします。
抗線維化薬のピルフェニドンに対する評価が世界的にも安定したこと、間質性肺炎合併肺癌患者さんを対象にピルフェニドンの術後急性増悪合併抑制効果を検証した第II相試験(WJOG6711L study)で有望な結果が得られたこと、抗線維化・抗腫瘍抗体医薬であるニンテダニブの実用化に一定の見通しが立ったことなど、この領域でよい話題が多かったためかも知れません。
内科系の話題として、日本医科大学の峰岸先生の論文が引用されることが多かったですが、今回は肺気腫合併肺線維症(CPFE)について、以下の論文要旨を紹介します。肺気腫合併肺癌、肺線維症合併肺癌、いずれも厳しい病態であるのに、どっちも合併したらそりゃあきついでしょう、と容易に想像できますが、それをちゃんと論文にしてちょっと意外な結論を明らかにしているところがすばらしいと思います。ちなみに、肺気腫、肺線維症、肺がん、いずれも喫煙が密接に関わっている病気です。
Clinical features, anti-cancer treatments and outcomes of lung cancer patients with combined pulmonary fibrosis and emphysema.
Minegishi Y et al., Lung Cancer. 2014 Aug;85(2):258-63.
背景:CPFE患者は肺気腫の患者、もしくは肺線維症の患者と比べて有意に肺がんのリスクが高いかもしれない。抗腫瘍治療中の間質性肺炎急性増悪は、日本の肺癌患者にとっては致死的な合併症の最たるものである。にも拘らず、肺癌患者において特発性間質性肺炎のみを合併した患者に対してCPFEの患者がどのような臨床的特徴を有しているのか、よくわかっていない。
方法:1998年3月から2011年10月までに日本医科大学病院で診療した1536人の肺癌患者を後方視的に検討した。特発性間質性肺炎を合併した患者を以下の二群に分類した。(1)CPFE群:肺気腫を合併した特発性間質性肺炎患者、(2)non-CPFE群:肺気腫を合併しない特発性間質性肺炎患者。臨床的特徴、抗がん治療、予後について両群を比較した。
結果:肺がんを合併したCPFE群88人(5.7%)ととnon-CPFE群63人(4.1%)を抽出した。初回治療時に急性増悪を合併した患者はCPFE群で22人(25%)、non-CPFE群で8人(12.7%)だった。生存期間中央値はCPFE群で23.7ヶ月、non-CPFE群で20.3ヶ月だった(p=0.627で有意差なし)。 83人の患者に化学療法が行われた。進行肺癌に対する化学療法により急性増悪をきたした患者は、CPFE群44人中6人(13.6%)、non-CPFE群39人中5人(12.8%)だった。また、化学療法を行った進行肺癌患者における生存期間中央値はCPFE群で14.9ヶ月、non-CPFE群で21.6ヶ月だった(p=0.679で有意差なし)。
結論:CPFEは、間質性肺炎患者における急性増悪のリスク因子でも、予後不良因子でもなかった。そのため、CPFE患者においては特発性間質性肺炎患者同様にできる限りの抗がん治療が必要である。
ちょっと生存期間の成績がよすぎる(特に進行肺癌の解析についてはそう感じます)気がしますが、日本医科大学の実地臨床が優れているということなのでしょうね。
CPFE、肺線維症どちらの病態でも、ピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化薬を併用しながら化学療法をすると、急性増悪のリスク抑制や治療効果の向上に役立つかもしれません。
抗線維化薬のピルフェニドンに対する評価が世界的にも安定したこと、間質性肺炎合併肺癌患者さんを対象にピルフェニドンの術後急性増悪合併抑制効果を検証した第II相試験(WJOG6711L study)で有望な結果が得られたこと、抗線維化・抗腫瘍抗体医薬であるニンテダニブの実用化に一定の見通しが立ったことなど、この領域でよい話題が多かったためかも知れません。
内科系の話題として、日本医科大学の峰岸先生の論文が引用されることが多かったですが、今回は肺気腫合併肺線維症(CPFE)について、以下の論文要旨を紹介します。肺気腫合併肺癌、肺線維症合併肺癌、いずれも厳しい病態であるのに、どっちも合併したらそりゃあきついでしょう、と容易に想像できますが、それをちゃんと論文にしてちょっと意外な結論を明らかにしているところがすばらしいと思います。ちなみに、肺気腫、肺線維症、肺がん、いずれも喫煙が密接に関わっている病気です。
Clinical features, anti-cancer treatments and outcomes of lung cancer patients with combined pulmonary fibrosis and emphysema.
