2011年12月20日

イレッサ再投与

イレッサが臨床に導入された当初から、初回投与が効かなくなって、一時休薬して、再投与すると効くことがあるという報告をしばしば耳にします。
臨床の現場ではしばしば行う治療です。
どの程度エビデンスがあるのか、というと、有効性と安全性を探る前向き臨床試験は1件だけ行われているようです。

gefitinibによる前治療が有効であった進行非小細胞肺癌患者に対するgefitinib再投与の第II相試験
Oncology 2010:79:423-429

【背景】gefitinibへの耐性を獲得した場合のサルベージ治療は未開発である。前治療でgefitinibが有効であった患者に対するgefitinib再投与の前向き第II相試験を行った。
【方法】gefitinib初回投与に対して他覚的に奏効が得られ、gefitinibが無効となったのちに殺細胞性抗腫瘍薬の投与を受けた(のちに無効となった)進行・再発非小細胞肺癌患者に対し、gefitinib 250mg/dayを投与した。主要評価項目はgefitinib再投与後の奏効割合、副次評価項目は病勢コントロール率、無増悪生存期間、全生存期間、QOL、有害事象とした。肺癌に関連した症状はそれに関連した7つの質問票を用いて評価した。
【結果】2005年2月から2008年1月までに16人の患者が登録された。ほとんどの患者(87%)は3レジメン以上の化学療法歴があった。gefitinib再投与の奏効割合は0%、病勢コントロール率は44%、無増悪生存期間中央値は2.5ヶ月、全生存期間中央値は14.7ヶ月であった。Stable Disease (SD)の患者7人のうち4人では重篤な有害事象なく6ヶ月以上の長期にわたる病勢コントロールが得られた。QOLの評価が可能であった12人のうち2人(17%)では症状の改善が得られた。
【結論】gefitinib前治療が有効であった患者の一部では、gefitinib再投与は有用な治療選択枝となる。

ちなみに、16人のうちEGFR遺伝子変異陽性は3人、陰性は3人、10人は不明でした。
今後、適切にEGFR遺伝子変異検査が行われるようになれば、陽性の患者さんにしかgefitinibを投与することはないので、陽性の患者さんでは再投与はどうなのか、できれば知りたいところです。
gefitinib再投与開始からの生存期間中央値が14.7ヶ月というのは、初回投与のgefitinibを含めて4レジメン以上の治療を受けた患者さんが90%近くを占めることを考えると、有望な結果であるように感じます。


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