2013年04月15日

Denosumabと肺がん再考

以前、抗RANKLモノクローナル抗体で、骨転移を有するがん患者さんに用いるDenosumabのことを書きました。
2012年1月26日の記事ですが、現在では実地臨床でも使えるようになりました。
商品名は「ランマーク」です。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e515114.html

このとき取り上げたDenosumab(ランマーク)とzoledronic acid(ゾメタ)の第III相比較試験で、肺がん患者のみを対象としたサブグループ解析の結果が論文化されていましたので、ちょっと今更ながらですが掲載します。

J Thorac Oncol. 2012 Dec;7(12):1823-9.
Overall survival improvement in patients with lung cancer and bone metastases treated with denosumab versus zoledronic acid: subgroup analysis from a randomized phase 3 study.
Scagliotti GV, Hirsh V, Siena S, Henry DH, Woll PJ, Manegold C, Solal-Celigny P, Rodriguez G, Krzakowski M, Mehta ND, Lipton L, García-Sáenz JA, Pereira JR, Prabhash K, Ciuleanu TE, Kanarev V, Wang H, Balakumaran A, Jacobs I.

<背景>
 完全ヒト化抗RANKLモノクローナル抗体であるdenosumabは、骨転移を有する固形癌患者における骨関連有害事象を減少させる。我々は、骨転移を有する固形がん(乳癌・前立腺癌を除く)と多発性骨髄腫の患者を対象としたdenosumabとzoledronic acidの有効性を検証する第III相比較試験に参加した患者のうち、肺がん患者の生存データについてサブグループ解析を行った。

<方法>
 本試験に参加した患者は、denosumab群:denosumab120mgを毎月1回皮下注射、とzoledronic acid群:zoredronic acidを毎月1回点滴静注、に1対1の比率で割り付けた。Kaplan-Meier法と比例ハザードモデルを用いて、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がんの患者の全生存期間について探索的検討を行った。

<結果>
 811人の肺がん患者を対象として検討したところ、denosumab群はzoledronic acid群に比して有意に生存期間中央値が延長していた(8.9ヶ月vs7.7ヶ月、ハザード比0.80、p=0.01)。この傾向は、702人の非小細胞肺がん患者に絞っても同様であった(9.5ヶ月vs8.0ヶ月、ハザード比0.78、p=0.01)。更に、非小細胞肺がんの中でも組織型別に検討したところ、扁平上皮がんの患者で同様の傾向が見られた(8.6ヶ月vs6.4ヶ月、ハザード比0.68、p=0.035)。有害事象は両群間でほぼ同等であった。重篤な有害事象はdenosumab群で66.0%、zoledronic acid群で72.9%に認められた。下顎骨壊死の累積発症率はdenosumab群で0.7%、zoledronic acid群で0.8%と両群間で同等であった。低カルシウム血症はdenosumab群で8.6%、zoledronic acid群で3.8%だった。

Denosumabと肺がん再考
Denosumabと肺がん再考
Denosumabと肺がん再考

<結論>
 今回の探索的検討では、骨転移を有する肺がん患者において、denosumabはzoledronic acidに比して全生存期間の延長に寄与していた。

 なお、内臓への転移がある人でも生存期間延長効果があるようです。
Denosumabと肺がん再考

 サブグループ解析とはいいながら、全生存期間に差が出るというのはちょっと無視できない結果です。
 どの生存曲線も、概ね末広がりの傾向を示しています。
 骨転移、内臓転移を有する扁平上皮がんの患者さんには、積極的にdenosumabを使ってみてはいかがでしょうか。


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