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2015年06月09日

検査・治療同意書

 診療業務をしていると、検査や治療の同意書にサインしていただくことがしばしばです。
 法的拘束力がある書類、というよりは、事前に適切な説明を患者さんと家族にしているかどうかのめやす、と個人的には捉えています。
 あとから振り返って見直せる、という意味では、口頭での説明よりはるかに良いです。
 同意書だけでなく、大切な面談の内容もできるだけ紙に書いて、お渡しするように心がけています。

 最近、三島由紀夫の「若きサムライのために」という本を通勤途中の電車の中で読んでいます。
 これまで三島由紀夫の作品は文学小説しか読んだことがなかったのですが、この本を読むとこの作家の人相風体が見えてくるような気がします。
 
 「信義について」という項に、以下のようなくだりがあるので引用します。
 若者が時間にルーズであきれるほかない、といった書き出しから始まる文で、軍人が時間に正確なのは時間を守らないと負けてしまうからだ・・・などなど述べられた後に、以下のように続きます。

 「日本では契約がこうるさいのは、借家人の契約や、アパートの賃貸契約だけであるが、同じ本を出すのにも、私どもと日本の出版社との約束は口約束だけで済むものが、アメリカでは何ページにもわたってアリのはうような細かい活字を連ねた煩瑣な契約書が、起こり得るあらゆる危険、あらゆる裏切り、あらゆる背信行為を予定して書き留められている。そもそも契約書がいらないような社会は天国なのである。契約書は人を疑い、人間を悪人と規定するところから生まれてくる。
 そして相手の人間に考えられるところのあらゆる悪の可能性を初めから約束によって封じて、しかしその約束の範囲内ならば、どんな悪いことも許されるというのは、契約や法律の本旨である。ところが別の考え方もあるので、ほんとうの近代的な契約社会は、何も紙をとりかわさなくても、お互いの応諾の意思が発表された時期に契約が成立するのだという学説もあるくらいである。すなわち、契約社会の理想は、何も紙をとりかわさなくても人間が契約を守るという根本精神が行きわたれば、それだけで安全に運行してゆくのであるが、そんなりっぱな人間ばかりでないところからむずかしい問題が生ずるのである。」

 ・・・世の中、りっぱな人ばかりではありません。
 医師も患者も家族もみな人間で個性があり、いろんな人がいます。
 契約論はともかくとして、お互いの認識をそろえる、という意味では、やはり書類はあった方がいいと思います。
 
 昨日丸山ワクチンの相談でお越しになった患者さんにも、A4用紙で計6枚程度の説明を手書きで書いて、お渡ししました。
 費用、手間、予測される効果、今後の見通しををお伝えし、あまりお勧めしませんでした。


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この記事へのコメント
私は逆に、診察で大事な方針を決める時には質問や、幾つかの選択肢を紙に書いて、医師に渡します。
聞きたいことと説明されることの論点がずれないので、時間短縮にもなります。
Posted by のぞみパパ at 2015年06月10日 13:05
はじめまして。
突然のメール、失礼します。
肺がん患者の会 ワンステップ!の長谷川と申します。
メールがどこにあるかわからず、コメント欄に書き込みます。

今回はリンクと記事抜粋の許可をいただきたく、メールをいたしました。

その箇所はLC-SCRUMに関する部分です。

実は患者会のHPにおいてLC-SCRUMの記事を載せています。
http://www.lung-onestep.jp/index.html

主催する医師のインタビュー記事を載せていることと、患者の声はのっていますが、臨床の場で医師がどのように考え、運用しているのかはわかりませんでした。先生の記事はそれを伝える記事であると考えます。

いかがでしょうか?

よろしくお願いします

肺がん患者の会 ワンステップ!
長谷川一男
Posted by 肺がん患者の会 ワンステップ! at 2015年06月11日 14:11
返信のメールアドレスを記入忘れました。
mail@lung-onestep.jp
です

肺がん患者の会 ワンステップ!
長谷川一男
Posted by 追記 at 2015年06月11日 14:14
のぞみパパさんへ
 こんばんは。いま、日本呼吸器内視鏡学会総会出席のため、新宿に来ています。いつものことですが、学会に来ると刺激を受けて、よりレベルの高い診療をしようと気合が入ります。
 相談したいことをメモにして診察時に医師に渡しておられるとのこと、いい習慣だと思います。双方向性とお付き合いって、大切ですよね。メモをきっかけにして話が進むこともあるでしょうし。私はないか一般診療もしていますが、高血圧の患者さんの自宅測定血圧とか、喘息の患者さんの喘息日誌は、本当に診療の参考になりますし、それを用いて治療の調整をしています。熊本などでは、肺がんの患者さんも、「私のカルテ」を持ち歩いて、どこの医療機関でも病歴が確認できるように体制が整えられているようですね。
Posted by taktak at 2015年06月11日 17:21
先生、ありがとうございます。
Posted by 肺がん患者の会 ワンステップ! at 2015年06月13日 00:29
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