Minegishi Y et al., Lung Cancer. 2014 Aug;85(2):258-63.
背景:CPFE患者は肺気腫の患者、もしくは肺線維症の患者と比べて有意に肺がんのリスクが高いかもしれない。抗腫瘍治療中の間質性肺炎急性増悪は、日本の肺癌患者にとっては致死的な合併症の最たるものである。にも拘らず、肺癌患者において特発性間質性肺炎のみを合併した患者に対してCPFEの患者がどのような臨床的特徴を有しているのか、よくわかっていない。
方法:1998年3月から2011年10月までに日本医科大学病院で診療した1536人の肺癌患者を後方視的に検討した。特発性間質性肺炎を合併した患者を以下の二群に分類した。(1)CPFE群:肺気腫を合併した特発性間質性肺炎患者、(2)non-CPFE群:肺気腫を合併しない特発性間質性肺炎患者。臨床的特徴、抗がん治療、予後について両群を比較した。
結果:肺がんを合併したCPFE群88人(5.7%)ととnon-CPFE群63人(4.1%)を抽出した。初回治療時に急性増悪を合併した患者はCPFE群で22人(25%)、non-CPFE群で8人(12.7%)だった。生存期間中央値はCPFE群で23.7ヶ月、non-CPFE群で20.3ヶ月だった(p=0.627で有意差なし)。 83人の患者に化学療法が行われた。進行肺癌に対する化学療法により急性増悪をきたした患者は、CPFE群44人中6人(13.6%)、non-CPFE群39人中5人(12.8%)だった。また、化学療法を行った進行肺癌患者における生存期間中央値はCPFE群で14.9ヶ月、non-CPFE群で21.6ヶ月だった(p=0.679で有意差なし)。
結論:CPFEは、間質性肺炎患者における急性増悪のリスク因子でも、予後不良因子でもなかった。そのため、CPFE患者においては特発性間質性肺炎患者同様にできる限りの抗がん治療が必要である。
ちょっと生存期間の成績がよすぎる(特に進行肺癌の解析についてはそう感じます)気がしますが、日本医科大学の実地臨床が優れているということなのでしょうね。
CPFE、肺線維症どちらの病態でも、ピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化薬を併用しながら化学療法をすると、急性増悪のリスク抑制や治療効果の向上に役立つかもしれません。
お引越しします
追憶
肺がん患者に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種は必要か
そろりと面会制限の限定解除
新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方
新型コロナワクチン感染症が治った人は、ワクチンを接種すべきか
抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方
広い意味でのチーム医療
病院内におけるワクチン格差のリスク
順序
2015年度のデータベースから
2014年度のデータベースから
2013年度のデータベースから
2012年度のデータベースから
2011年度のデータベースから
2010年度のデータベースから
2009年度のデータベースから
2008年度のデータベースから
がんと新型コロナウイルスワクチン
進行肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法
追憶
肺がん患者に3回目の新型コロナウイルスワクチン接種は必要か
そろりと面会制限の限定解除
新型コロナウイルスワクチンの効果と考え方
新型コロナワクチン感染症が治った人は、ワクチンを接種すべきか
抗がん薬治療における刺身・鮨との付き合い方
広い意味でのチーム医療
病院内におけるワクチン格差のリスク
順序
2015年度のデータベースから
2014年度のデータベースから
2013年度のデータベースから
2012年度のデータベースから
2011年度のデータベースから
2010年度のデータベースから
2009年度のデータベースから
2008年度のデータベースから
がんと新型コロナウイルスワクチン
進行肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法
Posted by tak at 17:33│Comments(0)
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