2017年06月03日

Selumetinib+DOC 第III相試験 for KRASm陽性肺癌

 KRAS遺伝子変異陽性肺癌に対するSelumetinib+ドセタキセル併用化学療法については先行研究があり、4年前に以下のリンクで触れている。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e646669.html

 かなり期待していたのだが、最近論文報告された第III相試験では、Selumetinib+ドセタキセル療法の優位性は証明されず、大変残念な結果に終わってしまった。
 図らずも、第II相試験の結果がどんなによくても第III相試験で検証するまでは結論が出せない、ということが改めて示された。
 EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するErlotinib+Bevacizumab併用療法がこのような顛末にならないことを祈る。






Selumetinib plus Docetaxel compared with Docetaxel alone and progression-free survival in patients with KRAS-mutant advanced Non-small cell lung cancer

Pasi A Janne et al, JAMA 317(18); 1844-1853, 2017

・KRAS遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者の二次治療において、ドセタキセル単剤化学療法にMEK阻害薬のSelumetinibを追加しても無増悪生存期間を延長しないことが、第III相試験のSELECT-Iで明らかになった
・KRAS遺伝子変異は、MEKキナーゼやERKキナーゼなどで構成されるMAPK系を含むシグナル伝達系を介して、腫瘍化に関わっている
・今回の二重盲検試験では、25ヶ国、202施設から患者を募集した
・2013年10月から、2016年1月にかけて患者を集積し、無作為割付した
・3,323人が試験参加同意書もしくはKRASスクリーニング同意書に署名した
・652人がKRAS遺伝子変異陽性と判定された
・510人がSelumetinib群(254人)かプラセボ群(256人)に割り付けられた
・Selumetinib群では、Selumetinibを75mg/回を1日2回連日内服し、さらにドセタキセルを75mg/回で3週間に1コースの頻度で点滴投与した。
・プラセボ群では、プラセボとドセタキセルを同様に投与した
・主要評価項目は無増悪生存期間とした
・2016年6月に最終解析を行った
・参加者の年齢中央値は62歳、全体の41%が女性、95%が白人、22%が現喫煙者、70%が既喫煙者、95%が遠隔転移を有し、94%がKRAS codon 12もしくは13の変異を有し、91%が腺癌だった
・510人中385人(75%)でPD-L1(28-8抗体)発現解析を行い、224人(58%)で5%未満、161人(42%)で5%以上陽性だった
・PD-L1発現状態と治療効果に相関はなかった
・データ解析時点で、無増悪生存期間中央値はSelumetinib群で3.9ヶ月、プラセボ群で2.8ヶ月、ハザード比0.93、p=0.44と、両群間に有意差を認めなかった
・生存期間中央値はSelumetinib群で8.7ヶ月、プラセボ群で7.9ヶ月、ハザード比1.05、p=0.64と、両群間で有意差を認めなかった
・奏効割合はSelumetinib群で20.1%、プラセボ群で13.7%、オッズ比1.61、p=0.05だった
・奏効持続期間はSelumetinib群で2.9ヶ月、プラセボ群で4.5ヶ月だった
・発生頻度の高かった有害事象は、Selumetinib群では下痢(61%)、嘔気(38%)、発疹(34%)、四肢浮腫(30%)、プラセボ群では下痢(35%)、疲労(31%)だった
・Grade 3以上の有害事象はSelumetinib群の67%、プラセボ群の45%で認められた
・発熱性好中球減少はSelumetinib群の2%、プラセボ群の1%で認められた
(ただし、プロトコール規定で全ての患者にG-CSF製剤の予防投与が課されていた)
・Selumetinib+ドセタキセル療法が有望と目された第II相試験の結果と比べると、プラセボ群の治療成績がよく(奏効割合は本試験で14%、第II相試験で0%、無増悪生存期間中央値は本試験で2.8ヶ月、第II相試験で2.1ヶ月)、反対にSelumetinib群の治療成績は悪かった(奏効割合は本試験で20%、第II相試験で37%、無増悪生存期間中央値は本試験で3.9ヶ月、第II相試験で5.3ヶ月)


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